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高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
第11回:深遠なるコモン構築の世界?Pauper その1・ビートダウン編
読み物
高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
2011.03.25
第11回:深遠なるコモン構築の世界~Pauper その1・ビートダウン編
「このフォーマットを極めろ」、今週からは「Pauper」を研究していきます。
Pauperとは?
マジック・オンライン(以下MO)認定のフォーマット。MOでリリースされたカードセットでコモンとして収録されたことがあるすべてのカードが使用可能で、 コモンでのみデッキを構築する。
なお、《墓所のネズミ》(ビジョンズでコモン・第7版でアンコモン)、《エイトグ》《ゴリラのシャーマン》など、アンコモン・コモン両方に収録されたことがあるカードはコモン扱いになる。
禁止カード:《頭蓋囲い》
コモンだけとはいえ使用できるカードはレガシーに準拠しており、ビートダウン・コンボ・コントロール、どのタイプにも数多くのデッキが存在します。また他の構築戦同様にメタゲームも存在し、《紅蓮破》《水流破》などの優秀なサイドボードカードも使用可能です。
使えるカードの幅は狭くても、奥の深いフォーマットであり、「Decks of the Week」を見ても様々なタイプのデッキが存在します。
今週はPauper特集第1回として、ビートダウンデッキを紹介していきます。
赤バーン
19 《山》 -土地(19)- 4 《ケルドの匪賊》 4 《窯の悪鬼》 4 《火花の精霊》 -クリーチャー(12)- |
4 《Chain Lightning》 4 《溶岩の撃ち込み》 4 《稲妻》 1 《針落とし》 1 《無謀なる突進》 4 《焼尽の猛火》 3 《火葬》 4 《裂け目の稲妻》 4 《火炎破》 -呪文(29)- |
4 《灰の殉教者》 4 《倒壊》 2 《炎の突き》 3 《粉々》 2 《鋭い痛み》 -サイドボード(15)- |
マジック黎明期から存在する「赤バーン」。PauperではTier1に分類されるデッキです。
それもそのはず、《稲妻》《Chain Lightning》《火炎破》という歴代でも最高級の火力が使える上に《裂け目の稲妻》《溶岩の打ち込み》といった「1マナ3点」も多く、4ターン目には相手を焼き尽くすことができ、レガシーと比べても遜色のないデッキ構成になっています。
またクリーチャーも《ケルドの匪賊》は2マナ5点火力、《窯の悪鬼》は通れば7点以上とダメージ効率が良く、これらを活用するために《無謀なる突進》が1枚入っているのもポイント。《窯の悪鬼》《無謀なる突進》《火炎破》が決まれば、一発で10点以上のダメージが入ります。
手札を効率よく使うために、デッキのマナカーブを極限まで低くしており、デッキ内の最高コストはなんと2マナ!
そのため土地は19枚と少なめですが、赤バーンは他のデッキに比べて「土地を引きすぎて負ける」ことが多いデッキなので、このくらいの枚数がちょうど良いです。少量の《忘れられた洞窟》を入れるのもオススメ。
バーン戦術の特徴として、「相手のカードをある程度無視できる」というものがあります。
どの部分を引いても同じ働きをする金太郎飴的なデッキなので、相手のカウンターや手札破壊、除去といったものが他デッキに比べて効果が薄い。こちらが勝つのに必要なのは火力7枚をプレイすることで、《火炎破》を含めればだいたい4ターン目には条件を満たせます。消耗戦になってもトップデッキを勝算に組み込むことができます。
ただ、赤バーンは「対策されると脆い」という欠点も併せ持っています。ライフを大量回復するカード(後述する黒単の《堕落》)やダメージを軽減するカードは特に苦手。
特に《赤の防御円》は長年赤バーンを否定し続けてきた1枚であり、構築戦と違って《真髄の針》も使用できないので苦しめられることになるでしょう。
そのためのサイドカードが《鋭い痛み》であり、一時しのぎではありますが《赤の防御円》や《虹色の断片》を無効化できます。
ゴブリン
