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プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』

観戦記事

プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』トップ8ラウンド 注目の出来事

Corbin Hosler

2025年6月23日

 

 300人を超えるプレイヤーたちが、晴れ渡るラスベガスに集結して開催されたプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』。3日間にわたる熾烈な戦いの末、残すはあと3ラウンド。プロツアーのトップ8マッチはすべてBO5(3本先取)形式で行われ、この戦いを勝ち抜いた者がプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』の王者として栄冠を手にする。

 

 このイベントは MagicCon: Las Vegas の一環として開催され、数万人規模の来場者にとって「マジック」と「ギャザリング(集い)」の両方を楽しむ貴重な機会となった。300人を超える参加プレイヤーの中には殿堂入りプレイヤーが12人も名を連ね、たとえ《コーリ鋼の短刀》が活躍しない瞬間があったとしても、会場には常に楽しめる何かが用意されていた。

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 日曜日の舞台では、大会のトップ2デッキ同士によるミラーマッチがいたるところで展開されることとなった。「イゼット果敢」 と 「赤単アグロ」はこの夏のスタンダード環境を定義しており、その支配力はプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』においても変わらなかった。ただし、《コーリ鋼の短刀》 は期待されたほどの活躍を見せられず、「イゼット果敢」 のアーキタイプ別勝率は50%を下回る結果となった。一方でその隙を縫ったのが《巨怪の怒り》を採用した 「赤単アグロ」であり、「イゼット果敢」「赤単アグロ」「アゾリウス全知」 の「ビッグ3」デッキの中で最も高い勝率を記録した。

 これらのデッキがトップ8の半分ずつを占めたことで、トーナメントの構造上、準決勝まではすべてミラーマッチとなり、決勝では必ず 「イゼット果敢」 対 「赤単アグロ」の構図が実現することが保証されていた。まさに、これらのデッキが支配したプロツアーを締めくくるにふさわしい結末だった。

準々決勝

行弘 賢 vs. アンディ・ガルシア=ロモ

 トップ8の幕開けを飾ったのは、行弘 賢と アンディ・ガルシア=ロモの「赤単アグロ」ミラーマッチ。スタンダードで最速のデッキ同士の対戦は、一瞬で勝敗が決まる展開が予想された——そして、その通りになった。ゲーム1では、ガルシア=ロモが理想的なスタートを切り、わずか3ターン目には行弘が投了の手を差し出す展開に。こうして、約3分間の猛攻でプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』のトップ8が本格的に動き出した。

 ゲーム2は一転、複雑な戦闘計算を強いられるシビアな展開となった。特に行弘は、ライフ7・戦場にクリーチャーなし・対面には5体のクリーチャーという絶体絶命の状況に追い込まれる。

 そのとき、《自爆》は繰り出された——。

 

 この『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』の新たな追加カードは、「赤単アグロ」に新たな広がりを与え、ブロッカーが多数並ぶ状況でも試合を締めくくる力を与えた。行弘はこの強力な新カード《自爆》の力を見せつけ、自らの《魂石の聖域》に向けて撃ち込みつつ、ガルシア=ロモのライフに直撃させて、ぴったりのダメージでリーサルを決めた。

 これで準々決勝第1試合は1ゲームずつを分け合う形となり、両者はサイドボードに手を伸ばした。「赤単アグロ」ミラーにおいては、これによって試合のテンポが大きく鈍化する傾向にある。なぜなら、相手のライフに向かって投げられていた火力呪文の多くが、クリーチャー除去へと用途を変えるからだ。

 とはいえ、その戦略も《叫ぶ宿敵》相手ではやや厄介なものになる。このゲームでは、両者がスピリット同士で打ち合いを続けた結果、ガルシア=ロモが行弘のクリーチャーに2枚の除去を使ったタイミングで場が膠着。フォーマット最速のデッキ同士の対戦とは思えないほどの展開になり、6ターン目時点で両者の盤面にはクリーチャーがゼロ、手札も空、ライフはまだ2桁という異様な状況になった。

 これはまさに、サイド後の「赤単アグロ」ミラーでよく見られる典型的な展開であり、その後の引き勝負にすべてが委ねられる形となった。この状況を制したのは行弘で、次のターンにもう一体の《叫ぶ宿敵》を引き込み、ガルシア=ロモの《心火の英雄》との激しいライフレースを制した。その決め手となったのは、再び登場した《自爆》だった。

