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高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」

第12回:深遠なるコモン構築の世界?Pauper その2・コンボデッキ編

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高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」

2011.04.01

第12回:深遠なるコモン構築の世界~Pauper その2・コンボデッキ編


 今週もPauper特集その2として、コンボデッキを紹介していきます。

 「Pauper」形式の説明は、前回記事をご覧ください。


青白黒ストーム

ChaozLex (4-0)
Pauper Daily #2202901 on 03/25/2011[MO] [ARENA]
6 《
2 《平地
1 《
3 《アゾリウスの大法官庁
3 《ディミーアの水路
3 《進化する未開地
4 《広漠なる変幻地

-土地(22)-

4 《フェアリーの大群
4 《陽景学院の使い魔
4 《夜景学院の使い魔
4 《熟考漂い
1 《記憶の壁

-クリーチャー(17)-
4 《断絶
4 《大あわての捜索
4 《強迫的な研究
3 《綿密な分析
3 《予感
3 《時間の亀裂

-呪文(21)-
3 《孤独な宣教師
3 《ヴィダルケンの異国者
3 《水流破
3 《呪文貫き
3 《虹色の断片

-サイドボード(15)-


 青白黒ストーム。自分もMOでよく使用するデッキです。

 まずデッキの根幹となるのは《フェアリーの大群》《大あわての捜索》《断絶》の土地をアンタップする「フリースペル」。これらと《ディミーアの水路》《アゾリウスの大法官庁》など「お帰りランド」を組み合わせることでマナを増やすのが基本的な動きです。《大あわての捜索》は4ターン目に「お帰りランド」を置いたときでも、誘発型能力にスタックでプレイすればマナを増やすことが出来ます。

 メインはほぼ青単で、フリースペル・ドロースペルどちらのマナコストも軽くなる《陽景学院の使い魔》《夜景学院の使い魔》のために白と黒をタッチしている形ですね。

 そしてマナを増やした後は、《強迫的な研究》《予感》《綿密な分析》で手札を補充。次なるフリースペルを見つけながらライブラリーを掘り進み、マナ&ドローを繰り返したあとは巨大な《時間の亀裂》によって相手のパーマネントをすべて戻しながら《フェアリーの大群》《熟考漂い》を回収し、最終的に相手のパーマネント0枚になったあとで自分の1/1と2/2のクリーチャー達で殴り勝つデッキです。

 一度コンボが決まってしまうと、《記憶の壁》絡みで毎ターン《時間の亀裂》を撃てるようになるので、1マナ以下の呪文しかプレイできないロック状態になります。

 具体的な手順としては、コンボが決まったあとは場に複数体の「使い魔」と《フェアリーの大群》といった状態になるので、《記憶の壁》プレイで《断絶》を回収して《記憶の壁》をバウンス→再度《記憶の壁》プレイで《時間の亀裂》を回収→《時間の亀裂》で《記憶の壁》《フェアリーの大群》を回収。以下ループ。

 青白黒ストームは1回コンボが決まると《予感》などでライブラリーのほとんどを掘り進むことができるので、1枚差しの《記憶の壁》でも毎回ちゃんとプレイすることができますね。


強み

 一般的なコンボデッキの弱点といえば、手札破壊やカウンターでキーカードを対処されてしまうこと。コモンのみのPauperとはいえ《強迫》や《対抗呪文》は存在します。

 しかしこの青白黒ストームの場合はそれに当てはまらず、むしろ青や黒といった相手には有利です。このデッキはキーカードである《時間の亀裂》がカウンターに強く、「フリースペル」をすべて打ち消すというのも不可能なのでカウンターデッキには耐性があり、大量に投入されたドロースペルのおかげで手札破壊からの復旧も容易です。

 また青や黒のデッキのクロックが遅く、青白黒ストームが準備に時間をかけられることも理由に挙げられます。本当に脅威と呼べるのは黒単の《大牙の衆の忍び》くらいなので、だいたい5ターン目まではドロースペルを撃っているだけでよく、マナが溜めたあとに一気に仕掛けることが出来ますからね。

