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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第3回:激動たる『ゼンディカーの夜明け』スタンダードのこれまでとこれから
皆さんこんにちは。スタンダード連載担当の原根(@jspd_)です。
今回もスタンダード環境の徹底解説を行ってまいりたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。
目次
今に至るまでのトピック
前回の記事から少し間が空いた関係で、その間のスタンダードシーンに関するトピックが溜まっています。直近のスタンダード環境についてお話しする前に、そこに至るまでの経緯を軽くおさらいしておきましょう。
トピック1 ローテーション実施
スタンダード恒例のローテーションが実施されました。今回スタンダード・フォーマットから外れることになったのは以下のセットです。
- 『ラヴニカのギルド』
- 『ラヴニカの献身』
- 『灯争大戦』
- 『基本セット2020』
前環境のカードプールのうち、半分近くがローテーション落ちの対象となり、当然ながら多大な影響があります。
『ラヴニカのギルド』『ラヴニカの献身』に含まれていたギルドランドはスタンダード多色土地界の中でも屈指の性能を誇るもので、直近2年間のスタンダード・マナ基盤を支え続けていました。マナ基盤が与える影響は非常に大きく、採択できる呪文の幅、ゲーム速度、デッキの安定感等、あらゆる面で影響を及ぼします。
またリリース以後常に環境の中心にあり続けた《世界を揺るがす者、ニッサ》デッキもついにスタンダードを去ることになりました。同カードと強力なシナジーを発揮した《ハイドロイド混成体》も合わせてローテーション落ちします。長きに渡り続いてきた大ニッサ時代もようやく終わりを迎えたのです。
ニッサもそうですが、『灯争大戦』に含まれたプレインズウォーカーは本当に強力なものばかりでした。プレインズウォーカーの常在型能力という新しい概念に挑戦したデザインでしたが、ゲームへの影響度が凄まじく、モダンやレガシーなど下環境にも多大な影響をもたらしており、環境を定義するほどの力がありました。
『基本セット2020』にはこれまでとは強さが一段階異なる色対策カードがあり、その一角である《夏の帳》は禁止カードに指定されるほどでした。《霊気の疾風》は色対策カードにありながらメインでも採用されるなど、登場してからは常に環境に影響を与え続けてきたカードです。
すべてを枚挙していけばキリがなくなってしまいますが、上記だけでもローテーションの影響を窺い知ることができると思います。
トピック2 『ゼンディカーの夜明け』リリース
最新セットである『ゼンディカーの夜明け』がリリースされました。新セットが環境に多大な影響を及ぼすのはもちろんのこと、ローテーションが実施され、4セット分のカードプールと入れ替わるタイミングであることから、その価値はより一層高まります。
上陸やキッカーなどゼンディカーの世界観で馴染みのあるキーワード能力に加え、今セットでは新種の両面カード「モードを持つ両面カード」が追加されており、注目を集めています。《カザンドゥのマンモス》や《髑髏砕きの一撃》は第1面の呪文としても優れたスペックを有しており、その上で土地としてもカウントできる全く新しい概念です。今セットで登場したこれら両面カードはマナスクリュー・マナフラッド問題を劇的に改善する可能性がある注目のギミックで、今後のスタンダードシーンでも使われ続けていくことでしょう。
さらに、ギルドランドがローテーション落ちしたことで注目の集まっていた多色土地枠として、モードを持つ両面カード版の2色土地が登場しました。個人的にこの土地のデザインには感銘を受けています。デッキの安定性には寄与しますが、一度盤面にセットした後は1色しか発生しなくなるため、各色のダブルシンボルをかき集めた強引なパワーカードデッキは構築しづらく、便利だが無理は許さない、非常にバランスの取れた土地だと感じています。新スタンダードのマナベースを牽引していく存在となることでしょう。