16 《山》 1 《ぐらつく峰》 -土地(17)- 4 《ゴブリンの奇襲隊》 4 《ゴブリンの群勢》 4 《ゴブリンのそり乗り》 4 《モグの略奪者》 3 《ジャッカルの使い魔》 4 《モグの下働き》 4 《モグの戦争司令官》 4 《火花鍛冶》 3 《モグの徴集兵部隊》 -クリーチャー(34)- |
4 《稲妻》 4 《Chain Lightning》 1 《死の火花》 -呪文(9)- |
2 《ゴリラのシャーマン》 4 《紅蓮破》 1 《死の火花》 1 《炎の斬りつけ》 2 《鋭い痛み》 2 《地鳴りの揺るぎ》 3 《粉々》 -サイドボード(15)- |
こちらはクリーチャーでの戦闘を主体にしたデッキ「赤単ゴブリン」。このデッキも赤バーン同様にデッキの最大コストは2マナであり、1マナ27枚、2マナ16枚と極限までマナ効率を意識したつくりになっています。
《火花鍛冶》や《モグの戦争司令官》がクリーチャーデッキに特に強く、また1マナ火力8枚もあるため対クリーチャーデッキへの性能が高いです。1枚差しの《死の火花》は同系や緑単などのクリーチャーデッキ相手に特に活躍します。
能力が全く一緒な《モグの略奪者》《ゴブリンのそり乗り》が8枚入っているのはマナカーブを埋める理由もありますが、それよりもPauperの「黒単」に対する役割が大きいです。《堕落の触手》に対応して生け贄にすることでライフゲインを阻止する働きをします。
親和
4 《大焼炉》 4 《教議会の座席》 4 《伝承の樹》 4 《囁きの大霊堂》 1 《ダークスティールの城塞》 -土地(17)- 4 《大霊堂の信奉者》 4 《エイトグ》 4 《甲殻の鍛冶工》 4 《金属ガエル》 4 《マイアの処罰者》 -クリーチャー(20)- |
3 《水蓮の花びら》 4 《バネ葉の太鼓》 4 《彩色の星》 2 《彩色の宝球》 1 《飛行の呪文爆弾》 4 《感電破》 1 《魂の火》 4 《物読み》 -呪文(23)- |
4 《ゴリラのシャーマン》 2 《クラーク族のシャーマン》 4 《水流破》 3 《紅蓮破》 2 《古えの遺恨》 -サイドボード(15)- |
バーンにもゴブリンも《粉々》が取られていたり《頭蓋囲い》が禁止カードであることからもわかるように、親和はPauperでは一大勢力であり、「Decks of the Week」を見ても毎回必ず勝っているデッキです。
かつてのスタンダードで「親和一強時代」を築いた《大霊堂の信奉者》《金属カエル》《マイアの処罰者》《物読み》の旧ミラディン時代のカードは軒並みコモン(《エイトグ》はMasters Edition 4でコモン)。
そこに《バネ葉の太鼓》という強力なマナベースが加わり、ミラディンの傷跡からは《甲殻の鍛冶工》《感電破》といった金属術がデッキを強化しています。このデッキも赤バーン同様にレガシーと比べても大差ない内容に仕上がっています。
スピードもPauper界ではトップクラスで、《大霊堂の信奉者》+《エイトグ》とアーティファクトが6個あれば3ターンキルすることも可能。このデッキの場合は他にも《エイトグ》+《魂の火》コンボを内蔵していますね。
これだけ強いデッキだと当然、ミラーマッチの回数も多くなります。サイドボードはメイン戦以上に先手が有利なゲームで、《ゴリラのシャーマン》がその大きな理由ですね。
「{X}{X}{1}:点数で見たマナ・コストがXである、クリーチャーでないアーティファクト1つを対象とし、それを破壊する。」という能力ですが、読みかえると
「{1}:対象のアーティファクト・土地を破壊する」
ということであり、お互いが割りあって場に土地が残らなくなる光景もしばしば。そのためサイド後は《感電破》《黄鉄の呪文爆弾》といった軽除去の価値がよりいっそう高まります。割られないように《ダークスティールの城塞》を多めに取るのも良いでしょう。
黒単
23 《沼》 -土地(23)- 4 《貪欲なるネズミ》 4 《ファイレクシアの憤怒鬼》 4 《リリアナの死霊》 3 《騒がしいネズミ》 3 《大牙の衆の忍び》 -クリーチャー(18)- |
4 《見栄え損ない》 3 《発掘》 4 《血の署名》 3 《闇の掌握》 1 《破滅の刃》 4 《堕落》 -呪文(19)- |
3 《墓所のネズミ》 3 《強迫》 1 《破滅の刃》 4 《押し寄せる砂》 2 《汚れ》 2 《堕落の触手》 -サイドボード(15)- |
