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週刊デッキ構築劇場

第83回:吉川祐輔のデッキ構築劇場・1パックからはじめる構築入門

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週刊デッキ構築劇場

2012.10.22

第83回:吉川祐輔のデッキ構築劇場・1パックからはじめる構築入門

演者紹介:吉川 祐輔

 ライターおよび編集者。2000年代前半から観戦記事ライターとして活動し、黒田正城が初優勝を果たした2004年のプロツアー・神戸、日本勢が三冠を成し遂げた2005年の世界選手権、渡辺雄也がその名を世界に知らしめた2007年のグランプリ・京都など、節目となる場面に立ち会い、『伝承の語り部(テラー・オブ・テイルズ)』として選手の偉業を文字に残した。
 現在は、当サイトmtg-jp.comの編集や管理を主に担当している。


 突然ですが、あなたはどのように「デッキ構築」を始めますか?
 自分の使うカードを選び、デッキを組み上げていくことはマジック:ザ・ギャザリングの大きな魅力のひとつですが、いざやってみようとすると難しいものです。
 ルールはわかったけど、どうデッキを組んでいいかわからない...。
 持っているカード、好きなカードを詰め込んでみたけど、スムーズに遊べない...。

 そんなあなたに、今回はいくつかの製品を例に、「デッキ構築のはじめ方」をお伝えしていきたいと思います。
 すでにマジックの魅力にどっぷり!という方も、マジック仲間を増やすためのひとつの方法としてご覧いただければ幸いです。


ブースターバトルパック編

 『ラヴニカへの回帰』から、「ブースターバトルパック」という商品が日本語版でも発売されました。

ブースターバトルパック

 「2人用ゲーム」とあるとおり、1パッケージに2人分のミニデッキが封入されていて、これだけで2人でゲームができるという便利なシロモノです。

開封後のデッキ2つの写真

 そして、この製品にはブースターパック2つが含まれています(写真ではカードの束の下に少し見えています)。
 これで、
「ブースターパックを開けて得たカードで、デッキを強化する」
 というデッキ構築の流れを体験することもできるのです。
 また、経験者の方も、「家にデッキ忘れちゃった」「気軽に出先で楽しみたい」というときに、これ1パックで完結する便利な一品。
 そんなブースターバトルパックの遊び方の流れをご紹介してまいりましょう。

 デッキの内包装を開封すると、カード22枚とブースターパック1個が出てきます。
 カードは『ラヴニカへの回帰』で登場するギルド(セレズニア=緑白、アゾリウス=白青、イゼット=青赤、ラクドス=赤黒、ゴルガリ=緑黒)のいずれかにちなんだものになっています。

イゼット・開封後の写真1

 このデッキはイゼットのもののようですね。土地が11枚、その他の呪文が11枚という内訳です。
 土地が入っているので、このままでもゲームはできるのですが、デッキを強化してみましょう。付属のブースターパックを開封します。

イゼット・開封後の写真2

 パックからは、イゼットのデッキを強化しそうなカードが数枚登場しました。
 レアは《対抗変転》ですね。色が合っているので、せっかくなら使ってみたいものです。
 ここから5枚を選び、先ほどのミニデッキ22枚に加えて27枚のデッキにします。

 最終的にはこのようなデッキになりました。

イゼット・整備済みデッキ

ブースターバトルパック イゼット・サンプルデッキ[MO] [ARENA]
5 《
5 《
1 《イゼットのギルド門

-土地(11)-

1 《都市内の急使
1 《凍結燃焼の奇魔
1 《ヴィーアシーノのゆすり屋
1 《どぶ潜み
1 《ルーン翼
1 《暴れ玉石

-クリーチャー(6)-
1 《ミジウムの外皮
1 《電謀
1 《瞬間移動門
1 《対抗変転
1 《取り消し
1 《滅殺の火
2 《本質の反発
1 《思考閃光
1 《爆発の衝撃

-呪文(10)-


 これで、同じようにデッキを構築した対戦相手と遊ぶだけです。お手軽ですね!

 ひととおり遊んだら、ブースターパックを購入して、同じようにカードを追加していくのも面白いかもしれません。その際は、デッキの中の土地が約40%になるように、土地カードを追加することを忘れずに!
(目安:30枚デッキで12枚、40枚デッキで17枚、60枚デッキで24枚。遊んでみた感覚で増減してみてください。)

 経験者が教える時の注意点として、ここで完成するデッキは「27枚」という、リミテッドの40枚・構築の60枚を大幅に下回る、小さなものになるということです。
 あっさりと呪文を使い果たしてしまう展開になることもありますので、快適に遊べるようにルールを変更することが必要かもしれません(例えば、初期手札や初期ライフ)。

 まず27枚という少ない枚数ながら、デッキ構築の流れが理解できるのがブースターバトルパックの魅力です。


エントリーセット編

 同じような流れでデッキ構築を体験できる製品として、『マジック基本セット2013』のエントリーセットがあります。

エントリーセット写真・白青

 こちらは、それぞれ1体の「伝説のクリーチャー」を中心に構築された2色・60枚の構築済みデッキです。さらに、『マジック基本セット2013』のブースターパック2個が含まれています。

