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EVENT COVERAGE
プロツアー『マジック2015』
決勝:Ivan Floch(スロバキア) vs. Jackson Cunningham(カナダ)
Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki
2014年8月3日
プロツアーで優勝するということは、いくつかのものを勝ち取るということでもある。翌シーズン中に参加褒賞を得られるプラチナ・レベルへの即昇進、40,000ドルの賞金、そして年末に行われる世界選手権の椅子。
うん、そんな大したものじゃないよね?
プレイヤーとそれぞれのデッキ
イヴァン・フロック/Ivan Flochはプロツアー・トップ8入賞経験こそないものの、長らく最強のプレイヤーのひとりと評されてきた。彼にとって、その経歴に「プロツアー・サンデー進出」の名誉を加えることは、長年の目標だったのだ。彼の用いた「白青コントロール」デッキは、使い手に効率的で正確なプレイが試される――このデッキは勝利するまでに多大な時間がかかり、素早く動かなければ試合時間内に間に合わないのだ。フロックは、単体除去の数々と《次元の浄化》や《至高の評決》のような《急かし》の後押しを受けたソーサリー、そして必要なときにはいつもどんなことでも実現してくれた《不死の霊薬》を駆使して、数多の脅威を巧みに手懐けてきた。
ジャクソン・カニングハム/Jackson Cunninghamは、プロツアー初参戦のプレイヤーたちが夢見るものをはるかに超えた成功を収めた。この決勝まで勝ち進んだことで、彼はプロ・プレイヤーズ・クラブのシルバー・レベルを確定させている。ここからカニングハムができる最高のことは、この試合に勝ち一気にプラチナ・レベルまで登り詰め、今年最大のトーナメントの席を手に入れることだけだ。彼の操る「白緑アグロ」デッキは、《復活の声》と《群れの統率者アジャニ》による復帰力を証明してきた。除去を受けても変わらないパワーと爆発的なダメージ源をもって、対戦相手が安全だと感じるところから勝利をもぎとっているのだ。
両プレイヤーとも、このプロツアー『マジック2015』最後の試合にふさわしい勝負を繰り広げた。多くのゲームで予想外の逆転が起こり、競い合うふたりのプレイヤーまでもがお互いに声援を送った。
「《ラクドスの復活》を3枚も入れた『ジャンド・プレインズウォーカーズ』にどうやって勝とうか考えていたら、急に君の方を応援したくなったんだよ」と、フロックが言う。
カニングハムは笑顔を見せた。決勝の舞台で見せるその笑顔は両者の緊張を和らげ、やがてふたりは同じものを求めて戦いに身を投じた。プロツアーのタイトルと栄光を、そして世界選手権の席を求めて。
ゲーム展開
ここまで多くのゲームでそうしてきたように、カニングハムは素早く動き出した。《マナの合流点》2枚から完璧にマナを引き出し、《万神殿の兵士》、《羊毛鬣のライオン》、《復活の声》と立て続けに唱える。《羊毛鬣のライオン》は打ち消されたが《復活の声》が通り、フロックを厳しい状態に持っていった。フロックのデッキは相手のターンに呪文を使いたいものであり、《復活の声》を対処するまでは不利な状況が続くのだ。
カニングハムはフロックのライフを12点まで落とすものの、その後数ターンにわたって土地が止まってしまう。《思考を築く者、ジェイス》がカニングハムの攻勢を緩めると思われたが、《セレズニアの魔除け》から騎士トークンが、さらに《復活の声》がもう1枚続き、カニングハムはその歩みを止めなかった。
続くターン、カニングハムが《思考を築く者、ジェイス》へ攻撃すると、フロックはついに《急かし》から《至高の評決》を放ち、エレメンタル・トークン2体を残して盤面をリセットした。そこへ戦闘後《羊毛鬣のライオン》が加わる。フロックは《思考を築く者、ジェイス》の忠誠度を1まで下げ、分けられた束から《スフィンクスの啓示》を「引く」と、続けて2枚目の《至高の評決》を放ちカニングハムをふりだしに戻した。
その後もフロックは何度となく《スフィンクスの啓示》を放ちアドバンテージ差を広げていくと、カニングハムが繰り出すあらゆる脅威――《羊毛鬣のライオン》、《実験体》、《陽刃のエルフ》など――に解答を用意した。やがて、カニングハムはもう十分だと判断し、次の先手に挑むことを決めた。
フロック 1-0 カニングハム
カニングハムは《実験体》から《万神殿の兵士》と素早い展開を狙う。フロックは《今わの際》を複数用意していたが、しかし1体を追放した頃には《群れの統率者アジャニ》がカニングハムの軍勢を強化し始めていた。
《ニクス毛の雄羊》がブロッカーとなり、カニングハムがクリーチャーをさらに戦場へ送るのを待つフロックを、堅く守る。カニングハムは《万神殿の兵士》の強化を続け、ブロックできないほどのサイズになった。カニングハムが1ターンに2枚の《群れの統率者アジャニ》を使い6/5飛行、二段攻撃の《万神殿の兵士》を作り上げたそのとき、意外なことが起きた――フロックはそれに対応できなかったのだ。
