By Takeshi Miyasaka & Shiro Wakayama

日本代表がマッチアップしたのは、オランダ代表。先ほど国別対抗でデンマークと首位対決をしていたオランダは、引き分けたことで勝ち点3を獲得するのみにとどまり、81点ということになった。
日本は勝ち点9を獲得して彼らとならび、さらに上を目指すことになる。
オランダ代表がここまでチーム戦で獲得した勝ち点は12点、日本代表は27点。
オランダ代表はそれぞれが個人戦で獲得したポイントでこの順位を維持し、一方の日本代表は国別対抗戦で勝ち点を重ねて勝ち上がってきた。それぞれが個人戦で戦ったらオランダの方が格上かもしれないが、日本代表はチーム戦で実力を発揮してここまでやってきた。
現時点の首位・香港は86点、2位のカナダが83点と、この両者が引き分けない限りこの試合に勝利しても追いつくことはできないが、最終日の国別代表決勝戦へ進出するためには、このマッチを勝ち取り、香港・カナダのすぐ後を追うべく確実に9点を上乗せしておきたいところ。
ここまで国別対抗戦を3連勝してきた日本代表が、チーム戦の予選ラウンド最終戦へ挑む。目指すは予選全勝。
レガシー:Ruben Snijdewind vs 藤本 知也
モダン:Peter Kesteloo vs 三原 槙仁
スタンダード:Nick Bresser vs 石田 龍一郎
レガシー:Ruben Snijdewind vs 藤本 知也 Game 1
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Ruben Snijdewind | |
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先攻のSnijdewindは《》から《》をプレイして藤本の動向をうかがう。藤本はじっと《》を見つめ、このカードが今後与える影響を自分の手札と勘案しているようだ。
マナがないところからカウンターが飛んでくるのが、レガシーというフォーマット。「やってもいい。」とセンターに座る三原が一言口添えたことで、藤本は力強くうなずき《》を追放して《》する。消費した手札は《》セットからの《》ですぐさま質を回復する。
《》をセットしてから額に手をやって行動を考えるSnijdewind。《》に《》を刻印すると、《》で《》をサーチ、3マナそろえて《》により手札の補充をはかるが、これも《》を手札に戻して藤本が《》する。
三原 「相手のデッキなんだった?」
自分のゲームを進めながらも藤本の様子を確認するのを忘れない司令官。いまレガシーで戦っている藤本と、三原を挟んで反対側でスタンダードで戦っている石田の両者にとって、三原の存在は初日よりも大きなものに育っているようだ。
日本チャンピオンの石田は尊敬するプレイヤーに三原の名を挙げ、全幅の信頼を置いている。藤本もまた、今日のモダンラウンドで使用するデッキは三原が使用している《》コンボだという。司令官に全幅の信頼を置く3人チームという形式が、ここまでの彼らの好成績に繋がっているのかもしれない。
コストとして手札へ戻した《》をもう一度セットしてからふたたび《》で手札を調整する。藤本が《》の処理を考えている間、オランダチームはセンターのKestelooとSnijdewindがそれぞれ相談し合っているようだ。こちらはどうやらレガシー担当のSnijdewindが司令官のよう。藤本はライブラリをシャッフルし、打開策をドローに求める。
ドローしたカードを見て肩をすくめると《》をメインにプレイするオランダ人。そしてゴー。藤本もドロー、セット《》、ゴーで静かにターンが進行していく。
続くターンもドローゴーするSnijdewind。《》をカウンターした意味はあったなと筆者はキーボードで記録しておく。藤本は《》をプレイしてターンを返し、Snijdewindはみたびドローゴー。そのターン終了時に《》を《》に変換し、Snijdewindと同じ3マナへ到達する。
ちょうどこの時点で、対戦相手にコンボを決められた三原はカードを片付けていた。3マナそろえてさあ動くかという気配が筆者にも感じたところ、三原がサイドボードに手をかけて余裕ができているのを見かけた藤本は三原にプランを相談する。
三原 「行くに決まってるじゃないか!」
三原の後押しを受けて、《》をセットし《》。
「あー。」と頭を抱えながら目の前に設置された爆弾に対してどう立ち向かうか悩んでいるSnijdewindだが、それでもこのマゾいシチュエーションを楽しんでいるのか笑顔を絶やさない。かなりいい人に見える。
