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プレイヤーズコンベンション愛知2023
スタンダード情報局 in 愛知 -スタンダードオープン-
『イクサラン:失われし洞窟』発売直後から《クイントリウス・カンド》や《地質鑑定士》を使った発見コンボが話題となったこともあり、同セットはパイオニア視点で注目を集めています。1枚で完結するコンボと聞けば誰しもが心躍り惹かれてしまうのは当然でしょう。
しかしながら、スタンダードへの影響も決して小さいものではありません。本日開催されているスタンダードオープンでは、そこかしこで新たなテクニックが披露されています。
本稿では、『イクサラン:失われし洞窟』がスタンダードに与えた影響をみていきます。
環境変化
『イクサラン:失われし洞窟』加入前に中心となっていたのは、アゾリウス兵士やエスパー・ミッドレンジなどの打ち消し呪文を搭載したビートダウンのデッキでした。1~3ターン目にクリーチャーを展開しつつ脅威となるカードを《かき消し》で対処し、早期決着を目指していました。対抗馬は高いボードコントロール能力を全面に押し出した版図ランプやゴルガリミッドレンジといった中~長期を睨んだ戦略でした。
リリース後1週間ではありますが、現在のところクリーチャーをゲームの主軸に据えたビートダウン戦略が優勢です。『イクサラン:失われし洞窟』はデッキの分布を変更するどころかビートダウン戦略のデッキを強烈に後押しし、コントロール戦略をメタゲーム圏外へと追いやってしまっています。
環境を動かしたのは《地底のスクーナー船》、《大洞窟のコウモリ》、《失せろ》、《千番目の月、アニム・パカル》、そして《魂の洞窟》の5枚のカード。いずれもアグロ~ミッドレンジで重宝するカードです。
これらのカードはどういったデッキに採用されているでしょうか。
《地底のスクーナー船》
スタンダードにおける『イクサラン:失われし洞窟』の顔ともいえるカードは《地底のスクーナー船》です。古の《密輸人の回転翼機》と並ぶ2マナの機体であり、ダメージソースとリソースを伸ばす二役を兼ねています。3マナ域のクリーチャーとも渡り合えるスタッツであり、先手後手を問わずダメージレースを牽引する新たなキーマンです。
4 《不穏な投錨地》 4 《金属海の沿岸》 2 《アダーカー荒原》 4 《さびれた浜》 4 《ミレックス》 2 《平地》 2 《島》 1 《皇国の地、永岩城》 1 《天上都市、大田原》 1 《沈んだ城塞》 -土地(25)- 4 《遠眼鏡のセイレーン》 3 《敬虔な新米、デニック》 2 《内なる空の管理人》 4 《ティシャーナの潮縛り》 1 《薄暮軍団の決闘者》 -クリーチャー(14)- |
2 《邪悪を打ち砕く》 4 《忠義の徳目》 4 《婚礼の発表》 3 《放浪皇》 3 《かき消し》 4 《地底のスクーナー船》 1 《新ファイレクシアへの侵攻》 -呪文(21)- |
3 《エルズペスの強打》 2 《ゴバカーンへの侵攻》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《邪悪を打ち砕く》 2 《第三の道のロラン》 1 《加護をもたらす戦乙女》 2 《太陽降下》 2 《否認》 1 《帆凧の窃盗犯》 -サイドボード(15)- |
エスパーやアゾリウス、ディミーアなど青絡みのミッドレンジ戦略における攻撃の主軸として新たに加わりました。攻撃と同時に搭乗したクリーチャーを探検するため、強化もしくは土地を伸ばして高マナ域へのアクセスが可能となります。この探検こそアグロはもとより、3マナ以降の攻め手を厚く取っているミッドレンジでも採用いたる根拠なのです。
《執念の徳目》や《太陽降下》といったソーサリータイミングの除去カードにも耐性がある点も見逃せず、さらにアーティファクトであるため《喉首狙い》ですら対処できません。採用率の高い除去に耐性を持っているため、信頼性の高いクロックです。《地底のスクーナー船》から《婚礼の発表》へと繋ぐ非クリーチャーカード同士による戦線構築は、既存のデッキに強い動きといえるでしょう。
