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週刊デッキ構築劇場
第6回:清水直樹のデッキ構築劇場・あの子と《ピリ=パラ》
読み物
週刊デッキ構築劇場
2011.03.10
第6回:清水直樹のデッキ構築劇場・あの子と《ピリ=パラ》
演者紹介:清水 直樹 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。 |
皆さんこんにちは!
グランプリ・神戸が近づいていますね! 僕も最近はもっぱらエクステンデッドばかりで、スタンダードはさっぱりです!(笑)
というわけで、今日は久しぶりにエクステンデッド特集といきたいと思います!
・・・そういえば、先日僕のところにこんなお手紙が届きました。
ちょっと読んでみましょう。
「シミチンさん、いつも構築劇場読ませてもらっています!」
―― ありがとうございます。
「ところで《大建築家》はエクステンデッドだとすごいコンボがあるって聞いたんですが、トーナメントで勝っているのを見たことがありません。」
―― 確かにそうですね。彼の活躍場所は主にミラディンの傷跡ブロック構築だとAIBOのらっしゅ君に聞きました。
「ぜひ《大建築家》でデッキを作ってください! ――とある天使・悪魔より」
―― いいでしょう。差出人名のところが僕としてはとても気になるところですが、そんなクリーチャーがこの世にいるわけないですよね。
・・・?
あ・・・
「どうも、多相です」 |
―― いつのまに(汗
「ちなみにあなたのクリーチャータイプもなくしてニートにもできますよ」 |
―― いやせっかく就職したんでやめてください(汗 確かにグランプリ・北九州のシールドで《思考の糸の三人衆》の覇権をあなたが阻止したときは感動しましたけど。
「まぁ茶番はこれくらいにしてはやくデッキ作ってくださいよ」 |
―― あ、はいわかりました。
さて、《アメーバの変わり身》の登場でよくわからなくなってきた今回の構築劇場ですが、決して彼を《大建築家》で2/2にして「わあい」というわけではありません。
彼の聞いた「コンボ」とはこれのことです。
最近マジックを始めた方には見たことも聞いたこともないカードかもしれません。
世にも珍しいクリーチャータイプ、「カカシ」であり、その能力はタップではなく2マナと「タップ状態からアンタップ」で起動するものです。
「僕もカカシですよ」 |
―― はいはいそーですね。で、この《ピリ・パラ》ですが、《大建築家》で青へ色を変えると・・・
なんと無限マナが出ます。手順としては、
「嫌いな色マナは得られないんですか?」 |
―― 邪魔な突っ込みをいれるなら帰ってください(汗 と、とにかくですね、このようにわずか2枚のコンボで無限マナを得ることが可能なんです。
ブロックの垣根をまたいだ、まさにエクステンデッドならでは!といったところです。今回はこのコンボを軸にデッキを作ります。
ところで、強いコンボデッキの条件とは何でしょうか。僕の見解では、以下の条件が挙げられると思います。
1.コンボにならなくても単体のカードが強い
2.コストが軽い
3.妨害しにくい
4.コンボが完成しやすい(サーチカードの有無など)
たとえばかつてエクステンデッドを支配した《暗黒の深部》《吸血鬼の呪詛術士》コンボは、1の条件こそ満たさないものの、2、3、4のすべてを満たしていたため非常に強力でした。《トレイリア西部》《交錯の混乱》が特に4を助けていましたね。
最近では《虹色の前兆》なんかも条件を満たしていますね。《風景の変容》が実質6~7マナなので、ちょっと2に合致するのが苦しいですが。
「じゃあ《ピリ・パラ》《大建築家》はどうなんですか?」 |
―― 正直言って、《大建築家》はともかく《ピリ・パラ》はお世辞にも単体で強いとは言えません。コストは軽く、最速で3ターン目でコンボが完成するので2は満たしているのですが、どちらもクリーチャーという形をとっている以上妨害されやすいのは否めません。サーチカードについては後述します。
「ダメじゃないですか」 |
―― まぁそれがたぶん勝てない原因なんでしょうけど。しかし、だからと言って諦めていてはそこでデッキ構築は終了してしまいます。
クリーチャー主体のコンボは確かに妨害されやすいですが「クロック・コンボ」という形を取る事でコンボに頼らない勝ち方もできるんです。
「え、そのいかにも『デュエルをすることは物語を紡ぐことと同じだ』の人が言ってそうなワードはなんですか?」 |
―― つまり、コンボが完成しなくてもクリーチャーなので殴れば勝てることもあるということです。或いは、クリーチャーで殴ってその対処をさせている間にいきなりコンボを完成させて勝ってしまうということです。
「わあすごい! 最強じゃないですか!」 |
―― かつて一世を風靡した「クロック・コンボ」は、「プロジェクトX」があります。《サッフィー・エリクスドッター》と《墓所の勇者》のコンボですね。《ロクソドンの教主》等のクリーチャーで攻撃しつつコンボを《召喚の調べ》で狙いに行くデッキです。あとは《目覚ましヒバリ》《大いなるガルガドン》《影武者》なんかもありました。
「そういえば最近では《壊死のウーズ》もありますよね」 |
―― そうですね。《獣相のシャーマン》から墓地に《献身のドルイド》《不気味な戯れ児》を落としてやはり無限マナ、というデッキですね。
「なんかそのデッキとやってることが被って下位互換になっちゃったりしませんか?」 |
―― 確かに。カードプールが似ていて、「クロック・コンボ」を目指す以上構成は似てしまうでしょう。しかし差別化は可能だと思います。