しばらく逡巡したのちプレイされた《》を見て、三原を指でつついてどうすればよいか意見を求める藤本。
三原 「あれはやらなくていい。」
三原の了解を受けてこれを通す藤本。ついで《》《》(《》を刻印)《》とSnijdewindがキャストした呪文をことごとく許可し続けた藤本は、最後にキャストされた《》を、《》を追放して《》する。
手札をすべて使い切ったオランダ人は「I'm done」と笑顔で告げてターンを終える。
藤本が騙し討つは、もちろん《》。
Ruben Snijdewind 0-1 藤本 知也
もはや恒例となった藤本と三原のサイドボード相談タイム。一方のオランダチームも、レガシー担当とモダン担当が互いのサイドボードに関して意見を交わし合う。どちらもスタンダード担当には全幅の信頼を置いているのか相談する気配はない。
石田 「そっち大丈夫ですか?」
藤本 「大丈夫、って言いたいけど、プレイヤーに自信がないんよね。」
苦笑しながらそう答える藤本。これまで国別対抗戦ですべて勝ち星を上げてきた、スタンダードでも勝ち星を稼いできた日本代表チームの勝ち頭といえる藤本は、しかし、この時点においても謙虚であった。

この謙虚さが、おとなしく三原のアドバイスを入れ、素直にプレイし、そして練習結果をすぐに反映させてきたのだろう。藤本の成長はまるで少年マンガの展開のようで、見ているこっちまでワクワクさせてくれる。
レガシー:Ruben Snijdewind vs 藤本 知也 Game 2

先攻のオランダ人はテイクマリガン。藤本はハンドを確認して即キープ。時を同じくセカンドゲームを開始した三原にキープした内容を見せて、答え合わせをするのは忘れない。
《》《》スタートのSnijdewindに対して、
藤本 「フェッチしておいたほうがいいですよね。」
三原 「そうだね、出して起動しておいたほうがいいよ。」
確認を取ったうえで《》即フェッチで《》をサーチする藤本。初日に受けた「フェッチへ《》」の洗礼は、彼にとって良い経験となり、血肉となったようだ。
《》で《》をサーチしたSnijdewindは、《》を藤本へ。おそらくはテンパイハンドを持っているであろう藤本としてはこれを通すわけにもいかず《》でカウンターする。
メインに《》で手札を調整した藤本は、三原にプレイする順番を確認する。ライブラリに戻したのはどちらも土地。
三原 「いってもいいよ。おれならいっちゃう。」
三原らしい思い切りの良い後押しを受けて「ぶっぱ」することに決めたらしい藤本は、《》セットから《》を生け贄に捧げて《》をキャスト。
Snijdewindに提示できるパーマネントはなく、藤本は《》を実物提示する。
「おーおーおー♪」と思わず歌い始めるオランダ人。陽気な性格のようだ。手元を伏せながらメモに書き込みながら計算している。目の前の脅威に対して、このターン中にコンボを達成できるか計算しているのだろう。
なにかを振り切ったかのように大きく頷くとSnijdewindはプランを実行に移す。まずはフルタップで2マナを用意すると。
1. 《》(3マナ)
2. 《》(1マナ)《》を提示し《》をサーチ
3. 《》(3マナ)
4. 《》(5マナ)
5. 《》(8マナ)
6. 《》(4マナ)
カードの効果を確認し、自分もカードを拾えることを知った藤本はこれを許可する。藤本が握りしめていた手札を捨てたのち、Snijdewindは《》《》《》を、藤本は《》《》《》をそれぞれ回収する。
Snijdewind 「Why always my oppnent have Force of Will?」
歌いながら頭を抱えるオランダ人Snijdewind。きっとこれまでもこんな風にして《》にコンボ成立を阻まれてきたのだろう。歌いながらも頭を抱えてさんざん悩んだ挙げく意を決したようだ。
7. 《》(3マナ)
またもコンボを決められて破れてしまった司令塔三原に、藤本は状況を見せてどうするか相談する。
三原 「アド死を狙ったほうがいいから、何もしないほうがいいね。《》の後で殴れば勝てるから。」
三原の指示に従い、おとなしく《》を受け入れた藤本の手札からは、《》が抜かれる。
Snijdewind 「Do you have a mana for me?」
ライティングしている筆者に向かって笑いかけながらそう尋ねるSnijdewind。ソーリーと言いながら首を振る筆者。持っててもマナは譲れないけれど。
コンボを成立させるにはマナが足りなかったSnijdewindは、ビッグターンを終えて藤本にターンを渡す。
《》が殴ってSnijdewindのライフが7へ減ったところで、コンボを決めきれずに勝ち目がなくなったオランダ人は右手を差し出すのだった。
