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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第8回:『フォーゴトン・レルム探訪』のもたらした変化
皆さんこんにちは。スタンダード連載担当の原根(@jspd_)です。
出ました! 新セット『フォーゴトン・レルム探訪』! 本稿は当セットリリース後初の連載となります。新セットが追加された後のスタンダード環境を語り尽くしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
『フォーゴトン・レルム探訪』注目の新戦力
まずは注目の新戦力の紹介から。
《砂漠滅ぼし、イムリス》
一発目は《砂漠滅ぼし、イムリス》。各色に存在する神話レアドラゴンのうちの1体ですが、非常に強力な効果を有しており、過去のスタンダードシーンで活躍した実績のある《龍王オジュタイ》に類似した性質を持つことから、ほぼ確実にトーナメントクラスのカードであることが窺い知れます。
現存のデッキであれば「イゼット・ドラゴン」などでは即戦力としての働きが期待できそうです。ただし、現在のスタンダードには青いデッキへのメタカードである《神秘の論争》が存在していることから、本格的な活躍は秋のスタンダードローテーション後になるのかもしれません。いずれにせよ強力なカードであるのは間違いがないため、今後の動向が注目されるカードです。
《高貴なる行いの書》
お次は一風変わった効果を持つ《高貴なる行いの書》。天使・クリーチャー1体を《白金の天使》に変える効果を持ちます。とは言え、天使・クリーチャーにはマナ・コストの大きなものが多く、戦場に残るクリーチャーというものは除去カードの影響を強く受けるため、効果の起動にはリスクが伴います。しかし、現在のスタンダードには非常に相性の良いカードが存在しているのです。それが《不詳の安息地》です。
クリーチャー化すればすべてのクリーチャータイプを有することから無論天使でもあり、またターン終了時には土地に戻るため、《高貴なる行いの書》の対象に取ることに成功してしまえば、その対処手段は非常に限定的なものとなります。一度このコンボが成立してしまえば、自分のライフが0になろうがライブラリーが0枚になろうが、決して敗北することはなく、対戦相手のデッキに対処手段が無ければそのままライブラリーアウトで勝利することができます。
このコンボの存在から、いくつかのデッキは《廃墟の地》や《浄化の野火》のような専用の対処手段を採用し、意識することを求められています。またスゥルタイ根本原理は《キオーラ、海神を打ち倒す》のⅢ章効果により土地カードである《不詳の安息地》を奪ってしまうことができ、メインデッキ時点で不死コンボを破れる数少ないデッキです。
その他、コンボ成立後は対処が難しいとはいえ、9マナを要する行動のため、スピードで押せるアグロデッキなどは明確な対処手段を持たずとも問題がないケースもあります。
《群れ率いの人狼》、《裕福な亭主》、《レンジャー・クラス》
秋のスタンダードローテーションを控えた今、使用可能なカードプールは最大限まで広がっており、デッキ構築において非常に多様な選択肢が提供されています。しかしながら、2マナ域の選択肢だけはやや物足りない傾向があり、その関係上、カラーリング次第でデッキの強弱が決まってしまうことも少なくありませんでした。強力なデッキは最序盤の要である2マナ以下のアクションがしっかりしたものばかりです。
特に緑を使ったアグロデッキはその選択肢の乏しさから《エッジウォールの亭主》や《恋煩いの野獣》といったいわゆる「アドベンチャー・パッケージ」に序盤を委ねてしまうケースがほとんどでした。
しかし今回、その緑のアグロデッキはなんと一気に3種もの優良2マナカードを獲得しました。
《群れ率いの人狼》は色拘束こそ強いものの、2マナ3/3という破格のパワー/タフネスを持ち、「集団戦術」効果によりアドバンテージをももたらす優れものです。
《裕福な亭主》は宝物・トークン生成によるマナブースト能力および「人間ではないクリーチャー」という2点が《軍団のまとめ役、ウィノータ》と抜群の相性を発揮しており、これを中心としたデッキを一気に強化しました。
そして追加された2マナ戦力の中でも最も将来性を感じさせるのが《レンジャー・クラス》です。このカードは色拘束の薄さからあらゆるデッキでの採用が見込まれる上、序盤・中盤・終盤とすべてのゲーム展開で活躍を見込める効果を内包しています。
《バグベアの居住地》、《ハイドラの巣》
最後に、各色がミシュラランド(クリーチャー化する土地)を獲得。マジックにおけるクリーチャー化できる土地というものは非常に強力で、見た目以上の効力を発揮します。最序盤はマナとして、中盤から終盤にかけてはクリーチャー戦力として運用できるわけですから、リソース面で優位に立ちやすくなります。ゲーム後半はどうしてもマナが余りがちですから、余った土地が対戦相手のクリーチャーや除去カードと交換になったり、そのまま対戦相手のライフを削り切ったりするような展開を考えるとわかりやすいかと思います。単純に手札が1枚増えているようなものです!