 《綿密な分析》が手札破壊、カウンターの両方に強いカードだというのも大きい。コンボ中は《大あわての捜索》《強迫的な研究》によるディスカードを繰り返しますが、そんな状態でも《綿密な分析》は「墓地におけるドロースペル」として重宝し、使い魔の効果で1マナでプレイできるのもポイント。個人的には《綿密な分析》こそがこのデッキの強さを支えているんじゃないかと思っています。


不利なマッチアップと対策

 では何に対して不利なのかというと「土地破壊」「赤いビートダウン」の2種類です。


「土地破壊」

 マナを増やす手段として《ディミーアの水路》《アゾリウスの大法官庁》を使用しているのは明確な弱点であり、メインから《Thermokarst》《刈り取りと種まき》《ムウォンヴーリーの酸苔》を取っている「緑単12Post」には特に苦戦を強いられます。

 自分が以前デイリーイベントに参加したときに、《ラノワールのエルフ》から《Thermokarst》《冬の抱擁》《カビのシャンブラー》と、青白黒ストームを目の敵にしたようなデッキにあたって負けたこともあり、対戦相手に「ストームは不戦勝みたいなもの」と言われたのをよく覚えています。

 それくらい土地破壊が苦手なデッキなので、サイド後は《呪文貫き》《被覆》といった軽量カウンターは必須ですね。


 ちなみに、青白黒ストームも親和同様にPauperでは一大勢力であり、ミラーマッチも多いです。対策するなら、土地への干渉が欲しいところ。
 青白黒にはシングルシンボルの土地破壊呪文はないので、同系対策には《ブーメラン》《転覆》といったバウンス呪文がオススメ。ゴブリンや赤バーンなら《倒壊》《溶鉄の雨》を採用すると良いです。


「赤いビートダウン」

 リストを見てもらえればわかると思いますが、このデッキのメインはコンボを最優先しているため、相手に対する干渉手段が全くありません。コンボが決まるのはだいたい4ターン目ですが、4ターン目までは相手の攻撃をすべて受けるマグロ状態。

 火力のないビートダウンの「白単」「緑単」には勝てますが、「赤バーン」や「赤単ゴブリン」には先手ゲーになることが多いですね。

 どちらも《稲妻》《Chain Lightning》という1マナ3点を採用しているため、パーマネントをすべてバウンスしきったあとでもライフが6以下だと負けてしまうことが多いです。特に赤バーンは《溶岩の打ち込み》《火炎破》《裂け目の稲妻》といった「1マナ以下のカード」も多いので、苦戦を強いられることになります。そのためサイドボードは赤対策の占める割合が多いです。

 それぞれの役割を紹介すると、

・《水流破

 火力を打ち消す、パンプしてきた《窯の悪鬼》を破壊するなど、いつ引いても嬉しい便利カード。サイド後の《倒壊》《溶鉄の雨》対策も兼ねています。
 Pauperにおける《紅蓮破》《水流破》は使って当たり前の標準サイドカードであり、相手が赤いデッキならばほぼ間違いなくサイドインしてきます。《水流破》はその《紅蓮破》への対抗手段としての意味もありますね。


・《孤独な宣教師》《ヴィダルケンの異国者

 どちらも赤対策に見えますが役割は違って、《孤独な宣教師》はバーン対策、《ヴィダルケンの異国者》はゴブリン対策です。
 バーンは盤面にクリーチャーを出さず火力でライフを攻めることが多いのでライフゲイン。逆にゴブリンはクリーチャーによる攻撃が多いのでそれをシャットダウンできる《ヴィダルケンの異国者》といった扱いですね。