《大洞窟のコウモリ》
《地底のスクーナー船》を紹介したところで、次は《大洞窟のコウモリ》です。一時的な手札破壊効果ではあるものの選択肢に土地以外のタイプ制限はなく、さらに飛行と絆魂とダメージレースに優れた能力が付与されています。
《地底のスクーナー船》とのシナジーはさることながら、青と黒からなるクリーチャーデッキといえば《策謀の予見者、ラフィーン》を持つエスパー・ミッドレンジを忘れてはなりません。
1 《アダーカー荒原》 2 《地底の大河》 2 《金属海の沿岸》 2 《さびれた浜》 4 《砕かれた聖域》 1 《皇国の地、永岩城》 1 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 3 《ラフィーンの塔》 1 《コイロスの洞窟》 2 《英雄の公有地》 4 《闇滑りの岸》 1 《平地》 1 《不穏な投錨地》 -土地(26)- 2 《敬虔な新米、デニック》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 2 《復活したアーテイ》 2 《フェアリーの黒幕》 1 《最深の紀元、オヘル・パクパテク》 4 《大洞窟のコウモリ》 -クリーチャー(15)- |
4 《婚礼の発表》 2 《放浪皇》 2 《かき消し》 2 《切り崩し》 2 《喉首狙い》 4 《忠義の徳目》 1 《失せろ》 2 《地底のスクーナー船》 -呪文(19)- |
3 《軽蔑的な一撃》 1 《危難の道》 1 《放浪皇》 1 《痛烈な一撃》 2 《邪悪を打ち砕く》 1 《切り崩し》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 1 《苦痛ある選定》 2 《強迫》 1 《否認》 -サイドボード(15)- |
《大洞窟のコウモリ》はキークリーチャーである《策謀の予見者、ラフィーン》をはじめとした後続を守りながら、謀議によりダメージレースを有利に立ち回る攻防一体の存在です。《敬虔な新米、デニック》より打点こそ劣るものの検閲による安全確保は何にも代えがたく、《強迫》と違ってクリーチャーであるため妨害と展開を1枚で両立させます。
《千番目の月、アニム・パカル》
招集に頼らない新たなボロスの進路を開拓したのは《千番目の月、アニム・パカル》です。低マナ域に優秀なクリーチャーを持つ白系アグロは序盤こそ優位に立ち回れるものの、《切り崩し》や《火遊び》で捌かれてしまうと途端にダメージが伸びなくなってしまう弱点がありました。中盤以降に頼れるのは《輝かしい聖戦士、エーデリン》のみではやや心許ないと言わざるを得ません。
4 《戦場の鍛冶場》 4 《魂の洞窟》 8 《平地》 2 《皇国の地、永岩城》 2 《英雄の公有地》 2 《ミシュラの鋳造所》 -土地(22)- 4 《輝かしい聖戦士、エーデリン》 4 《有望な信徒》 4 《徴兵士官》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 4 《太陽の執事長、インティ》 4 《千番目の月、アニム・パカル》 2 《勇敢な旅人、ケラン》 3 《内なる空の管理人》 4 《銅纏いの先兵》 1 《離反ダニ、スクレルヴ》 -クリーチャー(34)- |
4 《失せろ》
-呪文(4)- |
3 《婚礼の発表》 2 《選定された平和の番人》 2 《エルズペスの強打》 1 《放浪皇》 2 《邪悪を打ち砕く》 2 《ゴバカーンへの侵攻》 1 《第三の道のロラン》 2 《救出専門家》 -サイドボード(15)- |
《千番目の月、アニム・パカル》は追加の《輝かしい聖戦士、エーデリン》というべきクリーチャーであり、白系アグロに中盤以降の攻め手が増えた形です。攻撃の度に自身に+1/+1カウンターが配置され、同時にノームトークンも増えていきます。除去されない限り1枚でボードを制圧するに十分な打点形成をしてくれます。
また、《魂の洞窟》が再録されたことも白系アグロにとって追い風となりました。クリーチャーベースのデッキは安定したマナベースを手に入れたことで、《千番目の月、アニム・パカル》をはじめとしたシングルシンボルのカードを採用しやすくなっているのです。
