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市川ユウキの「プロツアー参戦記」
市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『イクサラン』 前編
市川ユウキの「プロツアー参戦記」 プロツアー『イクサラン』 前編
こんにちは! チーム「武蔵」の市川です。
今シーズンもマジック日本公式ウェブサイトにて「プロツアー参戦記」を書かせていただけることになりました!
これも皆さまのご愛顧あってのもの、いつもありがとうございます。
と、いうことで、いつも通り今回もプロツアー『イクサラン』への調整記/大会レポートを綴っていこうと思います。よろしくお願いします。
0.プロ・プレイヤーズ・クラブのルール変更
プロツアー『イクサラン』から(厳密に括るとプロツアー『破滅の刻』終了後からですが)2017-2018シーズンの開幕、それに伴ってプロ・プレイヤーズ・クラブのルールも変更となりました。
プロ・プレイヤーズ・クラブってなんじゃろなって方にざっくり説明しますと、マジック:ザ・ギャザリングの大会にはプロ・ポイントというポイントが付与される大会が用意されています。
誰でも参加できる「グランプリ」、招待制の「プロツアー」、昨シーズン上位24名しか出られない最高峰のイベント「世界選手権」などですね。
グランプリで11勝4敗だとプロポイント2点。プロツアーで11勝5敗だとプロポイント10点獲得など、これらは細かく設定されています。
それらを1年サイクルで集めていくと、年に1回プロツアーに来ても良いよ(ただし実費だよ)な「シルバー」レベル、年間のプロツアー全部おいで(飛行機代出すよ)な「ゴールド」レベル(私はコレです)、そしてさらにいろんなイベントに出るだけでお金をもらえる最高レベル「プラチナ」などになることができます。
これらの各種待遇、何点でどのレベルになれるかなどの特典を用意している制度を総称して、プロ・プレイヤーズ・クラブと呼ばれています。
それが今シーズンになって若干の変更があり、
2016-2017シーズン | 必要プロ・ポイント |
---|---|
シルバー | 20点 |
ゴールド | 35点 |
プラチナ | 52点 |
だったのに対し、
2017-2018シーズン | 必要プロ・ポイント |
---|---|
シルバー | 20点 |
ゴールド | 35点 |
プラチナ | 52点 |
と、各種プロレベルに対してのボーダーは変わらず、「キャップ」制度の部分に変更がありました。
今まで「世界選手権」や「ワールド・マジック・カップ」などの、プロポイントはもらえるが参加できるプレイヤーがごくごく限られているイベントは、プロポイント制度的にはキャップ制度に引っ掛からない特別枠的ポジションで、プレイヤー内でも「ボーナスステージ」と揶揄されていましたが、それらもこの12イベントキャップに引っ掛かるようになりました。
私のような「プロツアーには通年出られるけれど、世界選手権やワールド・マジック・カップなどの特別イベントには出られない程度」のプレイヤー的立ち位置からすると、この制度変更は歓迎できるでしょう。
年4回のプロツアーの参加点(つまり最低点)は3点。これをグランプリの成績で上回るとすると13勝2敗以上の好成績を求められることになりますから、プロツアー参加点が12イベントキャップから漏れることはまずあり得ないということになります。
つまり4回のプロツアー+8回のグランプリ=私の12イベントキャップの内訳となることから、各レベルへのボーダーに変更がなされていないにも関わらず、前年のグランプリキャップから2個キャップが増加した状態となります。
これは来シーズン、2018-2019シーズンでのルール変更の布石となっているわけですが、それについて話していくと紙面が足りなくなるのでその話はまた次の機会にするとして......。
まとめますとこれは私にとって《好機》。
相も変わらず鼻息荒く、プロツアーへの調整を開始するのでした。
1.世界選手権
プロツアー『イクサラン』は今までのプロツアーとは開催時期が異なります。
これまでのプロツアーは発売から2週間後の環境初期に行われていましたが、今回はある程度環境が成熟しているであろう発売から5週間後の開催。
それまでにご多分に漏れず「StarCityGames.com オープントーナメント」などの大規模賞金大会もあるほか、世界最高レベルの「世界選手権」も開催。
今まで以上にプロツアーでのメタゲームが正確になり、前情報の精度が上がることとなります。
ティムール・エネルギー
