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プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』

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プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』2日目の注目の出来事

Corbin Hosler

2025年6月22日

 

 ラスベガスの会場は常に興奮が渦巻いていたが、MagicCon: Las Vegasの「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」の2日目が始まると、更なる熱狂が沸き上がった。プロツアーに出場するため、300人以上のプレイヤーがこの砂漠に集結したが。これは史上最大のマジック・コンベンションに訪れた参加者のほんの一部に過ぎない。会場内ではカバレージ・デスクによるちょっとしたバスケットボール対決も行われ、和やかな一幕も見られた。プロツアー1日目が終了した時点で、2日目への進出権を獲得したプレイヤーは209人だった。

 2日目の朝は好調なスタートを決め、伝説への一歩を踏み出すチャンスである。クリスチャン・ベイカー/Christian Bakerはドラフトで好調な滑り出しを決め、スタンダードでは最強デッキのイゼット果敢を携え金曜日を8-0の全勝でリードした。しかし、多くのプレイヤーがベイカーのすぐ後ろを追いかけている状況だ。2日目は『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』ドラフト3回戦とトップ8へ進出するための最後の関門となるスタンダード・フォーマットが待ち受けている。誰がトップ8を勝ち取るのか、まったく読めない状況で2日目が開幕した。

ラスベガスの来場者は22,00人以上。イベントはこれまでとは別次元のレベルだ。
ドラフトは2-1で通算6勝5敗。スタンダードで4-1を目指すよ。
#PTFINALFANTASY

舞台はドラフトによって作り上がる

 『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』ドラフトは、リミテッド環境の中でもとりわけ魅力的な環境として高く知られている。プロツアーの前では、各色の強さはほぼ均衡していると見られていた。つまりドラフトで成功する鍵は、多様なレアリティや枠のカード、ボーナス・カードがもたらす魅力的な選択を前に、強く「忍耐」し続けることだ。プロツアーの参加者も、自分が取るべき最も空いている色が判明するまで粘り、判明後は一気にピックを寄せていく、それがこのリミテッド環境のセオリーであると語っていた。

 時には2色目を決めない、色の受け入れが広い状態を維持しておく展開もあるだろう。それで問題ない場合があるのだ。金曜日のドラフトにおいて黒単デッキで3勝0敗の成績を収めたジョディ・キース/Jody Keithが、その好例を示してくれている。キースは土曜日も黒単デッキの戦略を取り、大成功を収めた。

 キースがくみ上げた黒単デッキは、この環境の除去カードの豊富さを如実に表している。《黒魔道士の襲撃》や《セフィロスの介入》は、この週末で優先的にドラフトされていた。

 

 キースのデッキの強みの一つが、色選択によって効率的なプレイを可能にしたことに対して、地域チャンピオンシップ優勝者のコナー・マッケンジー/Connor Mackenzieはマナ・カーブによって効率的なプレイを実践していた。ドラフト・ラウンドで見事なプレイを披露したマッケンジーは、シンプルナデッキの強さを改めて見せてくれた。

これが完璧なマナ・カーブ・デッキだ
#PTFINALFANTASY

 200人以上が参加した2日目のドラフト・ラウンドにおいて、金曜日も土曜日もドラフトで全勝したのは僅か3名、エドガー・マガリャエス/Edgar Magalhaes、ハ・ファム/Ha Pham、 イアン・ロブ/Ian Robbのみだった。彼らは1つ2つのアーキタイプのみに特化するのではなく、すべてのアーキタイプを使いこなす力を培うことで全勝を成し遂げた。それこそが、このドラフト・フォーマットにおいて完全な「オープン」状態でいるための唯一の道であり、シグナルを正確に読み解くことで優位を手にしたのだ。

 2回目のドラフトが終了した時点で、全勝者はいなくなっていた。トップ8の座をかけて、残りのスタンダード5回戦が始まろうとしていた。

スタンダードのスパイスは短刀を破壊できるか?

