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週刊デッキ構築劇場
第60回:浅原晃のデッキ構築劇場・PW人材派遣会社5?イニストラード総選挙
読み物
週刊デッキ構築劇場
2012.05.07
第60回:浅原晃のデッキ構築劇場・PW人材派遣会社5-イニストラード総選挙
演者紹介:浅原 晃
マジック界のKing of Popとして知られる、強豪プレイヤーにして、デッキビルダー・ライター。主な戦績は、世界選手権05・世界選手権08トップ8、グランプリ優勝2回、The Finals2連覇など。
「構築戦はビルダーの舞踏会。タキシードでないデッキはジャージ」といいつつ、時に斬新なデッキを持ち込み、時にトップメタのデッキを使うという虚実入り交じった発言で人々を惑わせる『A級の虚影(エーツー)』。
ゴブリンデッキに《怒りの天使アクローマ》を投入するなどの柔軟な発想から海外でもカルトなファンが多く、また、構築・リミテッドを問わず見せる高いプレイスキルから国内プロからの信頼も厚い。・・・が、虚構も多いので、虚構を虚構と見抜ける人間でないと浅原のアドバイスを受けるのは難しいと言われている。
代表作は、自身のビルダーとしての原点という「アングリーハーミット・ゼロ」、荒堀 和明のグランプリ・仙台優勝によって世間の注目を集めた「アサハラ・ゾンビジム」、ヴァージョン6まで存在する勝ち手段の存在意義を問うた問題作「みのむしぶらりんしゃん」、God of the Deck略して「G.o.D.」、Wander Deck「The One」他多数。
第1話、第2話、第3話、第4話も合わせてご覧ください。
※この物語はフィクションです。
あらすじ
獄庫の破壊によって大天使アヴァシンが解放され、空前の天使フィーバーによって沸き上がるイニストラード。しかし、その熱狂の中で冷静にチャンスを狙うプレインズウォーカー達が居た。イニストラードの未来を占う第2の戦いが始まろうとしていた。
■都市スレイベンにて
暇なアジャニ、チャンドラ、ジェイスの3人はイニストラードの都市スレイベンに観光に来ていた。
アジャニ「何やら賑わっているらしいから観光に来てみたが、確かに人間達が活気づいてるな。」 |
チャンドラ「《獄庫》の破壊でアヴァシンが解放されて、イニストラードの状況が一気に変わったからね。ゾンビやら幽霊やら吸血鬼が幅を効かせていた暗黒時代は終わって、ついに我々の時代だ!っていう感じらしいわよ人間達は。」 |
「なるほど、何があったかは詳しくは知らないが、世の中の動きは早いようだな。それにしても、若干浮かれ気味のような気もするが・・・」 |
ジェイス「大抵、抑圧からの解放っていうのはそういうものですよ。ただ、独立とか解放とか革命ってそれを成し得た後の方が大変なんですけどね。」 |
タミヨウ「その通りね! 燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。本当はこれからが重要なのに、それが民衆には分からない。そして、歴史が証明しているように戦争での英雄が平和では邪魔者として扱われることさえあるわ、溺れるものは藁をも掴む。しかし、陸地に上がれば藁なんて捨てられるでしょう。これからのこの国には戦いの英雄ではなく、生きるための、復興のための月明かりが必要なのよ。」 |
「えっ、誰? 何言ってるの?」 |
ティボルト「おう、猫野郎、相変わらずだな。つまり、誰が舵を取るかって話だよ。お茶飲むか、お茶?」 |
「だから、誰ぇぇ!」 |
「絡まれ癖があるからね、アジャニは・・・」 |
「この2人、どこかで見たことがあるような・・・」 |
■イニストラード総選挙
「イニストラードの戦いは大体終わったが、《月皇ミケウス》もあんな《不浄なる者、ミケウス》になっちゃったし、このイニストラードの未来をどうするのかって話に繋がるのか。それで、結局お前達は誰なんだ?」 |