4 《森》 1 《島》 2 《山》 4 《植物の聖域》 4 《根縛りの岩山》 3 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 -土地(22)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 3 《逆毛ハイドラ》 4 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー(23)- |
4 《霊気との調和》 2 《マグマのしぶき》 4 《蓄霊稲妻》 2 《本質の散乱》 1 《削剥》 1 《慮外な押収》 1 《暗記 // 記憶》 -呪文(15)- |
2 《奔流の機械巨人》 1 《チャンドラの敗北》 4 《否認》 1 《削剥》 2 《人工物への興味》 1 《至高の意志》 1 《天才の片鱗》 1 《慮外な押収》 1 《霊気圏の収集艇》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
前環境の覇者、「ティムール・エネルギー」を駆るウィリアム・ジェンセン/William Jensenさんが見事優勝。
トップメタなデッキではありますが、今まで採用されていなかった《暗記 // 記憶》、《本質の散乱》の採用、メインデッキに《慮外な押収》など、後述する「ラムナプ・レッド」の《熱烈の神ハゾレト》を強く意識した構成となっています。
またサイドボードに定番の《否認》4枚の他に《至高の意志》、《天才の片鱗》などのインスタントの追加、それを軸に《奔流の機械巨人》を採用。
これはまたも後述しますが「青黒コントロール」を意識した構成と言え、世界選手権のメタゲームは同型(「ティムール・エネルギー」)、「ラムナプ・レッド」、「青黒コントロール」と照準を定めていたことがわかります。
ラムナプ・レッド
15 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 1 《屍肉あさりの地》 -土地(24)- 4 《ボーマットの急使》 4 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 4 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(23)- |
4 《ショック》 4 《削剥》 4 《稲妻の一撃》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(13)- |
4 《暴れ回るフェロキドン》 3 《ピア・ナラー》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 1 《霊気圏の収集艇》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
これまた前環境から引き続きの「ラムナプ・レッド」。
1マナ域が《ファルケンラスの過食者》、《村の伝書士》と退場しましたが、《損魂魔道士》フル投入でその枠を埋めています。
本体に撃ってよし、クリーチャーに撃ってももちろんよし、な《発射》涙目カード《稲妻の一撃》が再録され、呪文は大幅強化。
また、ラムナプ・レッド苦手2大要素「ライフゲイン」「横並び」をなんと1枚で阻止するトンデモザウルス《暴れ回るフェロキドン》もサイドに加わりまさに隙無し。
素直な強化と素直な構築でハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezさんが準優勝。
青黒コントロール
6 《島》 5 《沼》 4 《異臭の池》 4 《水没した地下墓地》 4 《進化する未開地》 3 《廃墟の地》 -土地(26)- 2 《スカラベの神》 3 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー(5)- |
4 《致命的な一押し》 4 《検閲》 4 《本質の散乱》 3 《アズカンタの探索》 4 《不許可》 2 《本質の摘出》 3 《ヴラスカの侮辱》 4 《ヒエログリフの輝き》 1 《天才の片鱗》 -呪文(29)- |
3 《禁制品の黒幕》 2 《多面相の侍臣》 4 《強迫》 2 《否認》 1 《アルゲールの断血》 1 《宝物の地図》 1 《本質の摘出》 1 《廃墟の地》 -サイドボード(15)- |
ようやく出て来た新デッキ。
だがアーキタイプは古典的な青黒コントロールが世界選手権の台風の目となりました。
新カードによってTier1デッキに昇華されました。
《アズカンタの探索》は《ヴリンの神童、ジェイス》と非常に近い性質を持っているエンチャントです。
