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週刊デッキ構築劇場
第37回:伊藤敦のデッキ構築劇場?再びモダンの世界へ?
読み物
週刊デッキ構築劇場
2011.11.07
第37回:伊藤敦のデッキ構築劇場~再びモダンの世界へ~
演者紹介:伊藤 敦 日本マジック個人ブログ界でも屈指の人気を誇り、『まつがん』のハンドルネームで知られる。 |
1000人規模を動員したグランプリ・広島も大盛況のまま終了し、気がつけばもう11月。今年も世界選手権の季節が近づいてきた。
11月17日からの4日間、サンフランシスコで開催される世界選手権(リンク先は英語)。そのフォーマットには、鉄板のスタンダードとドラフトに加え、プロツアー・フィラデルフィアに引き続きモダンが採用されている。
私もこのプロツアーに参加していたが、モダンという環境のカードプールの広さは、いちから自分でデッキを作るにあたって広すぎず狭すぎず、デッキ調整をしていて丁度良い按配だと感じていた(もっとも、本戦は大変に殺伐としたコンボ環境ではあったが)。
さてモダン環境といえば、プロツアーが終わった後に《緑の太陽の頂点》《思案》《定業》をはじめとする大量の禁止カードが追加され、さらにイニストラードも発売されているということで、環境の激変が予想されるところである。
年末に開催される「The Finals 2011」のフォーマットにもモダンが採用されていることからしても、このあたりで改めてメタゲームを整理しておく必要がありそうだ。
そんなわけで今回はイニストラード後のモダン環境のメタゲームについて俯瞰しながら、イニストラードのカードを使用したデッキを3つほど紹介していこうと思う。
◎青系コンボの凋落、そして残ったのは・・・
新たに追加された禁止カードの中で、最も多くのアーキタイプに影響を与えたのはこれらのカードだろう。
《紅蓮術士の昇天》、青単感染、ストーム、《集団意識》などなど・・・数ある青系コンボデッキを縁の下で支える優秀なドローサポートが一挙に2つも禁止となったことは、地味ながらコンボの速度を確実に削ぎ落としている。
もっともそこは広大なモダンのカードプールだけあって、一応は代替パーツがなくもないのだが、掘れる枚数やそのターン中に引けるカードの質など、やはり下位互換であることは否めないため、デッキパワーの低下は避けようがない。
加えて青赤コンボの3ターンキルの確率を押し上げていた《炎の儀式》まで奪われては、とりわけこれらのカードをキーパーツにしていた《紅蓮術士の昇天》やストーム系デッキは立ち直るのが難しいだろう。
どうやらウィザーズはどうしても我々に3ターンキルして欲しくないらしい。
だが、本当にもう3ターンキルは不可能なのか?
それを確かめるべく一人回しを繰り返した結果、1つのぶち切れ系デッキにたどり着いた。
4 《蒸気孔》 4 《霧深い雨林》 4 《沸騰する小湖》 1 《島》 1 《山》 -土地(14)- 3 《ゴブリンの奇襲隊》 1 《メムナイト》 4 《通りの悪霊》 -クリーチャー(8)- |
4 《巣穴からの総出》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《手練》 4 《血清の幻視》 3 《深遠の覗き見》 4 《捨て身の儀式》 4 《発熱の儀式》 4 《煮えたぎる歌》 4 《魔力変》 1 《業火への突入》 2 《急かし》 -呪文(38)- |
3 《血染めの月》 3 《炎渦竜巻》 3 《払拭》 3 《破壊放題》 3 《無知の喜び》 -サイドボード(15)- |
ゴブリンストーム。《思案》《定業》《炎の儀式》は失ったものの、それでもなお3ターンキルに一番近いのはこのアーキタイプではないだろうか。
このデッキは結局いわゆる「リチュアル」系カードと《魔力変》、それに勝ち手段であるストームのカードをいかに手札にかき集めるかが鍵なので、それ以外のカードはデッキに入ってないことにしよう、ということで52枚デッキへと挑戦してみた。本来の用途とは異なるだろうが、見た目はなんかゼロックス的なアレである。
もちろんその分ライフがすごいことになるが、というかフェッチランドとギルドランドも合わせてそれはもう本当にひどいことになるのだが、一人回ししてる分には特に支障はなかったので問題はない。
肝心のイニストラードのカードが見当たらない? よく見て欲しい、ちゃんと採用してある。2枚引くと負けるので1枚だけだが。さ、採用してるよ?嘘は言ってないよ?
