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Samuele Estratti(青赤双子) vs. 中島 主税(赤単親和)
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プロツアー・フィラデルフィア11
(翻訳記事) 準決勝: 粉骨砕身
Samuele Estratti(青赤双子) vs. 中島 主税(赤単親和)
By David Sutcliffe / Translated by Yusuke Yoshikawa
中島主税は彼の赤単親和デッキがもたらした圧倒的なオープニングハンドを爆発させ、準々決勝でマックス・ソーブロムを降して素晴らしいスタートを切った。ソーブロムは青赤の《紅蓮術士の昇天》コンボデッキをプレイしていたが、中島はこの準決勝でも似たような相手、《欠片の双子》デッキに対することとなった。
《欠片の双子》コンボを手にする新鋭サミュエル・エストラティは、 親和デッキを駆る歴戦の勇士・中島主税と準決勝で相まみえる |
サミュエル・エストラティはこれが初めてのプロツアーサンデーだが、初のスポットライト下にあって、アンドレス・プロストとの準々決勝を乗り越えてみせた。初のプロツアーサンデーがどうなるのかはまだ未確定だが、エストラティはこのトップ8に残った誰よりもスイスラウンドのモダン構築で良い成績を残しており、3日間にわたって絶妙な手腕を発揮してきたことになる。
これは、日本の古参プレイヤーとしても楽な相手ではないだろう。
Game 1
準決勝の幕が開き、エストラティはいつものように青の軽量ドローでデッキを掘り進めるところから始めた。第1ターンには《定業》、続いて《思案》と《手練》である。
テーブルを挟んで、親和使い中島はややスローな、しかし確実なスタートを切った。まず《大霊堂のスカージ》から《バネ葉の太鼓》《電結の荒廃者》につなげ、《墨蛾の生息地》で毒殺の狙いも秘めている。
《島》2枚に《山》を加えると、エストラティは《詐欺師の総督》をキャストし、《島》をアンタップすると即座にもう1枚の《定業》へ流れる。
《欠片の双子》コンボの脅威がはっきりしたわけだが、中島は回答を持っていた。彼のすべてのアーティファクトを生け贄に捧げて4/4とすると、《墨蛾の生息地》を起動したのちテーブルの反対側の《詐欺師の総督》に向けて《電結の荒廃者》を《投げ飛ばし》た。
「接合」能力により+1/+1カウンターが中島の《墨蛾の生息地》に移動する。強化されたこの土地がレッドゾーンに向かうと、エストラティに5個の毒カウンターが与えられる。いきなり敗北まであと半分だ!
エストラティは解答を求め、ひとつ見つけることができた。続くターン、中島が《墨蛾の生息地》を起動してきたところで、エストラティは対応してもう1枚の《詐欺師の総督》をキャストし、これをタップして一撃死の攻撃を免れた。
中島は《メムナイト》を続けるが、現状ではアーティファクトは2個しかなく、エストラティがもし《欠片の双子》を見つけてきたとしても、《感電破》では《詐欺師の総督》を打ち倒すことができない! ターンを返し、中島は最善を祈った。
エストラティがすぐに《欠片の双子》をプレイすることはなかった。これで、中島にも勝つチャンスが出てきたと考えられる。エストラティは2枚の《思案》をキャストし、中島にターンを返す。アンタップ状態の土地は3枚だけだ。
中島はドローを経て、再度《墨蛾の生息地》をクリーチャー化したところで急停止させられた。エストラティの《詐欺師の総督》がみたび現れ、またもタップさせてきたのだ!
