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週刊デッキ構築劇場

第88回:塚本樹詩のデッキ構築劇場・とびだせ!ファッティの森

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週刊デッキ構築劇場

2012.12.03

第88回:塚本樹詩のデッキ構築劇場・とびだせ!ファッティの森

演者紹介:塚本 樹詩

 独創的なデッキ構築と記事展開で知られるデッキビルダー・ライター。玉石混淆アイディア先行のデッキを数多く試すことや、多くの人に笑いもしくは失笑を与える語り口から『試行落語(トライ&テーラー)』として、畏怖されている。
 プロツアー・ホノルル2009にて初のプロツアー出場を果たし、《破門》マスターとして恐れられた。また2009年度・2011-2012年度プレイヤー・オブ・ザ・イヤーの渡辺 雄也は自宅アパートの二軒隣に住んでいる関係から非常に親交が深く、「渡辺の三次元の嫁」「〈渡辺の信奉者〉」と呼ばれることも。
 代表作は、栗原 伸豪が危うくプロツアーで使う所だった《ルーン炎の罠》入り新型ハウリングオウルや、渡辺大絶賛の《山賊の頭の間》バーンなどだが、むしろ今後の代表作に期待したい逸材。

(・・・ますか?・・・聞こえますか?

 あなたの脳に直接語りかけています、名古屋に持っていくデッキの調整をしている場合ではありません。

 この事実に気づいた僕を助けてください。)

(同じマナコストでこの差・・・このカードスペック・・・信じられますか?

 《セラのアバター》はバニラです、もう一度言います、バニラです回避能力もありません。

 これはもう、《セラのアバター》を使うしかないのです。

 今週のデッキはこれに決まりです。)

「こころない天使」[MO] [ARENA]
4 《平地
2 《
4 《寺院の庭
4 《陽花弁の木立ち
3 《草むした墓
3 《魂の洞窟
2 《孤立した礼拝堂
1 《処刑者の要塞
1 《血の墓所

-土地(24)-

4 《解放の樹
4 《修復の天使
1 《セレズニアの声、トロスターニ
4 《スラーグ牙
4 《静穏の天使
4 《セラのアバター

-クリーチャー(21)-
4 《遥か見
4 《心なき召喚
4 《マナの花
3 《投げ飛ばし

-呪文(15)-
1 《希望の天使アヴァシン
4 《ケンタウルスの癒し手
4 《酸のスライム
2 《隔離する成長
3 《ラクドスの復活
1 《魂の洞窟

-サイドボード(15)-


 皆さん如何お過ごしでしょうか? 塚本です。冒頭に記してある恐るべき事実に気がつき《セラのアバター》が使いたくて仕方がなくなったグランプリ・名古屋直前の僕ですが、いつもどおりなので多分正常です。そして如何に上手に使うか考え、できたのがこのリストなのですが・・・

 そうなのです、《セラのアバター》を出して《静穏の天使》でブロッカーを排除!

 これが一番《セラのアバター》を一番上手く使う方法なのです! 同じマナ域のカードでバックアップすることによってお膳立てをする形になり、上下関係がハッキリするのですよ、天使とは「天の使い」と書いて天使なので、まさに《静穏の天使》はあるべき姿を全うできるのです!

 そして、13年前のスタンダードのコンボが現在のスタンダードに復活!

 再録同士がここまでコンボしたことは今まであったでしょうか? 様式美としてもレベルの高い組み合わせといえましょう。このコンボをバックアップする現代のスタンダードのエース級のカード達はビーストだろうと、マナ加速呪文だとしても「天の使い」まさに天使!ということは、このデッキは天使デックウインだったんだ!

 そして《セラのアバター》を《投げ飛ばし》するためにライフを増やす手段としての、《スラーグ牙》や《解放の樹》。このデッキではビーストや植物の皮を被った天使です、皆さんはもうカードを見れば翼が見えますよね。

 言うまでもないシナジーの《修復の天使》ですが、スタンダードでコンボデッキを組むためには必要なのです!

 こちら側がスタンダードを覗いている時、スタンダードもこちらを覗いているのです。なので、強いギミックを組み込んでコンボを成功させる場面に繋げやすくしましょう。

 これぞクリーチャーデッキ最強のマナ加速! テキストが強いクリーチャーであれば-1/-1の修正も気にならない! むしろ《セレズニアの魔除け》を避けられたり、早いターンに《セラのアバター》を出せたり、いいことずくめ! 5マナ19/19ですよ、最強か。

 サイドボードにいる酸を纏った天使も《心なき召喚》から高速召喚して《修復の天使》で明滅させ(本当は厳密に言えば天使同士だから明滅できないのだけれども、全ての生物には天使になれる素質があるけど今はまだウーズだから明滅はできるんだぞ)相手の土地を破壊してしまえば、それだけで一気に有利になってしまうのですよ!

 このデッキが天使の71枚とそれを従えている4枚の唯一神《セラのアバター》の束だと再確認できるように、サイドボードに《希望の天使アヴァシン》が1枚入っています。このカードをサイドボードの先頭にしておくことによってこのデッキが天使の塊だなと再確認できる視覚的役割をもったキーパーソンなのです! 是非順番を崩さずに、サイドボードの先頭を維持していて欲しいものです。

 デッキに存在しているだけで意味を成すなんてまさに神話レア!