この1枚差しに意味があるのかと聞かれると多分ないのだが、一人回しで手に馴染む感覚を追求した神のバランスとだけ言っておこう。妄言乙。
ちなみにこのデッキ、《巣穴からの総出》にたどり着けないと即死亡という極めて脆いデッキなので、ハンデスやカウンターなどの妨害を挟まれたときのことはなるべく想像しない方が精神衛生上よろしい。
・・・やはり3ターンキルには多少の無理があるのは事実か。ちくしょうウィザーズめ市民、幸福は義務です。
これからは《睡蓮の花》などで穴を埋め合わせ、安定した4ターンキルを目指す形にシフトしていくべきなのかもしれない。あるいはイニストラードの《炎の中の過去》を駆使していくというプランも見える・・・が。
いずれにせよ、ストームをはじめとする青系コンボはかつての力を失った。それは紛れもない事実だ。
だが。
それでもそんな青系コンボの中でも唯一、トップメタに居座り続けるであろうデッキがある。
3 《蒸気孔》 4 《沸騰する小湖》 3 《霧深い雨林》 4 《燃え柳の木立ち》 6 《島》 2 《山》 1 《滝の断崖》 -土地(23)- 1 《呪文滑り》 4 《詐欺師の総督》 3 《やっかい児》 2 《鏡割りのキキジキ》 -クリーチャー(10)- |
4 《手練》 4 《ギタクシア派の調査》 3 《貫く幻視の祭殿》 4 《払拭》 1 《否定の契約》 4 《罰する火》 3 《差し戻し》 4 《欠片の双子》 -呪文(27)- |
そう、プロツアーの覇者である《欠片の双子》コンボだ。
デッキの構造上もともと3ターンキルをするつもりがなく、相手を妨害しつつ4ターン目以降の勝利を目指すこのデッキの場合、《思案》《定業》の脱落は確かに手痛い損失ではあるが、未だ致命的とまではいえない。相手の妨害をしてターンを経過させることはすなわち自分のドローが増えることにつながるからだ。
また、ほぼ同等の性能のコンボパーツが2種類ずつあるために、そこまで必死に探さなくてもコンボパーツが揃ってしまうというのもある。《払拭》や《否定の契約》のように「相手の妨害をさらに妨害するカード」だけは代替が利かないため探す必要があるが、そこはスタンダードよろしく《貫く幻視の祭殿》が新たなドローサポートとして活躍してくれるだろう。
他のコンボデッキが衰退したことにより、フィラデルフィアではあまり採用されていなかった《罰する火》コンボも、これからはボードを支配できるコンボとして活躍が見込まれる。
そんなわけでイニストラード後のモダン環境は、ひとまずこの《欠片の双子》デッキと、とあるもう1つのデッキを2大トップメタとしてスタートするのではないかと思われる。
そのもう1つのデッキとは?・・・決まっている。
Zooだ。
◎最強のデッキ、動物園
とはいえ、この段階で最強のZooのレシピを提示することはできない。
Zooというデッキの固定パーツは《野生のナカティル》《タルモゴイフ》とあとはせいぜい《稲妻》《流刑への道》くらいのもので、それ以外は環境に合わせていくらでも形を変化させうる。
実際、フィラデルフィアでは「12Post」と大量の青系コンボというメタゲームに合わせてサイドからカウンターをてんこ盛りにする、Channel Fireball謹製の「Counter Cat」が活躍していた。
すなわち、その圧倒的な柔軟性によるメタゲームに対する「後出し」こそがZooを最強たらしめる所以なのであり、したがって環境のメタゲームがある程度はっきりするまでは、Zooが取るべき形が定まらないのだ。
そうはいってもとりあえず仮想敵として叩き台くらいは作っておかないとまともに調整もできないので、2秒くらいで作った適当なZooがこちら。