全体的なカードパワーは少し控えめの印象で、ゲームの安定性を高めるカードが多く、ここ最近のカードデザインに共通するものがあるように感じられました。一部を除いては。このセットにはひとつ爆弾が含まれており、『ゼンディカーの夜明け』の印象はそれ一色に染められつつありました。
トピック3 複数回の禁止措置
前回の連載以降、スタンダード・フォーマットでは2つのイベントが実施されました。プレイヤーズツアーファイナルと2020年シーズン・グランドファイナルです。
前者はローテーションおよび『ゼンディカーの夜明け』リリースよりも前、後者はその後に実施されました。両大会は参加者のレベルが高かったこともあり、トッププレイヤーによる解明が進んだ結果、非常に偏ったメタゲームが示されることになりました。その結果、短期間で数多くの禁止カードを出す事態となりました。
まずプレイヤーズツアーファイナルの結果を受け、以下の禁止が発表されました。
- 《荒野の再生》
- 《成長のらせん》
- 《時を解す者、テフェリー》
- 《大釜の使い魔》
《荒野の再生》《成長のらせん》《時を解す者、テフェリー》の3種はローテーションによりもともと使用不可となる予定のカードであったため、今時点で影響を及ぼしているのは《大釜の使い魔》のみ。これで《魔女のかまど》と組み合わせたサクリファイス・デッキの構築は難しくなりました。
次に、『ゼンディカーの夜明け』リリース後の環境を席捲した「4色オムナス」の登場を受け、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が禁止に。このスタンダード屈指のパワーカードは登場以後常にトップメタのデッキ群に含まれ、シミックのカラーリングが環境をリードし続ける要因でした。
最後に、ウーロ禁止後に開催された2020年シーズン・グランドファイナルにて参加者の7割が使用した《創造の座、オムナス》および《僻境への脱出》、6割が使用した《幸運のクローバー》も禁止となりました。
ここ1年近くのスタンダードは一部のカードパワー・デッキパワーがずば抜けており、「多く存在することはわかっているが、倒そうとしても倒せない。そのため、そのデッキを使うことが最善策」とされるケースが多く、結果として使用率が集中し、禁止に至ってしまう流れが続いていました。従来のスタンダードは、シェアが集中したデッキは強く意識され勝率が低下し、違うデッキが台頭した際にはそれもまた意識され、違うデッキが台頭する、といったメタゲームの自浄作用が働くものでしたが、ここ最近はそれが機能しないほどカードパワーに開きが存在していました。
現在のスタンダードの姿とフェーズ進行
さて、ここからは新スタンダードの注目デッキを紹介しながら、早くも生じつつあるメタゲームの流れについて解説します。はじめに言っておきますと、開始から1週間程度しか経過していないにも関わらず、目まぐるしくメタゲームが動いています。わかりやすくお伝えするために、メタの動きを各フェーズに分けてお話しします。
フェーズ1 前環境の生き残り組の台頭
まずスタート地点として、禁止改定の影響を受けなかった前環境の生き残り組が台頭しました。「ディミーア・ローグ」と「ラクドス・クロクサ」です。
4 《島》 3 《沼》 4 《清水の小道》 4 《欺瞞の神殿》 4 《ゼイゴスのトライオーム》 2 《ロークスワイン城》 -土地(21)- 4 《盗賊ギルドの処罰者》 4 《空飛ぶ思考盗み》 4 《ヴァントレスのガーゴイル》 -クリーチャー(12)- |
2 《血の長の渇き》 1 《塵へのしがみつき》 4 《湖での水難》 4 《大慌ての棚卸し》 4 《無情な行動》 2 《高尚な否定》 2 《神秘の論争》 2 《シルンディの幻視》 2 《アガディームの覚醒》 4 《物語への没入》 -呪文(27)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 1 《スカイクレイブの影》 1 《血の長の渇き》 1 《塵へのしがみつき》 3 《苦悶の悔恨》 2 《否認》 1 《取り除き》 1 《神秘の論争》 4 《凪魔道士の威圧》 -サイドボード(14)- |
