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ワールド・マジック・カップ2017
決勝:日本代表 vs. ポーランド代表
Corbin Hosler / Tr. Tetsuya Yabuki
2017年12月3日
ワールド・マジック・カップ2017の開幕前、優勝候補としていくつかの代表チームの名前が挙がっていた。世界ランキング2位のリード・デューク/Reid Dukeとプロツアー『アモンケット』王者ジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonを擁するアメリカ代表。元世界王者カルロス・ロマオ/Carlos Romaoとプロツアー王者ルーカス・エスペル・ベルサウド/Lucas Esper Berthoud、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaの3人で構成されたブラジル代表。連続でトップ8入賞を果たしているアンドレア・メングッチ/Andrea Mengucci率いるイタリア代表。
だがどのチームをもってしても、日本代表への注目度には敵わないだろう。渡辺 雄也と八十岡 翔太というふたりの殿堂顕彰者に日本選手権王者の原根 健太(彼もまたグランプリで70%近い勝率を誇るプレイヤーだ)を加えた日本代表は、「絶対に対戦相手として当たりたくない」最強チームとしての評価を得ていた。そして彼らはその前評判通りの大活躍を見せ、決勝の舞台に立った今も、誰もが日本代表の優勝に期待している。今大会の大本命であることに、一切の異論はない。
だがポーランド代表は、今大会幾度となく強国を倒してきた。
初日の第2回戦では優勝候補の一角であるブラジル代表を破り、同じくトップ8に入賞したドイツ代表にも2日目に勝っている。そして迎えた本日、彼らは準々決勝で(ドラゴンに扮した)ウェールズ代表を倒すと、準決勝では再戦となったドイツ代表を再び退けた。リーダーのグジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalski、(プロツアー級の大会への参加4度目にして初のトップ8入賞を果たした)ピオトル・グロゴウスキ/Piotr Glogowski、そしてラデク・カチュマルチク/Radek Kaczmarczykの3名は、これまでもハイレベルな戦いの場で安定した戦績を残してきた者たちだ。グランプリでの勝率は3人とも60%を超えており、非常に高い水準を誇っている。
大会前までは、ポーランド代表がここまで来るとは期待されていなかった。今、彼らはワールド・マジック・カップを制するため、もう一度ジャイアント・キリングに挑む。
ゲーム展開
両端のテーブルは同じようなマッチアップになった。すなわち「ラムナプ・レッド」と白青系デッキの対決だ。A卓では「ラムナプ・レッド」を駆る八十岡と「白青サイクリング」を操るグロゴウスキが、C卓では「白青『王神の贈り物』」を使う原根と「ラムナプ・レッド」を手にしたカチュマルチクが激突する。
しかし意外にも、最初に第1ゲームが決着したのは「ラムナプ・レッド」の試合ではなかった。ポーランド代表のコワルスキが、渡辺との「4色エネルギー」同系戦を制したのだ。だが日本代表が勝ち星を取り返すのに時間はかからなかった。八十岡はグロゴウスキが設置した2枚の《ドレイクの安息地》が生み出す危険地帯に、赤のクリーチャーを突撃させた。それでも致命打に届くダメージが通り、これで両チームとも1ゲームずつ取り合う形になった。
C卓でもカチュマルチクの「ラムナプ・レッド」がクリーチャーを大量に維持しながら原根のライフを残り3点まで追い詰めており、ポーランド代表がもう1勝重ねると思われた。しかしここで起死回生の《燻蒸》が放たれると、うまく体勢を立て直せないカチュマルチクに対して原根は《アズカンタの探索》を「変身」させてマナを伸ばすと、《王神の贈り物》から《発明の天使》を呼び戻した。そして数ターン後、日本代表は最初の3ゲームを勝ち越すことに成功したのだった。
第2ゲーム、A卓ではドレイクの群れが逆襲を果たした。グロゴウスキは《残骸の漂着》を2枚引き込み、八十岡の《熱烈の神ハゾレト》率いる攻撃を退けて時間を稼いだ。これで「サイクリング」を持つカードを引き込めたグロゴウスキは、3枚並ぶ《ドレイクの安息地》のおかげで危機を脱し、勝利をもぎ取ったのだった。一方B卓では、渡辺が《逆毛ハイドラ》で勝利を収め、最終ゲームへ望みをつないだ。
