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週刊デッキ構築劇場
第8回:伊藤敦のデッキ構築劇場・《古きものの活性》
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週刊デッキ構築劇場
2011.03.24
第8回:伊藤敦のデッキ構築劇場・《古きものの活性》
プロツアー・パリから1ヶ月。現在のスタンダード環境は一時期の《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》デッキがそうであったように、Caw-Goによって規定されている。
それは「Caw-Goと戦えなければデッキではない」という容赦のない事実をデッキビルダーたちに突きつける。
確かにメタゲームからデッキを作るのもビルダーの一つの在り方ではある。トーナメントでの勝利を1つの到達点とする以上は、メタゲームを無視することはできない。
だが、あまりそれに囚われすぎるのもよくない。固定観念はデッキ構築に必要な自由で柔軟な発想力を縛りつける枷となるからだ。
そんなわけで今回の構築劇場の主役は何ら脈絡なくこのカードだ。
何このカード?と思われる方も多いかもしれない。「エルドラージ覚醒」でド派手な始祖エルドラージたちとともに登場し、まさしくその無色のエルドラージたちを手札に引き込めるということで鳴り物入りで(?)スタンダード環境へと飛び込んだ彼だが、いかんせん手札に入るのみではエルドラージたちを活かしきることができずに《召喚の罠》にお株を奪われ、今日までほとんど日の目を見ることなくストレージボックスの片隅で埃を被っている、いわゆるクソコモンだ。
その原因の一つは明らかにサーチカードとしての中途半端さにある。確かに最悪土地が手札に入るとはいえ、たった5枚見ただけで目的のカードが見つかるとは限らない。しかし《深遠の覗き見》だって旧エクステンデッド環境で使用されたのだから、5枚が少ないというのは言い訳にならない。《深遠の覗き見》はそれ自体を見つけてチェインするから強いという容赦のないツッコミは勘弁願いたい。
しかも大抵インスタントやソーサリーの方が強いのは内緒だ |
それにこういった限定条件つきのサーチカードは、カードプールが広がるにつれて思わぬところでシナジーを形成することがある。「エルドラージ覚醒」が出た当初ならいざ知らず、「ミラディン包囲戦」まで出ている今なら。彼の秘めたポテンシャルを最大限引き出すことができるかもしれない。
そこで今回は、叩き台として3種類の《古きものの活性》入りデッキを用意した。「なんだ今週はデッキ3個作っただけ?何か地味だなぁ」と言われても仕方ないが、《アメーバの変わり身》と会話したり、120枚デッキを作ったりと、構築劇場チームには大概変態デッキビルダーばかりなので、ここらへんで軌道修正しておかないと何処まででも突き抜けてしまいそうだから、というのもある。あ、鍛治さんはまともですよ!ただし浅原さん、てめーはダメだ。
さてそれでは、《古きものの活性》で色んな無色のカードを探し当てる旅に出発だ。
第1部:《液鋼の塗膜》
1つ目の探し物は、《古きものの活性》と同じくらいマイナーなこのカードだ。
他のパーマネントを1つだけアーティファクトにできる、それだけの能力。したがって通常これのみではアドバンテージを失う結果にしかならない。だがマジックでは様々な魔法の力を秘めたアーティファクトについては、それを破壊するカードもおそらくクリーチャーに次いで多く印刷されているという事実に着目すれば、デッキの輪郭が見えてくる。
そう、このカードを使えばすべての「対象のアーティファクトを破壊する」と書かれたカードが《名誉回復》のごとく「対象のパーマネントを破壊する」というカードへと変貌するのだ。《精神を刻む者、ジェイス》や《ギデオン・ジュラ》といったプレインズウォーカーですらパリンパリン割れていくその様は非常に爽快である。
しかし大量のアーティファクト破壊呪文をデッキに投入すると、《液鋼の塗膜》に依存しすぎる形となってしまう。そこで毎ゲームきちんと《液鋼の塗膜》を手札に加えるために、《古きものの活性》の出番というわけだ。
ではデッキリストをご覧あれ。
3 《森》 2 《山》 1 《島》 4 《霧深い雨林》 1 《沸騰する小湖》 1 《根縛りの岩山》 4 《銅線の地溝》 2 《怒り狂う山峡》 4 《ハリマーの深み》 -土地(22)- -クリーチャー(0)- |
4 《古きものの活性》 4 《定業》 4 《液鋼の塗膜》 3 《ヴィリジアンのお祭り騒ぎ》 4 《圧壊》 4 《自然の要求》 4 《帰化》 4 《粉砕》 2 《真っ二つ》 4 《紅蓮地獄》 1 《不死の霊薬》 -呪文(38)- |
