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週刊デッキ構築劇場

八十岡翔太のデッキ構築劇場・ディミーアの隠されし真実

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週刊デッキ構築劇場

2013.03.04

八十岡翔太のデッキ構築劇場・ディミーアの隠されし真実

演者紹介:八十岡 翔太

 プレイヤーとしての黎明期からフォーマット、環境を問わず青を基盤としたコントロール、とりわけ青黒をフィーチャーしたデッキを構築し、そのたびに冠せられる「ヤソコン」の名を日本中、世界中に知らしめてきた名手。「《包囲の搭、ドラン》デッキから《精神を刻む者、ジェイス》が出てきた」「モダンで不遇とされてきた《霊気の薬瓶》を完璧に使いこなした」と、その独創性とプレイング技術は世界中から称賛の声がやまず、プロプレイヤーの間でも信頼が厚い。
 2005-2006年にプレイヤー・オブ・ザ・イヤー、2009年にMagic Online プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、双方で世界一に輝いた現時点で唯一のプレイヤーである。


『ギルド門侵犯』デッキ構築劇場:ディミーア編

 今回、デッキ構築劇場「ディミーア」編ということで、世界でも3本の指に数えられる「ディミーア」狂の私、八十岡翔太が解説させていただきます。

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 まずあまり知らない人も多いと思いますので、「ディミーア」家についてお話したいと思います。まず「ディミーア」家は、他のギルドとは違い基本的に一般市民には存在が認識されていないギルドです。だからといって何もしてないわけではありません。見えないところで暗躍したり情報操作をして、陰からラヴニカの支配を狙っているギルドなのです。これが「ディミーア」が狡猾なギルドと言われる所以でもあります。
 そんな「ディミーア」家は、かつての指導者《秘密の王、ザデック》が捕まりアギレムへ追放されたことで一度は壊滅したと言われていましたが、その記憶を引き継いだという《ディミーアの黒幕ラザーヴ》によって再興しました。

 カードにおいても、フレーバーと同じように相手の妨害をしたりコントロールを奪ったりと、真っ向からは戦わず対戦相手を敗北へと誘うのが「ディミーア」の特徴です。


■ 「ディミーア」といえば

 「ディミーア」といえば、なんといってもやはりインスタントとやソーサリーなどの呪文です。その中でも打ち消し、除去、ライブラリー破壊がメインにあげられます。『ラヴニカ:ギルドの都』では《差し戻し》《最後の喘ぎ》《不可思の一瞥》あたりが有名ですね。

 では、「ディミーア」が『ギルド門侵犯』で手に入れたものを見てみましょう。


心理的打撃

 まずはカウンターから。マジックの歴史の中でも数少ない青マナシンボルが1つの確定カウンターです。微々たるものですがプラス能力がついているのもいいですね。


肉貪り

 次に除去呪文です。選択肢が打たれた側にあるため万能ではありませんが、他の除去と合わせることでほかのカードでは除去できないクリーチャーを倒せますし、最近多くなってきている呪禁持ちのクリーチャーを簡単に倒せる数少ない1枚です。


精神削り

 そしてライブラリ破壊になります。土地がめくれるまで山札を削るという不確定な能力ですが、基本的にはX=1につき2~3枚ぐらい削れると思っていて大丈夫です。遅いコントロール対決ではX=10以上で打つことができると思いますので、一撃でデッキの約半分を削ってくれます。


ディミーアの魔除け

 そして、先ほど挙げた3つすべてを内包した「ディミーア」を象徴する1枚が《ディミーアの魔除け》です。一番下のモードは使うタイミングが難しいですが、打ち消しと除去は両方とも使い勝手がいいので、どのデッキが相手でも働いてくれる1枚です。


■ 隠蔽されていた真実

 先ほど言ったように、「ディミーア」といえば打ち消しや除去に目が行きがちですが、実はほとんどの環境で最強のフィニッシャーは青や黒にいることが多いのです。青い悪魔と言われた《変異種》を筆頭に、スタンダード・エクステンデッドで大暴れした《サイカトグ》、キレメロクという言葉を作り出した《曇り鏡のメロク》、実質2ターンキルと言われた《苦花》に、2010年世界選手権で猛威を振るった《墓所のタイタン》。そして最近では熱狂的信者を作った《ボーラスの工作員、テゼレット》と、常に環境を支配するクラスのカードがあります。

 もちろん今回も例外ではありません。それは《ダスクマントルの予見者》です。

 4マナ4/4飛行と、《霧縛りの徒党》を思い出すスペックに、さらに《闇の腹心》に似た効果が付いているこのクリーチャー。《闇の腹心》とは違いお互いカードをめくるわけですが、自身がこれだけ戦闘力が高いとただのメリットです。特に使う側はデッキのコストを低くすることができますが、対戦相手はそうではありません。《首席議長ゼガーナ》や《怒れる腹音鳴らし》が捲れて絶叫してくれるに違いないでしょう。


■ コントロールばかりがディミーアではない

コントロールばかりがディミーアではない[MO] [ARENA]
8 《
4 《
4 《湿った墓
4 《水没した地下墓地
2 《魂の洞窟
1 《ネファリアの溺墓

-土地(23)-

4 《秘密を掘り下げる者
4 《悪名の騎士
2 《瞬唱の魔道士
3 《吸血鬼の夜鷲
4 《ダスクマントルの予見者

-クリーチャー(17)-
4 《思考掃き
3 《送還
2 《肉貪り
2 《究極の価格
2 《夜の犠牲
2 《ディミーアの魔除け
3 《心理的打撃
2 《ルーン唱えの長槍