 リミテッド環境・ラウンドは参加者にとって未知な部分も多かったが、スタンダードにおいてはラスベガスに集った誰もがイゼット果敢が打倒すべきデッキであると知っていた。特に《コーリ鋼の短刀》がこのデッキの強さの根幹にある。プロツアーに向けて準備を進める中、メタゲームを揺るがすようなデッキが存在しているのかが誰もが抱える疑問だった。

 だがこの問いに明確な答えは得られなかった。何故なら、果敢デッキの使い手の殆どが《迷える黒魔道士、ビビ》を投入したデッキを使うことを決めたからだ。戦場に出たときの誘発型能力を持たないこの3マナのカードは、《塔の点火》や《洪水の大口へ》が飛び交う世界では重く見えるかもしれない。しかし実際には、9割以上のイゼット果敢デッキがビビを採用している。その理由として、大会で2番手に付けるアーキタイプ、アゾリウス全知コンボに対する対策カードとして真に有力だったと多くのプレイヤーが語ってくれた。

 それでも、自分の道を貫いたプレイヤーもいた。そして彼らの中には、近年のプロツアーでも屈指の実績を誇る猛者たちも含まれていた。

 その筆頭がイーライ・カシス/Eli Kassisである。彼はゴルガリ陰湿な根デッキで非常に強力な成績を収めたのみならず、チームHandshakeの多くのメンバーをこのデッキへ引き込むことにも成功した。

 「最も人気が出るだろうデッキを避けた理由は、マークされるのを避けるためです」とイーライは言葉を発した。「皆が予想するであるデッキを回す気はありませんでした。《陰湿な根》デッキはエンチャントを軸にした勝ち筋を持っていますが、果敢デッキはこれを上手く処理することができません。《洪水の大口へ》でバウンスすることはできますが。バウンスするには魚を対戦相手に贈る必要があります。そして、私は貰った魚をタップしてマナを出すことができます。《呪文貫き》もありますが、相手が構え続けるのは難しく、私はケアしてプレイすることができます。つまり、陰湿な根デッキは果敢デッキにとって非常にやりにくいデッキなのです」

イーライ・カシス/Eli Kassis - 「ゴルガリ陰湿な根」
プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』 / スタンダード(2025年6月20~22日)[MO] [ARENA]
1 《
6 《
4 《ラノワールの荒原
4 《ウェイストウッドの境界
4 《花盛りの湿地
1 《偉大なるアラシンの都
-土地(20)-

4 《脱皮の世話人
2 《ラノワールのエルフ
2 《町の歓迎者
1 《コアトルのあさり屋
2 《漁る軟泥
2 《骨術師の達人
2 《龍を狙い撃つ者
2 《瓦礫帯の異端者
2 《破壊の嵐孵り
4 《機能不全ダニ
4 《ベイルマークの大主
-クリーチャー(27)-
1 《アガサの魂の大釜
4 《陰湿な根
4 《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー
2 《蓄え放題
2 《浚渫機の洞察
-呪文(13)-
3 《闇の腹心
1 《空漁師の蜘蛛
2 《喉首狙い
1 《コアトルのあさり屋
1 《除霊用掃除機
1 《腐れ花
2 《迷いし者の魂
1 《ヴォルダーレンの興奮探し
2 《龍を狙い撃つ者
1 《ガスタルの略奪者
-サイドボード(15)-
 

 「このデッキを一番推していたのは私でした。ある時点では、チーム全員がこのデッキを回していましたよ」とイーライは教えてくれた(Handshakeからは5人がこのデッキを選んだ)。「練習での勝率は赤単と全知に7割、果敢に6割が出せていた。コントロールには大きく負け越していたが、前者の3つのデッキを確実に打ち負かせることを求めていた。私はチームメンバーへ他のデッキは考えなくていいと言ったんだ。果敢対策を万全にすべきだったからね」

 イーライのデッキはこの週末で8勝2敗、イゼット果敢には4勝1敗という成績を収めた。そして、カシスのデッキと同様にビッグスリー以外にも活躍したデッキは存在していた。例えばミッチェル・タンブリン/Mitchell Tamblynはコントロール・デッキを操り11位の好成績を収めている。しかしゴルガリ・デッキで成功したプレイヤーはHandshake以外にはほとんど居なかった。