《失せろ》
『イクサラン:失われし洞窟』でもっとも汎用性の高い1枚をあげるならば、《失せろ》に違いありません。《邪悪を打ち砕く》と《運命的不在》を掛け合わせたようなデザインであり、クリーチャー、エンチャント、プレインズウォーカーと異なる3タイプを、インスタントタイミングで対処してくれる使い勝手の良い除去呪文です。エスパーやアゾリウスカラーのクリーチャーデッキ、ミッドレンジ、果てはコントロールといった長期戦を睨んだデッキですらも選択肢に上がるほど。
17 《平地》 4 《ミシュラの鋳造所》 2 《皇国の地、永岩城》 -土地(23)- 4 《銅纏いの先兵》 4 《徴兵士官》 4 《有望な信徒》 4 《勇敢な旅人、ケラン》 4 《輝かしい聖戦士、エーデリン》 4 《呪文書売り》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 3 《粗暴な聖戦士》 2 《離反ダニ、スクレルヴ》 -クリーチャー(33)- |
4 《失せろ》
-呪文(4)- |
4 《軍備放棄》 4 《選定された平和の番人》 2 《救出専門家》 4 《婚礼の発表》 1 《粗暴な聖戦士》 -サイドボード(15)- |
万能ともいえる《失せろ》ですが、これだけの効果となればデメリットはつきもの。《運命的不在》が相手に手掛かり・トークンを与えるのに対し、こちらは地図トークンを2つ与えてしまいます。数の上でこそデメリットは大きく感じますが、地図・トークンを起動するには制約があります。クリーチャーがいない限り起動することはかなわず、クリーチャー絶対数の少ないデッキや消耗戦においてはせっかく得たトークンを有効活用できないこともありえます。
《婚礼の発表》や《黙示録、シェオルドレッド》を対処するだけならば《邪悪を打ち砕く》も候補にあがりますが、白や赤の単色アグロ相手には使い道がなく、メインボードに採用するにはややリスキーな選択肢といえます。デメリットである地図・トークンを考慮したとしても、《失せろ》は汎用性の高さは代えがたいカードなのです。
《魂の洞窟》
『イクサラン:失われし洞窟』の最後を飾るのは土地である《魂の洞窟》。かつて『アヴァシンの帰還』に収録されていた土地カードであり、2色以上で構成されたクリーチャーデッキのマナベースを安定させたり、クリーチャーをキーとしたコンボデッキの打ち消し対策として機能して活躍しました。
リリース前こそ《魂の洞窟》の登場により、打ち消し呪文を併用したアゾリウス兵士やエスパーミッドレンジは苦境に立たされる懸念もありましたが、蓋を開けてみるとやや予想と違った結果になっています。これらのデッキが真に打ち消し呪文は《太陽降下》や《告別》などの致命的な非クリーチャー呪文であり、ショートレンジのダメージレースの最中ではクリーチャーの登場など些末な問題に過ぎません。
結果的として、《魂の洞窟》は種族に寄せたデッキのマナベースを強化・安定させ、打ち消し呪文を搭載したクリーチャーデッキも存在していることで、中~長期戦略の立ち位置を悪化させた形になっています。
先のボロス人間は《魂の洞窟》を採用した好例ですが、種族を寄せたデッキにおける色マナサポートこそ現在の主たる役割です。《閑静な中庭》と合わせて5色出る土地カードは8枚となり、ファストランドを持たない敵対色であっても安定した足回りを手に入れています。
今回は『イクサラン:失われし洞窟』加入後のスタンダード環境をご紹介しました。新しい戦略こそ生まれていないものの、既存のデッキがアップデートされています。2マナのカードの活躍が目立っており、特に《地底のスクーナー船》は青絡みのクリーチャー戦略では必須の1枚になっています。
また、版図ランプや赤単アグロ、ゴルガリに代表される黒系ミッドレンジなども依然として残っており、スタンダードは群雄割拠の時代をむかえています。
どのデッキが一歩抜きんでるのか、その答えは本日のスタンダードオープンにて明かされることでしょう。
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