6 《沼》 4 《山》 4 《悪意の神殿》 1 《ロークスワイン城》 4 《寓話の小道》 -土地(19)- 4 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 4 《マグマの媒介者》 4 《ぬかるみのトリトン》 4 《砕骨の巨人》 2 《残忍な騎士》 2 《悪ふざけの名人、ランクル》 2 《峰の恐怖》 -クリーチャー(22)- |
3 《血の長の渇き》 2 《棘平原の危険》 2 《無情な行動》 1 《切り裂かれた帆》 4 《ティマレット、死者を呼び出す》 3 《髑髏砕きの一撃》 2 《ハグラの噛み殺し》 1 《アガディームの覚醒》 1 《死者を目覚めさせる者、リリアナ》 -呪文(19)- |
3 《スカイクレイブの影》 1 《エンバレスの盾割り》 3 《夜鷲のあさり屋》 1 《アゴナスの雄牛》 1 《魂標ランタン》 1 《塵へのしがみつき》 3 《苦悶の悔恨》 2 《切り裂かれた帆》 -サイドボード(15)- |
2020年シーズン・グランドファイナルにてセス・マンフィールド/Seth Manfield選手が1人使用し活躍が記憶に新しい「ディミーア・ローグ」は新環境でも注目デッキの筆頭です。セス選手はこれまでのローグ(ならず者)デッキで中核を担っていた《夜鷲のあさり屋》や《トリックスター、ザレス・サン》を廃し、《夢の巣のルールス》を相棒に据える斬新なアプローチを披露しました。以後のローグ・デッキはこの構築が主流となっています。
クロクサを用いたデッキは「4色オムナス」時代から存在し、Red Bull Untapped フランス予選を制するなど、すでに一定の成果を収めていたデッキでした。ただし、このデッキには当時重大な問題がありました。それは「4色オムナスと相性が悪い」点です。環境の王者に対して不利を被ってしまうというのは致命的と言わざるを得ない問題点で、前述の2020年シーズン・グランドファイナルにおいてオムナスデッキは最大勢力であり、同大会でクロクサデッキを使用したプレイヤーは全員勝率50%以下、いわゆる負け組とされていました。しかしながら、クロクサデッキは逆に「オムナスデッキ以外(当時存在したデッキ相手)には有利」とも言われる極端な性質を持っており、オムナスが退場したスタンダードシーンの有力候補として名前が挙がるのは自明でした。
面白いのは、既にこの二者間で優劣が存在している点です。「ディミーア・ローグ」は対戦相手の墓地が8枚(あるいは7枚)以上存在する状況で真価を発揮するデッキで、能力により切削する(ライブラリーのカードを墓地に置く)ことでその条件に向かっていきます。ここ最近のリストでは《遺跡ガニ》まで使って切削することを意識しており、ライブラリー切れによる勝ちパターンも有しているほどです。
6 《島》 3 《沼》 4 《清水の小道》 4 《欺瞞の神殿》 4 《寓話の小道》 -土地(21)- 4 《マーフォークの風泥棒》 4 《遺跡ガニ》 4 《盗賊ギルドの処罰者》 4 《空飛ぶ思考盗み》 -クリーチャー(16)- |
3 《塵へのしがみつき》 2 《血の長の渇き》 4 《湖での水難》 3 《無情な行動》 1 《本質の散乱》 3 《アガディームの覚醒》 2 《凪魔道士の威圧》 1 《ハグラの噛み殺し》 4 《物語への没入》 -呪文(23)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 3 《スカイクレイブの影》 1 《血の長の渇き》 2 《否認》 1 《取り除き》 1 《本質の散乱》 3 《神秘の論争》 2 《絶滅の契機》 1 《凪魔道士の威圧》 -サイドボード(14)- |