「私はあらゆる次元を渡り歩き月の研究をしているプレインズウォーカー。しかし、その真の姿はあらゆる知識を持ち、世界の政治のあり方をどこぞの馬の骨に解説して回るのが趣味の選挙フリークよ。」 |
「そして俺は小悪魔と融合した半人半悪魔のプレインズウォーカー。しかし、その真の姿はあらゆる苦痛の与え方を研究するため、あらゆる次元で落胆する人を探して回るメシウマ大好き人だ。」 |
「つまり・・・2人とも単なる野次馬ね。」 |
「失礼千万! まあ、いいわ。世界で一番熱いものを知らないようだから解説しましょうか、それは選挙戦よ。虚々実々が入り混じる戦いは心・技・体、その全ての力が試される。そして、このイニストラードでも国をすべる代表を選挙によって決められることになった。私が月の導きによって登場するのもまさに必然の理ね。」 |
「選挙と言えば落胆や失望が付き物だ。それで俺の登場ってわけだな。」 |
「なるほど、イニストラードの人々の投票によって代表を決めるという訳か、俺なんかはそのままアヴァシンが国を治めてしまえばいいと思うのだが・・・」 |
「圧倒的浅慮! そうはうまくはいかないのが政治よ。作られた存在のアヴァシンに統治は難しい。そもそも戦場での英雄はあくまで戦場での英雄。ジャンヌダルクをご存知かしら?、あの英雄も最後は凄惨なものよ。それに力を持ちすぎたものが頂点に立つのはバランスが悪いのよ。このイニストラードにはさまざまな種族が居る、それらを統治するのに頂点が偏った力を持っているのは歪みになるわ。」 |
「な、なるほど・・・」 |
「本当に選挙戦は行われるようですね。タミヨウさん、立候補者は何人くらい居るんですか?」 |
「私の見立てによると有力な候補は3組、それぞれ立候補者とそれをサポートする参謀がセットの2人1組編成になっているわ。これからそれぞれの選挙演説があるから、聞いてみるといいわね。それにこの選挙ではその立候補者の志やマニフェストをマジックのデッキで表すことになっているのは覚えておきなさい。」 |
「何故マジックのデッキで?」 |
「おいおい、誰もが口では簡単に嘘を付けるが、デッキでは嘘を付くことはできない。常識だろ?」 |
「な、なるほど・・・」 |
イニストラードの村人「ワーワー、ワーワー。」 |
「そろそろ、始まるわね。」 |
■その1 アヴァ新党 【ソリン&アヴァシン】
ソリン「皆様、それでは始めさせていただきます。」 |
「あれはソリン会長じゃないか。そういえば、イニストラード出身だったような。」 |
「現在の最有力候補よ。アヴァシンを作り上げた救国のプレインズウォーカーというアドバンテージがあるわ。それで、アヴァ新党を立ち上げての今回の立候補よ。」 |
「雌伏のときを経て、ついに我々はイニストラードでの戦いに勝利しました。しかし、本当の戦いはこれから開始されるのです。私はアヴァシンを作り上げたものとして言えること、それはこの国を救うことができたのが私しかいないということです。それはこれからも変わらないことではないでしょうか。あなた達に降りかかった、絶望という名の闇を振り払ったのは誰でしょうか? それは、奇跡をという名の光、アヴァ新党では『奇跡』を起こし続けることをマニフェストとして掲げます!」 |
アヴァシン「皆様、ソリンをなにとぞよろしくお願いします。」 |
「さすがにこれは決まりじゃないかしら、アヴァシンも居るし。」 |
「いや、怪しいわね。ソリンは人間に肩入れしすぎなのよ。イニストラードはいろいろな種族が居るといったわよね。吸血鬼には裏切りものとして嫌われているし、ゾンビやグールはさすがにアヴァシン側には投票しないでしょう。」 |
「ちょっと待ってくれ、ゾンビや吸血鬼にも投票権があるのか?」 |