《壊死のウーズ》は単体では何もしませんが、《大建築家》は大量のマナを出せます。そして、このカードがまさしく「マスター・ピース」です。
これさえあれば貧弱な《ピリ・パラ》もいきなり最強生物へ大変身!なんと攻撃しながら相手の《剣》持ち《苦花》トークンをブロックできちゃう! 《謎めいた命令》でタップされても大丈夫! 今ならなんと2本セットの6マナで大奉仕! 電話番号は・・・
「いやちょっと待ってくださいよ、なんでも《饗宴と飢餓の剣》持たせれば強いに決まってるでしょ。 僕だって1/1ですけど、剣握ればそれなりに殴れますよ!そういう『とりあえず剣握らせとけばよくね?』みたいな発想が現代っ子の良くないところですよ」 |
―― ま、まぁいいじゃないですか。現代っ子なんですから、現代らしく生きましょう。
最後に、コンボ完成時の無限マナの使い道を考えておきましょう。こちらです。
前者はオーメン・ヴァラクートでも採用されているカードですね。コンボ完成の助けとなり、完成した暁には無限マナから《妖精の女王、ウーナ》が降臨。そのまま相手のライブラリは0枚となります。
「おお、なんかカッコいい。」 |
―― なぜフィニッシャーが《ウーナ》なのかというと、《獣相のシャーマン》で持ってこられるからですね。もちろん、単体でも悪くないカードです。
ではそろそろレシピを紹介しましょう。
4 《島》 3 《森》 1 《平地》 4 《剃刀境の茂み》 2 《金属海の沿岸》 2 《天界の列柱》 1 《活発な野生林》 1 《秘教の門》 2 《溢れかえる果樹園》 1 《つぶやき林》 4 《霧深い雨林》 -土地(25)- 4 《貴族の教主》 4 《獣相のシャーマン》 4 《ピリ=パラ》 1 《クァーサルの群れ魔道士》 1 《石鍛冶の神秘家》 4 《大建築家》 2 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《エレンドラ谷の大魔導師》 2 《誘惑蒔き》 1 《溶鉄の尾のマスティコア》 1 《目覚ましヒバリ》 1 《妖精の女王、ウーナ》 -クリーチャー(27)- |
4 《戦争門》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 3 《饗宴と飢餓の剣》 -呪文(8)- |
2 《ブレンタンの炉の世話人》 4 《大貂皮鹿》 1 《静寂の守り手、リンヴァーラ》 1 《誘惑蒔き》 3 《瞬間凍結》 3 《バントの魔除け》 1 《アメーバの変わり身》 -サイドボード(15)- |
「良くも悪くも、シミチンさんらしいデッキですね」 |
―― はい、自分でもそう思います。やはりこのデッキのポイントは8枚のサーチカードですかね。
《獣相のシャーマン》《戦争門》で、コンボパーツを探してくることができます。
また、コンボが完成しそうになくて困ったときは《石鍛冶の神秘家》からの「現代っ子」プランや、《溶鉄の尾のマスティコア》で無理やりプラン、そして皆大好き《目覚ましヒバリ》です。
《ヒバリ》はコンボパーツ両方を復活させることできます!
また、《ヴェンディリオン三人衆》《エレンドラ谷の大魔導師》はこのデッキが「除去」に弱いという弱点を補強してくれる非常に良いカードです。
さらに《大建築家》の恩恵を受けることもできるとなれば至れり尽くせりですね。《大建築家》で強化された《ヴェンディリオン》のクロックは相手を焦らせるのにも十分です。そのスキにこちらのコンボをかましてやりましょう。
「デッキ名の由来は?」 |
―― よくぞ聞いていただけました。「建築」ということで、今まさに建築中の「スカイツリー」です。このデッキもあのスカイツリーのようにはるか高みを極めてほしいという願いがこもtt
「そういえばこのデッキ、《静寂の守り手、リンヴァーラ》出されたらどうするんですか?」 |
―― 奴こそはまさにこのデッキを全否定する天敵です。サイドボードには「自分で《リンヴァーラ》を使う」「《バントの魔除け》で落とす」「《誘惑蒔き》する」という3つの対抗策を用意しました。奴が場に生き残られたらほぼ勝つのは無理といってもいいでしょう。
「あと、こんなデッキ組んだら間違いなくあの妖精王に『シミチンは相変わらずフェアリーに弱そうなデッキばかり作るね』って言われますよ」 |
―― 確かにフェアリーは厳しい相手になるでしょうね。というわけでサイドボードにはせめてもの抵抗ということで《大貂皮鹿》を採りました。
フェアリーに対しては《ピリ=パラ》コンボを諦めてサイドインするのが常套手段でしょうか。ただ、《饗宴と飢餓の剣》が絡めば十分に戦えると思いますよ!
《石鍛冶の神秘家》を増やして対抗する手段もあると思います。
「なるほど、で、今気づいたんですけど、なんかサイドボードに僕がいますね!ひょっとしてエルフ対策ですか?それとも《つぶやき林》をアンタップインするためですか?もう嬉しくて感動で頭が(略」 |
―― せっかくなんで入れてあげました。サイドインするかどうかはプレイヤーの自由なんでね。
そういえば昔メインに1枚《アメーバの変わり身》を入れて大会に出て、《雪崩し》を撃たれたのは良い思い出です。
「これはひどい」 |
―― とまぁ、そんなところで今回の構築劇場はお開きです。意外にこのデッキ、最速3ターン目にコンボが決まるということで馬鹿にできない強さですよ。
ぜひ皆さんもデッキのアイデアが出来たら、お蔵入りにする前にambitiousに試してみてください!
Decks, be Ambitious!!
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