 もちろん、見事な活躍を収めたのは彼らだけではない。ジョディ・キースのゴルガリ墓地利用デッキは見事なハイライトを何度も演出していた。エドガー・マガリャエスも版図大主でトップ8入りにあと一歩の所まで迫っていた。版図大主デッキはマット・ナス/Matt Nassが「プロツアー『霊気走破』」で優勝したときのデッキだ。スタンダードのスパイシーなデッキ達はこちらから見ることができる。

エドガー・マガリャエス/Edgar Magalhaes - 「版図大主」
プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』 / スタンダード(2025年6月20~22日)[MO] [ARENA]
1 《優雅な談話室
4 《草萌ゆる玄関
1 《
4 《迷路庭園
4 《フラッドファームの境界
1 《魂の洞窟
4 《ハッシュウッドの境界
2 《薄暗い裏通り
2 《ウェイストウッドの境界
1 《平地
2 《剃刀境の茂み
-土地(26)-

1 《跳ねる春、ベーザ
4 《ホーントウッドの大主
4 《ミストムーアの大主
4 《永遠の策謀家、ズアー
-クリーチャー(13)-
4 《真昼の決闘
4 《豆の木をのぼれ
1 《失せろ
1 《審判の日
2 《一時的封鎖
2 《全損事故
2 《領事の権限
4 《力線の束縛
1 《古代魔法「アルテマ」
-呪文(21)-
2 《方程式の改変
1 《軽蔑的な一撃
1 《安らかなる眠り
2 《全損事故
1 《ラクシャーサ流取り引き
1 《跳ねる春、ベーザ
1 《精体の追跡者
1 《機械の母、エリシュ・ノーン
3 《受け継ぎし地の開墾
1 《勝利の楽士
1 《否認
-サイドボード(15)-
 

 「今年は黒のミッドレンジをよく使っていたんだ。地域チャンピオンシップでは、オルゾフ・ピクシーで次回プロツアーの権利を獲得できた。黒のミッドレンジは赤単や果敢に強いんだけど、オンラインで人気がでつつあった全知デッキにはかなり不利なんだ。だから、ヘつのデッキを探していたんだ」とエドガーは言う。「一方で、リード(・デューク)やガブリ(エル・ナシフ)、セス(・マンフィールド)は最初から版図デッキを使っていたので、良いリストが控えてる安心感はあった。結局、デッキリスト提出日の朝にそのリストを使うことになったよ」

 これはチーム、特に殿堂入りプレイヤーやスタンダードの巧手が居るチームに所属する利点だ。エドガーは、このリストで9位に入賞した。

 結局、イゼットは前評判に違わぬ活躍を発揮した。《迷える黒魔道士、ビビ》がこのデッキが抱えていた数少ない弱点を克服し、《コーリ鋼の短刀》、と《巨怪の怒り》のプロツアーでのシェア率は《王冠泥棒、オーコ》や《創造の座、オムナス》といった歴代屈指のカードに次ぐものとなった。なんとトップ8の8人中8人が《巨怪の怒り》を採用しているのだ。

記録すべき選手の記録的活躍

 土曜日の部が進行し、トップ8争いが際立ってきたとき、同時に別のあることが明らかになった。我々は、非常に輝かしい活躍を目撃していたのだ。

 例えばニック・オーデンハイマー/Nick Odenheimerの勝利だ。今大会では十数名の殿堂プレイヤーに注目が集まっていたが、そのすぐ下の位置で静かに勝ち進んでいたのが初代「マジック・スポットライト・シリーズ」王者のオーデンハイマーだ。イゼット果敢を駆り、アトランタでの決勝進出を決めたその腕前が、全米を股にかけて通用することを証明した。そして第13回戦でクリストファー・ラーセンとの緊迫した一戦を制し、10勝目を掴んで次回プロツアーへの出場権利を獲得瞬間、彼は喜びを噛み締め、心からの安堵のため息を漏らしていた。次回の週末も、さらなる活躍を見せてくれるだろう。