 これでもう天使界は制したも同然。今度は《セラのアバター》を《心なき召喚》以外のアプローチで活躍させるデッキの紹介をします!

 次のアプローチはこのカード。挙動が少し複雑ですが、要はアップキープにライブラリーの上から3枚めくって《セラのアバター》があれば、そのまま出せるのです。《セラのアバター》でなくてもクリーチャーカードがめくれれば、どれか1枚だけ出せるのです! 相手も同じようなことをしますが、出てきたクリーチャー同士で格闘をすることになります。《セラのアバター》との格闘を耐えうるクリーチャーが相手のデッキに入っていることは滅多にないでしょう。

 しかし《セラのアバター》4枚だけが「当たり」だと確率が低いので、もう少しこの効果で出すと強いクリーチャーを増やしましょう。

 ということで、白羽の矢が立ったのが・・・

 本来のマナコストはとても重いのですが《ギルドの抗争》から出ればたったの6マナ。もし死亡してもワーム・トークンがたくさん。サイズは(期待込みで)《セラのアバター》に劣りますが、2番手としてはまずまずのスペック。

 このカードをフィーチャーすることによって、《全知》《世界火》と最重量級のカードを使ってきた今までの軌跡が感慨深いものになりますね。井川も僕も重いカード大好き! いや、井川が好きなのは《引き裂かれし永劫、エムラクール》だけかもしれませんが。

 《引き裂かれし永劫、エムラクール》もめくりたいくらい夢いっぱいの《ギルドの抗争》ですが、「当たり」2種類を元に肉付けしていきましょう。アップキープに戦場に出ることによって《投げ飛ばし》もプレイしやすそうで素敵!

 いざ構築ということで、できたのがこちら!

「Guild Wars」[MO] [ARENA]
4 《
3 《平地
1 《
4 《寺院の庭
2 《陽花弁の木立ち
2 《根縛りの岩山
4 《断崖の避難所
3 《魂の洞窟
1 《処刑者の要塞
1 《ケッシグの狼の地

-土地(25)-

4 《国境地帯のレインジャー
4 《悪鬼の狩人
4 《高原の狩りの達人
4 《修復の天使
4 《スラーグ牙
4 《セラのアバター
2 《静穏の天使
3 《世界棘のワーム

-クリーチャー(29)-
2 《投げ飛ばし
4 《ギルドの抗争

-呪文(6)-
4 《スレイベンの守護者、サリア
2 《忌まわしきものの処刑者
2 《静穏の天使
2 《真髄の針
2 《天啓の光
2 《押し潰す蔦
1 《魂の洞窟

-サイドボード(15)-


 ナヤカラー(緑白赤)の優秀な「戦場に出たとき」能力持ちのクリーチャーで固め、《ギルドの抗争》で何をめくっても付加効果があるようにしました。

 《悪鬼の狩人》がめくれて、相手のクリーチャーと格闘をして死亡した場合、(「戦場に出たとき」の能力と「戦場を離れたとき」の能力をスタックに置くべきタイミングが同じになるので)「戦場に出たとき」の方を先にスタックに乗せてしまえば相手のクリーチャー1体を追放したままにできるのです! 《静穏の天使》でも同じような挙動ができますが、そもそもあんまり格闘に負けなさそうですね。

 《処刑者の要塞》は、《ギルドの抗争》で出したクリーチャーがすぐに攻撃できるのと、地味に+2/+0されるので《セラのアバター》を《投げ飛ばし》する時に少し足りない!なんてときにも役に立ったりします。警戒がつくだけで均衡している場では有利になることもしばし。《世界棘のワーム》が速攻トランプル警戒で相手に襲いかかるのは凄く気持ちいい!

 メインデッキにはクリーチャーでない呪文が6枚しか入っていないので、サイドから《スレイベンの守護者、サリア》が火を噴く場面も! キーカードの《ギルドの抗争》が重くなってしまいますが、相手が嫌がって《スレイベンの守護者、サリア》を除去しようと動いてくれるので、《ギルドの抗争》が安全に唱えやすくなります。

 《月の賢者タミヨウ》で《セラのアバター》や《世界棘のワーム》がタップされ続けたり、《オリヴィア・ヴォルダーレン》でコントロールを奪われたりしてしまう事態を考えて、《真髄の針》でその動きを封じてしまいましょう。《オリヴィア・ヴォルダーレン》は吸血鬼なので《忌まわしきものの処刑者》も一緒に使いましょう。



 今回は既存のナヤデッキに《ギルドの抗争》と「めくれたら当たり」のカードを入れた構成にしましたが、《ギルドの抗争》の分だけ手数が増えるので、もっと既存のデッキに近づけて《ギルドの抗争》だけをタッチするアプローチも面白いかもしれません。

 《黄金夜の刃、ギセラ》や《グリセルブランド》等の「当たり」カードをたくさん詰めて、《ギルドの抗争》を高速で設置するようなアプローチも面白そうですね。
 このようにまだまだ注目されていない面白いカードがグランプリ・名古屋で旋風を巻き起こすことを期待しつつ、今回はこれでおしまい!

 また別の次元でお会いしましょう!

(・・・ますか?・・・聞こえますか? あなたの脳に直接語りかけています。天使ちゃんマジ天使なんて言っている場合ではありません・・・グランプリ・名古屋の調整に戻るのです・・・使うのはマンモス・・・マンモス・・・天使ではなくマンモスを使うのです!)

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