ワールド・マジック・カップ決勝にふさわしい互角の戦い。C卓のカチュマルチクもまた、この流れに乗ることができた。彼は1ターン目から4ターン目にわたり《損魂魔道士》、《地揺すりのケンラ》、《暴れ回るフェロキドン》、《反逆の先導者、チャンドラ》という完璧な動きを見せた。「王神の贈り物」とカード名を口にする間もないままゲームは終わり、両チームはすべての試合で1ゲームずつ取り合った。
渡辺とコワルスキの試合に目を向けると、ここでついにひとつの試合が決着した。両プレイヤーともクリーチャーと《多面相の侍臣》を大量に展開し、さらに飛行機械・トークンが両方の盤面に4体ずつ並んだ。この状況で、コワルスキが先に《秘宝探究者、ヴラスカ》を着地させた。このときの彼に知るよしもないが、渡辺は《秘宝探究者、ヴラスカ》はもちろん、《王神、ニコル・ボーラス》という最強の切り札を繰り出す機を伺っていた。
渡辺には黒マナが必要だった。その後互いの軍勢同士が大激突を起こすと、コワルスキの盤面には忠誠カウンター1個の《秘宝探究者、ヴラスカ》が残り、渡辺の盤面には《導路の召使い》が残った。コワルスキの側にもプレインズウォーカーで戦うプランが備わっており、彼は《自然に仕える者、ニッサ》を追加した。
ついに黒マナ源を残してターンを迎えた渡辺は、《王神、ニコル・ボーラス》を唱え、これでゲームを掌握できることを願った。しかしコワルスキの盤面には宝物・トークンと土地が1枚立っており、彼は手札に残った最後の1枚を――完璧な回答である《否認》を提示した。ターンを迎えたコワルスキはプレインズウォーカーの能力を起動し、優位をさらに固めた。
だがまだゲームは終わっていない。渡辺は《反逆の先導者、チャンドラ》と《つむじ風の巨匠》で再び盤面を膠着させた。しかしコワルスキはここで《川の叱責》という今大会最大級のビッグ・プレイを見せ、ポーランド代表に1勝をもたらした。優勝トロフィー獲得まであと1ゲームと迫ったのだ。
そのチャンスを最初に手にしたのはカチュマルチクだった。原根は《博覧会場の警備員》2枚でカチュマルチクの攻勢を遅らせたが、カチュマルチクは除去1枚で《暴れ回るフェロキドン》を取り戻しつつ盤面の有利を得た。原根は《発明の天使》で対抗するものの、《暴れ回るフェロキドン》の能力で彼のライフは残り10点となり、《発明の天使》も飛行機械を残して除去に倒れた。
しかし土地を引き込んだカチュマルチクが攻撃に出ると、原根は《暴れ回るフェロキドン》を相打ちに取り、その後《発明の天使》を2枚続けて展開した。1体目の《発明の天使》が空からカチュマルチクを襲うと、原根のライフは11点に回復し、決着の刻が近いことを知らせた。そして数ターン後、日本代表とポーランド代表による決勝は1勝1敗となり、優勝のゆくえはグロゴウスキと八十岡による最終ゲームに託された。
他の5人がカチュマルチクと原根の試合を囲んでいる間、八十岡はひとり静かに自分の席に座っていた――準備を整えた自分の試合が行われない可能性もあったはずなのに。だが試合は行われた。八十岡は《ボーマットの急使》と《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》で火の玉のごとき猛烈なスタートを切ると、素早くグロゴウスキのライフを残り10点まで落とし込んだ。
それでもグロゴウスキは3ターン目に《ドレイクの安息地》を設置し、手札には《新たな信仰》もある。反撃の手立ては持っている。
しかしグロゴウスキは、ここで3つもの大きな問題に直面した。まず、5枚目の土地を引き込めなかったこと。それから、八十岡が《熱烈の神ハゾレト》を繰り出したこと。そして、《ボーマットの急使》が6枚ものカードを蓄えていること。グロゴウスキにできたのは、そのままターンを返し、《排斥》を「サイクリング」してブロッカーとなるドレイクを生み出すのみだった。
ようやく5枚目の土地を引き込んだグロゴウスキは、《残骸の漂着》を構えつつ《領事の権限》を設置した。一貫して《熱烈の神ハゾレト》での攻撃を避けた八十岡は、《残骸の漂着》をかわしながら《ボーマットの急使》が貯め続けたカードを手札上限の7枚まで増やした。残りライフ5点と追い詰められたポーランド代表は、ついに激流を止めにかかった。そのためにはどれだけの犠牲が必要なのだろうか?