「当たり前だろ、それが平等ってもんだよ。まあ、平等こそ最高の不公平ではあるがな。」 |
「だから、特定の地域で強いけれど投票地域によっては苦戦を強いられるのは間違いないわ、多くの人種や種族が居る場合の選挙戦ではああいった特定の層の人を押しすぎるのは良くないの。ほら見なさい、吸血鬼やゾンビの顔色が良くないでしょう。」 |
吸血鬼・ゾンビ「ブーブー。」 |
「いや、あれは元からでは・・・」 |
「シャラップ!」 |
「・・・」 |
「私が皆様に提示するデッキも『奇跡』を中心にしたものです。『奇跡』は信じれば誰でも起こすことができるでしょう。人間の人間による人間のための政治をこの『奇跡』によって実現させましょう。」 |
6 《島》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 4 《平地》 4 《断崖の避難所》 2 《僻地の灯台》 -土地(24)- -クリーチャー(0)- |
4 《終末》 4 《消え去り》 2 《払拭の一撃》 4 《時間の熟達》 2 《壊滅的大潮》 4 《天使への願い》 1 《忌むべき者のかがり火》 4 《思案》 3 《思考掃き》 4 《熟慮》 2 《盗品》 2 《月の賢者タミヨウ》 -呪文(36)- |
「『奇跡』がいかようにしてあなた達を助けてくれるのか、このデッキを回していただければ分かると思います。すべてのタイミングで、そして、あらゆる相手に対して『奇跡』はあなた方を助けてくれるでしょう。もちろん、相手のターンであっても、《熟慮》などのドローを利用しての『奇跡』が可能になっています。最終的には天使達があなた方を助けてくれるはずです。」 |
「あれだけ入れれば確かに『奇跡』は起こせるだろうな。」 |
「ふん、やはり、あいつは典型的な理想主義者だな。理想主義者は妥協というものを知らない。確かに『奇跡』が常に力を発揮すれば驚異的なパフォーマンスとはなるが、その代償としてデッキの動きの振り幅は大きくなる。」 |
「見た感じ面白そうだから、個人的には使ってみたいデッキね。」 |
「デッキはともかく、面白そうなことを提示するだけして、物事をぶち壊すのはいつも理想主義者なことは多いわ。」 |
「このデッキ、相手の『奇跡』は嫌がってるみたいですね。《思考掃き》や《盗品》まで入ってますし。一応《消え去り》からの《盗品》で相手のカードを利用とかも可能ですが。」 |
「私の紋章で《盗品》を連打するのは楽しそうではあるわ。しかし、もう少し現実を見たほうがいいかもしれないわね、建前だけの理論でどれだけ人を動かせるかというところだけど。」 |
「イニストラードはまだ不安定です。それを助けられるのは私しかいない、ぜひ私に一票をお願いします。」 |
ニッサ「クックックッ・・・、張りぼての奇跡はそこまでだゾッ。ソリン・マルコフ!」 |
「もしかして、アレも立候補者?」 |
「そうね、ニッサ・レヴェイン。参謀はリリアナ・ヴェス。リリアナは悪評が広まっているから、ニッサを表に立てて立候補したようね。」 |
「面白くなってきたじゃねぇか。」 |
■その2 罠主党 【ニッサ&リリアナ】
「ソリンは甘い! もっと現実を見なければ政治はできない。政治とは何か? それは実行力だゾッ。絵に描いた餅を食えるのは一休だけだゾ、お前は理想を抱えて餓死するんだゾッ!そもそも、奇跡は起こらないから奇跡なんだゾッ!ってリリアナが言ってたゾッ。」 |
リリアナ「最後の部分は余計よニッサ。ちゃんと私の言うとおりにやりなさい。これが成功すれば、私が残りの悪魔を倒す基盤としてこの土地を使えるから重要な役割なのよ。」 |
「ガッテン承知だゾ☆」 |
「あの2人も懲りないわね。」 |
「我らが罠主党では、実行力をモットーに政治を行っていくんだゾ。では、実行力を生み出すものは何かといえばそれはお金と出世なんだゾッ。私の考えでは能力こそが新時代で重宝すべきものになるんだゾッ。作る、いや、創るという作業には才能は不可欠なんだゾッ!」 |