 自分の組んでいる青白黒ストームの場合、赤いデッキを意識してメインに1枚《疲弊の休息》を入れるようにしています。
 コンボ中に1回は《綿密な分析》のフラッシュバックをするのでライフは実質17で、相手の1マナ火力2枚を換算すると11がギリギリのライン。しかしそれも8点ゲインしてしまえば、もう安全圏です。コンボが決まってしまえばデッキのほとんどを掘り進むことができるので、「1枚入っている」と「1枚も入っていない」では大きく違ってきます。
 まだ試している段階ではありますが、メインに何かしらのライフゲインが1枚あると、対ビートダウンがぐっと楽になりますよ。


・《虹色の断片

 バーン対策を兼ねながら他の単色ビートダウンもカバーしており、緑単ストンピィ相手にはほぼ「2ターンを得る」のと変わらない働きをします。緑単ストンピィも速度は赤単ゴブリン並みですが、サイド後このカードが劇的に効くこともあって、マッチで見れば有利といえますね。

 また後述する青黒赤ストームの《ぶどう弾》《巣穴からの総出》への対策にもなります。


 これだけメインが完成されているデッキの場合はサイドインアウトが難しいですが、自分は対赤のサイドボードとして、

out in
4 《夜景学院の使い魔
1 《
3 《綿密な分析
3 《水流破
2 《虹色の断片
3 《孤独な宣教師》or《ヴィダルケンの異国者

 というパターンが多いです。
 《夜景学院の使い魔》については、サイド後は白いカードが増えることもあってマナベースがより一層タイトになりますし、赤が《溶岩の投げ矢》を取っているだけで使いづらくなりますからね。
 サイドカードでゲームのスピードを遅くし、《強迫的な研究》《予感》で整えた5~6ターン目に決めることが多い印象です。


 それと、このデッキを使う際に一番気をつけて欲しいのは「残り時間」です。

 1ターンに何度も呪文を唱えて何度も土地をアンタップするデッキなのでクリック回数がとても多く、またコンボが決まって相手のパーマネントをすべて戻した後でもダメージで勝つまでには数ターンを要します。特に場にパーマネントが多く出ているときは《時間の亀裂》の対象指定に時間がかかってしまうので、1ターンに5分以上かかってしまうこともしばしば。自分は完全に勝ってる場なのに時間切れで負けたことが3回あります。

 一度《記憶の壁》まで到達すると延々と呪文を唱え続けることができるデッキですが、楽しいからといってあまり時間をかけすぎないように注意。


青黒赤ストーム

Next Level. (4-0)
Pauper Daily #2202922 on 03/26/2011[MO] [ARENA]
4 《古き泉
4 《硫黄孔
2 《地熱の割れ目
2 《用水路

-土地(12)-

2 《ゴブリンの奇襲隊

-クリーチャー(2)-
4 《水蓮の花びら
4 《暗黒の儀式
4 《炎の儀式
4 《陰謀団の儀式
4 《魔力変
4 《彩色の星
3 《彩色の宝球
4 《思案
3 《留まらぬ発想
4 《血の署名
4 《ぶどう弾
4 《巣穴からの総出

-呪文(46)-
3 《強迫
2 《紅蓮破
2 《鋭い痛み
1 《強迫的な研究
2 《綿密な分析
2 《時間の亀裂
2 《ディミーアの水路
1 《イゼットの煮沸場

-サイドボード(15)-

 大量のマナ加速、そしてそこから導かれる《巣穴からの総出》《ぶどう弾》の2種類のストーム呪文。
 綺麗に回ったときはレガシー並みのスピードを持つデッキで、《巣穴からの総出》10体、そこから《ゴブリンの奇襲隊》キッカーから2ターンキルすることも可能なデッキです。
 土地を切り詰めて大量のスペルを投入しており、デッキ内のマナ加速の比重が大きいため青白黒に比べるとコンボの決まるターンが早く、速度は青黒赤側に軍配が上がりますね。

 ただそのぶん青白黒よりも不安定さがあり、対策もされやすい。ドロースペルも少ないため一度崩れると復旧がしにくいデッキで、ゴブリントークンを対処されるとそのまま負けてしまうことも多いです。