Ruben Snijdewind 0-2 藤本 知也

自信が無いと言いながらもきっちり勝ちを収めたレガシー担当の藤本は、最初の頃にあった頼りなさは抜けたように見える。藤本は国別対抗戦の全試合で勝利を収めて、日本代表に勝利をもたらしているのだから。
続いて日本の司令塔、三原のモダン対決を見てみよう。
モダン:Peter Kesteloo vs 三原 槙仁 Game 1
環境最大勢力と目される、《》デッキを操る三原が、《》で手札を見るとそこに見えるは《》と《》。
《》で死ななくなった後に《》を打って、すべてをドロー。さらに《》のフラッシュバックで勝利するデッキである。
《》でマナ加速する相手に対して、土地を置くのみの三原。Kestelooは《》を置いてエンド。今までは殆ど見かけなかったこのエンチャント。オラクルを確認する三原。どうやら《》との相性が強烈に良いようだ。


《》で手札の充実を図ろうとする三原だが、《》によって一撃のダメージでは死ななくなったKesteloo。妨害手段を持たない三原に対して、《》によって大量の手札を獲得。一気に勝負を決めた。
三原 槙仁 0-1 Peter Kesteloo
モダン:Peter Kesteloo vs 三原 槙仁 Game 2
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Peter Kesteloo | |
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またしても三原の《》でゲームは始まる。Kestelooの手札には、《》《》《》等はあるが、肝心の《》がない手札。
ここでゲームプランを練り込んだ三原は、少し悩んで、《》を2ターン目に設置して、ターンを終える。
Kestelooがここで予定調和的に《》をプレイ。少し悩んで、《》と《》の二択から、《》をディスカードさせる。
三原はここで《》をプレイして、さらに自らの土地をアンタップし、《》をプレイ。《》のキャントリップ能力ですらデッキに入れたいという、猫の手も借りたい状態の三原、コンボさえ決まればよいのだが、相手に対してほぼ無防備な状態。
Kestelooも必要パーツが集まらず、ゆったりとした状態だが、ここで奇跡的なトップデッキで世界選手権を制した三原の右手が光り、《》をトップデッキ!
これは《》でカウンターされるものの、Kestelooは次のターン実質何も動けない状態に。
三原のターン終了時に《》で《》をサーチしてきて、《》の契約代金を支払いKestelooはターンを終了。
《》2体と、手札には《》があるのだが、肝心の《》か《》の後続が引いてくることができない。
Kestelooの《》を介して、緊張感のある数ターンが経過したのち、《》をトップデッキ。三原が、動く。
対処できなければ負けのKestelooは、これにスタックして、まずは《》を《》にプレイ。邪魔者をどかそうとする。これを《》する三原だが、《》でカウンター。さらに《》で《》が対象にとっている《》を寝かされてしまう。
返ってきた自らのターン、Kestelooは《》で契約不履行による罰則死を防ぎつつ、《》で大量のカードをめくったところで、三原は握手を差し出した。
三原 槙仁 0-2 Peter Kesteloo
チーム戦では大車輪の活躍の石田。彼の対戦にも目を向けてみよう。
スタンダード:Nick Bresser vs 石田 龍一郎 Game 1
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Nick Bresser | |
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スタンダードの石田はおそらく同系戦。《》から《》とつなぐBresserに対して、石田も《》でマナを伸ばす。
《》と先手の利を生かして、4ターン目に6マナに到達しようとするBresserに対して、《》で《》を壊し、6マナへの到達を遅らせる石田。
展開を阻害されたBresserは、《》を出すにとどまる。
ここで《》をプレイして後手の不利を巻き返したかに見えた石田だが、返しのターン、Bresserの《》によってビースト・トークンは焼け焦げ、《》とビースト・トークンで《》は破壊と、一気に圧倒的な場が作られてしまう。
しかし、返しのターンの石田のアクションは《》。これで戦場を支え、後続に《》しか展開できないBresserをしり目に、さらに《》で巻き返しを図る。
