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ワールド・マジック・カップ2015
ステージ2第3回戦:ギリシャ代表 vs. スコットランド代表
Neale Talbot / Tr. Tetsuya Yabuki
2015年12月12日
トップ8入賞の当落線上。ここではたった一歩が明暗を分ける。ギリシャ代表とスコットランド代表はともにトップ8入賞最後の1チームになるべく、決意の表情でフィーチャー・マッチ・テーブルに腰を下ろした。ギリシャ代表に必要なのは、ただ勝つこと。しかしスコットランド代表には勝利の他にもうひとつ、同グループのイタリア代表の勝利という条件も加わっている。スコットランド代表にとって、トップ8入賞への道は険しいものになるだろう。ここで争う相手は、2年連続でのトップ8入賞に意欲を燃やすギリシャ代表なのだから。
A席:ビル・クロノプロス/Bill Chronopoulos(4色ラリー)vs. グラント・ヒスロプ/Grant Hislop(アブザン・アグロ)
ヒスロプはギリシャ代表のキャプテンを相手にも臆さず攻めの姿勢を見せ、序盤から《先頭に立つもの、アナフェンザ》で《ヴリンの神童、ジェイス》に立ち向かった。しかしクロノプロスはこれに怯むことなく、《集合した中隊》から《不気味な腸卜師》と《ナントゥーコの鞘虫》を揃える。ヒスロプは《先頭に立つもの、アナフェンザ》でクロノプロスの墓地が《先祖の結集》で悪用されないよう睨みを利かせつつ、《包囲サイ》を盤面に加えてプレッシャーをかけ続ける。
クロノプロスは、続く動きを慎重に進めた。《シディシの信者》で《先頭に立つもの、アナフェンザ》をバウンスし続け、《不気味な腸卜師》でカードを引きつつ墓地を肥やし、《ヴリンの神童、ジェイス》を《束縛なきテレパス、ジェイス》へ「変身」させる。さらに状況が固まったところで、クロノプロスは《包囲サイ》もバウンスし、《束縛なきテレパス、ジェイス》の忠誠度を増やし、墓地の《集合した中隊》を再び使える状態にした。クロノプロスはそのままカード・アドバンテージでヒスロプを圧倒し、最後は《先祖の結集》によるコンボで勝負を決めた。
続くゲーム、ヒスロプは《始まりの木の管理人》2体で再び素早く動き出した。クロノプロスの初動は《ヴリンの神童、ジェイス》で、これは《絹包み》を受けたものの、彼はすぐさま2枚目の《ヴリンの神童、ジェイス》を繰り出し、さらに《シディシの信者》を用いて《始まりの木の管理人》の成長を妨げた。ヒスロプは《始まりの木の管理人》による攻撃を続けるが、クロノプロスの《集合した中隊》が《地下墓地の選別者》2体をもたらすと、それが決着の合図となった。生け贄に捧げる能力と占術に《不気味な腸卜師》によるドローが加わり、クロノプロスはゲームを掌握する。最後は《ナントゥーコの鞘虫》を中心にした軍勢が、ヒスロプを打ち倒す結果になったのだった。
ギリシャ代表 1-0 スコットランド代表
C席:ハラランボス・キキディス/Charalambos Kikidis(アタルカ・レッド)vs. マーティン・クレメント/Martin Clement(黒赤ドラゴン)
キキディスは《ケラル砦の修道院長》から《軍族童の突発》と赤アグロならではの動きを見せ、素早く攻勢をしかけた。クレメントはライフの損失を抑えながらゲームの舵を取る必要があることを理解し、《コラガンの命令》で《ケラル砦の修道院長》を除去しつつ、こちらも《軍族童の突発》でゴブリン・トークンを並べる。
両者はパーマネントの交換を続けるが、キキディスが体勢を立て直せないのに対し、クレメントは《雷破の執政》と《搭載歩行機械》で速やかに盤面を構築する。若きスコットランドのプレイヤーはそれら2体を勝利に向かって送り出し、勝負は2ゲーム目へと移った。
2ゲーム目の決着は一瞬のことだった。マリガンを喫し土地が2枚で止まってしまったクレメントに、キキディスは《強大化》+《ティムールの激闘》のコンボを鮮やかに決める。