グロゴウスキはすぐにそれを知ることになった。八十岡は《暴れ回るフェロキドン》を盤面に追加して回復を阻害すると、2枚目の《ボーマットの急使》を展開。それでもグロゴウスキは《燻蒸》でライフを7点に戻して時間を稼ぐ。
だがそれでは不十分だった。八十岡は落ち着いたしぐさでドローを行うと、土地を置いて《熱烈の神ハゾレト》の能力を3回起動した。そして彼が《熱烈の神ハゾレト》を最後の攻撃に向かわせると、ワールド・マジック・カップ優勝の栄冠は日本代表にもたらされたのだった。
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 2 《屍肉あさりの地》 -土地(24)- 4 《ボーマットの急使》 4 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 2 《過酷な指導者》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 2 《暴れ回るフェロキドン》 4 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(26)- |
4 《ショック》 3 《削剥》 3 《稲妻の一撃》 -呪文(10)- |
3 《ピア・ナラー》 2 《暴れ回るフェロキドン》 1 《砂かけ獣》 3 《栄光をもたらすもの》 1 《削剥》 4 《霊気圏の収集艇》 1 《山》 -サイドボード(15)- |
3 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《沼》 4 《植物の聖域》 4 《尖塔断の運河》 2 《隠れた茂み》 3 《根縛りの岩山》 4 《霊気拠点》 -土地(23)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 2 《逆毛ハイドラ》 2 《スカラベの神》 -クリーチャー(20)- |
4 《霊気との調和》 1 《マグマのしぶき》 4 《蓄霊稲妻》 2 《慮外な押収》 2 《木端 // 微塵》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文(17)- |
3 《多面相の侍臣》 3 《チャンドラの敗北》 3 《否認》 1 《宝物の地図》 1 《人工物への興味》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《王神、ニコル・ボーラス》 1 《自然に仕える者、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
7 《島》 6 《平地》 3 《灌漑農地》 4 《氷河の城砦》 2 《イプヌの細流》 1 《敵意ある砂漠》 -土地(23)- 4 《査問長官》 3 《聖なる猫》 4 《機知の勇者》 1 《博覧会場の警備員》 4 《発明の天使》 -クリーチャー(16)- |
4 《航路の作成》 4 《巧みな軍略》 2 《アズカンタの探索》 4 《復元》 2 《排斥》 1 《燻蒸》 4 《王神の贈り物》 -呪文(21)- |
3 《博覧会場の警備員》 4 《賞罰の天使》 2 《領事の権限》 2 《ジェイスの敗北》 2 《不許可》 1 《排斥》 1 《残骸の漂着》 -サイドボード(15)- |
8 《平地》 6 《島》 4 《灌漑農地》 4 《氷河の城砦》 1 《シェフェトの砂丘》 1 《イプヌの細流》 -土地(24)- 2 《秘法の管理者》 -クリーチャー(2)- |
4 《検閲》 3 《アズカンタの探索》 4 《相殺の風》 4 《新たな信仰》 3 《ドレイクの安息地》 1 《見捨てられた石棺》 4 《排斥》 4 《ヒエログリフの輝き》 4 《残骸の漂着》 3 《燻蒸》 -呪文(34)- |
3 《威厳あるカラカル》 2 《奔流の機械巨人》 4 《領事の権限》 2 《ジェイスの敗北》 2 《不許可》 1 《見捨てられた石棺》 1 《ドレイクの安息地》 -サイドボード(15)- |
3 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《沼》 4 《植物の聖域》 1 《隠れた茂み》 3 《根縛りの岩山》 1 《花盛りの湿地》 3 《尖塔断の運河》 4 《霊気拠点》 -土地(22)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 1 《不屈の神ロナス》 3 《逆毛ハイドラ》 2 《スカラベの神》 -クリーチャー(22)- |
4 《霊気との調和》 4 《蓄霊稲妻》 3 《削剥》 1 《慮外な押収》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文(16)- |
1 《貪る死肉あさり》 1 《多面相の侍臣》 2 《チャンドラの敗北》 3 《否認》 3 《野望のカルトーシュ》 1 《人工物への興味》 2 《川の叱責》 2 《自然に仕える者、ニッサ》 -サイドボード(15)- |
15 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 1 《屍肉あさりの地》 -土地(24)- 4 《ボーマットの急使》 4 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《暴れ回るフェロキドン》 4 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(26)- |
4 《ショック》 4 《稲妻の一撃》 2 《木端 // 微塵》 -呪文(10)- |
3 《ピア・ナラー》 1 《暴れ回るフェロキドン》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《両手撃ち》 2 《霊気圏の収集艇》 4 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《屍肉あさりの地》 -サイドボード(15)- |
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