4 《瞬間凍結》 4 《リバー・ボア》 4 《狡猾な火花魔道士》 3 《最後のトロール、スラーン》 -サイドボード(15)- |
ノンクリーチャーデッキというのはリストを見るだけで心踊るものがある。そう思うのは筆者だけだろうか。
その名の通り《肉体と精神の剣》と《饗宴と飢餓の剣》を強烈に意識したこのデッキは、《石鍛冶の神秘家》《戦隊の鷹》パッケージが全盛である今、メインからの銀破壊と《紅蓮地獄》でそれらに頼り切ったデッキを鉄拳制裁することができる。
もっともそれは副次的な効果にすぎない。基本的な勝利プランとしては、《定業》《ハリマーの深み》や《古きものの活性》で《液鋼の塗膜》を探しだして設置し、3ターン目から相手の土地を破壊していくことで、相手に十分なアクションをとらせないというものである。
だがボロスや吸血鬼のようなビートダウンデッキ相手の場合は、そんな悠長なことをしている暇がないので、《紅蓮地獄》も駆使しつつまずは相手の攻め手を捌ききることが必要だろう。
ある程度相手の土地を破壊したところで《ヴィリジアンのお祭り騒ぎ》を設置できれば、以降はすべての銀破壊がキャントリップ付きとなる。そこまで来れば18枚の銀破壊と《定業》まで入ったこのデッキなら、切れ間なく銀破壊を叩き込み続けることが可能となる。
ちなみにフィニッシャーは、土地のところにひっそりと隠れているたった2枚の《怒り狂う山峡》だけだ。このデッキはライブラリの総力を尽くして相手のパーマネントを破壊して相手の心を折りにいくが、万一相手の心が折れなかった場合でも、真っ当にゲームに勝てるように一応ちゃんと配慮はしてある。
もっとも、相手のパーマネントが全てなくなってから土地が殴るというとても気の長い話になるので、引き分けで自分の心が折れないようにマッチの残り時間には気をつけたいところだ。
あまりに気が長すぎるため自分がライブラリアウトしかねず、1枚だけ《不死の霊薬》が入っている。既に《液鋼の塗膜》を探し当ててその役割を終えたゲーム後半の《古きものの活性》は、この1枚差しの霊薬を探すのに都合がいい。
サイドボード後は《神への捧げ物》や《躁の蛮人》など無粋なアーティファクト破壊が入ることを見越して、アグレッシブサイドボードとなっている。なかでも個人的なお気に入りは《リバー・ボア》だ。
第6版+ウルザズサーガ期の緑単ストンピィに投入されていた頃の無双っぷりは何処へやら、再録されたことすら完璧に忘れられてそうな存在感のなさがチャームポイント。特殊地形全盛の現在のスタンダード環境では《島》を渡る彼の姿を見ることは難しいかもしれないが、《最後のトロール、スラーン》と合わせての再生ビートはなかなか捌きづらいはずだ。
ともあれ、《石鍛冶の神秘家》からの装備品サーチという動きに負けるのが嫌になった方は、この「Hate Sword」で一度メインから気持ちよく叩き割ってあげるのもいいかもしれない。
第2部:《マイアの溶接工》
《古きものの活性》での次なる探し物は、「ミラディン包囲戦」より、この一見残念なレアだ。
こいつで何がしたいかはデッキを見た方が早いので、まずはリストを。
6 《島》 6 《森》 4 《霧深い雨林》 2 《新緑の地下墓地》 2 《広漠なる変幻地》 2 《ハリマーの深み》 -土地(22)- 4 《面晶体のカニ》 4 《謎鍛冶》 4 《獣相のシャーマン》 4 《マイアの溶接工》 4 《ソリトン》 1 《溶鉄の尾のマスティコア》 1 《ゴーレムの職工》 -クリーチャー(22)- |
4 《古きものの活性》 4 《叫び角笛》 4 《漸増爆弾》 4 《カルニの宝石》 -呪文(16)- |
4 《書庫の罠》 4 《罠師の引き込み》 4 《復讐蔦》 1 《粗石の魔道士》 1 《メムナイト》 1 《酸のスライム》 -サイドボード(15)- |
要は先週のデッキ構築劇場でもオプションとして採用されていた《マイアの溶接工》と《カルニの宝石》《ソリトン》との無限マナコンボを、今度は主軸に据えてみたデッキというわけだ。
このデッキの《古きものの活性》は《マイアの溶接工》だけでなくコンボパーツの全てを手札に加えることができ、なかなか噛み合っている。ただし《カルニの宝石》だけは手札から墓地に落とすのが難しいため、出来ればライブラリから直接墓地に落としたいところだ。
このコンボは何はなくとも《マイアの溶接工》を手札に加えてキャストしないことには話にならないので、確実なサーチ手段として《獣相のシャーマン》を採用している。また《謎鍛冶》と合わせてコンボパーツを墓地に落とす動きも担っている。