序盤は疑似占術でデッキの動きを助け、後半は起動型能力でアドバンテージソースとなります。
また土地となるのも重要で、青系コントロールの必殺技《奔流の機械巨人》を出すための助けともなります。
「序盤を捌き切ったけどそれ以降のドローが土地だけで負けた......。」
「土地が5枚で止まって《奔流の機械巨人》3枚手札に寄って来て負けた......。」
などの青系コントロールあるあるを解消する《アズカンタの探索》はまさに青黒コントロールのマスターピース。
《ヴラスカの侮辱》も青黒というやや不器用なカラーリングを助ける重要なカードです。
《反逆の先導者、チャンドラ》などの戦場に定着すると敗北必至のプレインズウォーカーや、《熱烈の神ハゾレト》、《スカラベの神》などの対処し辛いクリーチャーなどをスマートに除去。
4マナと単体除去にしてはやや重いところが気になりますが、インスタントであること、ライフゲインが付いていることなどからそれを十分にカバーしているでしょう。
これらの強化から鈍重なソーサリータイミングのカードが多いミッドレンジ・デッキ、端的に言うと「ティムール・エネルギー」系には滅法相性が良く、青黒コントロールは(八十岡さんの「グリクシス・コントロール」も含めると)使用者は5人と少人数でありながら、TOP4に2人と、目覚ましい活躍を見せました。
と、いうことで世界選手権後のメタゲームは、
前環境の覇者、「ティムール・エネルギー」。
環境最速、「ラムナプ・レッド」。
新デッキ、「青黒コントロール」。
の三つ巴で進んでいくことになります。
2.世界選手権後
世界選手権以後、さまざまなデッキが3強に挑むべく登場していきます。
アブザン・トークン
5 《平地》 3 《沼》 1 《森》 4 《秘密の中庭》 4 《シェフェトの砂丘》 1 《イフニルの死界》 4 《進化する未開地》 -土地(22)- 4 《選定の司祭》 -クリーチャー(4)- |
4 《致命的な一押し》 4 《改革派の地図》 3 《軍団の上陸》 4 《秘密の備蓄品》 4 《選定された行進》 4 《排斥》 4 《燻蒸》 4 《徹頭 // 徹尾》 3 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文(34)- |
2 《陽光鞭の勇者》 3 《賞罰の天使》 4 《強迫》 2 《断片化》 2 《アルゲールの断血》 2 《失われた遺産》 -サイドボード(15)- |
プロプレイヤーも多数出場するMOCSマンスリー。
そこで「Smdster」ことプラチナ・プロ、サミュエル・パーディー/Samuel PardeeはMagic Online(MO)で流行りの「アブザン・トークン」をチューンし見事8戦全勝のスコアをマーク。
このデッキの長所は粘り強さです。
《秘密の備蓄品》、《選定された行進》を軸にリソースを稼ぎ、《燻蒸》などで盤面を一掃します。
新カードである《軍団の上陸》もこのデッキには非常にマッチしたカードで、トークンが横に並ぶこのデッキでは変身も容易く、《一番砦、アダント》になれば恒久的なリソースとして運用でき、また《選定された行進》とのシナジーは言わずもがな。
《秘宝探究者、ヴラスカ》もこのデッキではかゆい所に手が届く(にしては大振りなカードですが)カードで、おまけに出て来る宝物・トークンも《秘密の備蓄品》の紛争に活用されます。
対戦相手の《秘密の備蓄品》、《選定された行進》を対処したり、お互いに戦場にクリーチャーが溢れ、ライフも大量な状態でも《秘宝探究者、ヴラスカ》の[-10]能力で一気にライフを1にできたりと、特に同型戦での活躍が期待できます。
わずか《森》1枚だけでのタッチですが、《改革派の地図》、《進化する未開地》と《森》にアクセスできるカードは豊富にあり、6マナと後半のカードということもあり、十分運用できるかと思います。
スゥルタイ・エネルギー
2 《沼》 4 《森》 1 《島》 4 《花盛りの湿地》 4 《植物の聖域》 2 《異臭の池》 4 《霊気拠点》 -土地(21)- 4 《光袖会の収集者》 4 《牙長獣の仔》 4 《歩行バリスタ》 4 《巻きつき蛇》 4 《ならず者の精製屋》 2 《ピーマの改革派、リシュカー》 4 《人質取り》 1 《スカラベの神》 -クリーチャー(27)- |
4 《霊気との調和》 4 《顕在的防御》 4 《致命的な一押し》 -呪文(12)- |
3 《貪る死肉あさり》 1 《多面相の侍臣》 1 《スカラベの神》 3 《強迫》 1 《呪文貫き》 2 《否認》 1 《本質の散乱》 2 《ヴラスカの侮辱》 1 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -サイドボード(15)- |