後続を相変わらず展開できないBresserに対し、《》のアタックで土地を増やし、《》と《》でのブロックを強要。盤面がじわりじわりと石田に傾きだす。
さらに《》を2体追加して、大量のマナからの《》による圧倒的攻撃で、Game 1を先取した。
石田 龍一郎 1-0 Nick Bresser
スタンダード:Nick Bresser vs 石田 龍一郎 Game 2
お互いにマリガンした後、土地5枚と《》を渋々キープした石田。ここからのマナブーストトップデッキに賭ける算段か。
《》をトップデッキしたものの、Bresserの《》経由からの《》で一方的にアドバンテージを取られてしまい、厳しい石田。
《》2枚で、黙々と毒カウンターを相手に与えるのだが、Bresserの場には《》が。
結局マナブーストができず、手札でもじもじする《》に出番はやってこなかった。
石田 龍一郎 1-1 Nick Bresser
スタンダード:Nick Bresser vs 石田 龍一郎 Game 3
三原が敗北してしまい、藤本が勝利し、マッチカウントが1-1となった瞬間に、始まる石田のGame 3。
ここでBresserは痛恨のダブルマリガン。否が応でも期待感が膨らむ日本勢。
三原 「油断しちゃいけないよ。4ターン目《》でわからないんだから。」
世界を相手に転戦し、世界を制した男が、空気を引き締める。
実際、2ターン目にトップデッキした《》スタートの石田に対して、1ターン目《》、2ターン目《》、さらに《》と、考えうる最速のマナブーストを行うBresser。
ここで、《》を持っている石田は大きく悩む。残り2枚のBresserの手札と次のドローのいずれかに「土地+6マナのフィニッシャー」があると、そのまま押し切られてしまう可能性すらある。《》でも、《》でも、キツい。

司令塔三原とも相談し、考えうる最悪のプランである《》と《》を防ぐために、Bresserのアップキープに《》をプレイ。土地を壊すのだが、ここでBresserがプレイするのは《》。
石田 「hmmmm....Perfect!!!!」
三原 「パーフェクトだよぉ!!!」
文句なしの噛み合ったパーフェクトムーブ。ただし、Bresserの側に。
結果論ではあるが、《》が悪手となってしまった石田、これに対して《》をプレイして、《》に対する牽制はできるものの、状況は芳しくない。
《》でアタックをしながら狼・トークンを生成するBresser。
石田は《》で攻撃して《》を破壊する。
パーフェクトな引きを見せたとはいえ、ダブルマリガンゆえに、いささか手札がかみ合わず後続の展開ができていないBresserに対して、さらに《》で《》をサーチする石田。
相手の動き次第では《》《》に依存しているマナベースを阻害するプランを選択する。
しかし、土地からの赤マナがない状態なので、《》への変身にスタックして《》を撃墜されてしまう。
たゆたっていたゲームの趨勢を決めかねない石田のドロー。
愛知の期待を一身に背負い、日本選手権で突如登場したシンデレラボーイ。
自ら、「右手系プレイヤーなので、《》を使用しました。」と言っていた石田。
二日目は少し奮わない成績で意気消沈していた彼だが、日本人離れしたオーバーアクションがチャーミングで、勇者気質の彼が、日の丸を背負ったこの状況で、右手を光らせないわけがない。
ライブラリートップから現れたのは・・・《》。思わずガッツポーズをとり、プレイ。
石田 「Come oooooooooooooooooon!!!!!」
最早、咆哮なのか、《》の能力起動の宣言なのかわからないほどに彼のテンションは昇り詰める。
筆者の隣で藤本が「あんな引き、でけへんすわ。」とぼやく。
沸きに沸く日本勢を見ながら、半ばあきらめ気味にドローするBresser。
誇るべき対戦相手は、ドローしたカードを見て、右手を差し出・・・さずに、プレイしたカードは《》。石田の熱気にアテられて、Bresserのライブラリートップも暖まりだしたのか。
勇者石田は、一方的な虐殺劇を好まない。Bresserの力すら最大限に引き出す。
一瞬、チャンスが生まれたかに思われたBresserではあったが、最後に勇者が負けるわけがなかった。
石田がトップデッキしたのは、《》の追加、そして《》。
終わってみれば、ギャラリーを沸かせた上での、圧勝。
石田 龍一郎 2-1 Nick Bresser
日本勢、国別対抗戦全勝!!!
この勝利によって、1点という微差ではあるが、単独首位に立った日本。
日本代表チームはリーディングボードの最上位に国名を刻むことに成功した。
あるものはTop8を、あるものはプロポイントを、あるものは国別選手権のプレイオフ進出にむけて、世界選手権3