無限マナの使い道としては、《ゴーレムの職工》を刻印しての無限パンプ・トランプルアタックが最も手っ取り早いが、他にもこれら2枚のアーティファクトを刻印することで無限マナ状態から蓄積カウンターを無限チャージして相手のライブラリを削りきることも可能だ。これを初めて人から聞いたときは目から《甲鱗のワーム》が落ちた。
もちろんこの動きがやりたいだけなら《研磨時計》1枚で事足りるのだが、素で引いたときに《謎鍛冶》の餌になる軽さと自分のライブラリを削る速度、そして青緑という色の特性上パーマネントに触りづらいということもあって《叫び角笛》《漸増爆弾》のセットに軍配があがった。また、これらは当然《古きものの活性》の対象でもある。
さてサイドに目を移せば、またしても変形サイドボードを用意させてもらった。しかも欲張って2つもである。サイド後からデッキコンセプトががらりと変わる変形サイドボードというのは、合体ロボットがガシャコンと変形するみたいな、あるいはフリーザがあと2回の変身を残しているのとかと似たような感じで、昔から男の子の夢なのだ。
メインから自分のライブラリを削るカードとして《面晶体のカニ》と《叫び角笛》が採用されているので、サイドから相手のライブラリを削りにいくことは造作もない。
なお、このモードのときでも《古きものの活性》は、《叫び角笛》や《面晶体のカニ》のためのフェッチランドを探しにいく動きができて重宝する。
先ほどの《液鋼の塗膜》デッキ同様、サイドからの銀破壊が予想される場合には《復讐蔦》でアグレッシブに愚直ビートを敢行するプランもある。《獣相のシャーマン》でかき集めるだけでなく、《面晶体のカニ》で自分のライブラリを削る動きとも当然噛み合っている。
ただクリーチャーのマナカーブが悪いので《復讐蔦》を墓地から戻すのに若干苦労するかもしれないが、そこは《粗石の魔道士》+《メムナイト》のパッケージも同時にサイドインすることでその弱点を緩和している。
この「The Infinite」は無限マナで派手に勝ちたい人にオススメだ。また《マイアの溶接工》コンボは他にも色々な組み方が考えられる。是非自分で試してみて欲しい。
第3部:《激戦の戦域》
最後に《古きものの活性》で探し当てたのはこのカードだ。
ゴブナイトや白単《聖なる秘宝の探索》デッキなど、既に様々なビートダウンデッキに収まってはその壊れっぷりを見せつけているこの土地だが、あまりに強すぎて4枚どころか8枚入れたいと思う瞬間もある。
そこで筆者がFNMで対戦したデッキでは、エルフデッキで《古きものの活性》を使い、《激戦の戦域》の枚数を擬似的に増やすことに挑戦していた。非常に興味深いアイディアである。
製作者のレシピは不明だが、そのアイディアを拝借して筆者が適当に組み上げたのがこれだ。
16 《森》 4 《激戦の戦域》 -土地(20)- 4 《信号の邪魔者》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《ジョラーガの樹語り》 4 《東屋のエルフ》 4 《銅角笛の斥候》 4 《ジョラーガの戦呼び》 4 《エルフの大ドルイド》 -クリーチャー(28)- |
4 《古きものの活性》 3 《肉体と精神の剣》 3 《野生語りのガラク》 2 《エルドラージの碑》 -呪文(12)- |
4 《エルドラージの寺院》 1 《ウギンの目》 1 《地盤の際》 4 《原始のタイタン》 2 《ワームとぐろエンジン》 1 《真実の解体者、コジレック》 1 《無限に廻るもの、ウラモグ》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -サイドボード(15)- |
8枚のロードに《激戦の戦域》と《信号の邪魔者》、そして《野生語りのガラク》によるオーバーラン。最後のアタックで何点入るのか計算するのが楽しみだ。
《古きものの活性》で《激戦の戦域》と《信号の邪魔者》を探す動きは、もしかしたら赤タッチ緑のゴブナイトでも活用できるかもしれない。
また、《古きものの活性》はこういった「必殺技」を探すのにも使える。《暴走の先導》には出来ない芸当だ。
そして懲りずにまたしても変形するサイドボードからは、お待ちかねのエルドラージたちの登場だ。何といってもやはり《古きものの活性》はこいつらをめくる瞬間が一番輝く。
この「Battlecry Elves」はまだまだ改良の余地があると思うので、コンセプトが気に入ったのなら色々いじってみることをお勧めする。
《古きものの活性》による3種類のデッキ構築、お楽しみいただけたなら幸いだ。そして・・・
あなたなら《古きものの活性》で、何を探しますか?
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