「とりあえず、『罠』主党ってどういうこと?」 |
「元は何か分からないけど、単純にニッサがこっちの方がかっこいいとかで書き換えたんでしょうね。『罠』を主体とする政治とか聞いたことないし。」 |
「確かにあいつはゼンディカー生まれだったな、ある意味開幕から掴んできたな。」 |
「つまり、才能をしっかりと掘り起こすシステムが必要なんだゾ。それがお金&出世なんだゾ。答えられるもの、評価されるものが無いと誰も働かないんだゾ。お金を貰わずに働くと代わりに心が磨り減るんだゾッ。これは、当たり前なんだゾッ! よって、我々はお金と出世の道をすべての種族に平等に用意するんだゾ。ゾンビ、スピリット、狼男、何でも来いだゾ。いいじゃないか、ゾンビの医者が『ご臨終です』って人間を看取ったって、ええじゃないか、スピリットがボディービルダーとしてCMに出たって・・・だゾッ!」 |
「そこで、私はこのデッキをマニフェストとして用意したゾッ。『出世』に拘ったデッキだゾッ。」 |
6 《森》 2 《山》 2 《平地》 4 《銅線の地溝》 4 《剃刀境の茂み》 3 《陽花弁の木立ち》 2 《根縛りの岩山》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 4 《アヴァシンの巡礼者》 4 《絡み根の霊》 4 《刃の接合者》 1 《ソンバーワルドの賢者》 1 《悪鬼の狩人》 4 《修復の天使》 1 《真面目な身代わり》 1 《高原の狩りの達人》 2 《士気溢れる徴集兵》 1 《酸のスライム》 1 《業火のタイタン》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《不和の暴君》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 1 《孔蹄のビヒモス》 -クリーチャー(32)- |
4 《出産の殻》 1 《原初のうねり》 -呪文(5)- |
「自らの殻を打ち破ることで、どんどんと出世していくデッキだゾ。政治にとってもっとも重要な最大多数の最大幸福がここにあるんだゾ!」 |
「デッキ自体のベースは普通の《出産の殻》デッキぽいな。」 |
「これは、『アヴァシンの帰還』で加わった《修復の天使》と《士気溢れる徴集兵》がポイントですかね。《修復の天使》はそもそも単体でのスペックも高いですし、このデッキのクリーチャーは戦場に出たときの効果を持っているものが多いので、すべてのクリーチャーのポテンシャルを活かすってことを、マニフェストとして表しているのかもしれないですね。《士気溢れる徴集兵》は相手だけでなく、こちらの《出産の殻》を起こして使っても良くて、相性は抜群にいいですから。」 |
「後は《原初のうねり》を使えれば一発KOだな。さすがに重いが。」 |
「堅実なデッキを用意してきたわね。浮かれている民衆にはお金と出世は魅力的だし、実力社会を提示するのは思想としてはいいけれど。ここからどう締めるのかが見ものね。」 |
「そして、さらに言わせてもらうゾ。お金、そして、出世に関わる重要なポイント、それは賄賂だゾッ。お金を我々に渡すことで一気に出世への道が開けるんだゾ。お金=出世、これも常識だゾ。普通の政治ならば賄賂は渡したくても渡せない、そんなことは心配する必要はないんだゾ。私にとっては賄賂はよっしゃよっしゃなんだゾッ! パンが食べたければ賄賂を渡せばいいじゃない、だゾッ!」 |
「話が途端に生生しいからニッサのアドリブだろうな。多分リリアナもあちゃーっていう顔してるぞ。」 |
「・・・(あちゃー)」 |
「建前と本音のバランスは大切ね。本音を出して許されるのはカリスマを有した一部の政治家だけよ。画竜点睛を欠いたわね。」 |
