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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第7回:『ストリクスヘイヴン:魔法学院』によるアップデート
皆さんこんにちは。スタンダード連載担当の原根(@jspd_)です。
今回の連載は新セットである『ストリクスヘイヴン:魔法学院』リリース後のスタンダード環境を取り扱っていきます!
『カルドハイム』期のスタンダードは実にバランスの取れた環境であり、トーナメントレベルのデッキが10個近く存在する均衡した状況でした。今セットが追加されたことでどのような変化が生じたのかを、直近の大型イベントの結果を基にご紹介します。どうぞ最後までお付き合いください。
4月25日開催「SCG Tour Online $5K Strixhaven Championship Qualifier」
本連載お馴染みの「SCG Tour Online」が『ストリクスヘイヴン:魔法学院』リリース後にも早速スタンダードイベントを開催してくれています。規模も大きくレベルの高いトーナメントであるため、分析を行うには最適のイベントとなっています。まずは上位デッキを確認していきましょう。
上位入賞デッキ
順位 | アーキタイプ |
---|---|
優勝 | ディミーア・ローグ |
準優勝 | グルール・アドベンチャー |
3位 | ジェスカイ・サイクリング |
4位 | スゥルタイ根本原理 |
5位 | ナヤ・アドベンチャー |
6位 | ラクドス・サクリファイス |
7位 | ティムール・アドベンチャー |
8位 | スゥルタイ根本原理 |
9位 | スゥルタイ根本原理 |
10位 | スゥルタイ根本原理 |
11位 | ジェスカイ・サイクリング |
12位 | 白単アグロ |
メタゲームブレイクダウン上位(278名参加)
使用者 | 割合 | アーキタイプ |
---|---|---|
52 | 19% | スゥルタイ根本原理 |
37 | 13% | ティムール・アドベンチャー |
26 | 9% | 赤単アグロ |
24 | 9% | グルール・アドベンチャー |
20 | 7% | 白単アグロ |
18 | 6% | ディミーア・ローグ |
13 | 5% | ナヤ・アドベンチャー |
今回もトップ12に8つのアーキタイプが名を連ねる結果となり、引き続きバランスの取れた環境となっています。「スゥルタイ根本原理」は最も使用者が多く、かつトップ12に最多の人数を輩出していますが、結果それに強い「ディミーア・ローグ」が優勝を果たすなど、すでにメタゲームが生じているのがわかります。
ここからは実際に『ストリクスヘイヴン:魔法学院』で各デッキにどのようなアップデートがかかっているのかを見ていきましょう。
「ディミーア・ローグ」
6 《島》 3 《沼》 3 《欺瞞の神殿》 4 《清水の小道》 3 《ゼイゴスのトライオーム》 1 《ロークスワイン城》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《マーフォークの風泥棒》 4 《遺跡ガニ》 4 《盗賊ギルドの処罰者》 4 《空飛ぶ思考盗み》 -クリーチャー(16)- |
4 《湖での水難》 2 《取り除き》 2 《無情な行動》 1 《軽蔑的な一撃》 2 《神秘の論争》 2 《心を一つに》 1 《無礼の罰》 4 《物語への没入》 2 《アガディームの覚醒》 -呪文(20)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 3 《スカイクレイブの影》 2 《塵へのしがみつき》 2 《死の重み》 1 《魂標ランタン》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《才能の試験》 1 《神秘の論争》 3 《激しい恐怖》 -サイドボード(14)- |
まず優勝デッキである「ディミーア・ローグ」ですが、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のカードはサイドボードの《才能の試験》1枚のみとなっています。「ディミーア・ローグ」は現時点で非常に完成されたデッキであることに加え、「クリーチャーを原則ならず者に統一する」「対戦相手のデッキを切削する必要がある」「《夢の巣のルールス》を相棒にする都合、マナ総量3以上のパーマネントは採用できない」といった制約があります。デッキの大部分が固定されているため、基本的には現状より優れた打ち消し・除去・ドロー呪文か土地カードが追加されない限り強化は難しいでしょう。