-呪文(20)-
1 《瞬唱の魔道士
3 《地下牢の霊
4 《人間の脆さ
3 《強迫
4 《ヴェールのリリアナ

-サイドボード(15)-


 「ディミーア」といえばコントロールというイメージが強いですが、今回紹介するのは《ダスクマントルの予見者》を軸に置いたクロックパーミッションです。
 序盤から《秘密を掘り下げる者》や《悪名の騎士》でダメージを刻みつつ、「ディミーア」お得意の除去と打ち消しで対戦相手の行動を妨害していきます。ほとんどのクリーチャーが何かしらの回避能力を持っているので、最近流行りの《ボロスの反攻者》も怖くありません。というよりただの《訓練されたアーモドン》です。
 《心理的打撃》は、《取り消し》とは違いとても打ちやすく、このデッキのような黒いダブルシンボルのカードを使うデッキでは喉から手が出る程ほしかった1枚です。
 《ディミーアの魔除け》も《ダスクマントルの予見者》と一緒に使うことで強さが倍以上になります。あまり使うことのない「プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーのライブラリーのカードを上から3枚見る。その中の1枚をそのライブラリーの一番上に置き、残りをそのプレイヤーの墓地に置く。」というモードも、《ダスクマントルの予見者》がいる場で対戦相手に打てば、3~4点の本体火力として役立ちます。

 サイドボードは手札破壊とクリーチャー除去とわかりやすくなっています。「ディミーア」の良いところの1つとしてこのサイドボードの強さが挙げられます。クリーチャーデッキ相手には重いところや手札に残りやすい打ち消しを抜いて除去を、コントロール相手には打つ対象があまりない除去を抜いて手札破壊にと、とても単純ですが一番理にかなっていると思っています。


■ 王道が一番

王道が一番[MO] [ARENA]
8 《
5 《
4 《湿った墓
4 《水没した地下墓地
3 《ネファリアの溺墓

-土地(24)-


-クリーチャー(0)-
2 《悲劇的な過ち
4 《熟慮
2 《本質の散乱
3 《肉貪り
2 《夜の犠牲
2 《ディミーアの魔除け
4 《心理的打撃
2 《禁忌の錬金術
4 《魂の代償
3 《血のやりとり
1 《血統の切断
2 《精神削り
3 《ヴェールのリリアナ
2 《思考を築く者、ジェイス

-呪文(36)-
2 《邪悪な双子
4 《強迫
4 《人間の脆さ
2 《死の支配の呪い
1 《ヴェールのリリアナ
1 《記憶の熟達者、ジェイス
1 《月の賢者タミヨウ

-サイドボード(15)-


 「ディミーア」紹介というのにコントロールを紹介しないのもあれですので、コントロールも用意いたしました。メインボードはノンクリーチャーで勝ち筋をほぼライブラリーアウトに絞っています。やはり殴り合い等は野蛮な「グルール」などに任せておくに限ります。

 このデッキの説明に入る前に、まだ紹介していない《魂の代償》の説明を少ししたいと思います。
 このカードは少し前にあった《精神の制御》と同じで、エンチャントされているクリーチャーのコントロールを奪うことができます。しかしマナコストが軽くなっているだけあってデメリットがついており、対戦相手は2枚手札を捨てることでこのカードを生け贄に捧げさせることができます。とは言っても、そうした場合あなたはカードを2枚引くことができるので、あながち悪い話ではありません。手札次第ではありますが、2枚引かせてくれた方が嬉しい場合も多いと思います。
 この能力はスタックに乗りますので、さらにスタックで《肉貪り》を自分を対象に打ちエンチャントされているクリーチャーを生け贄に捧げても、カードを2枚引くことはできます。例えば、《スラーグ牙》のコントロールをこのカードで奪い、対戦相手が仕方なく2枚捨ててきた時に《肉貪り》を打ったとすると、あなたは3点回復しつつ3/3トークンが場に残り、更にカードも2枚引くことができるのです。

 デッキの動きは、出てくるクリーチャーを片っ端から除去していき、プレインズウォーカー等を打ち消しで対応して、相手の場を常に何もない状態にしてゆっくりライブラリーを破壊していくという、まさに「ディミーア」といった感じになっています。一度場をさらにして《ネファリアの溺墓》を起動し始めたら、対戦相手はもう自分のデッキがなくなるのを指を加えて見ていることしかできないでしょう。

 サイドボード後も基本的にはやることは同じですが、《死の支配の呪い》《月の賢者タミヨウ》といったより場を磐石にするためのカードを採用しています。《邪悪な双子》は緑白系のサイドに取られている《鷺群れのシガルダ》用です。《鷺群れのシガルダ》のいる場面で、うっかり《ヴェールのリリアナ》の能力を起動したり《肉貪り》を打ったりしないよう気をつけましょう。


■ 最後に

 デッキ構築劇場:ギルド編はこれにてすべて終わりになりますが、いかがだったでしょうか?

 自分の好きなギルドだけではなく、それ以外のギルドにも目を向けて見てください。新しい発見があるかもしれません。最後に『ギルド門侵犯』の中で私が一番好きなカードを紹介して幕を閉じさせていただきます。

 歴代の青黒土地の中でもトップ3に入る美しいイラスト。どんなデッキにも1枚入れておきたいですね。

 皆様にもディミーアのご加護がありますように。

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