MOCSマンスリー、もうひとつの全勝は「スゥルタイ・エネルギー」でした。
このデッキの「ティムール・エネルギー」への優位性は、2マナ域の優秀さです。
《光袖会の収集者》《巻きつき蛇》は対戦相手に次のターンまでに対処を迫る強力なクリーチャーで、2マナのカードでありながらこれらを展開できたらゲームを有利に運ぶことができます。
また、カラデシュの対抗2色土地、通称「ファストランド」がスゥルタイ絡みに寄っているのも加点要素です。
これは、エネルギー・デッキの1ターン目の動きが基本的に《霊気との調和》であることから、1ターン目にアンタップインで出せる緑マナが豊富に取れることを表しています。
「ティムール・エネルギー」の《尖塔断の運河》が2~3枚の採用に対して、「スゥルタイ・エネルギー」の《花盛りの湿地》が4枚フル投入されていることなどから、ファストランドの中でも強弱が出ていることがわかるでしょうか。
また、『イクサラン』随一のパワーカード《人質取り》を採用できる点も見逃せません。
《人質取り》はクリーチャー除去でありながら、メインデッキから対処しづらいアーティファクトも対象に取れることなどから、《王神の贈り物》デッキなどへの耐性も上がります。
ただ、「戦場に出たとき」能力持ち(例えば《ならず者の精製屋》など)を追放している際に、対戦相手に除去されてしまうと、逆にアドバンテージを取られてしまうリスクもあります。
そこを《顕在的防御》でカバー。「ティムール・エネルギー」と比べるとデッキに5マナ域が少なく、軽く組まれているので十分5ターン目《人質取り》+《顕在的防御》は実現できます。
その他《光袖会の収集者》や《牙長獣の仔》などの2マナ域を3ターン目に召喚+《顕在的防御》など、2マナ域のクリーチャーが厚めに取られているからこそできる動きもあり、《顕在的防御》は先手後手を入れ替える要と言えるでしょう。
エスパー・王神の贈り物
6 《島》 3 《沼》 2 《異臭の池》 4 《水没した地下墓地》 4 《秘密の中庭》 4 《霊気拠点》 -土地(23)- 4 《査問長官》 4 《探求者の従者》 4 《機知の勇者》 2 《戦利品の魔道士》 4 《人質取り》 4 《発明の天使》 2 《スカラベの神》 4 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(28)- |
3 《航路の作成》 4 《来世への門》 2 《王神の贈り物》 -呪文(9)- |
4 《帆凧の掠め盗り》 2 《激変の機械巨人》 1 《スカラベの神》 4 《致命的な一押し》 4 《否認》 -サイドボード(15)- |
《人質取り》デッキといえば、「エスパー・王神の贈り物」もMOPTQで4位にランクイン。
《探求者の従者》は見た目リミテッドカードですが、こと《王神の贈り物》デッキに入ると別。
「探検」能力で墓地を肥やしても良いですし、土地がめくれればアドバンテージとなり、《王神の贈り物》を普通に唱えたり、《機知の勇者》の「永遠」コストまで土地を伸ばすプランも成立します。
《航路の作成》もいぶし銀の働き。
クリーチャーの多いこのデッキであれば、攻撃後に2枚ドローでテンポ良くアドバンテージを獲得することも可能ですし、《来世への門》が出ている状態で墓地をクリーチャーで肥やしたい時には攻撃前にプレイして手札からクリーチャーを捨てたり、自分に都合よくモードを選ぶことが可能です。
またサイドに潜む《帆凧の掠め盗り》は対戦相手がサイドインしてくるであろうカード、《否認》や《慮外な押収》などを文字通り掠め盗れるグッドサイドカードです。
一度除去されたとしても《王神の贈り物》で再度戦場に出し、ソーサリータイミングで《王神の贈り物》を対処してくるカードを抜いたりと、小回りが効きます。
黒赤機体
12 《沼》 1 《山》 4 《竜髑髏の山頂》 2 《泥濘の峡谷》 4 《霊気拠点》 -土地(23)- 4 《戦慄の放浪者》 4 《夜市の見張り》 4 《敵意ある征服者》 4 《光袖会の収集者》 4 《屑鉄場のたかり屋》 3 《不死の援護者、ヤヘンニ》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(26)- |
4 《致命的な一押し》 4 《稲妻の一撃》 1 《バントゥ最後の算段》 2 《霊気圏の収集艇》 -呪文(11)- |
4 《才気ある霊基体》 4 《強迫》 2 《大災厄》 2 《無許可の分解》 1 《バントゥ最後の算段》 1 《ヴァンスの爆破砲》 1 《ヴラスカの侮辱》 -サイドボード(15)- |