3ゲーム目、フィーチャー・マッチ・エリアのまばゆい照明がこの卓に当てられ、両チームとも全員が集まった。キキディスとクレメントはともに初手をキープし、キキディスが1ターン目《僧院の速槍》、2ターン目《ドラゴンの餌》という初動を見せると、クレメントはコントロール寄りに構え、《コラガンの命令》で《僧院の速槍》を除去すると続くターンに《軍族童の突発》で盤面を固めた。
キキディスは《アタルカの命令》でトークン同士の戦闘に勝ち、さらにゴブリン・トークンを盤面に追加してプレッシャーを強める。クレメントは《ピア・ナラーとキラン・ナラー》を繰り出し、飛行機械・トークンとともにキキディスの攻めを遅らせた。再び激しい1対1交換が行われると、キキディスの盤面には《ケラル砦の修道院長》、クレメントの盤面には《雷破の執政》が残るのみとなった。キキディスの残りライフは20点。クレメントは残り6点だ。
クレメントは《ケラル砦の修道院長》のブロックに入らざるを得ず、そこへ続く《強大化》で《雷破の執政》を失う結果になった。しかしキキディスの手札から《ティムールの激闘》は繰り出されず、まだ試合は終わらなかった。クレメントは2枚目の《雷破の執政》を繰り出し、同時に《残忍な切断》を構える。その返しのターン、キキディスはアップキープに《タイタンの力》を《ケラル砦の修道院長》へ唱えるが、クレメントはそれに対応して《残忍な切断》を放ち、占術を許さなかった。
クレメントは《搭載歩行機械》を盤面に追加し、対するキキディスは《鐘突きのズルゴ》を展開。ここから両者は再び、展開力の戦いに突入した。キキディスはゴブリンを、クレメントはチャンドラの両親と飛行機械を盤面に繰り出していく。クレメントは《ピア・ナラーとキラン・ナラー》の起動型能力を意識させながら続くターンを慎重に進め、キキディスにクリーチャーの強化をためらわせた。クレメントは非常事態に備えて《残忍な切断》も構えていたが、それはもう必要なかった。やがて盤面を完全に掌握したクレメントがキキディスを討ち取り、両プレイヤーの戦いは終結したのだった。
ギリシャ代表 1-1 スコットランド代表
B席:アントニス・フィッサス/Antonis Fyssas(白黒戦士)vs. ステファン・マレー/Stephen Murray(ジェスカイ)
いよいよ決着のとき。この試合の勝者が、チームをトップ8へと導く。3日目進出まで、あと2ゲーム。
決戦の火蓋を切ったのはフィッサス。《ドラゴンを狩る者》から《血顎の憤怒鬼》という展開を見せる。マレーも《ヴリンの神童、ジェイス》を繰り出すが、それは《絹包み》を受けることになった。続けてゴブリン・トークンを展開したマレーは《血顎の憤怒鬼》を討ち取ることに成功し、残るは《マルドゥの急襲指揮者》との戦いになった。マレーは《カマキリの乗り手》を繰り出すと、盤面の激しい応酬が始まる前にいくらかのダメージを稼ぎ出した。
マレーは再び《ヴリンの神童、ジェイス》を着地させるが、それはすぐに《停滞の罠》を受けた。フィッサスは続けて2体目の《マルドゥの急襲指揮者》を繰り出し、《乱撃斬》を持っていなければ守勢に回らざるを得なくなる状況にマレーを追い込んだ。そのマレーが送り出したのは、《魂火の大導師》。《極上の炎技》がフィッサスの続くクリーチャーを焼き払い、同時に《魂火の大導師》によるライフ回復がマレーを窮地から救い出した。
フィッサスは体勢を立て直そうと試みるが、マレーは《魂火の大導師》の起動型能力を用いて《軍族童の突発》を繰り返し唱え、みるみるうちに盤面を築き上げていく。《荒野の確保》をもってしてもフィッサスの反撃は叶わず、地上を完全に制圧したマレーは《カマキリの乗り手》で空から勝利を奪っていった。
2ゲーム目、フィッサスは《強迫》から《見えざるものの熟達》と繋げた。先手を打たれたマレーは、対戦相手とリソースの削り合いに入る。《マルドゥの急襲指揮者》とそれが生み出したトークンは《弧状の稲妻》で処理し、その一方で彼の《カマキリの乗り手》も《絹包み》を受けた。だが《見えざるものの熟達》によるアドバンテージを継続的に受けたフィッサスが徐々に優位を築いていき、さらに《不毛の地の絞殺者》が《絹包み》で追放したカードをエサにマレーのクリーチャーを除去した。やがてフィッサスのボード・アドバンテージは圧倒的なまでに膨らみ、マレーは「予示」クリーチャーの大軍を前に屈したのだった。