《貪欲なるネズミ》《騒がしいネズミ》《リリアナの死霊》《ファイレクシアの憤怒鬼》でアドバンテージを取りながら、それらがタネになって忍術→《大牙の衆の忍び》で手札を攻め、手札に戻したクリーチャーで再びアドバンテージ。
アドバンテージ内包クリーチャーは全部3マナ以下なので、除去されても《発掘》で良い働きをします。リソースの差を広げたらあとは《堕落》でトドメを刺します。使っていて楽しいデッキであり、Pauperでの使用者も多いですね。
黒単は《闇の掌握》《破滅の刃》など除去の種類が豊富ですが、このリストでは軽さを優先して《見栄え損ない》を取っていますね。
自分もこれには賛成です。というのも、黒単はマナが2・3マナに寄ったデッキなので、毎ターン効率よくマナを使うためにも1マナのほうが行動しやすいからです。「後手で《血の署名》をプレイして1枚ディスカード」という光景を良く見ますが、1ターン目《見栄え損ない》ならそんなこともありませんからね。
サイドボードはビートダウン用の除去が多く、特に《墓所のネズミ》は数少ないコモンの全体除去で重宝します。
Pauperでは《ディミーアの水路》《アゾリウスの大法官庁》をキーカードにしたストームデッキも存在するので、その対策として《押し寄せる砂》《汚れ》の2種類の土地破壊が採用されていますね。
黒単タッチ赤
12 《沼》 4 《山》 4 《広漠なる変幻地》 2 《進化する未開地》 -土地(22)- 4 《髑髏の占い師》 3 《貪欲なるネズミ》 4 《ファイレクシアの憤怒鬼》 3 《騒がしいネズミ》 3 《ギトゥの投石戦士》 3 《リリアナの死霊》 1 《大牙の衆の忍び》 -クリーチャー(21)- |
4 《稲妻》 4 《発掘》 3 《血の署名》 3 《終止》 3 《荒廃稲妻》 -呪文(17)- |
1 《ギトゥの投石戦士》 3 《強迫》 3 《精神ねじ切り》 4 《破滅の刃》 4 《堕落の触手》 -サイドボード(15)- |
赤を加えて《稲妻》《荒廃稲妻》《終止》《ギトゥの投石戦士》をタッチしたバージョンも存在します。
Pauperはコモンだけのフォーマットなので《Tundra》などのデュアルランドはもちろん、《セジーリの隠れ家》などの二色土地も使えません。そのためデッキを多色にするためには《アゾリウスの印鑑》《予言のプリズム》といったアーティファクトを使うか、《広漠なる変幻地》《アゾリウスの大法官庁》などの土地に限定されます。マナベースがそこまで強固なわけではないので、多色デッキを組む場合はこの赤黒のようにタッチ一色に留めることが多いですね。
緑単ストンピィ
17 《森》 -土地(17)- 4 《日を浴びるルートワラ》 4 《イラクサの歩哨》 4 《クウィリーオン・レインジャー》 4 《シラナの岩礁渡り》 4 《スカルガンの穴潜み》 3 《野生の雑種犬》 3 《生命の咆哮の思念》 -クリーチャー(26)- |
2 《骨断ちの矛槍》 4 《怨恨》 4 《かき集める勇気》 4 《地うねり》 3 《巨森の蔦》 -呪文(17)- |
3 《濃霧》 1 《巨森の蔦》 4 《隠れたる蜘蛛》 4 《Thermokarst》 3 《大霊の盾》 -サイドボード(15)- |
緑単ストンピィと言うと《野生の犬》《飛びかかるジャガー》《アルビノ・トロール》といったウルザブロックのイメージが強いですが、クリーチャーは最近のものが多いですね。
そんな中でも変わらないのが《怨恨》。ウルザズレガシーから10年以上経った今でも「強すぎる」と思える呪文で、《シラナの岩礁渡り》《スカルガンの穴潜み》にエンチャントすればほぼブロック不可能になります。
《シラナの岩礁渡り》は相手から触れないこともあり、安心して《地うねり》《巨森の蔦》を打ち込めます。
《巨大化》系の中でも特に《かき集める勇気》は使いやすく、0マナでプレイできるので赤単の火力除けにもなります。
今回はPauperのビートダウンデッキ特集をお送りしました。コモンだけとは言え複雑なメタゲームも存在し、非常に奥が深い。
次回も引き続きPauper・コンボデッキ特集をお送りする予定です。コモンのみでも2ターンキルができるデッキが・・・あります!
では、また来週。
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