しかしながら、一方の「ラクドス・クロクサ」は墓地を使ったデッキです。本来は自らが《ぬかるみのトリトン》や《ティマレット、死者を呼び出す》を用いて切削し、《死の飢えのタイタン、クロクサ》を見つけ出すのですが、「ディミーア・ローグ」との対戦では勝手に山札を削ってくれるので、いわゆる友情コンボが発生します。さらに脱出ギミックは墓地を減らす行動でもあるため「ディミーア・ローグ」側にとっては非常に辛い戦いになります。最近のリストでは《アゴナスの雄牛》まで加わっていることがあり、このカードの場合はわずか2マナで8枚の墓地を消費し、「ついでにカードを3枚引く」ので効果は劇的です。
7 《沼》 3 《山》 4 《悪意の神殿》 1 《ロークスワイン城》 4 《寓話の小道》 -土地(19)- 4 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 4 《マグマの媒介者》 4 《ぬかるみのトリトン》 4 《砕骨の巨人》 2 《残忍な騎士》 1 《悪ふざけの名人、ランクル》 2 《アゴナスの雄牛》 -クリーチャー(21)- |
3 《血の長の渇き》 2 《棘平原の危険》 3 《無情な行動》 1 《切り裂かれた帆》 4 《髑髏砕きの一撃》 4 《ティマレット、死者を呼び出す》 2 《ハグラの噛み殺し》 1 《死者を目覚めさせる者、リリアナ》 -呪文(20)- |
2 《スカイクレイブの影》 1 《エンバレスの盾割り》 3 《夜鷲のあさり屋》 2 《魂標ランタン》 1 《塵へのしがみつき》 1 《強迫》 3 《苦悶の悔恨》 1 《エルズペスの悪夢》 1 《絶滅の契機》 -サイドボード(15)- |
現スタンダードにおいては「ディミーア・ローグ」の存在から脱出持ちのカードはサイドボードの定番となっており、《アゴナスの雄牛》以外にもさまざまな種類の脱出カードが使用されるようになりました。禁止改定前は脱出といえば《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といった風潮があり、『テーロス還魂記』の脱出ギミックが再評価を受けています。またそれら脱出カードを対策するために「ディミーア・ローグ」自身も《塵へのしがみつき》を使用しています。
ここまでが環境のスタートラインです。そして、仮想敵が出現した際にはそれを倒そうとするデッキが現れます。ここ最近のスタンダードはそれが不可能とされることが多かったのですが、「ラクドス・クロクサ」はそれほど絶対的なデッキではありませんでした。対抗馬として出現した緑系アグロが、まずひとつ環境を塗り替えました。
フェーズ2 緑系アグロ
7 《森》 3 《山》 4 《岩山被りの小道》 4 《寓話の小道》 2 《進化する未開地》 -土地(20)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《山火事の精霊》 4 《義賊》 2 《漁る軟泥》 4 《砕骨の巨人》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《恋煩いの野獣》 4 《石とぐろの海蛇》 -クリーチャー(30)- |
2 《原初の力》 4 《髑髏砕きの一撃》 4 《エンバレスの宝剣》 -呪文(10)- |
2 《漁る軟泥》 3 《ガラクの先触れ》 3 《灰のフェニックス》 2 《轟く叱責》 2 《グレートヘンジ》 3 《怪物の代言者、ビビアン》 -サイドボード(15)- |
5 《森》 5 《沼》 4 《疾病の神殿》 2 《インダサのトライオーム》 4 《寓話の小道》 -土地(20)- 4 《エッジウォールの亭主》 4 《穢れ沼の騎士》 2 《真夜中の騎士団》 2 《漁る軟泥》 1 《怪物の災厄、チェビル》 4 《恋煩いの野獣》 4 《残忍な騎士》 2 《カザンドゥのマンモス》 2 《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》 -クリーチャー(25)- |
2 《血の長の渇き》 3 《無情な行動》 3 《アガディームの覚醒》 2 《ハグラの噛み殺し》 2 《グレートヘンジ》 3 《怪物の代言者、ビビアン》 -呪文(15)- |