 そして迎えた第4ゲームが、この準々決勝の最終ゲームとなった。今度は一転、両者ともに除去ではなくクリーチャーを連打する展開となった。こうした展開では《叫ぶ宿敵》の強さが際立ち、攻防が交錯する中、行弘 の手札にあった《巨怪の怒り》が最後の決定打となり、準決勝進出を決めた。

 
デイヴィッド・ルード vs. トニ・ポルトラン

 続いての対戦は、元プロツアーチャンピオンによる一戦だった。デイヴィッド・ルードは、20年ぶりにプロツアーの舞台に返り咲いたベテランで、2005年のプロツアー・アトランタでは ガブリエル・ナシフ、ガブリエル・ツァンと共に優勝を果たしている。カナダ出身の彼は今回も見事に再予選を勝ち抜き、その卓越したリミテッドの腕前を活かして日曜日の舞台にたどり着いた。その前に立ちはだかるのは、同じく「イゼット果敢」を握るトニ・ポルトラン。ここではミラーマッチが展開された。

 「赤単アグロ」ミラーのような電光石火の展開とは異なり、第1ゲームはやや膠着気味に始まった。ルードの《ドレイクの孵卵者》とポルトランの《コーリ鋼の短刀》が盤面を整える中、《ドレイクの孵卵者》が生成した飛行クリーチャーがポルトランのライフをじわじわ削っていく。ポルトラン側には《迷える黒魔道士、ビビ》が登場して反撃の狼煙を上げたが、ルードが終盤に一気に呪文を畳み掛け、初戦を先取した。

 第2ゲームではポルトランがカワウソ軍団で序盤から猛攻を仕掛けて勝利を収め、勝負はタイに。そして両者がサイドボードに移行し、まったく異なる方向性の構築が顔を見せる中で、サイドボード後のプランが試されることとなった。ここでも勝敗の鍵を握ったのはカワウソたちであった。ポルトランは4ターン目までに《嵐追いの才能》を3体展開し、圧倒的な盤面を築いてそのまま押し切った。追い詰められたルードは、第3ゲームでも流れを取り戻せず。ポルトランは《コーリ鋼の短刀》を2体並べる圧力でリードを奪い、「Sanctum of All」のメンバーである彼は、見事準決勝進出を果たした。

容赦ないカワウソたちの猛攻により、ポルトランは#PTFINALFANTASYの準決勝進出を決めた!
http://twitch.tv/magicでのさらなる戦いにご期待ください!

リウ ユーチェン vs. ファン パーシー

 もう一方のブラケットでも、ミラーマッチが繰り広げられていた。3度目のプロツアートップ8を果たした実力者・リウ ユーチェン と、アメリカの地域チャンピオンであるファン パーシーが激突したこの一戦。まずはファンが 《魔道士封じのトカゲ》 を展開して主導権を握り、第1ゲームを先取した。

 

 この《魔道士封じのトカゲ》はここ1か月で赤単アグロに加わった大きな強化要素であり、ファンやクイン・トノーリ/Quinn Tonoleといったチームメンバーによって活躍が広まったカードだ。特に「イゼット果敢」に対して効果を発揮し、今回のプロツアーでは赤単アグロの勝率が60%に達する要因にもなった。しかし、このカードはミラーマッチではあまり強みを発揮しない。リウはその隙をついてゲームを立て直し、第2ゲームを奪取して試合を振り出しに戻した。

 第3ゲームは、《叫ぶ宿敵》 の登場により盤面が硬直状態に。互いの場にはネズミやトカゲが並び、攻撃はするがブロックはほぼ不可能という状況が続く。《心火の英雄》でのチャンプブロックが唯一の防衛手段ともいえる鏡合わせの戦いで、プレイヤーのライフが削られていく中、両者は1本ずつを取り合い、ついに勝負は第5ゲームへと突入した。

 最終戦は、序盤からリウが完全に掌握。《噴出の稲妻》を2発使ってファンの脅威を除去しつつ、自身のクリーチャーで着実にダメージを積み重ねていった。ファンの山札は除去を引き込めず、挽回のチャンスもないままにリウがそのまま準決勝進出を決めた。

 
クリスチャン・ベイカー vs. イアン・ロブ

 最後の準々決勝は、初日を全勝(8-0)で突破したクリスチャン・ベイカーと、連続でトップ8進出を果たしたイアン・ロブによる対戦だった。2日目ではやや失速したベイカーだったが、持ち直して第7シードを確保し、日曜ラウンドの初戦に臨んだ。

