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Samuel Estratti(青赤双子) vs. Josh Utter-Leyton(CFB ズー)
EVENT COVERAGE
プロツアー・フィラデルフィア11
(翻訳記事) 決勝: おやすみお月様
Samuel Estratti(青赤双子) vs. Josh Utter-Leyton(CFB ズー)
By Bill Stark / Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru
マジックオンラインでは「Wrapter」という名前で知られる男、ジョシュ・アター=レイトンはプロツアー・フィラデルフィアの決勝に駒を進めた。その目は王者の椅子をしっかりと見据えていた。対戦相手はイタリアのサミュエル・エストラティ。アウェイであるにもかかわらず、イタリアのプレイヤーたちは観客席に集まり、いいカードを引いたりいいプレイをしたりするたびに、彼に大きな歓声を送っていた。
Game 1
このゲームの口火を切ったのは、エストラティのやっかい双子コンボデッキに入っている《思案》だった。ここで引いてきたいのは《詐欺師の総督》または《やっかい児》で、それから《欠片の双子》か《鏡割りのキキジキ》を使って無尽蔵のコピーを作ろうという魂胆だ。ジョシュ・アター=レイトンの最初の呪文は、第2ターンの《タルモゴイフ》。彼のズー・デッキは戦場にコンボを阻害できるクリーチャーを並べ、相手の体制が整うまでに押しつぶしてしまうことを目論んでいる。
ジョシュ・アター=レイトンは妨害入りズー・デッキで、 サミュエル・エストラティのコンボが決まる前に殴り勝てるだろうか? |
ジョシュが《聖遺の騎士》を出そうとしたところで、対戦相手は《差し戻し》を使って1ターン立ち戻らせる。その行動で《タルモゴイフ》は3/4になり、ジョシュは相手のライフを削り始めた。X=2で放たれたアター=レイトンの《緑の太陽の頂点》は《ガドック・ティーグ》を呼び出し、サミュエルの《欠片の双子》を使おうという狙いを打ち砕く。エストラティはスイッチを切り替え、《やっかい児》を使って相手の《タルモゴイフ》をタップして時間を稼ぐことにした。
ジョシュのクリーチャーはレッドゾーンへ進撃した。サミュエルのフェッチ土地のおかげもあって、イタリア人のライフを残り12点にまで押し込む。彼は状況を大きく変えるべく《炎渦竜巻》を放ち、《ガドック・ティーグ》と《野生のナカティル》を除去。さらに《稲妻》を放って《タルモゴイフ》まで墓地送りにする。これによって対戦相手を振り出しに戻すと、今度は《やっかい児》で反撃を始める。次のターン、エストラティはコンボを始められる体勢を整えた。対戦相手には妨害の手段があるだろうか?
イタリア人が《欠片の双子》を見せつけると、ジョシュは落ち着き払ったままで頷き、カードを片付けた。除去呪文を持っていなかったのだ! イタリア人の一本先取で、マッチは第2ゲームへと進んだ。
エストラティ 1 - 0 アター=レイトン
Game 2
第2ゲームはジョシュ・アター=レイトンのマリガンから始まった。手札を6枚にしたところで、彼は《野生のナカティル》からゲームを立ち上げる。さらに続けて《タルモゴイフ》を呼んだが、これは攻撃できるようになる前に対戦相手の《稲妻》の餌食になってしまう。さらに続けて出てきたのが《ガドック・ティーグ》で、これで《欠片の双子》を封じ手相手の足を止めようとする。サミュエル・エストラティは《思案》のようなカードを使い、完璧な手札を整えにかかった。
にらめっこ? |
キャントリップのおかげで《炎渦竜巻》を手に入れ、それを使って対戦相手との2対1交換に持ち込んでやっかいな《ガドック・ティーグ》と《野生のナカティル》を片付ける。これでアター=レイトンはかなりの後退を強いられることとなった。それ以上の行動はなく、《地平線の梢》を割ってドローに望みをかける。次のターンにもクリーチャーを出せずにターンを返したが、対戦相手がターン終了時に《やっかい児》を出すと、それを除去するための《稲妻》は手札に握っていた。
サミュエル・エストラティは全てを支配しているようだったが、コンボ成立にはまだ遠く、そのための一手を指しても対戦相手がきっちり握りつぶしてしまうだろう。なぜそんな状況になったか? ジョシュがクリーチャーを出さず、除去カードを大量に握っていると暗に示していたからである。
アター=レイトンはやがて均衡を破ってクリーチャーを出したが、それほどのものではないように見えた。《貴族の教主》を出し、賛美を使って1点のダメージを与える。《霧深い雨林》から出してきた《ドライアドの東屋》が2枚目のクリーチャーとなり、賛美の応援を受けて2点のダメージを与えていく。エストラティはどうしているのだろうか?
