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週刊デッキ構築劇場
第9回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・《奪い取り屋、サーダ・アデール》
読み物
週刊デッキ構築劇場
2011.04.07
第9回:鍛冶友浩のデッキ構築劇場・《奪い取り屋、サーダ・アデール》
演者紹介:鍛冶 友浩 『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダー。主な戦績は、プロツアー・チャールストン優勝・世界選手権05トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州05優勝など。 |
最近は、週刊連載やデッキ構築劇場でもCaw-Goの話一色で、正直つまらない・・・。
そう思い、何か面白いアンチデッキで記事を書けないものかと悶々としていた。
何故Caw系のアーキタイプが強いのか、どのカードを軸に構築されているのか、そして最も大切な、「どこを攻めればその理論が破錠するのか」。
その問題を解決するソリューションは大抵、誰にも見向きされないカードだったりするものだ。
週刊連載の記事を書きつつ、MOのカードリストを眺めながら「artifact」と検索すると、とても興味深いカードを発見した。
ワールドウェイク発売当初は、タイプ1プレイヤーには「Mox」を奪えるカードとして未来を感じさせたのかもしれないが、ほとんどのプレイヤーの目には《精神を刻む者、ジェイス》の強すぎた印象にかき消されてしまったように感じる。
実際、ワールドウェイクの他の青いカードといえば《払拭》や《方解石のカミツキガメ》、《宝物探し》と、使われる機会こそあったがパッとしないたくさんの地味カード。それはもう、埋もれてしまうよね、という感想だ。
しかし環境は変わり、ミラディンの傷跡に加え、ミラディン包囲戦を含めたプロツアー・パリでの《饗宴と飢餓の剣》の活躍から一ヶ月が経ち、ちまたには大量の《石鍛冶の神秘家》が溢れている。
ならば、鍛冶屋に探し出される前に、奪い取り屋に依頼してみようではないか。
プランその1:マーフォーク
さて、《奪い取り屋、サーダ・アデール》を使うことだけを決めたわけだが、2ターン目にキャストされる《石鍛冶の神秘家》には「超えられない1マナ差」という壁がたちはだかる。《金属モックス》でも環境にあればその差を埋められるのだが、あるのは《オパールのモックス》のみだし、そもそもアタックに行ってはじめて相手のライブラリーに手をかけられるわけで、やはり差は2ターン分存在しているわけだ。というわけで、今回のメタデックを構築するにあたり、他の要素を犠牲にしてまで速度を追求したところで無理があると割り切り、初手にあるならしゃーない、の精神でいこうと思う。
では、テーブルの真ん中に《奪い取り屋、サーダ・アデール》を置いて、デッキのイメージを浮かべてみよう。
例えば、先手《極楽鳥》からなら2ターン目にキャストできていい感じ?とか、《滞留者ヴェンセール》の忠誠度:-1でアタックを必ず通せる、他にも、シャッフル効果が《コーシのペテン師》とシナジーだ(笑)とか。
Caw系のアーキタイプにはたくさんのプレインズウォーカーが存在するために、軽めのダメージクロックがあるデッキにしたいので、序盤から展開できるクリーチャー多めの方向へ進めたい。
そして再度、カードリストを眺めて2,3マナの良質な青いクリーチャーを探していると、《珊瑚兜の司令官》が!
よく見ると、《奪い取り屋、サーダ・アデール》も、《コーシのペテン師》もマーフォークと書いてある。なんだか閃いてしまったかも。
ここですかさずMOのカードリストに「merfolk」と検索をかけると、上の3種を含めた21枚のカードがヒットした。
さすがにレガシーで使われているアーキタイプなのにスタンダードでは見ないわけだ、という品揃えだが、《マーフォークの君主》とか実はいい線いってるんじゃないの? というわけで、マーフォーク路線に一直線!
プランその2:アーティファクト
しかし、マーフォークをメインの戦略にするとはいってもカードの枚数が明らかに足りていないので、もう少し戦略面を考えてみよう。
マーフォークという種族をフィーチャーする部族シナジーはローウィンブロックという過去のセットのものであって、今のミラディンという金属世界に何をどう期待すればいい?