1枚の採用ではありますが「ディミーア・ローグ」が苦手としていた「ジェスカイ・サイクリング」の《天頂の閃光》を恒久的に対処できる《才能の試験》は優れたカードです。その他「スゥルタイ根本原理」の《出現の根本原理》など、特定のソーサリー・インスタント呪文に寄せたデッキ相手のキラーカードとなり得るため、今後期待の戦力です。「ディミーア・ローグ」以外のデッキでも見かけることになるでしょう。
「ジェスカイ・サイクリング」
1 《島》 1 《山》 1 《平地》 4 《河川滑りの小道》 4 《連門の小道》 4 《針縁の小道》 4 《ラウグリンのトライオーム》 -土地(19)- 4 《繁栄の狐》 4 《ドラニスの刺突者》 4 《雄々しい救出者》 4 《アイレンクラッグの紅蓮術師》 -クリーチャー(16)- |
4 《血の希求》 4 《型破りな協力》 4 《驚くべき発育》 2 《軽蔑的な一撃》 4 《天頂の閃光》 3 《霜帳の奇襲》 4 《願い与えの加護》 -呪文(25)- |
2 《常智のリエール》 3 《レッドキャップの乱闘》 3 《否認》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《ガラスの棺》 2 《プリズマリの命令》 1 《神秘の論争》 -サイドボード(15)- |
こちらもサイドボードの追加ではありますが、《才能の試験》同様、苦手マッチアップを克服できる可能性のある新戦力です。現在のアグロデッキは《エンバレスの宝剣》を用いたものが中心となっており、「ジェスカイ・サイクリング」はこのカードを苦手としていました。《プリズマリの命令》は同カードとタフネス2以下のクリーチャーを同時に対処し、アドバンテージをもたらします。その他、手札入れ替え効果や宝物生成効果も状況に応じて十分選択し得るものであり、サイクリング・デッキが陥りやすいマナトラブル問題を脱したり、《天頂の閃光》による勝利ターンの短縮に繋げたり、どのモードも有用です。
今回追加された5つの「命令」は癖の強いものが多いのですが、《プリズマリの命令》はその中でも最も汎用性が高く、今後も使われる可能性の高い1枚です。
「スゥルタイ根本原理」
2 《沼》 3 《森》 3 《島》 3 《疾病の神殿》 4 《闇孔の小道》 4 《清水の小道》 4 《樹皮路の小道》 4 《ゼイゴスのトライオーム》 1 《ケトリアのトライオーム》 4 《寓話の小道》 -土地(32)- 1 《嘘の神、ヴァルキー》 1 《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》 1 《クアンドリクスの栽培者》 2 《長老ガーガロス》 1 《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》 -クリーチャー(6)- |
4 《海の神のお告げ》 4 《狼柳の安息所》 3 《取り除き》 3 《無情な行動》 2 《ジュワー島の撹乱》 2 《ウィザーブルームの命令》 1 《精神迷わせの秘本》 4 《耕作》 2 《神秘の論争》 1 《エルズペスの悪夢》 1 《ペラッカの捕食》 4 《古き神々への拘束》 2 《絶滅の契機》 2 《影の評決》 4 《出現の根本原理》 2 《アールンドの天啓》 2 《海門修復》 1 《キオーラ、海神を打ち倒す》 -呪文(44)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 2 《悪意に満ちた者、ケアヴェク》 2 《長老ガーガロス》 2 《星界の大蛇、コーマ》 3 《強迫》 2 《否認》 1 《無情な行動》 1 《ウィザーブルームの命令》 1 《神秘の論争》 -サイドボード(14)- |
トップ12に最多4名を輩出した「スゥルタイ根本原理」ですが、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のカードがふんだんに使われていますので、1つ1つご紹介していきます。
まずは《ウィザーブルームの命令》です。4つのモードを持ちますが、基本的には「土地かクリーチャー以外のマナ総量2以下のパーマネントを破壊」か「対象のクリーチャーに-3/-1修整」がメインの効果となります。前者は「ジェスカイ・サイクリング」の《型破りな協力》や「スゥルタイ根本原理」の《狼柳の安息所》・《精神迷わせの秘本》、赤いアグロデッキの《乱動する渦》が該当し、後者はアグロデッキ全般が用いる低マナ域のクリーチャーがターゲットになります。特に「白単アグロ」が用いる《歴戦の神聖刃》は格好の標的でしょう。