トップ8入賞をかけた戦いは次のゲームへ。最後の最後までもつれ込んだ。
マレーは《大草原の川》、フィッサスは《乱脈な気孔》を置いて、最終ゲームが始まった。今度は、マレーが2ターン目に《見えざるものの熟達》を設置し、フィッサスは《刃の隊長》を盤面へ。続くターン、フィッサスはマレーに《強迫》を撃ち込み、マレーはそれに対応して《焦熱の衝動》を《刃の隊長》へ差し向けた。マレーの手札から《強迫》で落とせるのは、《オジュタイの命令》のみ。他はすべて土地だった。その後フィッサスがターンを迎えると、彼の側にも《見えざるものの熟達》が設置された。
極度の集中とアドレナリンの放出。マレーは手を震わせながら、《前哨地の包囲》を「カン」モードで繰り出した。フィッサスは猛将と名高い《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を呼び出しながらもそれを無情にも即生け贄に捧げ、強力な「紋章」を得た。これで彼の「予示」クリーチャーたちは3/3へとサイズを上げた。
刻々と時間が進む中、マレーはさらに《城塞の包囲》を「カン」モードで繰り出した。
「こんな強いリミテッド・デッキ見たことないだろ?」と、マレーは笑う。
続くターンは互いに《見えざるものの熟達》から「予示」クリーチャーを呼び出し、他のクリーチャーも展開し、盤面を強化していった。マレーは慎重に、《城塞の包囲》による+1/+1カウンターを散らしていく。試合時間が進む中、マレーの盤面はフィッサスに攻勢に出ることを許さず、さらにフィッサスの土地は6枚しかないため、《見えざるものの熟達》を起動できる回数でも遅れを取っていた。
そして、試合時間終了のアナウンス。
延長ターンはスコットランドから始まった。彼らはチーム一丸となってプレイを決める。残りライフ16点の対戦相手を打ち倒せるだけの軍勢は築けていたが、《見えざるものの熟達》によるライフ回復がある以上、慎重にならざるを得ない。スコットランド・チームは《見えざるものの熟達》を起動し、《カマキリの乗り手》を繰り出すとそこへ《城塞の包囲》による+1/+1カウンターを置いて、5点で攻撃した。ターン終了時にギリシャ側も「予示」するとそれは1マナのクリーチャーで、フィッサスはそれを表向きにすることでライフを3点回復した。
延長ターン3、スコットランド代表は2枚目の《カマキリの乗り手》を引き込み、再び《城塞の包囲》でそれを5/5にすると、2体の飛行クリーチャーで10点のダメージを与え、フィッサスのライフを残り3点に追い詰めた。延長ターン4、ギリシャ代表からの動きはなく、そのままターンを返した。
そして延長ターン5。
スコットランド代表に必要なのは、《カマキリの乗り手》の攻撃を通すこと。しかしギリシャ代表が大量にライフを回復してしまうと、勝利に手が届かなくなる。ライフを削り切れば、望みが繋がる。それに失敗すれば、敗退が決まる。
スコットランド代表は、《乱脈な気孔》がブロックに入りライフを回復されるのを避けるため、飛行戦力のみで攻撃した。ギリシャ代表は「予示」を起動するが、そこでマレーが、「予示」クリーチャーを1体、表向きにした。
これが勝負の決め手となる。
ギリシャ代表の「予示」がスタックに乗っている状態で、マレーは《フェリダーの仔》を生け贄に捧げて《見えざるものの熟達》を破壊した。これでライフを回復する手段を失ったフィッサスは、完全に手立てを失った。ギリシャ代表のプレイヤーたちから、右手が差し出されたのだった。
対戦相手たちとの握手を終えると、クレメントが観衆に向けて声を上げた。
「イタリアは!?」 彼は叫ぶ。
「イタリアは勝ったのか!?」 その答えを求めて。
「YES!!」
答えは返ってきた。それは、スコットランドをトップ8入賞へと導くものだった。
ギリシャ代表 1-2 スコットランド代表
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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