こちらは「アブザン・トークン」と「スゥルタイ・エネルギー」が全勝したMOCSの次の日に開催されたMOCSで見事全勝を果たした黒赤機体。
似たアグロデッキで「ラムナプ・レッド」と比較されますが、このデッキの長所はクリーチャーの除去耐性でしょう。
《戦慄の放浪者》と《屑鉄場のたかり屋》はコントロール泣かせの王道。追放除去さえされなければ不死身のアタッカーとして活躍します。
また、このデッキの主軸と言える《不死の援護者、ヤヘンニ》はクリーチャーデッキ同型で大活躍。
カウンターが置かれる能力に「トークンでない」などの制限がないため、《つむじ風の巨匠》から出て来たトークンなどでのチャンプブロックでもみるみる成長。
《バントゥ最後の算段》との必殺コンボはアグロデッキであるこのデッキから飛び出て来るにはまさに急角度な呪文で、盤面を一掃しながら《不死の援護者、ヤヘンニ》が急成長、墓地に行った《戦慄の放浪者》や《屑鉄場のたかり屋》はすぐに戦線復帰と、デッキの除去耐性と噛み合っています。
その他サイドボードには《才気ある霊基体》、《強迫》など、黒軸でなければ採用できないグッドカードが採用されていたり、アグロデッキの急先鋒である「ラムナプ・レッド」とどちらが優位かは検討の余地大いにありと言ったところ。
3.調整開始
と、環境のデッキが出揃った頃合いにチーム調整は始まりました。
今回もチームシリーズで優勝を果たした我がチーム「武蔵」を筆頭に......。
ん?
そ、そうなんです! なんと世界選手権と同時に開催されたチームシリーズ決勝戦で見事勝利し、チーム「武蔵」はチームシリーズ初年度、見事優勝チームとなったんです!!
いやー私個人としては、この決勝に来るのに必要な「プロツアーで獲得したプロポイント」のラインではチームの力になれなかった負い目もありましたが、決勝戦では第2戦、優勝決定戦ともに勝利しチームの優勝に貢献! 役目を果たせた気がしてホッしました。
そんな最良の結果を受けチーム「武蔵」はメンバー1人も変わらず、そのまま連覇を目指して始動したのでした。
あといつもの感じで高尾翔太さん、
原根健太さんも居ました。
彼らにつきましてはもう結構紹介しているので、該当記事の該当部分をご覧ください。
4.調整煮詰まり
チーム調整を開始したのは良かったのですが、
青黒コントロール
結果......×
2色のデッキで、カードプールの少なさから伸びしろの無さを実感。
「ラムナプ・レッド」には絶望的な相性の悪さで、サイドに《才気ある霊基体》や《本質の摘出》を何枚積もうと《暴れ回るフェロキドン》で詰む。
オヤツにしていた「ティムール・エネルギー」も3マナでプレイできる致命的なパーマネント、《造命師の動物記》や《自然に仕える者、ニッサ》を採用しだしていて、サイド後は五分からやや不利と言ったところ。
スゥルタイ・エネルギー
結果......×
器用貧乏な点は避けられない。
特に《栄光をもたらすもの》に《ヴラスカの侮辱》を合わせるのは至難の業で、《蓄霊稲妻》などの優秀な軽量除去の薄さは致命的。
「ティムール・エネルギー」の《つむじ風の巨匠》や《逆毛ハイドラ》のようにフラッドしたエネルギーの注ぎ先が《牙長獣の仔》しかないにも減点。
アブザン・トークン
結果......×
「ティムール」のタッチ黒型の増加により《秘宝探究者、ヴラスカ》が採用されるようになり、圧倒的有利だったメインデッキにも陰りが。
逆に「ティムール」側はサイドボードに《真っ二つ》などの専用サイドカードを採用し始めていて、旗色悪し。
あと普通に《暴れ回るフェロキドン》キツい。
エスパー・王神の贈り物
結果......×
「ティムール」のタッチ黒型の増加により《スカラベの神》が採用されるようになり圧倒的有利だったメインデッキにも陰りが。(以後改変してお使いください。)
さらに「ティムール」にはサイド後《貪る死肉あさり》なんか出されて全然無理。
あと普通に《暴れ回るフェロキドン》キツい。(キツ過ぎて《板歩きの刑》とか試してみたけど無理なものは無理。)
黒赤アグロ
結果......×
《夜市の見張り》、《敵意ある征服者》などクリーチャーの質が「ラムナプ・レッド」と比べて低い。
《ボーマットの急使》を試してみたが、《地揺すりのケンラ》や《アン一門の壊し屋》など、除去せずにブロッカーを無効化できるクリーチャーがあってこそ《ボーマットの急使》がラグなく攻撃に行けるんだなという感想に。
マナベースも弱く、マナフラッドにも弱いため、「ラムナプ・レッド」の下位互換という結論に。
と、いうことで、その他にもオリジナルデッキ、巷で流行っているデッキ、さまざまなデッキを試してみたものの「ティムール」と「ラムナプ・レッド」を乗り越えるデッキが出てこない!