これまでは氷雪土地を採用できる一部のデッキのみが《不詳の安息地》を使用できていました。今回追加されたミシュラランドはその制約がなくなったため、氷雪土地を採用しづらかった2色や3色のアグロデッキが大幅に強化されています。今後のスタンダードシーンにおいてもまず間違いなく使われ続けることでしょう。
さて、これらの前提のもと、いつも通り直近で行われたトーナメントの結果を見ていきましょう。
日本選手権2021 SEASON2本戦
新環境の幕開けとして早速ビッグトーナメントが開催されました。日本選手権2021 SEASON2本戦です。結果は以下の通りとなっています。
上位入賞デッキ
優勝 | グルール・アドベンチャー |
準優勝 | ナヤ・ウィノータ |
3位 | スゥルタイ根本原理 |
4位 | ナヤ・ウィノータ |
5位 | ジェスカイ変容 |
6位 | ナヤ・ウィノータ |
7位 | ナヤ・ウィノータ |
8位 | 緑単アグロ |
見事優勝を果たしたのは古豪・廣澤遊太選手。おめでとうございます!
グルール・アドベンチャー
その廣澤選手が用いたのが『エルドレインの王権』リリース以降常にトーナメントシーンに存在し続けた、こちらも現スタンダードの古豪である「グルール・アドベンチャー」です。こちらのデッキは私原根が個人で行っている配信内で作成したものを廣澤選手に気に入っていただき、使っていただけたものとなっています。これは嬉しいですね! せっかくなのでみっちり解説していきます!(参考:配信アーカイブ)
9 《森》 2 《山》 4 《岩山被りの小道》 2 《ハイドラの巣》 4 《バグベアの居住地》 -土地(21)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《ヤスペラの歩哨》 4 《厚顔の無法者、マグダ》 2 《リムロックの騎士》 4 《砕骨の巨人》 4 《恋煩いの野獣》 3 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(25)- |
4 《レンジャー・クラス》 4 《髑髏砕きの一撃》 3 《エシカの戦車》 3 《エンバレスの宝剣》 -呪文(14)- |
2 《運命の神、クローティス》 2 《アゴナスの雄牛》 2 《レッドキャップの乱闘》 3 《バーニング・ハンズ》 2 《乱動する渦》 2 《轟く叱責》 2 《アクロス戦争》 -サイドボード(15)- |
『フォーゴトン・レルム探訪』からの新戦力は前述の《レンジャー・クラス》と、ミシュラランド2種、それにサイドボードの《バーニング・ハンズ》です。
《レンジャー・クラス》は「グルール・アドベンチャー」が求めて止まなかったカードです。このデッキは2マナ域の乏しさがネックであり、《リムロックの騎士》のような展開次第でムラのあるカードを4枚採用するしかないほどに選択肢が限られていましたが、今回ようやく汎用的な2マナ域を獲得したことで、攻守両面が強化されました。また後述のミシュラランドと合わせて「グルール・アドベンチャー」が課題としていたマナフラッド対策になっているのもポイントです。
新環境にて「グルール・アドベンチャー」を押し上げたもうひとつの理由になるのが、このミシュラランドたちです。これまで「グルール・アドベンチャー」というデッキがトップに立ち切れない理由はいくつかあり、その内訳のほとんどが「マナフラッドを起こした際、何もすることが無い」というものでした。
このデッキは《ヤスペラの歩哨》と《厚顔の無法者、マグダ》という最序盤のマナブースト手段を採用しており、4マナ以上の強力なカードを早いターンにプレイするというコンセプトを持っているのですが、逆に中盤以降はマナが余り過ぎてしまうという問題点がありました。
また《黄金架のドラゴン》も5マナ4/4飛行速攻というハイパフォーマンスを目的に採用されていますが、生み出される宝物・トークンはそれほど有効活用できないという歯痒さがありました。
ミシュラランドはこうして余ったマナの使い道には最適な存在であり、「むしろ余れば余るだけ良く、その分ゲーム終盤の詰めが強くなる」という最高の受け入れ先でした。このデッキのミシュラランドは、おそらく現存する環境のデッキの中でも最大値となる6枚もの枚数が採用されています。
