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Beyond the Basics -上級者への道-
サイクリングすべきか?
サイクリングすべきか?
Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing
2017年5月4日
20年近く前にサイクリングがデビューして以来、このメカニズムを持つカードを使うプレイヤーの心には、ある問題が常に浮かび上がっている。昔からある悩ましい問題だが、どうするかによってゲームを完全に掌握できるか、あるいは台無しになってしまうかの分かれ道であったりする。
すでに『アモンケット』を体験していて、実際に頭によぎったことがあるなら、この決断が困難なものであると感じているだろう。スタンダードで新しいデッキを試している時や、リミテッドの3ターン目という状況で、この問題に頭を悩ませているのかもしれない。これは、単純な問題だ。
「このカードをサイクリングすべきか?」
この問題は、サイクリングがスタンダードに戻ってくるたびに、プレイヤーの集団意識に舞い戻ってくる。そう、サイクリングは今戻ってきている!
《死後の放浪》 アート:Seb McKinnon |
墓地を利用したり、サイクリングで能力が誘発する《ドレイクの安息地》のようなカードは脇に置いておくとして、サイクリングとは多かれ少なかれ以下のような問題だ。このカードを手札に残すべきか、それともこれを捨ててライブラリーの一番上にある正体不明のカードを手に入れるべきか? これがその時に行っている判断の基礎だ。
そしてこれは、マジックで行う数々の判断と同様に、その後の展開を大きく変える可能性がある。
私は、サイクリングすることで――あるいはサイクリングしないことで――ゲームを決めた側になったこともあるし、決められた側になったこともある。序盤に大型クリーチャーをサイクリングで手放したときに限ってゲームが長引いて必要になったり、強いクリーチャーをサイクリングしないでいたら土地が引けずに展開が遅れる......どちらもよくある事例だ。判断が難しいこともある......問題となったカードが墓地や手札からこちらを恨みがましく睨んでくるから、かどうかはともかくね。
マジックに存在するたいていの能力は、基本的にマナが余っているのならば使うべきだ。しかしサイクリングは違う。たとえ相手のターン終了ステップ、こちらがアンタップする直前にマナが「余っている」としても、その時にサイクリングすることが常に正しいというわけではない。
経験を積むにつれ、私はサイクリングするかどうかを判断する時に自問すべき、4つの質問があることに気がついた。このようなものだ。
1.このカードは今必要だろうか?
サイクリング問題の中で、最も単純かつ簡単な評価方法がこれだ。このカードは今必要だろうか?
標準的な青黒コントロール・デッキをプレイしていて、ゲームは長期戦に入った。土地を9枚コントロールしているところに、《異臭の池》を引いた。
この場合、《異臭の池》はサイクリングしたほうが良い、と考えるのはかなり妥当な判断だろう。(さらに言えば、相手のターン終了ステップなど待たずに、今すぐサイクリングして次のカードを見たい。)さらなる土地の伸びが――《明日からの引き寄せ》を唱える時や、同一ターンに複数の呪文を唱える時など――今後の助けになるのは間違いないとはいえ、サイクリングして別のカードを引いたほうが良いだろう。
この後すぐにもっと多くの物事を考慮しなければならなくなるが、考え始めるには適した質問だ。このような状況下では、その効果を本当に必要としているのかどうかが答えにつながるだろう。しかし、より多くの機会で出くわすのは、2番目の質問に対しての判断になるだろう。これは1番目の質問に比べてはるかに難しい。
その質問とは......
2.このカードは後で必要になるだろうか?
ここからややこしくなってくる。
サイクリングを最大限に生かすとは、基本的にゲームの今後の展開を――時にはかなり先のターンの展開を――予測して、サイクリングを持つそのカードが必要になるかどうかを判断する、ということだ。
リミテッドで初手に《有翼の番人》がある場合、1ターン目からずっとそれをサイクリングするか否かの判断が求められ続ける。5ターン後に自分はこれを必要としているのだろうか?
スタンダードから1つの例を見てみよう。
+1/+1カウンターの相互作用を重視した黒緑デッキを使って、ティムール《電招の塔》デッキと対戦している。お互い戦場には土地を数多く並べているが、それ以外のパーマネントはない。対戦相手の手札は0枚だが、エネルギーは8個ある。そしてこちらの手札は《造反者の解放》だ。
このカードをサイクリングすべきだろうか?
