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週刊デッキ構築劇場

第73回:清水直樹のデッキ構築劇場・ずっと山羊さらいのターン!

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週刊デッキ構築劇場

2012.08.13

第73回:清水直樹のデッキ構築劇場・ずっと山羊さらいのターン!

演者紹介:清水 直樹

 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・アヴァシンの帰還 トップ8、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
 「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
 また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
 代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。


 皆さんこんにちは!!

 夏は冷房の効いた室内でマジックを楽しむのが一番!? そんな皆さんはきっとこのカードプールが最も広いスタンダード環境を存分に楽しんでいらっしゃることと思います。

 あるいは各地で白熱したプロツアー予選を戦ってきた!という方も多いかもしれません。とにかく夏はスタンダードがアツいですね!

 ちょっとプライベートな事情もありスタンダードから離れ気味ではあった僕なのですが、やっぱりこの時期はスタンダードが一番面白いよね、ということで色々とインターネットから情報を収集していたところ、最近《交易所》が少しずつ流行の兆しを見せ始めているようですね!!

 そういえば先週のらっしゅの構築劇場でも本題は《交易所》でしたね。

ヤギ・トークン

 やはり時代はヤギ・トークン、ということですかな。

ヤギ・トークン10

 ヤギ・トークンで盤面を埋め尽くしてもふもふするというのが流行りに違いない!


 ...え?違うの?

 一番下の能力でこのへんを回してアドバンテージ獲得!という極めて真っ当な使い方でした。メェェ...

 ヤギ・トークンのようなゆるふわ系キャラをこよなく愛する僕としては(例:《アメーバの変わり身》)、
 ただヤギ・トークンでチャンプブロックするだけというのはどうも忍びないのでもっとこう、夢の溢れるような交易を実現したいんですよね。例えばヤギでビートダウンしてみたり! パワー0だけど。

 というわけでもう一度《交易所》を見直してみると、ちょっと気になる一文を見つけました!

{1},{T},クリーチャーを1体生け贄に捧げる:あなたの墓地にあるアーティファクト・カード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。

 こ、これだ!

 《交易所》で作ったヤギ・トークンをイケニエ、もとい、もふもふすることにより、アーティファクトを回収!
 もちろん回収するのはこれだ!

 都合11マナで、クリーチャー(主にヤギ)が続く限りずっと対戦相手を操り続けることができるぞ!

 というわけで、今回はこの「ずっと俺のターン」コンボを軸にデッキを構築劇場してみたいと思います。
 ついでに、流行の「水源」システムにも乗っかっていきたいと思いますが、本文では、デッキ完成に至るまでの僕の思考の過程をそのまま文章にしてご紹介しましょう。いかに僕が楽しさ重視でデッキ構築を進めていっているのかがわかるかと思います!

 まず、連続で《精神隷属器》を起動するには6+4+交易所の起動の1マナ=11マナという条件をクリアすることが必要になってくるのですが(《交易所》が2枚あれば12マナでずっと俺のターン!)、そこで白羽の矢がたったのがこれです。

 効果を知らない人もいるかもしれないレベルのカードですが、実は古の《ミラーリの目覚め》にも匹敵する強力なものです。

 できるだけ色を絞ってデッキを作ることで、6マナ→12マナという奇跡的なジャンプアップを可能にしてくれて、ついでに、指定した色のクリーチャーのサイズを+1/+1修正することができます。そして《かごの中の太陽》、《精神隷属器》、ともに6マナのアーティファクトということで、この男の登場です。

/ 宝物の魔道士「ちーっす」

 いやぁ、もうすぐスタンダードからいなくなってしまうこのタイミングで、とうとうコイツをデッキ構築劇場で採用することができました。いつかどこかで使ってやろうと思ってタイミングを見計らっていたんですが、なかなか機会がなかったんですよね!

 ちなみにコイツ、本体はこの竜みたいなのの上にのってる奴の方です。竜みたいなやつが6マナのアーティファクトっていう図です。最初見たとき騙されました。これで2/2なの!?みたいな。

 と、ここまで考えていたら、脳内で声が聞こえました。

/ 大建築家「呼んだ?」

 ま た お 前 か

 《宝物の魔道士》+《大建築家》という極めてフツーな組み合わせで、しかも《精神隷属器》とも相性がいいカードのようにも思いますが、しかしながら《大建築家》は前回僕が使っていますし、さすがに同じようなネタを2週連続でもう1回というのはちょーっと気が進みませんでした。当然、可能性のある構築だと思いますが。 《空召喚士ターランド》とかも強いですし。
 そのあたりのカードが好きな皆さんは是非挑戦してみてください。

 そんなこんなで今回は《大建築家》禁止としてみました。これで少し真新しくなるでしょう。

 必死に他の方法を考えていたところで、もういちど《交易所》のテキストを見直しました。

{1},{T},ライフを1点支払う:白の0/1のヤギ・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。

 ・・・ヤギ、白いのか!!

 ということは、《かごの中の太陽》で白を指定することにより、サイズが1/2になる!! ヤギでビートダウンできる!! メェェェ!!!

 めでたく《かごの中の太陽》は白を指定するということが決まったので、おのずと白がメインのコントロールデッキにアイデアはシフトしていきます。

 そこで見出したのは、やはりまたしても《交易所》のテキストから!

{1},{T},アーティファクトを1つ生け贄に捧げる:カードを1枚引く。

 ・・・! インスタントタイミングでカードを1枚引ける! ということは「奇跡」と相性抜群じゃないか!

 そういえば解説されていませんでしたが、先週のらっしゅのデッキにも《終末》が4枚入っていたのはそういうことだったに違いない! こうなってくれば、必然的に《天使への願い》は採用するしかないでしょう。なんといっても《かごの中の太陽》との相性は抜群!