「個人的にはああいう直球なのは好きだがな。真実から目を背け続けるとその社会は緩やかに死んでいくんだよ。」 |
「よっしゃよっしゃ言っちゃったら駄目ね。さすがにリリアナに連れて行かれたわ。さて次が一応、最後の有力候補ね。」 |
グリセルブランド「皆さん、おはようございます。」 |
■その3 天使のような悪魔の笑顔党 【グリセルブランド&ヴェンセール】
「私はグリセルブランド、元悪魔です。そして、こちらがヴェンセール、元プレインズウォーカーです。今度ともよろしく。」 |
ヴェンセール「幽霊から生まれ変わったっていう。これも何かの縁っていう。」 |
「あのグリセルブランドって、アヴァシンと一緒に《獄庫》に閉じ込められていた悪魔か。噂だとリリアナに殺されたんじゃなかったっけか?」 |
「おっと、皆さん、死んだ人を見るような不思議な顔をしていますね。しかし、こんなことわざを知っていますか。悪魔に九生あり。悪魔は死んでも生まれ変わることができるのですよ。そして、本来なら再び悪魔として蘇るところでしたが、アヴァシンの呪い黙らせによって、変化が生まれました。私は力を失いその代わりきれいな心を持った悪魔、きれいな悪魔として蘇ったのです。」 |
「僕もその影響で幽霊から、人間として転生したっていう。」 |
「そこで、生まれ変わった私達は話し合い、思いました。天使、悪魔、幽霊、人間すべての種族が手を取り合って生きていけないものかと。どの種族が勝ったとか、それこそ、能力主義とか、そういうのではないのです。助け合いこそがこれからの社会でもっとも重要なものではないかと。これは、悪魔からきれいな悪魔になった私が得た結論です。」 |
「いがみ合って足を引っ張り合ってる場合じゃないっていう。もっと重要な問題はいくらでもあるっていう。」 |
「例えば、天使と悪魔という対比、私もかつてはそういった宿命というものに縛られていました。生まれや育ちが与える影響はもちろん大きなものでしょう。私自身、自分が悪魔であるということに疑問を持ったことなど一度もありませんでした。しかしそれは間違いでした。思想が環境を作っているのではなく、環境によって思想が縛られていたのです。それは種族間の絆を作っていく上で最大の障害なっているのです。」 |
「みんなも、自分の心臓を人にあげることくらいはするべきっていう。」 |
「種族間を越えた絆を得る、それを目指すことが今のイニストラードに必要なことではないでしょうか、そこで私達は敢えて伝統的に敵とされる『天使と悪魔』そして『人間と吸血鬼』が共闘するデッキをマニフェストとして製作しました。」 |
5 《平地》 5 《沼》 2 《山》 4 《孤立した礼拝堂》 4 《断崖の避難所》 4 《黒割れの崖》 -土地(24)- 4 《大聖堂の聖別者》 4 《悪鬼の狩人》 4 《壊死のウーズ》 3 《ファルケンラスの貴種》 2 《士気溢れる徴集兵》 4 《グリセルブランド》 3 《栄光の目覚めの天使》 -クリーチャー(24)- |
4 《信仰無き物あさり》 4 《ゾンビの横行》 4 《堀葬の儀式》 -呪文(12)- |
「《グリセルブランド》を使ったデッキか。」 |
「《壊死のウーズ》も擬似的に《グリセルブランド》の能力を使うことができるし、《ゾンビの横行》か《信仰無き物あさり》で捨ててからって感じね。《ゾンビの横行》なら《グリセルブランド》で引いたカードをすぐゾンビに変えられると。《大聖堂の聖別者》はライフ回復かしら?」 |
「他にも結構ギミックが入ってますね。」 |
「このデッキは悪魔と天使、そして人間と吸血鬼が活躍するデッキです。《グリセルブランド》はもちろん、《栄光の目覚めの天使》がこのデッキの中核を成します。彼女によって墓地から帰還する、もっとも重要な要素は《悪鬼の狩人》でしょう、《悪鬼の狩人》で《栄光の目覚めの天使》を追放しておけば、《悪鬼の狩人》が墓地に落ちたとしても、また、《栄光の目覚めの天使》が戻ってきます、これによって、様々な効果が無限に利用できるのです。この多くの再利用のギミック、それが、私の模索する種族対話の方策『デビル八策』なのです。ただ、天使と悪魔の邂逅にはまず価値観のすり合わせが必要なるでしょう、よって、小学生の義務教育から天使と悪魔を同じクラスにし・・・」 |