2 《鎖巣網のアラクニル》 2 《漁る軟泥》 3 《ガラクの先触れ》 2 《長老ガーガロス》 3 《強迫》 1 《血の長の渇き》 1 《死者を目覚めさせる者、リリアナ》 1 《呪われた狩人、ガラク》 -サイドボード(15)- |
「ラクドス・クロクサ」はメインから除去や手札破壊を多量に搭載した、いわゆる受けのデッキタイプです。しかしながら、「緑系アグロ」は「出来事ギミックによるアドバンテージ・クリーチャー」「プレインズウォーカー」「アーティファクト」といった具合にさまざまな種類のパーマネントを用いることで多角的な攻めを実現しており、受けのデッキにはこのやり方が非常に効果的です。ラクドスのカラーリングにはそれぞれに対処するためのカード自体は存在するものの、ドロー呪文のようなデッキを回転させるためのカードが含まれず、引きムラに左右されやすい展開となってしまいます。一方のビートダウン側は引いたカードを順次押し付けていけば良く、対処されなければ勝ち、対処されればまた次の攻め手といった具合で裏目がないことから優位に立ち回ることができます。
「グルール・アドベンチャー」は2020年シーズン・グランドファイナルにてオータム・バーチェット/Autumn Burchett選手が使用しトップ8入りを果たした実績のある生き残り組デッキであり、「ゴルガリ・アドベンチャー」も《王冠泥棒、オーコ》の時代に2019ミシックチャンピオンシップⅥにてトップ8を経験したデッキです。どちらも緑系アグロの中では骨格がしっかりしており、舞台が整えばいつでも活躍できる状況にあったと言えるでしょう。
そして環境で緑系アグロの優位性がハッキリし始めたころ、メタゲームは次のフェーズに進むことになりました。緑系ミッドレンジの出現です。
フェーズ3 緑系ミッドレンジ
8 《森》 6 《平地》 4 《枝重なる小道》 4 《寓話の小道》 3 《進化する未開地》 -土地(25)- 4 《水蓮のコブラ》 4 《ムラーサの根食獣》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《硬鎧の大群》 3 《スカイクレイブの亡霊》 3 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》 2 《渡る大角》 -クリーチャー(24)- |
2 《ガラスの棺》 4 《フェリダーの撤退》 2 《エメリアの呼び声》 1 《変わり樹の共生》 2 《怪物の代言者、ビビアン》 -呪文(11)- |
2 《鎖巣網のアラクニル》 1 《巨人落とし》 3 《漁る軟泥》 3 《水晶壊し》 1 《長老ガーガロス》 1 《古の緑守り》 2 《ガラスの棺》 1 《エルズペス、死に打ち勝つ》 1 《怪物の代言者、ビビアン》 -サイドボード(15)- |
15 《森》 4 《ギャレンブリグ城》 1 《お菓子の小屋》 -土地(20)- 4 《金のガチョウ》 4 《漁る軟泥》 2 《絡みつく花面晶体》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《意地悪な狼》 3 《水晶壊し》 4 《貪るトロールの王》 -クリーチャー(25)- |
4 《パンくずの道標》 2 《強行突破》 2 《変わり樹の共生》 3 《グレートヘンジ》 4 《原初の力》 -呪文(15)- |
2 《鎖巣網のアラクニル》 4 《恋煩いの野獣》 1 《水晶壊し》 1 《魂標ランタン》 2 《精神迷わせの秘本》 2 《強行突破》 1 《影槍》 2 《解き放たれた者、ガラク》 -サイドボード(15)- |
「セレズニア上陸」は《硬鎧の大群》と《フェリダーの撤退》を軸とした、面展開+全体強化の定番ギミックのデッキです。クリーチャーが100体ほど並んだり数百点のダメージを叩き込んだりと勝ち方が実に豪快で、セレズニアらしいパワフルさを持ちます。
「緑単フード」は《貪るトロールの王》を軸に据えたデッキで、マナ加速からこれを高速展開、単純な除去では対処不能なこのフィニッシャーで対戦相手を圧倒します。使用するカードは異なりますが、どちらも緑系アグロでは対処が難しいことから優位性を担保できる、盤面制圧型のミッドレンジデッキです。