これで先ほどのターンの繰り返しになるかと思われたが、今回はエストラティの《欠片の双子》が準備済みだった。エストラティがこの禍々しいオーラを《詐欺師の総督》にまとわせると、中島はゲームが終わったことを知り、投了の意思を示した。
エストラティ 1-0 中島
このマッチアップにおいて、サイドボーディングは双方のプレイヤーの助けになってくれる。
エストラティはブロックのための《呪文滑り》と、ありったけの除去呪文――《四肢切断》《古えの遺恨》《稲妻》《仕組まれた爆薬》を入れ、中島はエストラティのコンボを完全に封じられる《倦怠の宝珠》を3枚加えた。
エストラティのデッキは枚数が増えたような形になり、一方の中島の《倦怠の宝珠》は大きな影響を与える追加となるだろう。
Game 2
エストラティがマリガンを余儀なくされる一方で、中島は《メムナイト》《羽ばたき飛行機械》《信号の邪魔者》と戦力を並べて反撃の狼煙を上げた。これは《大霊堂のスカージ》のみだった第1ゲームよりも速い滑り出しだったが、そのスカージすらも第2ターンに中島の軍勢に加わった。中島は攻撃してエストラティをライフ16に落とすが、2枚目の土地を置くことはなくターンを返した。
エストラティは中島の攻撃陣を削りにかかり、《定業》を経て《稲妻》で《信号の邪魔者》を撃ち落とす。
ターンが中島に返るが、《信号の邪魔者》なしではその攻勢は停滞してしまっている。攻撃第二波でエストラティはライフ14。
だが中島は2枚目の土地を見つけ、《倦怠の宝珠》をキャストすることができた。この宝珠はつまるところエストラティのコンボを阻害するが、中島が相手のライフを0にするのにはほとんど役に立たない。
中島がゲームの状態を指さし確認する。 |
エストラティはブロッカーとして《呪文滑り》を展開、しかしこれはすぐさま中島の《感電破》に焼かれ、攻撃が続行される。エストラティのライフを12に削り落とすと、攻撃に《金属ガエル》を追加した。
エストラティは2枚目の《呪文滑り》の後ろに隠れるが、まだコンボが完成する気配はない――それだけでなく、中島の《倦怠の宝珠》を破壊することからしなければいけない。
2枚目の《感電破》が《呪文滑り》を焼き上げ、中島の進撃が再び開始される! エストラティは《金属モックス》こそ《古えの遺恨》するものの、他の攻撃を受けてライフ8となる。
絶体絶命のエストラティ。《古えの遺恨》をフラッシュバックして《倦怠の宝珠》を壊すことこそできるが、手札は2枚しかなく、それらが《詐欺師の総督》と《欠片の双子》である必要があるのだ。
エストラティは突き進んだ。《古えの遺恨》で《倦怠の宝珠》を破壊し、中島の攻撃に《詐欺師の総督》をもって応える。アンタップののちキャストされたのは、当然の《欠片の双子》。彼を応援する人たちの歓声が聞こえる。
中島はわずかに意気消沈の表情を見せ、先ほどに続いてカードを片付けた。
エストラティ 2-0 中島
Game 3
信じられないドローの繰り返し、それこそ準々決勝で勝ったときのような展開が必要なときがあるとしたら、中島にとって今がまさにその時だろう。
しかし不運なことに、このときの中島がとり得た最善の展開は、ただ《信号の邪魔者》を出すだけだった。だが、続くターンにこの親和デッキの本当の戦力が加わってくる。まず《バネ葉の太鼓》が打ち鳴らされると、《電結の荒廃者》、そして《金属ガエル》が戦列に加わった。
第1ターンを《思案》に費やすと、エストラティは0/4の《呪文滑り》を出して、相手のアーティファクトの大群への防御へとするが、中島の攻撃を遅らせるには十分ではない。
《墨蛾の生息地》を起動して、中島はそれと《信号の邪魔者》《電結の荒廃者》《金属ガエル》の全軍をレッドゾーンに突撃させる。エストラティが《金属ガエル》を《呪文滑り》でブロックすると、中島は《ダークスティールの城塞》と《バネ葉の太鼓》を《電結の荒廃者》の餌にした。
結局エストラティはライフ14となり、毒カウンターを2個得た。中島は土地と《オパールのモックス》を置き、そこから最後の手札となる《倦怠の宝珠》を並べてみせた!
エストラティは3枚目の土地を置き、静かにターンを返した。《倦怠の宝珠》は《やっかい児》や《詐欺師の総督》のトリックを完全に無効化しており、エストラティはただ1体のみ《呪文滑り》の守りで粘っている状況だ。
中島は2枚目となる《バネ葉の太鼓》と《墨蛾の生息地》を置いて攻撃。
エストラティは中島のアーティファクトを数え、全力で《電結の荒廃者》に+1/+1カウンターを集めてきたとき、そのカウンターが《墨蛾の生息地》に移って、感染での一撃必殺を狙ってきたときの毒ダメージを試算する。そして《詐欺師の総督》をキャストし、可能な限り最善のブロックをすることにする。
しかし、彼の身体の動きはどうにも、彼が負けそうだと思っている、ということを感じさせるものだった。彼はブロックするときも観念して「どうにもならない」雰囲気を出しているし、自身のカードに手を伸ばすときにも、そのままカードを片付けて次のゲームへのシャッフルに進む準備が万端のような動作をしている。
サミュエル・エストラティの苦悶。 |
もちろん、これらは狙いすました動きだった。エストラティは、中島にこのターン中に勝てると思わせようとしていたのだ。エストラティには依然《呪文滑り》があり、《電結の荒廃者》から《墨蛾の生息地》への+1/+1カウンターの全力移動の対象を、《呪文滑り》に変えてしまうことができるのだ! これは価値ある試行だったが、中島主税は実に老練であり、そのようなトリックに落ちることはなかった。イタリア人の仕掛ける精神戦を無視し、中島は単に戦闘ダメージを処理するように告げ、対戦相手に5ダメージと毒2個を与えた。
エストラティは続くターン、《欠片の双子》を《詐欺師の総督》にエンチャントした。だが依然《倦怠の宝珠》が機能しているため、コンボは意味をなさない。ターンを返したエストラティは、タップアウトして自分ではどうにもならない風に見せて、中島に隙を見せることを継続していた。しかし中島はその手には乗らず、単に攻撃して、すべてを通常どおり解決させた。この攻撃でエストラティは残りライフ4、毒カウンター6個となり、中島は戦列に《大霊堂のスカージ》を追加した。
エストラティは《鏡割りのキキジキ》をキャストするが、この悪く忌しきゴブリンですらこのイタリア人の助けにはならない。
中島はアンタップすると《頭蓋囲い》をキャストし、攻撃することで1本を取り返した!