また《バグベアの居住地》から生み出されるトークンが1/1である点に加え、《ハイドラの巣》をX=1で起動することで《恋煩いの野獣》が恋に落ちる対象が増えました。人間・トークンと引き離されてしまうことで攻撃に向かえない悲しい展開は「グルール・アドベンチャー」にとってよくあるものでしたが、ミシュラランドはこの問題も解決しており、これには野獣くんも大歓喜であります。
サイドボードの《バーニング・ハンズ》は非常に使い勝手の良い除去で、これまで手を焼いていたサイズの大きな緑のクリーチャー、例えばアグロデッキの《水晶壊し》《恋煩いの野獣》、コントロールデッキの《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》《長老ガーガロス》《星界の大蛇、コーマ》といった強力なクリーチャーたちをわずか2マナ、さらにインスタントタイミングで対処できてしまう優れものです。今後のスタンダードシーンでも間違いなく使われる利便性の高いサイドカードですね。
新セットが追加されたことで既存デッキのスロットが13枚も変更されるケースは非常に珍しく、文字通りの大幅強化となり、見事優勝を果たしています。
ナヤ・ウィノータ
『イコリア:巨獣の住処』リリース以降、さまざまな形が試されてきた《軍団のまとめ役、ウィノータ》を主役としたデッキですが、今環境に入ってからはナヤのカラーリングが定番となりました。そして今大会ではトップ8のうち半数に該当する4名を送り込んでおり、明確な勝ち組デッキとなっています。その中でも多種多様なリストが存在するため、ひとつひとつを紹介していきたいと思います。
3 《森》 3 《平地》 1 《山》 4 《枝重なる小道》 4 《岩山被りの小道》 4 《針縁の小道》 3 《寓話の小道》 -土地(22)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《巨人落とし》 4 《ヤスペラの歩哨》 2 《クラリオンのスピリット》 2 《絡みつく花面晶体》 4 《砕骨の巨人》 4 《精鋭呪文縛り》 4 《恋煩いの野獣》 4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》 2 《帰還した王、ケンリス》 -クリーチャー(34)- |
2 《レンジャー・クラス》 1 《カビーラの叩き伏せ》 1 《エシカの戦車》 -呪文(4)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 3 《ドラニスの判事》 2 《水晶壊し》 3 《レッドキャップの乱闘》 1 《魂標ランタン》 2 《引き裂き》 1 《火の予言》 1 《乱動する渦》 1 《アクロス戦争》 -サイドボード(14)- |
まず準優勝された二俣洋次郎選手のリストです。アドベンチャー・パッケージをベースにしたもので、「ナヤ・アドベンチャー」と非常に類似した構造をしています。他のリストが採用している《刃の歴史家》も採用しておらず、《軍団のまとめ役、ウィノータ》に頼らずともしっかりと戦っていける、ミッドレンジ的な構造を取っています。
2 《森》 2 《平地》 2 《山》 4 《枝重なる小道》 4 《岩山被りの小道》 4 《針縁の小道》 2 《ハイドラの巣》 1 《バグベアの居住地》 4 《寓話の小道》 -土地(25)- 3 《ヤスペラの歩哨》 4 《厚顔の無法者、マグダ》 4 《裕福な亭主》 4 《砕骨の巨人》 4 《精鋭呪文縛り》 1 《敬愛されるレンジャー、ミンスク》 4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》 2 《刃の歴史家》 2 《帰還した王、ケンリス》 -クリーチャー(28)- |
2 《レンジャー・クラス》 4 《エシカの戦車》 1 《怪物の代言者、ビビアン》 -呪文(7)- |
1 《運命の神、クローティス》 2 《アゴナスの雄牛》 3 《レッドキャップの乱闘》 2 《巻き添え》 2 《バーニング・ハンズ》 2 《レンジャー・クラス》 2 《乱動する渦》 1 《引き裂き》 -サイドボード(15)- |
次に4位入賞の正松本裕司選手のリストです。こちらは《ヤスペラの歩哨》《裕福な亭主》《厚顔の無法者、マグダ》といったマナブースト手段が豊富に採用されており、最序盤の展開およびコンボに比重を置いたリストです。