4 《乾燥台地》 4 《沸騰する小湖》 4 《霧深い雨林》 2 《踏み鳴らされる地》 1 《寺院の庭》 1 《聖なる鋳造所》 1 《神無き祭殿》 1 《血の墓所》 1 《蒸気孔》 1 《平地》 1 《森》 -土地(21)- 4 《野生のナカティル》 4 《壌土のライオン》 4 《ゴブリンの先達》 3 《渋面の溶岩使い》 4 《クァーサルの群れ魔道士》 4 《タルモゴイフ》 -クリーチャー(23)- |
4 《流刑への道》 4 《稲妻》 4 《部族の炎》 4 《溶鉄の雨》 -呪文(16)- |
《罰する火》環境になるかもしれないことを踏まえるならば、タフネス2以下のクリーチャーはもう少し減らした方がいいかもしれない。
また、イニストラードからは《聖遺の騎士》からの土地サーチのオプションに《ケッシグの狼の地》が加わったことも見過ごせない。膨れ上がった《タルモゴイフ》や《聖遺の騎士》にトランプルとパワー修正がついて相手を殴り倒す気持ちよさと同型相手の強さを考えれば、十分魅力的な選択肢といえるだろう。
そしてイニストラードといえば、このカードの存在も忘れてはいけない。
4 《乾燥台地》 4 《沸騰する小湖》 4 《霧深い雨林》 2 《寺院の庭》 2 《聖なる鋳造所》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《蒸気孔》 1 《神聖なる泉》 1 《平地》 1 《森》 -土地(21)- 4 《野生のナカティル》 4 《壌土のライオン》 4 《貴族の教主》 4 《クァーサルの群れ魔道士》 4 《タルモゴイフ》 4 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(24)- |
4 《流刑への道》 4 《稲妻》 3 《マナ漏出》 4 《幽体の行列》 -呪文(15)- |
4 《ミラディンの十字軍》 3 《古えの遺恨》 2 《忘却の輪》 4 《情け知らずのガラク》 2 《ギデオン・ジュラ》 -サイドボード(15)- |
スタンダードより遥かにカードプールが広いモダンでは、フラッシュバックの選択肢も格段に増える。
各種「契約」や優秀な1マナハンデスなど、候補は多岐にわたる・・・が。
ここで筆者が独自に(脳内)調査した「2011年モダンの《瞬唱の魔道士》でフラッシュバックしたいカードランキング」によれば、1位は《流刑への道》、2位《稲妻》とのことである。
ということはこのカードはZooにぶち込めばいいんじゃなイカ?ということで出来たのが上のデッキだ。色が青い、なんてことはZooにとっては何の障害にもならない。Zooとは「最も色が多いビートダウン」なのだから。
ついでにマニアックなフラッシュバック候補として《幽体の行列》もチョイスしておいた。《瞬唱の魔道士》でデッキを作るとどうしても墓地にインスタント・ソーサリーが常時落ちてないと落ち着かなくなってしまい、クリーチャー不足に陥りがちなのが難点だが、ソーサリーでありクリーチャーとしてカウントできるこのカードならばそんな心配は無用だ。
ただ如何せんモダン環境で5マナは重いため、ただ《幽体の行列》をフラッシュバックしたいだけなら《霊気の薬瓶》の助けを借りるというのも手だろう。
なお構想段階では《謎めいた命令》までぶち込むつもり満々だったのだが、《野生のナカティル》の{G}{W}{R}と《幽体の行列》の{W}{W}{W}と《謎めいた命令》の{U}{U}{U}が成立するマナベースはさすがに不可能だったので自重しておいた。
というか、可能かもしれないけどフェッチとギルドランドでライフが一瞬で消し飛ぶこと確実なので、やめておいた方が賢明だろう。
◎立ち向かう者たち・・・そして動き出すメタゲーム