エストラティ 2-1 中島
Game 4
サミュエル・エストラティは準決勝の第4ゲームを、青赤のコンボデッキの定番通りに《定業》で始めた。一方の中島主税の親和デッキは、《墨蛾の生息地》《オパールのモックス》《メムナイト》《信号の邪魔者》《バネ葉の太鼓》という猛発進。そして第2ターン、ゲームの行く末を左右する《倦怠の宝珠》を加えた。
第3ターンには《ちらつき蛾の生息地》で《墨蛾の生息地》のバックアップを整え、中島は再度攻撃したが、ここがエストラティの待っていた時だった。《ヴェンディリオン三人衆》がキャストされ、《墨蛾の生息地》を相打ちにとると、アンタップを経て《炎渦竜巻》で盤面を一掃してみせたのだ。
中島の攻撃の第一波を《炎渦竜巻》でさばいた時点で、エストラティはライフ14という安定域にとどまっていた。彼の目下の課題は中島の《倦怠の宝珠》をいかに除去するかとなった。あのアーティファクトが戦場にある限り、エストラティは勝つことができないのだ!
中島は1体の《エイトグ》のみで攻撃を再開したが、エストラティのライフ総量に対してはいささか遅い。2回目の攻撃が《やっかい児》でブロックされたことで、中島はこのアンティキティー生まれのクリーチャーを残すために《オパールのモックス》を生け贄に捧げることとなったが、新たに加わった《メムナイト》でダメージを刻み続けることができそうだ。エストラティはライフ12となり、このままでは《倦怠の宝珠》を破壊する方法を探しながらも見つからず、なぶり殺しになってしまう!
中島はさらなる攻撃でエストラティのライフを10に落とし、《電結の荒廃者》でダメージクロックを加速させて対戦相手に圧力をかける。エストラティは中島のターン終了時に《やっかい児》を出し、これに《欠片の双子》をエンチャントした。《倦怠の宝珠》がまたもコンボによる勝利を阻害しているが、《欠片の双子》はブロック用のトークンを生成し、エストラティは時間を得る。
中島は再び彼の軍勢をレッドゾーンに送り込む。エストラティは《やっかい児》トークンを生成して《エイトグ》をブロックし、ライフを7とする。エストラティが今、喉から手が出るほど欲しいのは《古えの遺恨》、もしくは《仕組まれた爆薬》といった《倦怠の宝珠》を破壊できるカードだ。そうでなければ、この遅い攻撃が間に合って、中島に2勝目をもたらすことになるだろう。
エストラティはアンタップして《思案》を見つけ、それをそのままキャストしたが、彼が見たライブラリトップには求める《古えの遺恨》はなかった・・・しかし、《炎渦竜巻》を見つけることはできた。彼は中島の攻勢を再びリセットし、この日本人プレイヤーは2つの+1/+1カウンターを《ちらつき蛾の生息地》に移動させることにした。古き良き飛行のおかげで巻き込まれずに済んだのだ。
・・・引いたのかい? |
盤面に戻り、中島はさらなる《エイトグ》で戦線の再構築を図った。エストラティはドローし・・・もう1枚の《思案》は、続く3枚も《古えの遺恨》でないことを明らかにした。エストラティは《詐欺師の総督》を追加のブロッカーとして用意し、彼の守りを再び補強した。
引いたカードをプレイする状態になっている中島は、《バネ葉の太鼓》を加えると再度攻撃、しかし《詐欺師の総督》と「やっかいの双子」にブロックされる。エストラティはわずかライフ7だが、中島は厚い壁に阻まれ、時間を使い果たそうとしていた。
続くターンに《頭蓋囲い》を引いたものの、中島は依然エストラティのブロッカーを乗り越えられずにいる。彼は現状の戦力ではエストラティのトークンに無意味にブロックされるだけでダメージを叩きだせない以上、もっと多くのクリーチャーが必要だったのだ。
エストラティのターンはそのまま返され、負けに近づくことはなかったが、今や中島の残り時間が尽きようとしていた。
ついに《古えの遺恨》をドローし、サミュエル・エストラティは対戦相手の《倦怠の宝珠》を粉々に砕いた。エストラティのコンボ要素はすでに戦場に揃っており、《倦怠の宝珠》がなくなれば阻むものは何もなかった。
意気消沈した様子の中島主税だが、対戦相手を祝福するため握手を求めた。他方、すっかり安心した様子のサミュエル・エストラティが、プロツアー・フィラデルフィアの決勝に進むこととなった!
サミュエル・エストラティが中島主税を3-1で降し決勝進出!
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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