4枚採用された《エシカの戦車》はデッキとのシナジーが非常に良く、《軍団のまとめ役、ウィノータ》の効果を誘発させるためのクリーチャーを3体同時に展開することができます。ウィノータ自身が戦車に乗り込むことで搭乗コストもピッタリですから、驚くほど綺麗にデッキにマッチしています。
1 《森》 2 《平地》 1 《山》 4 《枝重なる小道》 2 《豊潤の神殿》 4 《岩山被りの小道》 4 《針縁の小道》 2 《バグベアの居住地》 3 《寓話の小道》 -土地(23)- 3 《無私の救助犬》 4 《裕福な亭主》 4 《絡みつく花面晶体》 2 《水蓮のコブラ》 4 《精鋭呪文縛り》 2 《砕骨の巨人》 1 《敬愛されるレンジャー、ミンスク》 4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》 3 《刃の歴史家》 2 《帰還した王、ケンリス》 -クリーチャー(29)- |
2 《レンジャー・クラス》 4 《エシカの戦車》 2 《怪物の代言者、ビビアン》 -呪文(8)- |
2 《巨人落とし》 2 《傑士の神、レーデイン》 2 《スカイクレイブの亡霊》 1 《運命の神、クローティス》 1 《秘密を知るもの、トスキ》 2 《レッドキャップの乱闘》 2 《バーニング・ハンズ》 1 《レンジャー・クラス》 1 《乱動する渦》 1 《アクロス戦争》 -サイドボード(15)- |
6位および7位入賞の堀江徹選手および西悠太郎選手は同一のリストを使用しています。《水蓮のコブラ》は《裕福な亭主》に加えて3ターン目の《軍団のまとめ役、ウィノータ》という最大値を高めるクリーチャーです。また《寓話の小道》を採用している都合、時として凄まじい爆発力を見せてくれます。
その他、《ヤスペラの歩哨》の代わりに採用されている《無私の救助犬》はウィノータを除去から守り、能力の誘発も担う、コンボを意識する上では非常に噛み合いの良いクリーチャーです。
『フォーゴトン・レルム探訪』ではデッキに合った非人間クリーチャーが多く追加されています。特に《裕福な亭主》はコンボターンを早めると同時に、3色デッキが抱える色マナの問題を宝物・トークンが緩和してくれます。個人的にこのアーキタイプを伸ばした一番の要因だと考えています。
またここでもミシュラランドたちは登場します。クリーチャー化した際は非人間であるため《軍団のまとめ役、ウィノータ》の起動に役立ちますし、もちろんマナフラッドの解消手段にもなります。乗り手が不足した《エシカの戦車》も動き出すことでしょう。
《寓話の小道》のために最小限の基本土地は採用していますが、同じ種類の基本土地は原則3枚以上必要ないため、特定の色マナを追加したい場合、3色のアグロデッキにおいてもミシュラランドが採用される傾向になっていくものと思われます。
緑単アグロ
「緑単アグロ」はこの大会が始まる前の時点では大本命と評されるデッキでした。SNSなどで緑単アグロを用いて好成績を報告するプレイヤーは多くいました。《群れ率いの人狼》や《レンジャー・クラス》といったカード追加の恩恵をわかりやすく受けられたのが大きかったでしょう。
20 《冠雪の森》 4 《不詳の安息地》 -土地(24)- 4 《群れのシャンブラー》 4 《群れ率いの人狼》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《恋煩いの野獣》 4 《水晶壊し》 2 《探索する獣》 4 《石とぐろの海蛇》 -クリーチャー(26)- |
2 《蛇皮のヴェール》 4 《レンジャー・クラス》 4 《原初の力》 -呪文(10)- |
2 《漁る軟泥》 4 《ガラクの先触れ》 1 《探索する獣》 2 《吹雪の乱闘》 1 《巻き添え》 1 《蛇皮のヴェール》 2 《強行突破》 2 《解き放たれた者、ガラク》 -サイドボード(15)- |
1マナ域から順次クリーチャーを展開していき、《吹雪の乱闘》や《原初の力》を交えて押し込んでいく、実に緑単色らしい戦い方を取ります。
これまではややカードが不足しており、《漁る軟泥》のようなメインにそれほど多く採用したくないカードや格闘呪文を過剰に採用する他なかったのですが、《群れ率いの人狼》および《レンジャー・クラス》の追加により、汎用的なスロットが十分過ぎるほどに確保されました。デッキパワーも高く、非常に人気のあるデッキタイプです。