 ちょうど《ミラーリの目覚め》と《正義の命令》のコンボと同じ関係ですね。もうかなり古い時代のカードたちですが...。

 あとはこのコンセプトを軸に、序盤を守るカードを組み合わせていけば、めでたく今回のデッキが完成です!

『The Warashibe Master』[MO] [ARENA]
10 《平地
1 《
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
4 《ファイレクシアの核
1 《埋没した廃墟

-土地(24)-

3 《宝物の魔道士
2 《ファイレクシアの変形者
3 《真面目な身代わり
1 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(9)-
3 《太陽の宝球
2 《清純のタリスマン
3 《胆液の水源
3 《マイコシンスの水源
4 《交易所
1 《審判の日
4 《終末
1 《かごの中の太陽
1 《精神隷属器
1 《イシュ・サーの背骨
2 《天使への願い
2 《エルズペス・ティレル

-呪文(27)-
3 《幻影の像
1 《ファイレクシアの変形者
3 《墓掘りの檻
3 《天界の粛清
2 《存在の破棄
1 《漸増爆弾
1 《忘却の輪
1 《天使への願い

-サイドボード(15)-

 完成品はなかなか禍々しいデッキになりました。

 序盤は流行のコンセプトである「水源」システムでアドバンテージを稼ぎつつ、たまたま都合よく《終末》が「奇跡」しちゃったりして盤面を一掃。

 またしてもたまたま《天使への願い》が「奇跡」しちゃったらあなたの勝ちですが、流石にそこまで世の中甘くないので稼いだ時間を使ってせっせとマナを集めます。《交易所》がもたらすヤギ・トークン、あるいは「水源」のアドバンテージが大きな助けになります。

 《宝物の魔道士》経由などで《かごの中の太陽》が置けたら、あとはもう溢れんばかりのマナを使ってやりたい放題やるだけです。めでたく《交易所》と《精神隷属器》も揃えば、クリーチャーが続く限り相手のターンを操り続けることができます。

 まさしく「ずっと 俺の ターン!!」

 後半使い物にならなくなった《清純のタリスマン》や《太陽の宝球》をドローに変換できる《交易所》は本当に強いですね。

 そこからたまに「奇跡」が起きちゃったりすることも考えると、このカードが流行するのも分かる気がします。
 やっぱり1枚のカードで色々なことができるというのはデッキ構築を考えていく上でも、プレイを考えていく上で楽しいですしね。今回のデッキでは一番上の、カードを捨ててライフへ変換する能力についてはほとんど利用していないのですが、たとえばリアニメートデッキなどでは活躍の場があるんじゃないかと思います。

 最近めっきり見なくなりましたが、《エルズペス・ティレル》の採用は自分でもなかなか面白いと思った選択で、能力で出てくる兵士・トークンが白いので《かごの中の太陽》で恩恵を受けられ、《交易所》と《精神隷属器》が合わされば完全に「無限スレイバー」となります。

 《精神隷属器》が手に入るまではライフゲインや、兵士・トークンによる時間稼ぎが可能ですね。大事なことですが、最終奥義を使ってもヤギ・トークンは流れません! ヤギ・トークンは流れません!

 《真面目な身代わり》もこのデッキではなかなか地味な活躍をしてくれます。
 《交易所》との相性が抜群であるということはもちろんのこと、相手のターンに《ファイレクシアの核》に突っ込むことで「奇跡」を起こせるかもしれません! もちろん《かごの中の太陽》などの6マナ域まで到達するにも大きな助けになります。

 サイドボードの《幻影の像》も加えて、《ファイレクシアの変形者》はほぼ《聖トラフトの霊》の対策のために入れています。
 対消滅をした後は、《交易所》で回収することもできますし、《宝物の魔道士》に化けて《かごの中の太陽》+《精神隷属器》を可能にしてくれるカードでもあります。
 最近は青いデッキでは《空召喚士ターランド》がかなりよく見られるようになりましたし、伝説対策の《クローン》というのは秋までお世話になりそうです。

 《イシュ・サーの背骨》は最近《交易所》との相性から色々なリストで見かけるようになった1枚ですね。見ての通り《宝物の魔道士》で持ってくる専用です。
 場に出るだけで仕事が完了してしまうという、7マナの割にずいぶんあっさりとしたアーティファクトではありますが、墓地に落ちたときに手札に帰ってくるので、《交易所》で生け贄にするとカードを引きながら手札に戻すことができるとか、想像するだけで楽しそうです。

 《滞留者ヴェンセール》とコンボさせちゃうと更にハッピーの期待値が上がるのでやりすぎくらいがちょうどいいとお考えの方は是非。

 最終的に、このデッキは勝ち手段として《天使への願い》のラッキーパンチと、無限《精神隷属器》を考えているわけですが、後者を実現することで、冗談のように言っていたヤギ・トークンによるビートダウンができるかもしれません!!

 《精神隷属器》で操られてしまった対戦相手と一緒になってもふもふすれば、きっと負けた相手もゆるふわな気分になれるに違いありません。

 実際には投了されちゃうでしょうけど。

 いや、そういう現実的な考えはやめときましょう。夢がない。ちゃんとヤギ・トークンは可愛いのをそろえておいてくださいね!

 デッキ名はたくさん交易をすることになる、というわけで『わらしべ長者』です。0/1のヤギ・トークンが《精神隷属器》と交換できるなんて、便利な世の中になったものです。

 是非皆さんもたくさん交易して、利益拡大、市場活性化、景気回復を目指して下さい!


 それではアツい夏をまだまだ楽しみましょう!
 
 Decks,be Ambitious!!

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