これらに加え、「3枚切削し、土地・カードを墓地から手札に加える」と「自身は2点ライフを得て、対戦相手は2点失う」があります。後者はアグロデッキにライフを攻められている際に有効で、それ以外のシチュエーションでは前者を選択することになるでしょう。少しわかりにくいかもしれませんが、以下のような運用がメインです。
- アグロデッキのタフネス1クリーチャーを対処しつつライフ回復
- コントロールデッキのパーマネントを破壊しつつ土地カードを回収してアドバンテージ獲得
最大限の効力を得られる状況は限定的ですが、2マナという軽さで最大1対2交換を実現できる可能性があり、今後も使用される可能性は十分にある1枚です。
次に《クアンドリクスの栽培者》です。こちらは至ってシンプルな効果で、戦場に出たときのマナブースト能力を持っています。似たような効果を持つ《真面目な身代わり》がすでにスタンダードには存在していますが、こちらはあまり採用されることがありませんでした。
両者の決定的な違いはサイズにあり、《クアンドリクスの栽培者》はアグロデッキ相手に優れたブロッカーになります。《真面目な身代わり》は1枚ドロー効果こそ有するものの、赤いアグロデッキの繰り出す《霜嚙み》《砕骨の巨人》に弱く、本来腐りやすい除去カードを有効に使わせてしまうデメリットが目立ちました。
3/4というサイズはそのどちらも受け付けないため、信頼のおけるブロッカーです。一度戦場に残れば《空を放浪するもの、ヨーリオン》で再利用でき、強固な盤面を形成することが可能です。
最後にこちらのリストには入っていませんでしたが、新たにこのスゥルタイ根本原理に採用され始めたリリアn……《オニキス教授》についても紹介しておきましょう。高コスト&単色の呪文ということで《出現の根本原理》の新たな選択肢として迎え入れられています。
強力な奥義を持つため《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》との合わせ技が強力で、《星界の騙し屋、ティボルト》と組み合わせることで無慈悲な三択を突き付けることが可能です。《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》が除去されそうな場合は《アールンドの天啓》を選択することでプレインズウォーカー定着&2回の起動が可能となり、これもまた強力な選択に。プレインズウォーカーが1種類追加されるだけでも力強さが段違いとなりました。
「ナヤ・アドベンチャー」「白単アグロ」
2 《山》 3 《森》 2 《平地》 4 《岩山被りの小道》 4 《針縁の小道》 4 《枝重なる小道》 4 《寓話の小道》 -土地(23)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《巨人落とし》 4 《ヤスペラの歩哨》 4 《クラリオンのスピリット》 4 《砕骨の巨人》 4 《精鋭呪文縛り》 4 《恋煩いの野獣》 2 《秘密を知るもの、トスキ》 -クリーチャー(30)- |
3 《カビーラの叩き伏せ》 4 《スカルドの決戦》 -呪文(7)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 2 《ドラニスの判事》 3 《傑士の神、レーデイン》 2 《運命の神、クローティス》 1 《レッドキャップの乱闘》 2 《引き裂き》 2 《乱動する渦》 2 《轟く叱責》 -サイドボード(14)- |
20 《冠雪の平地》 4 《不詳の安息地》 -土地(24)- 4 《命の恵みのアルセイド》 4 《巨人落とし》 4 《無私の救助犬》 4 《光輝王の野心家》 4 《歴戦の神聖刃》 2 《ドラニスの判事》 4 《精鋭呪文縛り》 4 《スカイクレイブの亡霊》 2 《傑士の神、レーデイン》 1 《夢の巣のルールス》 2 《軍団の天使》 -クリーチャー(35)- |
1 《スカイクレイブの大鎚》
-呪文(1)- |
1 《ドラニスの判事》 1 《夢の巣のルールス》 1 《傑士の神、レーデイン》 2 《赦免のアルコン》 2 《軍団の天使》 2 《トーモッドの墓所》 3 《ガラスの棺》 1 《払拭の光》 2 《影槍》 -サイドボード(15)- |
