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浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
世界選手権2015、4つのフォーマットで行われた選ばれし24人の戦いを振り返ろう!
世界選手権2015、4つのフォーマットで行われた選ばれし24人の戦いを振り返ろう!
by 浅原 晃
皆さん、こんにちは。暑い夏も終わりに近づき、涼しくなってきた昨今、いかがお過ごしでしょうか。という、軽い前ふりはほどほどにしまして、このたびはアメリカ・シアトルで行われた「世界選手権2015」に行ってまいりました!
世界選手権とは何? という方に軽く説明しますと、プロツアーの優勝者やプロポイントの各地域の上位者など、今年、活躍したプレイヤーを24人集め、それらのプレイヤーで世界一を決めようという大会です。いずれも劣らぬトッププレイヤーばかりで、ここでの勝利は名実ともに世界一の称号を得ることになります。
というわけで、今回はニコニコ生放送でも完全中継された、この世界選手権の見所をいろいろと紹介していきたいと思います。
(※編注:各項目がリンクになっているものは、タイムシフト視聴動画内のその場面に直接移動することができます。時刻はタイムシフト動画内の位置(時:分:秒)を表します。タイムシフト視聴画面の左下に入力欄があり、再生中に移動することもできます。)
マジック:ザ・ギャザリング 『世界選手権』 in シアトル DAY1マジック:ザ・ギャザリング 『世界選手権』 in シアトル DAY2
マジック:ザ・ギャザリング 『世界選手権』 in シアトル DAY3
世界選手権参加の日本人プレイヤー
それでは、まずは、全選手入場かつ紹介! というのは無理なので、日本人のプレイヤーを軽く紹介していきましょう。今回は2人の日本人プレイヤーがこの世界選手権に参加しています。
1人目は渡辺雄也選手(4年連続4回目の出場)。
かつて最強の名をほしいままにした殿堂プレイヤーのカイ・ブッディに付けられていた二つ名「ジャーマン・ジャガーノート」にならって、「ジャパニーズ・ジャガーノート」とも呼ばれることもあるプレイヤーです。リミテッドスキルに定評があり、12月に行われる「ワールド・マジック・カップ2015」でもキャプテンを務めることが決定しています。日本ならず今もっとも世界で注目されているプレイヤーの1人と言っても過言ではないでしょう。
2人目は山本賢太郎(2年連続2回目の出場)。
前回のプロツアー『マジック・オリジン』では予選ラウンド1位通過と、その目覚ましい活躍を覚えている人も多いのではないでしょうか。昨年の世界選手権でもギリギリのタイミングで参加権を得たように、土壇場での強さと、確かな実力を持つプレイヤーです。
2人の日本人プレイヤーがゲストとして登場する場面もありますので、ぜひ注目してご覧ください。また、他のプレイヤーも有名プレイヤーが揃っており、ドラフトから構築戦まで、ハイレベルな戦いが常に見られるというのもこの世界選手権ならでは。
では、見所を初日から追っていきましょう。
「世界選手権2015」1日目の見どころ
世界選手権は予選が初日と2日目で7回戦ずつ、合わせて14回戦、そこでトップ4を決め、3日目の決勝トーナメントへと駒を進めます。
初日は『モダンマスターズ 2015年版』のドラフト3回戦から、モダン構築の4回戦が行われます。
最初の『モダンマスターズ 2015年版』のドラフトピックには、この2年の世界選手権を連続で優勝しているシャハール・シェンハーが登場します。『モダンマスターズ 2015年版』ののドラフトは組み合わせによるカードのシナジー、アーキタイプをどれだけ重視するかで、大きくドラフトの方針が変わるフォーマットです。
例えば、白青の「金属術」、白黒の「スピリット」、赤黒の「狂喜」、青緑の「移植」などは集まったときのシナジーを形成し強力なデッキに育つ可能性がある反面、他のプレイヤーと被ったときのリスクもあります。そのリスクを避けるために、逆にアーキタイプを重視せず、強いカードを取っていって多色化するという戦略を取るプレイヤーもいます。
『モダンマスターズ 2015年版』ドラフト1回目(1日目 0:14:55~)
この卓では、シャハール・シェンハーとマイク・シグリストのピックを見ることができますが、どういったアーキタイプを意識しているか、または意識していないかといった視点で見てみると面白いのではないでしょうか。
また、1回戦のフィーチャーマッチ、渡辺雄也とマイク・シグリストの対戦で明らかになりますが、同卓の渡辺雄也が「スピリット」を中心としたドラフトをしているのにも注目ですね。
第1回戦:渡辺雄也 vs. マイク・シグリスト(1日目 1:20:22~)
『モダンマスターズ 2015年版』のドラフト3回戦が終わると、次はモダン構築4回戦、その世界は超高速環境でした。
モダン構築が始まった4回戦目。オーウェン・ターテンワルドの親和デッキは4ターン、3分足らずで1ゲームをものにします。これが特別速いかというとそうではなく、モダン環境でもっとも早いデッキのキルターンが4ターンくらいに設定されているのです。
第4回戦:スティーブ・ルービン vs. オーウェン・ターテンワルド(1日目 5:00:50~)
また、世界選手権は24人という少人数で行われるため、メタゲームも、特殊な分布になることがあります。今回のモダン構築で特に顕著として現れたのは、「《死せる生》デッキ」と「呪禁オーラデッキ」が多くいたことでしょう。