開封済み写真・白青

 各デッキごとに、「どんなことをするデッキか」というコンセプトがまとまっています。
 このままでも十分に遊べる内容ですが、先ほどの流れにしたがって、ブースターパックからカードを追加することで、デッキの強化を考えてみましょう。

 さきほど、イゼットのデッキを扱ったので、同じ青赤のデッキ、《空召喚士ターランド》を中心にした「力の深淵」を題材に考えてみます。

力の深淵
基本セット2013 エントリーセット[MO] [ARENA]
15 《
8 《
1 《進化する未開地

-土地(24)-

3 《クラーケンの幼子
2 《ボーラスの占い師
1 《濃霧の層
3 《風のドレイク
2 《巻物泥棒
2 《古術師
1 《空召喚士ターランド
2 《心爪のシャーマン
1 《湾口の海蛇
1 《嵐潮のリバイアサン

-クリーチャー(18)-
1 《打ち寄せる水
1 《溶解
1 《送還
1 《不死の霊薬
3 《灼熱の槍
1 《本質の散乱
1 《否認
2 《予言
2 《ターランドの発動
1 《巻き直し
1 《睡眠
1 《金屑化
1 《どんでん返し
1 《イーヴォ島の指輪

-呪文(18)-


 このとき、ポイントになるのデッキのコンセプトです。
「ブースターバトルパック」では色が合うカードをとりあえず入れましたが、色が合うカードの中でも、やりたいことを絞り込むことで目的が明確になり、よりデッキは強く、よりゲームも楽しくなります。

 たとえばこの「力の深淵」デッキは、「インスタント・ソーサリー呪文で相手の攻撃をさばき、《空召喚士ターランド》につなげる」ことがコンセプトといえます。

 呪文を使うことで《空召喚士ターランド》を引くまでの時間を稼ぐことができ、《空召喚士ターランド》を出したあとは呪文でそれを守ることでドレイク・トークンを出せるので、そのまま勝ち手段になります。
 よりよい呪文を取り入れることが、このデッキには必要そうです。

 呪文に長けている、ということではイゼットの特徴そのもの。ここはイゼット団に協力を仰いでみることにしましょう。

 先ほど登場したカードの中では、《どぶ潜み》は呪文を唱えると相手にダメージを与えられるので、「呪文がそのまま勝ち手段になる」という点で《空召喚士ターランド》と似ていますね。

 それ以外にも、《思考閃光》をはじめとするドロー呪文は、《空召喚士ターランド》を引くまでの時間を短くし、引いたあとは息切れを防ぐ手段にもなります。
 《対抗変転》《取り消し》のような打ち消し呪文も《空召喚士ターランド》を守ることができます。

 『ラヴニカへの回帰』だけでなく『マジック基本セット2013』のブースターパックからもカードを取り入れていきましょう。

 《ボーラスの占い師》《古術師》などは、身を守りながら呪文を見つけ、呪文を再利用することができます。
 デッキにすでに入っていて、まだ4枚ではないカードを4枚に増やしていくことで、デッキの動きが明確になっていきます。

 しかし、1個のブースターバトルパック、付属のブースターパックからでは、デッキを強化するカードを見つけられないこともありますね。
 デッキ構築を進めていくと、もっと欲しいカードはいっぱいありますが...


仲間と遊ぼう、トレードをしよう

 ところで、ブースターバトルパックには、2個のデッキが含まれていませんでしたか?

 最初のゲームでは分けて、自分の持っているカードの範囲でデッキを構築しましたが、余ってしまうカードもありました。ブースターパックからのカードは、色が合わず使い切れない、ということもありますね。
 そうしたカードは相手にもあるはずです。
 それならば、交換してみてはいかがでしょうか?

 例として、仲間と一緒にはじめるときに、好きな色・好きなギルドをそれぞれ選ぶのはいかがでしょう。ブースターバトルパックで出たものを担当することにしてもよいでしょう。

ギルドを選ぼう!

 自分の使いたい色・ギルドのカードを、自分の使っていないカードを交換していくと、それぞれがやりたいことをはっきりさせ、カードを有効利用できるようになります。

 それが、「トレーディング(=trading、交換する)」カードゲームであるマジックの魅力のひとつなのです。


より進みたい人のために

 より「コンセプト」を明確にして構築された製品に、今週金曜日(26日)発売の「イベントデッキ」があります。

 ラヴニカへの回帰 イベントデッキ

 こちらは相手に応じたサイドボード入れ替え用のカードも用意されており、より試合を念頭に置いた、即戦力の構成になっています。
 すぐにトーナメントに出たい!という方だけでなく、デッキのコンセプトを知るという点でも参考になるのではないでしょうか。

 限られた予算でデッキを構築する、という試みとしては、翻訳記事の「ReConstructed」で何度か特集しています。そちらもあわせてお読みいただけると、コツがつかめるかもしれません。

 トーナメントではさまざまな形のデッキが活躍しており、最初から「完成形」を目指すのももちろん面白いものです。
 でも、小さなデッキを種にして、少しずつ強化していく、という楽しみ方から始めるのはいかがでしょうか。
 そんなとき、ブースターバトルパックやエントリーセットが役に立つと思います。

 よいマジックライフを!

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