方向性の異なる2つのデッキですが、共通の強化がなされています。今セットの目玉カードの1つである、「PV」こと《精鋭呪文縛り》の追加です。
世界選手権2019優勝者であるパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo Da Rosa選手のプレイヤー・スポットライト・カードです。
前回のプレイヤー・スポットライト・カードである《熱烈な勇者》(ハビエル・ドミンゲス/Javier Domínguez選手がモデル)も非常に強力なカードで、長きに渡りスタンダードシーンの赤系アグロデッキを支えていますが、このカードも十分期待できるポテンシャルを持っています。3マナ3/1飛行と攻撃性のあるサイズに加え、対戦相手の手札に干渉する能力を持ちます。対戦相手が次に唱えるつもりであったカードを対象に取ることで理想的な動きを妨害することが可能になりますし、白系のアグロデッキが苦手としていた《絶滅の契機》や《影の評決》のような全体除去のプレイターンを大きく遅らせることができます。
追放した呪文は2マナ追加することでいつかはプレイできるようになるため、完全な手札破壊ではない点に注意する必要があります。基本的には「相手の行動を遅らせ、その間に自分の展開を進める」ためのカードです。
以上がトップ12入賞デッキのアップデートです。この他、惜しくもトップ12を逃しはしたものの、トーナメントにおいて好成績を残したデッキのいくつかをご紹介します。
「赤単アグロ」
19 《冠雪の山》 2 《エンバレス城》 4 《不詳の安息地》 -土地(25)- 4 《熱烈な勇者》 3 《火刃の突撃者》 3 《講堂の監視者》 4 《義賊》 2 《リムロックの騎士》 4 《鍛冶で鍛えられしアナックス》 4 《砕骨の巨人》 3 《朱地洞の族長、トーブラン》 -クリーチャー(27)- |
4 《霜噛み》 4 《エンバレスの宝剣》 -呪文(8)- |
2 《灰のフェニックス》 2 《アゴナスの雄牛》 2 《レッドキャップの乱闘》 1 《猛火の斉射》 2 《乱動する渦》 2 《焦熱の竜火》 2 《魂焦がし》 2 《アクロス戦争》 -サイドボード(15)- |
「赤単アグロ」における『ストリクスヘイヴン:魔法学院』での強化ポイントは《講堂の監視者》です。1マナのクリーチャーにありながら、同デッキの天敵である《恋煩いの野獣》《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》《長老ガーガロス》などを突破することが可能で、数枚が採用されています。特に少数精鋭のクリーチャーにブロッカーを寄せている「スゥルタイ根本原理」にはより一層強く立ち回ることが可能になりました。
「イゼット・ミッドレンジ」
5 《冠雪の島》 4 《冠雪の山》 4 《移り変わるフィヨルド》 4 《河川滑りの小道》 4 《不詳の安息地》 4 《寓話の小道》 -土地(25)- 4 《砕骨の巨人》 4 《厚かましい借り手》 3 《ガラゼス・プリズマリ》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(15)- |
4 《霜噛み》 4 《表現の反復》 2 《神秘の論争》 2 《襲来の予測》 4 《アールンドの天啓》 4 《マグマ・オパス》 -呪文(20)- |
2 《アゴナスの雄牛》 3 《レッドキャップの乱闘》 3 《火の予言》 2 《才能の試験》 1 《軽蔑的な一撃》 2 《神秘の論争》 2 《アクロス戦争》 -サイドボード(15)- |
これまでのイゼット・デッキは打ち消し呪文を多く搭載した「イゼット・テンポ」でしたが、『ストリクスヘイヴン:魔法学院』で追加されたカードによりその性質は大きく変化しました。《黄金架のドラゴン》+打ち消し呪文という勝ちパターンは意識しつつも、《表現の反復》に代表されるように能動的なアクションが多く追加されています。
今回追加された《ガラゼス・プリズマリ》は《黄金架のドラゴン》と「宝物・トークン」の繋がりでシナジーを形成し、高速の《マグマ・オパス》プレイに繋がるなど強力な動きも有しています。
環境にさまざまな種類のデッキが存在する都合、そのすべてに対応するのは困難であるため、デッキ構造に攻撃性を持たせ「最小限の妨害をバックアップに攻め切る」アップデートが施されています。
「ボロス・ウィノータ」