「ふん、確かに《栄光の目覚めの天使》でいろいろできるな。吸血鬼も重要なパーツだ。《ファルケンラスの貴種》で《悪鬼の狩人》を生け贄に捧げれば、ループができていくらでも育つ。さらに《大聖堂の聖別者》が居れば"無限"ライフもできる。《グリセルブランド》で引き放題ってわけだ。《士気溢れる徴集兵》で相手のパーマネントを全部奪えるのも爽快だな。ただ、小悪魔は入ってねぇようだが。」 |
「このデッキのギミックに示された、『絆』というワード、彼らの境遇も含めて、民衆の心を打つ可能性は高いわね。ゾンビや吸血鬼の顔色も良くなって来たわ、ソリンもぐぬぬっといった様子。これは勝負ありかしら、皆さんはどう思います?」 |
「いや、正直、どうでもいいんだが・・・」 |
「怒!」 |
「ひぃ。」 |
「いや、待ってください、これで終わりじゃない。そうでしょう? やっと思い出しましたよ。あなたたち、伝説の選挙参謀、擁立した候補をすべて当選させる『伏龍と鳳雛』と呼ばれた2人じゃないですか? となるとここに居るのも、偶然ではないはず。」 |
「クール! 良く気づいたわね、さすがは精神の専門家と言ったところかしら。では、今回の仕事を始めましょうか、立候補に足る人材も見つけたしね。」 |
「よしやるか、このままじゃ、面白くないからな。」 |
「えっ、何か嫌な予感が・・・」 |
■その4 犬より猫党 『アジャニ&タミヨウ』
「何で俺が・・・」 |
「皆様、お聞きください。本当に重要なもの、それはあなた自身の心の中にあるものです。アジャニさんはそれをあなた達に教えてくれるデッキを示してくれるでしょう。」 |
「ではこのようにお願いします。」 |
6 《平地》 4 《魂の洞窟》 -土地(10)- 50 《聖所の猫》 -クリーチャー(50)- |
-呪文(0)- |
「ゴホン・・・イニストラードは大きな打撃を受けた。今はそう、世界もあなたたちも、このデッキのように何の能力もないバニラクリーチャーのみで作られたデッキのようなものだろう。でも、本当に重要なのは思い出してほしい、バニラクリーチャーにはこれからあらゆる能力を書き込めるということを。そして、それを書き込めるのは自分自身でしかない。君達は今まで、アヴァシンに頼ることで生きてきた。しかし、これからは自分自身の手で自分の能力を記していかなくてはいけないのだ。主導となるのはあなたたち自身、それを助けることが我々の役目になるだろう。」 |
「ワーワー。」 |
そして、アジャニは見事に当選したのだった。
「しかし、これから、どうするんだ一体。」 |
「私は月の研究のためにイニストラードを去りますので、後はティボルトさんにお任せしますね。」 |
「まあ、後は任せな。そろそろ俺の研究も進めたいしな、よし、最初の政策はこれだ。これはウケるぞ。」 |
「しょうがないと思っていたが、何かやる気が出てきたな。これが地位が人を作るというものか・・・イニストラードの未来を考えなければならないな。」 |
しかし、ティボルトが考えた最初の政策『猫類哀れみの令』は「猫に不快な思いをさせるものは死刑」というとんでもない法律であったため、アジャニ政権は三日で解散に追い込まれたのだった。
「バカヤロー!解散!解散!」 |
「うむ、今日も飯がウマい。」 |
環境も人間も何もかも最初はバニラクリーチャーである。それに何を足していくかは君達の心次第だ!
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