アグロが台頭し、それに対して有利となるように構築された一段階遅いミッドレンジデッキが幅を利かせる、これは従来のスタンダードで非常によく見られた光景です。定石とも言える流れで、随分と久しい感覚に陥りました。そして、このスタンダード的定石に従えば、次に出てくるべきデッキが存在します。
フェーズ4 ボードコントロール
そう、コントロールです。特に盤面にカードを多く並べるミッドレンジデッキが目立っていた都合、ボードコントロールデッキが台頭し始めました。
まず姿を現したのが《空を放浪するもの、ヨーリオン》です。
10 《島》 8 《平地》 4 《啓蒙の神殿》 2 《平穏な入り江》 4 《ラウグリンのトライオーム》 2 《ヴァントレス城》 -土地(30)- 4 《魅力的な王子》 4 《スカイクレイブの亡霊》 2 《玻璃池のミミック》 1 《魅了された者、アリリオス》 4 《真面目な身代わり》 1 《深海住まいのタッサ》 3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 2 《夢さらい》 -クリーチャー(21)- |
4 《ガラスの棺》 4 《海の神のお告げ》 4 《メレティス誕生》 2 《精神迷わせの秘本》 1 《本質の散乱》 1 《否認》 1 《太陽の神のお告げ》 2 《空の粉砕》 4 《エルズペス、死に打ち勝つ》 2 《崇高な天啓》 4 《エメリアの呼び声》 -呪文(29)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 1 《巨人落とし》 1 《夢さらい》 2 《本質の散乱》 2 《否認》 2 《神秘の論争》 2 《空の粉砕》 4 《サメ台風》 -サイドボード(14)- |
6 《森》 4 《平地》 4 《豊潤の神殿》 4 《枝重なる小道》 -土地(18)- 4 《金のガチョウ》 2 《魅力的な王子》 2 《絡みつく花面晶体》 4 《ラノワールの幻想家》 4 《スカイクレイブの亡霊》 4 《意地悪な狼》 4 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 1 《巨大猿、コグラ》 -クリーチャー(25)- |
4 《パンくずの道標》 2 《ガラスの棺》 2 《太陽の神のお告げ》 2 《エルズペス、死に打ち勝つ》 3 《変わり樹の共生》 2 《エメリアの呼び声》 2 《グレートヘンジ》 -呪文(17)- |
3 《鎖巣網のアラクニル》 3 《漁る軟泥》 1 《巻き添え》 1 《ガラスの棺》 1 《ヘリオッドの介入》 1 《太陽の神のお告げ》 2 《空の粉砕》 1 《エルズペス、死に打ち勝つ》 2 《怪物の代言者、ビビアン》 -サイドボード(15)- |
ヨーリオンデッキは実にさまざまな形があり、今なお進化を遂げている最中です。その中でも現在主流となっているのが「アゾリウス・ヨーリオン」と「セレズニア・ヨーリオン」で、著名なプレイヤーらが使用したことで一気に流行しました。《エルズペス、死に打ち勝つ》は緑系ミッドレンジが繰り出す高コストのパーマネントに対して劇的な効果があり、脅威に対応した上でアドバンテージさえもたらしてくれます。さらに『ゼンディカーの夜明け』で獲得した《スカイクレイブの亡霊》も同様に緑系ミッドレンジに強く、4マナ以下のパーマネントを主体とする「ディミーア・ローグ」「ラクドス・クロクサ」「緑系アグロ」にも強い、環境に適したカードです。ヨーリオンとのシナジーもあり、以前に比べ格段にデッキが強化された要素だと言えるでしょう。
またそれらのキーカードを探し出すためのアドバンテージソースも存在し、デッキの動きを安定させています。「ラクドス・クロクサ」と異なり狙って対処カードを探しに行ける点で、対応デッキの中でも優位性を示すことができています。
ヨーリオンデッキは対応力が非常に高く、環境に存在する既存のデッキのほとんどに対して有利に立ち回ることができます。しかしここまでもそうであったように、こうなってくるとヨーリオンを意識したデッキと言うものもまた出てきます。