9 《平地》 5 《山》 4 《怒静の交錯》 4 《針縁の小道》 -土地(22)- 4 《無私の救助犬》 4 《堕ちたる者の案内者》 4 《象徴学の教授》 3 《歴戦の神聖刃》 4 《砕骨の巨人》 4 《スカイクレイブの亡霊》 2 《傑士の神、レーデイン》 4 《刃の歴史家》 4 《軍団のまとめ役、ウィノータ》 2 《帰還した王、ケンリス》 -クリーチャー(35)- |
3 《髑髏砕きの一撃》
-呪文(3)- |
1 《環境科学》 1 《墨獣召喚学》 1 《予言学入門》 1 《スピリット召喚学》 2 《巨人落とし》 1 《傑士の神、レーデイン》 2 《アゴナスの雄牛》 2 《レッドキャップの乱闘》 2 《ガラスの棺》 2 《乱動する渦》 -サイドボード(15)- |
《軍団のまとめ役、ウィノータ》をキーカードとしたアグロデッキです。これまでのウィノータ・デッキはいくつか問題点がありました。それは「マナベースの弱さから《凱旋の神殿》のようなタップインランドの採用を強いられ、アグロデッキに関わらず動きが鈍い」ことと「ウィノータから繰り出す人間・クリーチャーにあまり強力なものがいない」の2点です。
今セットでは2つの問題が同時に解消されています。前者に関しては《怒静の交錯》を得たことで、アンタップインの見込める2色ランドが追加されています。これにより《凱旋の神殿》は不要となり、1ターン目からテンポ良く動き出すことが可能になりました。
次に《刃の歴史家》はウィノータの「当たり」カウントに含めるには十分過ぎる性能を持ち、決定力が一気に増しました。《帰還した王、ケンリス》の赤マナ能力と組み合わせると自軍のクリーチャー全てが「速攻・トランプル・二段攻撃」となり、《エンバレスの宝剣》を越える破壊力を叩き出します。
《象徴学の教授》は縁の下の力持ち的存在で、これまで手薄だった2マナ域の非人間クリーチャー部分を埋めるとともに、履修を行って《スピリット召喚学》を手札に加えることで3マナの動きも担保するなど、いぶし銀の働きを見せてくれます。
今後のメタゲーム
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』リリース後も環境のバランスは保たれており、各デッキがほどよくアップデートされた結果、大勢に影響は見られませんでした。「SCG Tour Online」のメタゲームブレイクダウンをご覧いただければ分かるように、デッキシェアもそれほど大きく分かれておらず、どのデッキにもチャンスがある状態です。
単純なデッキパワーの観点で言えば「スゥルタイ根本原理」が頭ひとつ抜けており、その分人気を博しています。しかし人気のデッキは意識されるのがメタゲームの常で、同デッキに好相性の「赤単アグロ」「白単アグロ」は両者を合わせると同程度の人数になるなど、単純に「スゥルタイ根本原理」を使うのがベターな選択肢にはならない難解な様相を示しています。
ただし、混沌とした環境ではありますが、徐々にハッキリしていることもあります。上記の通り「スゥルタイ根本原理」のデッキパワーは確かなものであり、その上で多種多様なデッキが存在するフィールドではありますが、「スゥルタイ根本原理に悪くない相性を持ち、かつ総合力の高いデッキ」というものがトーナメントで良いポジションを掴みやすい傾向が見られるようになってきました。
「ディミーア・ローグ」と「ジェスカイ・サイクリング」の2つがそれに該当し、両者はともに青を用いることから打ち消し呪文を使用でき、《出現の根本原理》に耐性があります。そしてドロー手段を持つことからそれらを引き入れやすく、インスタント・タイミングのマナの使い道に長ける点も、打ち消し呪文を無理なく構えることができ有効です。「無理がない」という点がとても重要で、対抗するだけならどのデッキでもある程度可能ですが、デッキの強みを損なうことなく叩けることは、シェアの散るフィールドにおいて重視されるべきポイントです。
5月15~16日には「『ストリクスヘイヴン』リーグ・ウィークエンド」が開催されるため、世界のトッププロによる環境への解釈が示されます。前回リーグのように各人が思い思いの選択をしてくるのか、それとも『ストリクスヘイヴン:魔法学院』のカードを使ったまだ見ぬ新ギミックデッキが飛び出すのか、期待が高まります。
また6月4~6日には「『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ」も開催されます。こちらもぜひチェックしてみてください。
今回は以上となります。それではまた次回。
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