一番人気はオーウェン・ターテンワルドが使用したアーティファクトを中心とした親和デッキで、これはどのプレイヤーも予想していた範囲内と言えます。つまり、親和デッキは対策されていても強いデッキということでの選択になります。対して《死せる生》や呪禁オーラは対策には弱いですが、対策されていなければ、そのまま駆け抜けてしまうというタイプのデッキです。
こうしたデッキ選択は、ある程度強いデッキや流行のデッキの認識が「レベルの高い範囲で」「すべてのプレイヤーで一致」しているという、世界選手権向けとも言えるのです。端的に言えば、誰も予想していなければ強いデッキなのです。サイドボードがアーティファクト対策だらけなら、これらのデッキと有利に戦うのは難しいでしょう。
しかし、こうした高速環境において、もっとも特殊なデッキを使っていたのは、渡辺雄也が使用する「青白コントロール」です。やりたいことをやるデッキとは対称的に盤面をコントロールしていくこのデッキは、デッキ構築、プレイング両面において、環境理解が必要なデッキとなります。渡辺雄也が登場するのは第5回戦でのショーン・マクラーレンとの試合。今回のモダン構築では珍しく長い戦いとなった一戦は必見です。
第5回戦:ショーン・マクラーレン vs. 渡辺雄也(1日目 6:02:43~)
「世界選手権2015」2日目の見どころ
2日目は『マジック・オリジン』のドラフト3回戦と、スタンダード構築4回戦で残りの7回戦が行われます。
初日6−1と好成績を挙げたセス・マンフィールドのドラフトは青を中心として、カードパワーの高いハイカロリーな青赤デッキを構築します。対して、渡辺雄也は低マナにまとめた赤黒デッキを構築します。色の好み、また、マナカーブの認識が対照的に出た2人のドラフトは見ごたえのあるものになっています。
『マジック・オリジン』ドラフト1回目 (2日目 0:10:45~)
そして、『マジック・オリジン』のドラフトが終わると、スタンダード構築戦が始まります。スタンダードの多くのプレイヤーがアブザンとジェスカイという、非常にパワフルなカラーの組み合わせのデッキを選択していました。この世界選手権の時期は現スタンダード環境の集大成と呼べるもので、一番強いデッキは何か? という問いに多くのプレイヤーはアブザンかジェスカイ、そして、いくつかのプレイヤーはそれらに《搭載歩行機械》を加えるといった答えを出したのです。
しかし、独特のデッキビルダーと理論でここまで勝ち抜いてきたサム・ブラックの選択は違いました。それは、白単信心。《徴税の大天使》や《白蘭の騎士》を中心とした信心の高いクリーチャーを『マジック・オリジン』から取り入れると、《ニクスの神殿、ニクソス》からのマナを《見えざるものの熟達》に注ぎ込み、絶え間ない攻勢を実現しているのです。
21 《平地》 3 《ニクスの祭殿、ニクソス》 1 《領事の鋳造所》 -土地(25)- 4 《万神殿の兵士》 2 《アクロスの英雄、キテオン》 4 《白蘭の騎士》 3 《搭載歩行機械》 1 《族樹の精霊、アナフェンザ》 3 《オレスコスの王、ブリマーズ》 4 《徴税の大天使》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(25)- |
4 《見えざるものの熟達》 3 《勇敢な姿勢》 3 《払拭の光》 -呪文(10)- |
1 《アラシンの上級歩哨》 3 《天界のほとばしり》 2 《異端の輝き》 2 《正義のうねり》 1 《存在の破棄》 1 《勇敢な姿勢》 1 《払拭の光》 2 《悲劇的な傲慢》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
サムの白単信心はスタンダードラウンドを4−0という成績を収め、5敗で踏みとどまり、トップ4最後の椅子をものにしたのです。
第14回戦:オーウェン・ターテンワルド vs. サム・ブラック(2日目 8:39:15~)
「世界選手権2015」3日目の見どころ
3日目は決勝トーナメント、4人のプレイヤーによって王者を決める戦いが行われます。3つのアブザンデッキに1つの白単信心。決勝トーナメントは、予選を13勝1敗という圧倒的成績で駆け抜けたセス・マンフィールドを誰が止めるか? という点にも注目が集まりました。彼が1敗で残りのプレイヤーは5敗しているのですから、彼のパフォーマンスがどれほど圧倒的だったのか分かりますね。
最も見ごたえのある試合は、決勝での5本目、つまり、2−2で迎えた、チャンピオンを決める最終戦で訪れました。ニッサやソリン、エルズペス、そしてウギンといったプレインズウォーカーのスターたちが戦場に乱舞する戦いはまさに最後を飾るに相応しいものでした。そしてその戦いを制したのはセス・マンフィールド!
勝利に涙ぐむ姿はこちらもちょっとうるっと来てしまいました。父は強しなのかもしれません。ぜひ、こちらの戦いは動画の方でもご覧ください。
決勝戦:セス・マンフィールド vs. オーウェン・ターテンワルド(最終日 4:15:16~)
『戦乱のゼンディカー』はもうすぐ!
今回の「世界選手権2015」はゲームイベントである「PAX Prime2015」と併設イベントとなっており、サプライズな発表も多くありました。特に次のセットである『戦乱のゼンディカー』の新しいデュアルランドとも呼べる土地、そしてフルアートで特殊枠の土地(Zendikar Expeditions)でフェッチランドが入るという話題に驚いた方は多かったのではないでしょうか。
これから、プレビュー期間が始まり、発売まで楽しみの日々が続きます。そして、発売がされたら、すぐにプロツアー『戦乱のゼンディカー』が開催されます。全く新しい環境での戦いは、ワクワクするものがありますね。こちらもニコニコ生放送がありますので、ぜひ、ご覧ください。それでは、また次のプロツアーでお会いしましょう!
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