 サイド後はそれが顕著になり、親和の《クラーク族のシャーマン》、黒単の《墓所のネズミ》、さらには《残響する真実》までもが効いてしまいます。

 Pauperには《心優しき一角獣》という《ぶどう弾》対策もあり、前述の通り《虹色の断片》も苦手とするので、《鋭い痛み》が採用されているのもそのためです


 このデッキは青白黒と違いメインは1ターンにすべてを賭けるデッキです。
 しかしサイド後は前述の通り対策カードも多いので、それらをケアして《強迫》《紅蓮破》などで妨害しながらコンボパーツを揃える戦い方をすることが多いです。
 サイドに追加の「お帰りランド」と《強迫的な研究》《綿密な分析》が取られているのも、そういった「ゆっくりのゲーム」に対応するためですね。相手の妨害が多くスピード勝負になりにくい青や黒に対して、これらをサイドインすることが多いです。

 それともう一つ。サイドボードの《時間の亀裂》は対青白黒ストーム、コントロールに対して強いカード。ストーム同系のマッチは、どちらが先に《時間の亀裂》を撃つかのゲームになります。青黒赤ストームの《時間の亀裂》は青白黒のそれと違って読まれにくいので、劇的な効果を挙げることが多く、オススメですね。


ストームが強い理由

 2種類のストームデッキ共に、「Decks of the Week」をみても毎週勝っているデッキです。

 ストームに対抗し得るサイドカードが極端に少ないことが、その理由に挙げられるでしょう。
 これがレガシーの場合なら、《エーテル宣誓会の法学者》《ガドック・ティーグ》《紅蓮光電の柱》《もみ消し》など各色にありますが、Pauperではせいぜい手札破壊・土地破壊くらいで、それもケアできる範囲内です。
 青白黒ストームの場合は、少しくらいの手札破壊や打ち消しはドロースペルですぐに回復してしまいますし、青黒赤ストームはPauper界屈指のスピードを持っていますからね。ストームに対して不利なデッキは多いですが、逆に有利なデッキはそれほど多くないです。


おまけ:青黒リアニメイト

DArnold131 (4-0)
Pauper Daily #2152331 on 03/12/2011[MO] [ARENA]
6 《
5 《
4 《広漠なる変幻地
3 《進化する未開地

-土地(18)-

4 《ウラモグの破壊者

-クリーチャー(4)-
4 《渦まく知識
4 《入念な研究
3 《思案
4 《強迫
4 《巧みな軍略
4 《死体発掘
4 《交錯の混乱
2 《目くらまし
1 《残響する真実
1 《トレイリアの風
3 《ドラゴンの息
4 《大あわての捜索

-呪文(38)-
3 《ファングレンの匪賊
4 《払拭
3 《水流破
2 《虚無の呪文爆弾
2 《残響する真実
1 《ドラゴンの息

-サイドボード(15)-

 1回結果を残したのみのデッキですが、それでも強烈な印象を残してくれたのがこの「青黒リアニメイト」。
 2ターン目に速攻つきの《ウラモグの破壊者》が攻撃するのは爽快で、「コモンだけでもこんなデッキが組めるのか!」と感動したデッキです。

 ただ残念ながらこの日以降は全く結果を残しておらず、やはり安定性に難アリといったところでしょうか。青白黒ストームがメインに《断絶》というリアニメイトを否定するカードを入れているのも痛いところ。



 Pauper特集その2、今回はコンボデッキ編をお送りしました。Pauperは初期投資が安いこともあり、MO新規参入者でも気軽に楽しめるフォーマットです。
 コモンのみでも複雑な戦略やメタゲームがあり、十分楽しめる環境です。「MOをはじめたいけどジェイスが・・・」なんて方は、Pauperから始めてみるのも良いですよ。

 来週はPauper特集その3、コントロール編をお送りする予定です。

 では、また来週。

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