ああ、《造反者の解放》は今は何の役にも立たない。サイクリングして《新緑の機械巨人》あたりを引き、盤面に叩きつけるのは自由だ。
だがしかし、これをサイクリングしてしまうと、対戦相手が《電招の塔》を引いてきた場合、こちらが展開するカードはすべて処理されてしまうだろう。あるいは《奔流の機械巨人》がこちらのライフを一気に削り始めるかもしれない。
どうすべきだろうか?
そうだな、最初に確認したいのは、ゲームの詳細な情報だ。対戦相手の現在のライフ、こちらの現在のライフ、それにここまででプレイされたお互いのカードは全部で何がどれだけあるだろう?
対戦相手のライフが極めて少ないのであれば、隙を突いて攻め込みたい......それによって決着までのターン数が少なくなる。例えば相手のライフが4なら、どのクリーチャーを引いても1ターンか2ターンで倒せるだろう。逆に20なら、パワー/タフネスが一番大きいクリーチャーでも引かないかぎり、その1枚で決着を付けることは不可能と言える。(しかも、対戦相手には危険なアーティファクトを引き当てる時間も十分に残ってしまう。)
それから、使用済みのカードも確認していきたい。対戦相手の墓地に《電招の塔》が3枚、《奔流の機械巨人》が2枚あるとする。それらをまだ1枚も引かれていない状況に比べれば、その2種をライブラリーから引かれる可能性はかなり少ない。
この状況なら、私は基本的にサイクリングすることのほうが多いかな。クリーチャーを展開して攻め立てる状況を確立するため、脅威を引き当てたい。とはいえ、この判断はさまざまな要素に依存しがちだ。例えば、対戦相手の墓地に《電招の塔》が何枚か落ちているが、こちらのデッキには《造反者の解放》がまだいくつも入っている、としよう。その場合、アーティファクトに対してアーティファクト破壊を撃ち続け、長期戦を1対1交換で戦えるのでは、と考えることもできるだろう。
少しだけ違う状況を考えてみよう。今回は、対戦相手のエネルギーはゼロだ。ただし、戦場にはすでに《電招の塔》が出てしまっている。
エネルギーが不足しているため、何かをするにはいくつかの呪文が唱えられる必要がある――しかしそうなれば、問題となりうるだろう。
どうしようか?
この状況では、私なら《電招の塔》を破壊する。3ターン後、4ターン後、5ターン後、あるいはその先のゲーム状況を考慮すると、対戦相手の引きが普通程度だったとしても《電招の塔》がこちらの障害となる可能性はかなり高い。であれば、1枚引くよりも《電招の塔》を破壊するほうがはるかに良いだろう。
そしてこれは3つめの質問に繋がっていく。
3.デッキから何か引きたいだろうか?
サイクリングが最後に登場した『アラーラの断片』ブロックの時期に、競技マジック・サークルの間で定番となった話がある。
ニュージーランドのオークランドで開催されたシールドデッキのグランプリで、ある対戦が中盤に差し掛かった。みんなが注目していたプレイヤーの手札には、大型クリーチャーの《ジャングルの織り手》が1枚残っているだけだった。
そのプレイヤーの土地は6枚で、今は対戦相手のターンの終了ステップだ。戦場はかなり膠着しているが、大型クリーチャーはそれを打破するに十分だろう。そしてそのプレイヤーは......《ジャングルの織り手》をサイクリングした。
話は(誰かによって)こう続く。「まあ何か別のカードが引けるだろうね......もう1枚の《ジャングルの織り手》とかさ!」
これは何が問題なんだろうか?
ここで《ジャングルの織り手》よりもいいカードなんて、そうそうないだろう!
確かに《ジャングルの織り手》を唱えるにはもう1枚土地が必要だが、そのために《ジャングルの織り手》自身を捨てるのは本末転倒だ。サイクリングせずに通常のドローに進むほうがいいだろう。土地を引けば《ジャングルの織り手》を出せるし、土地でなければ何かしら別の行動が取れるようになるはずだ。
ああ、デッキに依存する場合もあるかもしれない。そのデッキに本当に大量の爆弾レアがあるなら、それを引きにかかるのが正しいと言えるかもしれない。しかしほとんどの場合、これは間違いだ。
そして、3番目の質問に戻ろう。デッキから何か引きたいだろうか?