 試合はロブが第1ゲームをテンポよく先取。第2ゲームは膠着状態に突入したが、ベイカーは《迷える黒魔道士、ビビ》と《コーリ鋼の短刀》にカウンターを重ね、盤面に強いプレッシャーを構築。一方でマナフラッド気味のロブは唯一場に残った《ドレイクの孵卵者》に望みを託す。しかし、《巨怪の怒り》を含む呪文の連打で、《ドレイクの孵卵者》が《迷える黒魔道士、ビビ》と互角に渡り合えるまでに成長。結果としてその巨大なクリーチャーが盤面最大の脅威となり、ロブが第2ゲームも奪取して2-0のリードを築いた。

 第3ゲームではロブが《コーリ鋼の短刀》の主導権を握る展開に。2ターン目に《削剥》でベイカーの《コーリ鋼の短刀》を除去すると、3ターン目には自身の短刀と《嵐追いの才能》を展開。完全に主導権を握ったロブは、ベイカーが《コーリ鋼の短刀》に応じた返しの動きを見せた隙に、《迷える黒魔道士、ビビ》を追加投入。ベイカーがその伝説のクリーチャーへの解答を引き込めなかったことで形勢は決定的に。ロブが3連勝で勝ち抜けを決め、準決勝に進出。これで準決勝は以下の組み合わせに。

イアン・ロブ vs. トニ・ポルトラン
行弘 賢 vs. リウ ユーチェン

準決勝

行弘 賢 vs. リウ ユーチェン

 準々決勝のミラーマッチとは異なり、行弘とリウの一戦は除去の応酬となり、たびたび盤面はおなじみの《叫ぶ宿敵》による膠着状態へと突入した。第1・第2ゲームは行弘が制し、《叫ぶ宿敵》の咆哮がより大きかった方が勝った形となった。

 これにより、3本先取のこのマッチにおいて、リウにとっては後がない状態に。ここからのすべてのゲームはサイドボード後となるため、クリーチャーの枚数/除去呪文/パンプスペルのバランスが結果を大きく左右する。

 再び盤面に登場したのは行弘側の《叫ぶ宿敵》。それに対し、リウは《雇われ爪》を2体と《熾火心の挑戦者》を展開して迎え撃つ。今回は行弘側に決定打となる除去がなく、ダメージ誘発を無効化するだけの攻撃力を揃えたリウが第3ゲームを獲得、試合を継続させた。

 そして第4ゲームでは、リウが超高速のスタートを切り、あっという間に勝利。2-2のタイに持ち込み、決勝進出をかけた最終ゲームに突入した。

 第5ゲームの立ち上がり、リウはマリガンを選択し、行弘は土地4枚というややリスキーな初手をキープ。両者ターンが経過するにつれてその勢いを取り戻していく。行弘は《心火の英雄》を展開、一方リウは3枚の土地と複数の除去で盤面を整える。そして両者ライフが12点となった中盤、運命を分ける一手が迫っていた──。

 こうして、行弘賢はプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』の最初の決勝進出者となった。

イアン・ロブ vs. トニ・ポルトラン

 もう一方のブロックでは、イアン・ロブとトニ・ポルトランが「イゼット果敢」のミラーマッチで激突。最初の2ゲームで浮き彫りになったのは、両者のメインデッキにおける構築の違いだった。ポルトランは《僧院の速槍》をフル投入していたのに対し、他の3人の果敢使いはこの1マナクリーチャーを完全に不採用。

 一方でロブは、《迷える黒魔道士、ビビ》を4枚、《ドレイクの孵卵者》を3枚という構成で、《僧院の速槍》は未採用。構築チームの中には1マナ圏を最大12枚まで試していたチームもあり、わずかなカード選択の違いが勝敗を分ける可能性があるという事実が浮き彫りとなった。

 実際にこのマッチでもその選択が勝負の鍵を握った。戦闘のコントロールがゲーム展開を左右し、ブロックは《叫ぶ宿敵》や《心火の英雄》のトリガーを引き出す手段となる一方で、《巨怪の怒り》によってブロックそのものが不利な選択肢となる場面も多い。

 この状況の中、第3ゲームではロブが勝利。除去の応酬を制し、最後は《ドレイクの孵卵者》の飛行部隊がゲームを締めくくった。

 この第3ゲームが最終的に勝負を決めるゲームとなり、イアン・ロブが決勝進出を果たした。


 そして残されたのは、行弘賢とイアン・ロブ。両者は、プロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』の決勝戦へと駒を進めた。

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