彼は《貴族の教主》に《稲妻》を撃つことで時間を稼いだが、コンボ成立に近づくことができずにターンを返す。2人ともドロー、ゴーを繰り返し、ジョシュは《稲妻》で焼かれた《貴族の教主》の代わりに2体の《貴族の教主》を出した。《ドライアドの東屋》で殴られ、残り4ライフにまで追い込まれたエストラティは、ここで仕掛けるしかないと考えた。
ターン終了時に《やっかい児》を出し、アンタップして《欠片の双子》を唱えようとする。対戦相手は《瞬間凍結》で止めようとするが、エストラティは《払拭》で答えた。再び飛んできた《瞬間凍結》は、《剥奪》で防がれる。ジョシュは頷いた。対戦相手には十分な対処が握られていたのだ。ということで彼らは第3ゲームを始めることにした。
エストラティ 2 - 0 アター=レイトン
第2ゲームにいらだちを隠しきれないジョシュは、席を立って落ち着こうとした。水を一口飲んでから席に戻り、彼はシャッフルを始めた。
Game 3
今度はサミュエル・エストラティがマリガンし、初手6枚。対戦相手が7枚の手札をキープするのを見ながらマリガンを重ねて初手は5枚となった。一方のアター=レイトンは2/2の《野生のナカティル》、続いて《クァーサルの群れ魔道士》を出していく。2/2の《クァーサルの群れ魔道士》はエストラティの《稲妻》で対処された。
にらめっこ。 |
サミュエルの《呪文滑り》が《野生のナカティル》の進撃を止めたが、《バントの魔除け》が手早く0/4クリーチャーを片付けて3/3猫の道を開く。ダブルマリガンの遅れを取り戻そうと打った《思案》では3枚ともをデッキの上に残した。ズー・デッキがカードを引く呪文を唱え、《緑の太陽の頂点》を使って2マナのクリーチャーを求めた。望みの《ガドック・ティーグ》こそ引けなかったが、ここでジョシュが持ってきたのは《タルモゴイフ》。一見あり得ない手に見えるが、対戦相手はマナ事故を起こしており、《炎渦竜巻》が飛んでこないうちに《タルモゴイフ》でクロックを刻むのはありなのだ。
この行動が正解だったのは、次のターン、サミュエルが《炎渦竜巻》を持っていることを公開し、《野生のナカティル》を除去してきたときに明らかになった。ただジョシュにとって残念だったのは、サミュエルが《四肢切断》も持っていたことであり、《タルモゴイフ》も除去されてしまう。アメリカ人は気にせず、2体目を呼び出した。残りライフが4点となり、エストラティには《詐欺師の総督》を出して《タルモゴイフ》をタップするしかなかった。ジョシュは気にせず、可能な限りの攻撃を繰り返し、ブロック・クリーチャーを削っていく。対戦相手の方は大変だ。やがて、《詐欺師の総督》に《欠片の双子》をつけるのに充分な土地を揃えた。これで、対戦相手の悪意をかいくぐっての攻撃を行なえる。
アター=レイトンはしかしその機会を与えてはくれなかった。《流刑への道》を唱えて最後のブロック・クリーチャーにとどめを刺すと、イタリア人は目の前に迫った《タルモゴイフ》の一撃を受けきれずに投了した。
エストラティ 2 - 1 アター=レイトン
ゲームが終わっても、サミュエル・エストラティとジョシュ・アター=レイトンはともに沈黙を守っていた。二人の間で交わされた会話は、イタリア人からの「先攻」という言葉だけだった。
Game 4
今回は、エストラティが《思案》、アター=レイトンが《野生のナカティル》と、この対戦では標準的と言える立ち上がりを見せた。アメリカ人にとって、この試合は土俵際、負ければプロツアー優勝はなくなる。そこで、彼は一手一手を慎重に検討していった。ジョシュはX=1で唱えられた《緑の太陽の頂点》から《貴族の教主》を出し、サイドボードにあり得る《血染めの月》への耐性を身につけようとするとともに、《野生のナカティル》の攻撃力を4点に上げる。
《炎渦竜巻》で《野生のナカティル》と《貴族の教主》が除去されると、振り出しに戻されたジョシュは新しい戦略を考えた。《ドライアドの東屋》と《タルモゴイフ》である。そして、サミュエル・エストラティは警戒されていた通り《血染めの月》を第4ターンに出した。このエンチャントはジョシュにとって天敵とも言えるが、ジョシュにはすでに充分な大きさの《タルモゴイフ》がおり、その一方で対戦相手は4枚目の土地を出せずにいた。さて、彼はこのエンチャントの攻撃に耐え、土地を出される前に勝負を決めることが出来るだろうか?
エストラティの《仕組まれた爆薬》がX=2で戦場に出るが、起動するための4つめのマナが足りないまま、《タルモゴイフ》の攻撃を受けることになる。ジョシュのその攻撃でライフは7点になるも、ジョシュはとどめを刺せずにターンを返す。これがゲームの流れを大きく変えてしまった。
狙いをつけて撃つエストラティ |
《仕組まれた爆薬》が《タルモゴイフ》を吹き飛ばし、《呪文滑り》がサミュエルを守る。ジョシュは《血染めの月》の元でも1/1のクリーチャーである《ドライアドの東屋》で攻撃する。膠着状態に陥ったゲームを動かしたのは、サミュエルが唱えた《やっかい児》だった。アンタップし、《欠片の双子》を唱えるが、対戦相手の手からは《稲妻》が放たれる。その《稲妻》の行き先は、《やっかい児》ではなくサミュエル本人だった。混乱するエストラティのライフは残り3点。そして対戦相手の2発目の《稲妻》が放たれる。その《稲妻》の対象を《呪文滑り》に変えたところで、エストラティの目の前に差し出されたのは――握手を求めるアター=レイトンの手だった。
サミュエル・エストラティ 3 - 1 ジョシュ・アター=レイトン
来いよ皆、どうだい? |
2011年プロツアー・フィラデルフィア 優勝は、サミュエル・エストラティ!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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