さて、ここまでZooと双子という前環境の遺産ともいうべき「強いとわかりきった」デッキを紹介してきたわけだが、当然これらを倒すべく様々なデッキが虎視眈々と牙を研いでいることだろう。
コントロールキラーであった「12Post」デッキが禁止によって再起不能となり、青系コンボの多くが失墜した今、「Quick'n Toast」や「青白」「青黒」のコントロールを組むことも不可能ではないはずだ。
プレインズウォーカーをはじめとするイニストラードのその他のカードもまた、新しいデッキタイプを創出するポテンシャルを秘めている。
どんなデッキが出てくるのか。どんなカードが使われるのか。思惑は巡り、メタゲームが動き出す。
・・・が、この先を記すには余白が狭すぎる。もとい、予測がつかない。
あるいは、今月の世界選手権で何らかの答えは出るだろう。
ここでは、イニストラードで可能性を感じさせるもう1枚のカードをフィーチャーしたデッキを紹介して、この記事を締めくくろうと思う。
4 《湿った墓》 4 《闇滑りの岸》 4 《忍び寄るタール坑》 4 《変わり谷》 2 《沈んだ廃墟》 3 《島》 1 《涙の川》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(12)- |
4 《血清の幻視》 3 《思考囲い》 2 《コジレックの審問》 1 《外科的摘出》 2 《蒸気の絡みつき》 3 《呪文嵌め》 3 《差し戻し》 1 《見栄え損ない》 2 《破滅の刃》 1 《喉首狙い》 4 《謎めいた命令》 -呪文(26)- |
4 《死の印》 1 《コジレックの審問》 1 《殴打頭蓋》 2 《ジェイス・ベレレン》 3 《饗宴と飢餓の剣》 4 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
既にレガシーでも活躍中のこのカード。レガシーでの《渦まく知識》やスタンダードの《思案》のような相棒がおらず、泣く泣く《血清の幻視》を使っているのが哀愁を誘うが、さすがに1マナ3/2飛行はモダンでも馬鹿にできないスペックだ。
デッキの構造としては、デッキ名を見ればわかる通り、かつての「フェアリー」デッキを踏襲した構成になっている。8枚のミシュラ土地や《謎めいた命令》にその面影が見てとれるだろう。
サイドボードに目を移すと、
Zoo相手にこれを《瞬唱の魔道士》でフラッシュバックする・・・その気持ちよさは想像しただけで涎が出てきそうだ。
《石鍛冶の神秘家》がなくても十分使用に耐えうる装備品たち。剣は《死の雲》などの緑黒系デッキに対し《変わり谷》につけて気持ちよくなりたい人用に、《殴打頭蓋》はビートダウンに対し軽い《ワームとぐろエンジン》として、それぞれ採用してみた。
《霧縛りの徒党》もないためメインボードは本格的に《罰する火》コンボで即投了なので、サイドボードに何らかの墓地対策は必要だろう。
なお、この構成のままだとサイドボード後はインスタント・ソーサリーの数が激減して《秘密を掘り下げる者》が変身しなくなるという弊害が予想されるが、気合で乗り越えて欲しい。
いかがだっただろうか。
先週の浅原さんのアレが強烈すぎて「これは構築劇場掲載陣でここからリレー小説を始めた方がいいのか?そういうフリか?」と無駄に勘繰ってしまったが(そしてそれはそれで面白そうだが)、ここは一応マジックの公式サイトなので、冷静にマジックの話をしておいた。
ともあれ、これを読んだ人にとって、この記事がモダンのデッキを作る際の何らかの手助けになれば幸いである。
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