「ああ......オーケー」 フロックはつぶやき、カードを片付け始めた。
フロック 1-1 カニングハム
3ゲーム目の序盤はプレインズウォーカー同士がにらみ合う展開になった。カニングハムは《群れの統率者アジャニ》の忠誠度を上げ、フロックは《思考を築く者、ジェイス》の[-2]能力を使っていく。《至高の評決》が《ロクソドンの強打者》1体に対して使われ時間を稼ぎ、続く2体目には《アゾリウスの魔除け》が使われた。
《ワームの到来》が《群れの統率者アジャニ》と手を組み脅威になることを警告したが、フロックはここで《次元の浄化》を放った。カニングハムは、《ロクソドンの強打者》と2枚目の《群れの統率者アジャニ》を再び繰り出す。フロックが2枚目の《至高の評決》を唱えると、次のターン、カニングハムの手札からクリーチャーが出されなかった。《スフィンクスの啓示》が仕事を始め、フロックの手札を補充し、ライフはカニングハムが追いつける量を越えていった。カニングハムが《群れの統率者アジャニ》の最終奥義を放ち21体の2/2猫・トークンを生み出しても、フロックのライフを0にはできなかった。
《至高の評決》はそこに何体クリーチャーがいようと関係ないのだから。
やがて、フロックが《太陽の勇者、エルズペス》を戦場に投入し、今度は彼が軍勢を組み始めた。カニングハムのあらゆる攻撃からエルズペスを守ったフロックは、彼女の最終奥義を起動し、カニングハムのライフを19から一気に削り切ったのだった。
フロック 2-1 カニングハム
カニングハムは再び、《万神殿の兵士》から《羊毛鬣のライオン》という動き出しで勢い良くゲートから飛び出した。そこへ《群れの統率者アジャニ》の献身的な働きも加わり、フロックは続く2回の攻撃でライフを11点まで落とした。
「また現れたな!」 カニングハムの手札から《群れの統率者アジャニ》が時計仕掛けのように正確に繰り出されると、フロックは声を上げた。とはいえカニングハムはタップ・アウトの状態だ。《至高の評決》が《羊毛鬣のライオン》を処理するが、そこに《ロクソドンの強打者》が取って代わった。フロックは、トップ8・ラウンド中ここまでほとんど姿を見せなかった《テューンの大天使》を引き込んだ。カニングハムがサイズで勝る《ロクソドンの強打者》で攻撃すると、その攻撃は通り、フロックのライフは残り5点になった。《思考を築く者、ジェイス》でライブラリーを掘り進めたフロックだが、土地を置けず、タップ・アウトに近い状態でターンを渡した。《払拭の光》がブロッカーである《テューンの大天使》を取り去り、カニングハムは致命傷となる攻撃を加えたのだった。
フロック 2-2 カニングハム
「このマッチアップはあなたの引きの良さが勝負の分かれ目ですね」 カニングハムはフロックのデッキを手で示してそう言った。
「君のドローにもかかってるさ」 フロックが答える。
「確かに。ドロー勝負ですね」
最終戦が始まれば、もうあれこれ考える時間は終わりだ。カニングハムの《実験体》がゲームの始まりを告げ、間もなくして《羊毛鬣のライオン》が続いた。一方フロックは《ニクス毛の雄羊》を2枚展開し、ブロッカーを任せた。カニングハムは自身を奮い立たせ、3/3になった《実験体》と2体の《羊毛鬣のライオン》で攻撃を始める。しかし、毎ターン2点のライフを得る効果が《テューンの大天使》と組み合わされば、あっという間に力を増していくだろう。
カニングハムはフロックのターン終了時に《ワームの到来》で対抗するが、《実験体》の「進化」を忘れてしまった。彼は先ほどの陣容に緑の5/5のワーム・トークンを加えて、攻撃に向かう。0/5の《ニクス毛の雄羊》にブロックされた《実験体》を5/5にするチャンスを逃したカニングハムは、戦闘後にもう1枚《ワームの到来》をプレイした。フロックがアップキープを迎えると、彼のクリーチャーにはすべて+1/+1カウンターがふたつ乗せられた。さらに《テューンの大天使》がカニングハムに攻撃し彼のライフを11点にすると、もうひとつ+1/+1カウンターが追加された。フロックの戦場は、3/8の羊2体が守っていた。
カニングハムは再び全軍で攻撃し、ブロックされた《羊毛鬣のライオン》を《アジャニの存在》で「破壊不能」にした。《アゾリウスの魔除け》が《実験体》をカニングハムのライブラリーに戻し、フロックのライフは10点残った。再びアップキープを迎えた彼はクリーチャーたちにさらなる+1/+1カウンターを置く。カニングハムはタップ・アウトの状態で、フロックは《ニクス毛の雄羊》と《テューンの大天使》を横向きに倒した。5/10となった《ニクス毛の雄羊》2体と8/9の《テューンの大天使》が、カニングハムの手を上げさせた。
イヴァン・フロックがジャクソン・カニングハムを3勝2敗で下し、プロツアー『マジック2015』を制した!
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