私はサイクリングするかどうかを決める前に、常に頭の中でデッキの中身を思い出しつつ、こう考える。「手札にあるこのサイクリング持ちカードと比べて、今欲しいと思うカードはどれだろう?」
そう思えるカードがほとんど無かったり、0枚だった場合は、おそらくサイクリングしないほうがいいだろう。『アモンケット』の2色土地をサイクリングしておきながら土地が置けない状態に陥るのは、ほとんどのデッキにとって良い動きとは言えない。土地が5枚で手札に《有翼の番人》があるなら、それをサイクリングしてしまい、その後ゲームに大きな影響を与えるカードを出せない、となってしまう行動は取らないほうがいい。
逆に、本当に「ああ、これよりも欲しいカードがいくつもある」という答えが出る場合もある。その場合は基本的に、カードをサイクリングするに十分な理由となるだろう。例えば、3枚目の土地が置けず、手札に《排斥》があるとすれば、サイクリングを考慮する時だ。土地が並んでいたなら、基本的には残すと思うけれどもね。
そしていよいよ、最後の質問だ!
4.後でサイクリングする猶予とマナはあるだろうか?
サイクリングはタダでは使えない。(ああ、《新たな視点》が有効になっていれば別だ――もしそうなら、どうでもいいね!)サイクリング・コストを支払う必要がある。その結果、重要な質問が浮かび上がる。「サイクリングしたい時にマナは支払えるのか?」
前に述べた、1ターン目から《有翼の番人》をサイクリングするかどうかの例を覚えているだろうか? もう一度考えてみよう。
他のすべてのゲーム進行要素を加味した上で、サイクリングのために必要なマナ、そして次にサイクリングするか否かを考えられる機会がいつ訪れるかを考えなければならない。
この状況ではまず、最初に3つの質問を行う。この対戦で、《有翼の番人》は必要だろうか......それとも3/3飛行は今回、何らかの理由で通常より弱いだろうか? これよりも良いカードはデッキに何枚あるだろうか? あるいは土地を引きたいだろうか?
それから、サイクリングできる機会が来るかどうかについて考える。
《有翼の番人》の場合、{W}でサイクリングできるので、サイクリングできる機会はかなり多い。例え今サイクリングせずとも、{W}が残るこの先のあらゆるターンで、再びサイクリングするかどうかを選べるということだ。それは手札とカードの展開計画(あるいは土地が足りなくならないか)に依存するが、ほとんど他の行動の邪魔にならずにサイクリングできるだろう。
もちろん、ここまでの推論は、他の選択肢を選ぶよりもデッキを1枚だけ掘り進めるほうが良い場合の話だ。すでに適切な手札の展開が先々のターンまで見えていたとしても、カードが1枚増えればより優れたクリーチャーが手に入るかもしれない......とは言うものの、そのためには手札の3/3飛行クリーチャーを手放さなければならない。ゲームが長引いた時は、それが極めて大きな問題になるだろう。
しかしながら、同様の状況であってもサイクリングのためのコストが――例えば3マナなどで――かなり高いとすれば、再びそれだけのマナが自由になる状況は多くないはずだ。対戦相手のターン終了ステップに《焼けつく双陽》をサイクリングする機会を得て、それが必要かどうかわからないとしよう。次にいつ機会が訪れるかわからないということは、ここでサイクリングしたほうがよさそうだと判断する妥当な理由となる。
サイクルヒット
サイクリングについて考慮すべき理由はほかにもある。最初に挙げたように、《ドレイクの安息地》のようなサイクリングで誘発する能力があれば、サイクリングする機会があるごとにその理由が付随してくる。墓地の枚数が必要だったり、墓地を利用する呪文があるなら、サイクリングで墓地にもっとカードを送りたいと思うかもしれない。
逆に、《炎刃の達人》を一気に強化するためや、対戦相手が墓地追放カードを消費するところを見届けてから一心不乱に墓地を肥やしたい、という理由でサイクリング・カードを温存したい状況も考えられる。状況ごとに独特な理由がいつも生まれるだろう。
とはいえ、ほとんどの場合は、今回の4つの法則が正しい判断を助けてくれるはずだ。征け、そしてサイクリングせよ!
何か質問や、今回の記事の内容についての感想などはあるかな? ぜひともそれについて聞いて語り合いたいね! TwitterやTumblr、あるいはBeyondBasicsMagic@gmail.comに(済まないが英語で)メールしてくれれば、いつでも読ませてもらうよ。
サイクリングと、新しくなったスタンダード環境を楽しんでくれ! また来週会おう。
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
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