《精霊龍、ウギン》はヨーリオンデッキがその性質上盤面に並べるパーマネントカードを一掃する究極のフィニッシャーです。「セレズニア上陸」や「緑単フード」のようなデッキもこのカードを受けてしまうとひとたまりもありません。ウギンは8マナと重いため必然的にマナブーストを多用するランプ系のデッキで使用される傾向にあり、実質追加のウギンとも取れる《発生の根本原理》を使用する「ティムール・ランプ」が主な居場所となります。
4 《森》 3 《島》 2 《山》 4 《ケトリアのトライオーム》 4 《岩山被りの小道》 1 《河川滑りの小道》 4 《寓話の小道》 -土地(22)- 4 《水蓮のコブラ》 1 《絡みつく花面晶体》 4 《砕骨の巨人》 4 《ラノワールの幻想家》 3 《カザンドゥのマンモス》 1 《玻璃池のミミック》 4 《峰の恐怖》 4 《豆の木の巨人》 -クリーチャー(25)- |
4 《耕作》 2 《髑髏砕きの一撃》 4 《発生の根本原理》 1 《海門修復》 2 《精霊龍、ウギン》 -呪文(13)- |
1 《鎖巣網のアラクニル》 2 《漁る軟泥》 2 《否認》 2 《焦熱の竜火》 2 《神秘の論争》 3 《サメ台風》 3 《怪物の代言者、ビビアン》 -サイドボード(15)- |
クリーチャーデッキが台頭し、クリーチャーデッキに強い盤面デッキが台頭し、盤面デッキに強いボードコントロールが台頭する。これもまた従来のスタンダードの定石です。そしてもちろん、その次の定石も用意されています。今度はボードコントロールに強い、カウンター呪文を多用した純コントロールの出番です。現在は「ディミーア・コントロール」がその立場を担っています。
フェーズ5 純コントロール
5 《沼》 3 《島》 1 《欺瞞の神殿》 4 《ゼイゴスのトライオーム》 3 《清水の小道》 1 《ヴァントレス城》 1 《這い回るやせ地》 3 《寓話の小道》 -土地(21)- 1 《老いたる者、ガドウィック》 -クリーチャー(1)- |
4 《血の長の渇き》 4 《塵へのしがみつき》 4 《精神迷わせの秘本》 2 《取り除き》 2 《無情な行動》 2 《ジュワー島の撹乱》 1 《本質の散乱》 4 《中和》 3 《シルンディの幻視》 2 《絶滅の契機》 1 《ハグラの噛み殺し》 3 《影の評決》 2 《サメ台風》 2 《海門修復》 2 《悪夢の詩神、アショク》 -呪文(38)- |
1 《這い回るやせ地》 1 《トーモッドの墓所》 3 《否認》 2 《取り除き》 2 《本質の散乱》 1 《無情な行動》 2 《神秘の論争》 1 《屍呆症》 1 《絶滅の契機》 1 《影の評決》 -サイドボード(15)- |
メインから4枚投入された《中和》、大量に搭載されたクリーチャー除去、そしてインスタント・タイミングの勝ち手段。古き良き「ディミーア・コントロール」が帰ってきました。緑系ミッドレンジ・ボードコントロールはソーサリータイミングで高コストのアクションを多用するため、打ち消し呪文が実に効果的にプレイできます。
新時代のコントロールの注目すべき点として、モードを持つ両面カードの存在が挙げられます。純コントロールのよくある負けパターンに「相手の動きを捌き切ったものの、その後土地ばかりを引いてしまい負け」といったものがあり、それは決して少なくない頻度で発生していましたが、両面カードはこの問題を大きく改善します。コントロールデッキは毎ターン土地をプレイし続けたいためデッキ内の土地枚数が多くなる傾向があり、上記デッキも29枚の土地が採用されていますが、その内の8枚は両面カードであり、純粋な土地は21枚しか入っていません。コントロールデッキは両面カードの恩恵を最大限に受けられるデッキである可能性があります。
見事なまでにスタンダードの定石が連鎖しています。ともすれば、この後に出てくる定石は何でしょうか? 純コントロールに強いデッキタイプ、それは……。
フェーズ6 クロック・パーミッション