しかしその分、今大会および後述のSCG Tour Onlineでは明確に意識される対象となってしまい、厳しい戦いを余儀なくされました。トップ8に残ったプレイヤーの対緑単アグロの総合成績は11勝0敗となっており、「緑単アグロには負けないようにする」という強い意志が感じられます。
単色アグロは安定した動きが魅力のデッキですが、意識されると脆いという欠点を抱えています。環境初期の大会でありながら既にメタゲームの動きが発生しており、近頃のメタゲームの速さには驚かれます。
ジェスカイ変容
4 《島》 2 《山》 4 《ラウグリンのトライオーム》 4 《河川滑りの小道》 4 《連門の小道》 4 《針縁の小道》 -土地(22)- 4 《伝承のドラッキス》 4 《雷の頂点、ヴァドロック》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(12)- |
4 《棘平原の危険》 4 《表現の反復》 4 《非実体化》 2 《火の予言》 1 《バーニング・ハンズ》 1 《否認》 1 《セジーリの防護》 4 《戦利品奪取》 3 《プリズマリの命令》 2 《神秘の論争》 -呪文(26)- |
2 《灰のフェニックス》 2 《赦免のアルコン》 2 《レッドキャップの乱闘》 3 《精神迷わせの秘本》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《焦熱の竜火》 1 《バーニング・ハンズ》 1 《燃えがら地獄》 -サイドボード(15)- |
上位入賞デッキの最後は「ジェスカイ変容」です。『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップにて彗星のごとくトーナメントシーンに現れたこのデッキは、以降も進化を続け環境に残っています。残念ながら『フォーゴトン・レルム探訪』にて得られた新戦力は特にありませんが、環境上のポジションが悪くなく、今後も活躍が見込めるアーキタイプのひとつだと思っています。
今後トーナメントで活躍しそうな「グルール・アドベンチャー」および「ナヤ・ウィノータ」に対し有効な対応手段を持っていることがその理由です。どちらのデッキも攻めに比重を置いたデッキであるため「ジェスカイ変容」のコンボギミックを受けきることは難しく、逆に「ジェスカイ変容」側は上記のメタカードを無理なく採用できる点に伸び代を感じます。
また「ナヤ・ウィノータ」や「グルール・アドベンチャー」の攻勢を凌ぐ際、単一で複数体の脅威を展開できる《エシカの戦車》がネックになりやすく、「スゥルタイ根本原理」などは特にこれに苦しめられます。しかし、「ジェスカイ変容」には《プリズマリの命令》があり、無理なくこのカードを対処することが可能で、カラーリングの優位性が発揮できると考えており、今後注目のデッキです。
$5K SCG Tour Online Championship Qualifier
そして上記日本選手権のわずか数時間後には、本連載でおなじみのSCG Tour Online Championship Qualifierも開催されました。今大会は日本選手権の結果の影響を強く受けており、上記で活躍したデッキをそのまま使用するプレイヤーも多くいました。結果は以下の通りです。
上位入賞デッキ
優勝 | ナヤ・ウィノータ |
準優勝 | グルール・アドベンチャー |
3位 | ジェスカイ変容 |
4位 | グルール・アドベンチャー |
5位 | ティムール・アドベンチャー |
6位 | ナヤ・ウィノータ |
7位 | ジェスカイ変容 |
8位 | スゥルタイ根本原理 |
9位 | ナヤ・ウィノータ |
10位 | グルール・アドベンチャー |
11位 | ティムール・アドベンチャー |
12位 | ティムール・アドベンチャー |
ほとんど変わらずのメタゲームおよび上位入賞デッキの姿が見られますが、一点だけ違いがありますので、そちらをご紹介します。
ティムール・アドベンチャー
2 《島》 1 《森》 2 《山》 4 《ケトリアのトライオーム》 4 《樹皮路の小道》 4 《河川滑りの小道》 1 《天啓の神殿》 4 《岩山被りの小道》 1 《ハイドラの巣》 3 《寓話の小道》 -土地(26)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《砕骨の巨人》 4 《厚かましい借り手》 4 《恋煩いの野獣》 3 《ラノワールの幻想家》 2 《星界の大蛇、コーマ》 -クリーチャー(21)- |