ニック・オーデンハイマー/Nick Odenheimer

 「初めてのプロツアーでこんなに良い成績が出せて嬉しいです。本当に嬉しいです」オーデンハイマーは今年後半に開催される「プロツアー『久遠の終端』」の参加権利を獲得した喜びに浸っていた。

 近年のチャンピオン達の中で、目覚ましい活躍を繰り広げているのは彼だけではない。アメリカ地域チャンピオンシップ王者であるファン パーシー/Percy Fangは、自身がアリーナ・チャンピオンシップと地域チャンピオンシップでトップ8入りを決めた赤単デッキを再度持ち込み、このラスベガスでも快進撃を見せていた。彼のチームメイトであり、同じく赤単愛好家のクイン・トノーリ/Quinn Tonoleも同じく活躍していた。そしてファンの快進撃は止まることを知らず、第14回戦でトニ・ポルトラン/Toni Portolanに勝利し、赤単でのトップ8入りを再び決めたのだ。

 殿堂プレイヤーも活躍している。元世界王者で史上最高のプレイヤーであるパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaは数年ぶりのプロツアー参加であったが10勝6敗の好成績を収め、スタンダードでは独創的なデッキで8勝2敗の活躍を見せた。殿堂プレイヤーのパトリック・チャピン/Patrick Chapinや偉大なるボブ・マーハー/Bob Maherも参戦しており、 ボブは金曜日に長い連勝記録を打ち立て、往年のファンを喜ばせた。

トップ8が決定していく

 最初の14ラウンドで12勝すればトップ8の席が保証されるため、プロツアーは毎回、最後までほぼ無敗を維持してトップ8入りをいち早く決めか、それとも最終ラウンドでの混戦模様を勝ち抜くかの競争だ。

 「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」では、早い段階でトップ8の面子が固まり始めた。最初にトップ8入りを決めたのは、第14回戦で12勝目を記録したイアン・ロブと行弘賢である。今大会を象徴するデッキであるイゼット果敢を武器とした、オールラウンダーであるイアンにとっては、これは2連続でのプロツアー・トップ8入りとなった。

プロツアーtop8から、プロツアーtop8へ!

 2番目にトップ8入りを決めたのは行弘だ。彼は素早く、そして緊張を置き去りにしたプレイスタイルで、自身のキャリアに輝かしい一行を加えた。イゼット果敢を完璧に操る中村修平にも勝利し、そして行弘は8度目となるプロツアー・トップ8入りを決めた。そして続くようにリウ ユーチェン/Yuchen Liu、元プロツアー王者のデイヴィッド・ルード/David Rood、現地域チャンピオンシップ王者のファン パーシー/Percy Fangが、トップ8を決めていった。

@death_snow(行弘賢)が2人目となる勝利数での#PTFINALFANTASYトップ8進出を決めました!おめでとうございます!
続くトップ8を懸けた対戦はtwitchで配信します。

 日曜日のトップ8は残り3席となり、タイブレイカーで進出者が決定された。「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」のトップ8は以下の8名だ。

  • 行弘 賢/Ken Yukuhiro(赤単アグロ)
  • イアン・ロブ/Ian Robb(イゼット果敢)
  • デイヴィッド・ルード/David Rood(イゼット果敢)
  • ファン パーシー/Percy Fang(赤単アグロ)
  • リウ ユーチェン/Yuchen Liu(赤単アグロ)
  • トニ・ポルトラン/Toni Portolan(イゼット果敢)
  • クリスチャン・ベイカー/Christian Baker(イゼット果敢)
  • アンディ・ガルシア=ロモ/Anthony Garcia-Romo(赤単アグロ)

 「プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』」トップ8入賞おめでとう! この8名は日曜日の朝にトップ8プレイヤーとして集合し、プロツアー王者とトロフィー獲得を目指して競います!

 
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