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EVENT COVERAGE
プロツアー『イニストラードを覆う影』
第15回戦:Oliver Tiu(アメリカ) vs. 八十岡 翔太(日本)
Marc Calderaro / Tr. Tetsuya Yabuki
2016年4月23日
オリヴァー・ティウ/Oliver Tiu(グリクシス・コントロール) vs. 八十岡 翔太(エスパー・ドラゴン)
プロツアーでの戦いは一筋縄ではいかない。まだ高校生でこの舞台に立つというなら尚更だし、その相手が殿堂顕彰者の八十岡 翔太ならより厳しいことだろう。「その上」、彼が用いるデッキは得意のコントロール。こちらの不利は明白だ。
オリヴァー・ティウは今、プロツアー2日目の終盤にしてそのような状況にあった。同じ状況でも、他の人はこう言うかもしれない。「こんな終盤でトップ8の芽が残っているなんて、それだけで十分じゃないか」と。だがティウはそれでは満足しない。トップ16ならすでに、プロツアー『ゲートウォッチの誓い』で達成した。
ティウは「メタゲーム的に強い」という「グリクシス・コントロール」を選択した――黒赤コントロールをベースに《ヴリンの神童、ジェイス》をメイン・デッキに採用し、《龍王シルムガル》をサイドボードに入れた形だ。そしてこれまでのところ、その狙いは成功している。
だがここへ来てついに、彼はメタゲーム的な報いを受けることになった。「エスパー・ドラゴン」は悪夢のようなマッチアップだ。しかもその使い手が八十岡 翔太であるという状況だけは、避けたかったことだろう。殿堂顕彰者にしてプロツアー・チャールストン2006王者の八十岡は、プレイの一貫性や戦術観、その他勝利に必要なことに熟知した達人だ。マジック・プレイヤー選手権2012の大舞台で、《永遠の証人》と《謎めいた命令》、《霊気の薬瓶》を用いた再利用デッキを組み上げてしまうほどに。
このマッチアップは、八十岡にとって夢のような好相性だった。ティウのデッキも基本的な部分は八十岡のものと同じだが、こちらには打ち消し呪文が入っていないのだ。「1ゲーム目は不戦敗みたいなものですね。残る2ゲームで手札破壊をたくさん引き込むしかない」と、ティウはこの試合の勝率を悲観的に語った。
ゲーム展開
両者とも稲妻のごとき速さで戦いを進めた。カードがテーブルを打つ音を響かせ、呪文が飛び交う。音はさらに多くなっていく。
両者とも遅いコントロール・デッキを使用しており、時間をかけるつもりがないからかもしれない。ティウが不利な状況を打破する道を探るべく、次々と脅威を繰り出しているからかもしれない。あるいは、ティウがこの地獄の時間を早く終わらせたいからかもしれない。
2分ほどで、ティウの墓地には《ゲトの裏切り者、カリタス》が3枚並ぶことになった。同様に、八十岡の墓地にも《ヴリンの神童、ジェイス》や《龍王オジュタイ》が複数枚落ちていた。だが八十岡がついに、《龍王オジュタイ》を捨てられたり除去されたりせず盤面に残すことに成功した。
両者とも手当たり次第に呪文を投げ合っていたゲームだったが、《龍王オジュタイ》の能力が解決されると、八十岡が動きを止めた。彼はそのまま1分ほど考える。最終的に《龍王シルムガル》を選択すると、それを戦場へ送り出しティウの《ヴリンの神童、ジェイス》を奪った。
ターンが返ってきたところで、ティウは重要な場面を迎えた。彼の手札には《破滅の道》があり、相手側の盤面には2体の「龍王」と奪われた《ヴリンの神童、ジェイス》がいる。ここでの選択が、このゲーム最大の分岐点となった。
《龍王シルムガル》を除去すれば《ヴリンの神童、ジェイス》を取り戻せるが、《龍王オジュタイ》の攻撃を再び受け、八十岡にカードを与えることになる。《龍王オジュタイ》を除去した場合も他に取れる手はなく、盤面の不利は変わらない。さらに八十岡の手札にはまだ余裕がある。ティウのライフはすでに残り10点。どちらを選んでも厳しいのかもしれない。
ティウは《龍王オジュタイ》を除去し、攻勢に出た。八十岡のプレイ速度が、試合開始時のものに戻る。彼はそのまま、ティウが倒れるまで《乱脈な気孔》と《龍王シルムガル》で攻撃を続けたのだった。