2 《軽蔑的な一撃》 2 《火の予言》 1 《狼柳の安息所》 2 《アクロス戦争》 1 《髑髏砕きの一撃》 1 《エシカの戦車》 4 《銅纏いののけ者、ルーカ》 -呪文(13)- |
1 《運命の神、クローティス》 4 《黄金架のドラゴン》 3 《レッドキャップの乱闘》 2 《バーニング・ハンズ》 1 《否認》 1 《才能の試験》 1 《萎れ》 2 《神秘の論争》 -サイドボード(15)- |
日本選手権では奮いませんでしたが、このデッキもまた「緑単アグロキラー」のデッキです。アドベンチャー・パッケージを中心とした強固なクリーチャー陣に加え、緑単アグロでは対処が困難な《星界の大蛇、コーマ》を必殺技として持っています。
ソーサリータイミングの格闘呪文が主な干渉手段である「緑単アグロ」では、このカードをプレイされてしまうとたちまち盤面が崩壊してしまいます。このSCGではデッキ使用率も「ティムール・アドベンチャー」が最多であり、メタ対象の緑単よりも多いという、メタゲーム志向の強いプレイヤーが多かったことが窺い知れます。
このデッキは「緑単アグロ」に対しては極めて強いのですが、1つ問題があります。同じアグロデッキでも、相手デッキのカラーリングに赤が含まれていると《星界の大蛇、コーマ》の対処手段が一気に増えてしまうのです。上記2つのトーナメントでの勝ち組デッキは「グルール・アドベンチャー」および「ナヤ・ウィノータ」であり、これらのデッキには《星界の大蛇、コーマ》を対処可能な《バーニング・ハンズ》《アクロス戦争》がしっかりと採用されています。
一度《星界の大蛇、コーマ》を対処されても《銅纏いののけ者、ルーカ》が戦場に残るため、盤面を崩されなければもう一度《星界の大蛇、コーマ》を呼び出すことは可能ですが、「グルール・アドベンチャー」も「ナヤ・ウィノータ」も非常に攻撃力が高いデッキのため、コンボを達成した上で盤面を掌握し続けるのは至難の業です。
《バーニング・ハンズ》が環境に与えた影響は大きく、これまで赤いデッキで対処の難しかった《恋煩いの野獣》《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》《長老ガーガロス》《星界の大蛇、コーマ》といったクリーチャー群の信頼性が変化しつつあります。今後はこれらのクリーチャーに対する考えを改めていく必要があることでしょう。
総括
前評判では新戦力をわかりやすい形で取り入れることのできた「緑単アグロ」が本命と思われていましたが、意識の対象となってしまったことから思うように成果が挙げられず、その裏で着々と力を付けていた「ナヤ・ウィノータ」が最前線に躍り出た格好となっています。
一方で、日本選手権を優勝したのは『フォーゴトン・レルム探訪』の新戦力をふんだんに取り入れた「グルール・アドベンチャー」であり、SCG Tour Onlineにおいても同リストが準優勝およびトップ4の好成績を収めています。今セットで追加されたミシュラランドはこれまで《不詳の安息地》を使用することができなかった2色以上のアグロデッキを大幅に強化し得る要素なので、今後も注目が集まるカードとなるでしょう。
またサイドカードである《バーニング・ハンズ》も環境への影響度が高く、2マナ6点という火力はこれまでにない規格外の数値です。カード採用に明確に影響を与えるレベルのカードだと言えるでしょう。日本選手権のトップ8入賞者のうち5名が使用していることから、デッキの垣根を越え最も使用されている新セットのカードとも言えます。
今回は以上となります。
いかがでしたでしょうか? 秋のローテーションを控え、『エルドレインの王権』期のスタンダードもいよいよ終盤に差し掛かっていますが、この『フォーゴトン・レルム探訪』によりスタンダードには変化が生じ続けています。相変わらずデッキの種類も多く、最も使用者が多いデッキの割合も20%を下回るようになりました。まだまだ遊び尽くせる環境だと思いますので、ぜひ好きなデッキで新環境にトライしてみください!
それではまた次回。
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