それなら以前、週刊連載の記事・第0回で少しだけ紹介した、ミラディンブロック構築でも活躍している《大建築家》を主軸にした青単色のデッキを参考にしてはどうだろうか。
同じ+1/+1効果を期待するなら《マーフォークの君主》よりもデッキ構築の幅を広げられそうだ。
この《大建築家》のマナを活用するならば、やはり少し重いくらいのカードがあった方もいいだろう。かといって、重いカードをたくさん入れてしまうとマーフォークの戦略とベクトルが合わず、デッキが何をしたいのかわからなくなってしまう。
例えば、各色タイタン並によく見かける《ワームとぐろエンジン》を複数採用したとしても、2枚3枚と引いてしまうとありがたたみは薄れてしまうだろうし、それではプレイの選択肢はかなり限られてしまう。
そこで、《宝物の魔道士》とシルバーバレット用カードを数枚採用してみよう。
現環境で6マナ以上のアーティファクトは強力な《精神隷属器》や、《マイアの戦闘球》、《鋼のヘルカイト》などSOMドラフトでも活躍した面々が揃っているわけだし、これらを必要に応じてサーチできるのはとても魅力的なオプションになるだろう。
では、サーチされる側はどんなカードが適しているのだろうか?
このデッキの基本戦略は、クリーチャーで序盤からダメージを与えるものなので、できればアタッカーが良いだろう。そして、中盤から終盤にかけて息切れしてきた盤面を1枚で制圧できるレベルの優秀なもの。
そうなると数は限られていき、《飛行機械の組立工》、《ワームとぐろエンジン》が良いのではないかと思う。
もちろん、生物に限定する必要もなく《精神隷属器》と《伝染病エンジン》はクリーチャーには出来ない大仕事をこなしてくれそうだ。
そして最後のブラッシュアップに、出てしまった《饗宴と飢餓の剣》達を無力化するために、《転倒の磁石》と、こちらも《饗宴と飢餓の剣》《肉体と精神の剣》を加えることにしよう。
2種の剣の装備コストにも《大建築家》のマナが使えるので、先にアタックを通すことも可能だろう。《転倒の磁石》はブロッカーの処理にも使えるはずだし、地味に《伝染病エンジン》で増殖もあり得る。
これにやっぱり青といえばの《精神を刻む者、ジェイス》。
さすがにこのカードを青単色なのに使わないのはもったいなすぎるというレベルだ。
また、大量の《島》というマナベースではなく、単色という利点から、2~3色のデッキが使えないような無色土地を採用することができる。
特に注目は、《墨蛾の生息地》だろう。
《大建築家》に、《饗宴と飢餓の剣》《肉体と精神の剣》と、《伝染病エンジン》というカード達が、1/1という貧弱なサイズのクリーチャーを別の勝ち手段として支えてくれることになるだろう。
もちろん、毒殺はあまり期待できないかもしれないが、起動の軽さから全体除去に対して《饗宴と飢餓の剣》の一撃の決めやすさは他のデッキには真似できないのではないだろうか。
《ハリマーの深み》と各種フェッチランドの《霧深い雨林》と《沸騰する小湖》も忘れずに入れて、デッキ完成!
12 《島》 2 《霧深い雨林》 2 《沸騰する小湖》 4 《ハリマーの深み》 4 《墨蛾の生息地》 1 《地盤の際》 -土地(25)- 4 《コーシのペテン師》 4 《珊瑚兜の司令官》 4 《奪い取り屋、サーダ・アデール》 4 《大建築家》 4 《宝物の魔道士》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《飛行機械の組立工》 -クリーチャー(22)- |
3 《饗宴と飢餓の剣》。 1 《肉体と精神の剣》 3 《転倒の磁石》 1 《伝染病エンジン》 1 《精神隷属器》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(13)- |
4 《クラーケンの幼子》 4 《先駆のゴーレム》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《鋼のヘルカイト》 4 《呪文貫き》 1 《地盤の際》 -サイドボード(15)- |
サイドボードのプランは、採用しているカードも少なく単純明快なものにした。
対ビートダウンには、《精神隷属器》よりも《ワームとぐろエンジン》が必要だし、もちろんコントロール相手には逆に《精神隷属器》の方が引きたいカードになるだろう。
その他のものは、最速のダメージクロックが必要な相手には《先駆のゴーレム》で、守りのカードが必要ならば《クラーケンの幼子》にしてみた。
この0/4は防衛持ちではないので、《饗宴と飢餓の剣》を持たせれば凶暴化するのが面白いと思うし、1マナのカードなのに《稲妻》で破壊されず、3/4になった《石鍛冶の神秘家》も《饗宴と飢餓の剣》なら止められるところがいいと思う。
さて、これで今回のデッキ構築劇場はおしまい。
メタデッキの構築はとても難しいんだけど、アプローチの仕方を考えるのはとても楽しいですよ。
たとえ相手がプロツアーを優勝したデッキであろうと、関係なし!
案外、見向きもされなかったカードからすごいデッキができちゃうもの・・・かもね。
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