それは一般的にクロック・パーミッションだとされています。打ち消し呪文の多い純コントロールデッキは、基本的に自分ターンではあまりマナを使用せず、相手ターンでマナを構える動きを取ります。対戦相手の動きを見て、厄介な呪文を唱えてくるようなら打ち消し呪文や除去呪文、動いてこない、もしくは影響度の少ない動きならドロー呪文や自分のフィニッシャーを展開といった具合です。上記に挙げたミッドレンジやボードコントロールはまさにこの動きにハマりやすい構造になっています。動いても損、動かなくても損、そんな事態を強いられやすいためです。
しかし、自身も同様に相手ターンで動ける構造になっていた場合はどうでしょう。相手が打ち消し呪文や除去呪文を構えている際は動かずマナを無駄にさせ、ドロー呪文を打った隙にクリーチャーを出したり、自分もドロー呪文をプレイしたり。ここまでに挙げたデッキの中で、そんな動きを可能にするデッキがありましたね。
そう、「ディミーア・ローグ」です。デッキ内のクリーチャーのほとんどが瞬速を持つか低いマナ・コストであることから打ち消し呪文や除去呪文に耐性があり、自身もドロー呪文や打ち消し呪文を持つことから、コントロールデッキとのインスタント・タイミングでの攻防にしっかりとついていけます。隙のない攻めで徐々にライフを奪う戦略が取れ、コントロールデッキに対し有利とされるタイプのデッキです。
さて、お気づきでしょうか。そうです、メタゲームが一周してしまいました。
- フェーズ1 前環境の生き残り組である「ディミーア・ローグ」と「ラクドス・クロクサ」が注目され、デッキ性質から「ラクドス・クロクサ」が優勢に
- フェーズ2 「ラクドス・クロクサ」に優位な構造を持つ緑系アグロが台頭
- フェーズ3 緑系アグロに優位な構造を持つ緑系ミッドレンジが台頭
- フェーズ4 緑系ミッドレンジに優位な構造を持つボードコントロールが台頭
- フェーズ5 ボードコントロールに優位な純コントロールが出現
- フェーズ6 純コントロールに優位なクロック・パーミッション(ディミーア・ローグ)が復権
これはこの記事を執筆している現在までの「1週間で」起きた変化です。なんと目まぐるしいことでしょうか。おそらく次のフェーズ7は1と同義、つまるところ「ラクドス・クロクサ」の復権が予想されますが、果たして。
この記事は10月19日に執筆しています。これを書いておかないと、記事が載る頃には「なんて大昔の話をしているんだ!」と言われてしまう可能性がありますからね! そしてこれはあながち冗談でもないと感じています。MTGアリーナとオンラインイベントの普及から、ここ最近はメタゲームの移り変わりが非常に早く、上記の遷移で言えば三日天下すら成せなかったという経緯がありますからね。
そして、メタゲームは一周しましたが、ここからまた1~6のフェーズが繰り返されるとは限りません。なぜなら、そうした未来は全プレイヤーが既知の状態にあるため、存在が透けている苦手な相手にはきちんと対策をした状態で臨んでくるはずです。さらに、これだけメタゲームが入り組めばデッキシェアが分散し、これまでには起きなかったフィールドが形成されることになります。流れはありつつもデッキの選択肢自体は広がっているので、ひとつのデッキにシェアが極端に集中することはないものと思われます。
日本選手権2020秋とリーグ戦
スタンダードもついに群雄割拠の時代が到来しました。来週末には日本選手権2020秋を控えており、僕個人の話をすれば今週末にはマジック・ライバルズリーグのリーグ戦を控えています。各イベントではどのようなフィールドになってくるのでしょうか。今から楽しみですね。
今週末からスタートするマジック・プロリーグ(MPL)およびマジック・ライバルズリーグは各プレイヤーによる配信が行われる予定なので、気になるデッキや選手の配信をチェックしましょう!もちろん、自身のチャンネルでも僕の対戦をお届けしますので、よろしければぜひご覧になってください。現在も猛練習中ですので、その成果を披露できるように精一杯頑張ります。
それではまた次回。
原根
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