ティウのサイドボード戦略は、《龍王シルムガル》をめぐるものだった。このクリーチャーを通して、カードを引けるクリーチャーや奥義間近のプレインズウォーカーを奪ってやれば、それが退場するまで圧倒的な優位を得ることができる。
2ゲーム目、両者は「ドロー、手札破壊、ゴー」を繰り返した。だがやはり、ティウが不利のように見える。八十岡は多くのカードを引き、常に打ち消しのプレッシャーを与えていた。このゲーム初めてのタップ・アウトは、《死の宿敵、ソリン》を繰り出したときだった。試合を決めるのに十分過ぎるカードだ。
ティウに脱出の道はほとんど残されていなかった。一方の八十岡は除去と打ち消しをしっかりと蓄え、リラックスした様子だ。それも当然だろう。《死の宿敵、ソリン》は1枚でゲームに勝てるカードであり、他に警戒すべきものと言えば《さまよう噴気孔》くらいのもので、彼はそれへの対処手段も確保していた。彼は肘をテーブルにつけ、頭を手を添えながら、ゆっくりと手札を増やしていく。
だがそれでも、ティウにはまだ策があった。八十岡の手札から打ち消し呪文を抜き去り《龍王シルムガル》を通せば、《死の宿敵、ソリン》の最終奥義を使ってこれを退場させつつ大量の吸血鬼が得られる。
彼は《骨読み》でライブラリーを掘り進め始めた。1枚目で2枚目の《骨読み》を引き込むと、2枚目の《骨読み》は《ゴブリンの闇住まい》2枚を提示した。ティウはここで立ち止まる。
ティウは墓地を確認し、策が成就するかどうか考えた。そして決断する。ここは勝負に出て、最高の結果――《龍王シルムガル》を引き込むことを狙う。彼は2枚の《ゴブリンの闇住まい》をライブラリーの底へ送り、改めて2枚引いた。
それらは土地だった。
このゲーム、ティウは多くの土地を引いた。解答を多く持つデッキを相手にする場合は、脅威を展開し続けなければならない。ティウはそれが果たせなかった。間もなくして、吸血鬼の群れが彼を襲ったのだった。
八十岡 翔太、自身3度目のプロツアー・トップ8入賞まで、あと1勝。
ティウ 0-2 八十岡
5 《沼》 4 《凶兆の廃墟》 4 《燻る湿地》 3 《進化する未開地》 3 《シヴの浅瀬》 3 《さまよう噴気孔》 2 《窪み渓谷》 1 《島》 1 《山》 -土地(26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 4 《ゴブリンの闇住まい》 -クリーチャー(11)- |
4 《焦熱の衝動》 2 《闇の掌握》 2 《精神背信》 2 《究極の価格》 4 《コラガンの命令》 3 《骨読み》 3 《破滅の道》 3 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(23)- |
4 《強迫》 2 《竜使いののけ者》 1 《引き裂く流弾》 2 《精神背信》 4 《光輝の炎》 2 《龍王シルムガル》 -サイドボード(15)- |
4 《詰まった河口》 4 《島》 4 《窪み渓谷》 4 《沼》 3 《コイロスの洞窟》 3 《大草原の川》 2 《港町》 2 《乱脈な気孔》 1 《水没した骨塚》 -土地(27)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《龍王オジュタイ》 2 《龍王シルムガル》 -クリーチャー(10)- |
4 《シルムガルの嘲笑》 3 《究極の価格》 2 《意思の激突》 2 《闇の掌握》 2 《精神背信》 3 《忌呪の発動》 2 《苦い真理》 1 《骨読み》 3 《衰滅》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -呪文(23)- |
3 《強迫》 2 《死の重み》 2 《否認》 1 《苦渋の破棄》 1 《無限の抹消》 1 《悪性の疫病》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《闇の誓願》 1 《龍王の大権》 1 《死の宿敵、ソリン》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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