「ティムールかラムナプ・レッド」
というチームの結論になるのは当然のことで。
私は自分のプレイスタイルもあり、「ティムール」を使うことを決意。
5.ティムールを模索
「ティムール」を調整していく中で、同型が多いと思われるフィールドでは「タッチ黒」の方が優れていると思われました。
《栄光をもたらすもの》は連打して、対処されなかった時のバリューは高いですが、《蓄霊稲妻》などで対処されてしまうと、一気にテンポを取られてしまいます。
その点《スカラベの神》や《秘宝探究者、ヴラスカ》は対処方法が限られています。
特に《スカラベの神》は同型では劇的な活躍を見せ、膠着した盤面でうっかりトップデッキなどすると、2ターンくらいで勝ってしまうパワフルなカードです。
《秘宝探究者、ヴラスカ》も盤面がイーブンな状態からゲームを勝ちに持って行けるカードで、[-10]能力起動までの早さが同型では魅力的です。
その他、「アブザン・トークン」、「エスパー・王神の贈り物」などにも強力で、幅広いメタゲームになっても対応可能です。
私はチーム「武蔵」の調整には加わっていますが、平日はなかなか時間が取れないため、概ねMagic Onlineでの調整をフィードバックする形で連携を図っています。
ですので、一人でMOに籠って調整していった結果、このような形になりました。
3 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《沼》 4 《植物の聖域》 2 《隠れた茂み》 3 《根縛りの岩山》 1 《花盛りの湿地》 3 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 -土地(23)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 4 《逆毛ハイドラ》 2 《スカラベの神》 -クリーチャー(22)- |
4 《霊気との調和》 4 《蓄霊稲妻》 2 《削剥》 1 《本質の散乱》 2 《慮外な押収》 2 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文(15)- |
2 《多面相の侍臣》 2 《チャンドラの敗北》 4 《否認》 2 《野望のカルトーシュ》 2 《至高の意志》 1 《真っ二つ》 2 《自然に仕える者、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
タッチ黒はマナベースのキツさがデッキの弱点ですので、それを軽減するために{R}{R}を要求するカード、《反逆の先導者、チャンドラ》、《栄光をもたらすもの》を排した形になりました。
また、《野望のカルトーシュ》はマナベースに負担を掛けてでも、ぜひ採用したいカードです。
普通、先手4ターン目にラムナプ・レッドの《熱烈の神ハゾレト》がレッドゾーンに飛び込んで来たら九割九分負けのゲームとなりますが、《野望のカルトーシュ》があれば、ライフレースを一気に巻き返せます。
4/4以上となった《牙長獣の仔》や《逆毛ハイドラ》に(あとただデカいだけの《スカラベの神》も)《野望のカルトーシュ》をエンチャントするのは、対「ラムナプ・レッド」での明確なゴールと言えます。
この形でMOで4リーグほど試してみたのですが、結果、感触ともに良好。
特に同型戦、および「ラムナプ・レッド」戦の勝率が高く、狙い通りの構成と言ったところ。
後は出発直前となる八十岡さん邸での最終調整でバッチリ仕上げるだけ!!
......と、いったところで調整記の前編は終了。
後編は実際に使用したデッキの解説、ドラフトの雑感、大会レポートと盛りだくさん!
お楽しみに!
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