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第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 初日の注目の出来事
2021年10月8日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)
次の世界王者を決めるため3日間に渡って行われる「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」、その初日の火ぶたが切られた。この大会に参加した16人のプレイヤーにとっては、記録として歴史に残ること、そして優勝者自身の顔がカードに用いられることで、マジックにおける不朽の存在となれるチャンスだ。
これはまた、2020-21シーズンにおける競技プレイの到達点でもある。この世界選手権に出場している世界中のプレイヤーのほとんどにとっては挑戦的な期間だった。そしてこの最終地点となるトーナメントの席についた全員が、このシーズン中の様々な逆境を乗り越えてここまで到達したのだ。
この16人のプレイヤーには他にも共通点がある。金曜日には『イニストラード:真夜中の狩り』ドラフトを3回戦とスタンダードを2回戦、それから土曜日にスタンダードをさらに5回戦。「マジック世界選手権」のトップ4に入りプレイオフで優勝の栄冠を手にするためには、その前にこれら10回戦を戦い抜く必要があるのだ。
初日開始時点では、数多くの人々が史上最高のプレイヤーだと考えている前年度優勝者のダモ・ダ・ロサに注目が集まっていた。彼は2020年初頭の「第26回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」をはじめ、今シーズンも引き続いて他を圧倒しており、間違いなく優勝候補の筆頭だった。
しかし集まった他の参加者も最高の選手ばかりだ。殿堂顕彰者から去年のイベントで頭角を現した優勝者までが集まる世界選手権はマジックが提供する最高の競技イベントであり――イニストラードへ戻る旅路から始まる。
ドラフトが世界選手権で復活
世界選手権では、これまでのシーズンで開催された「チャンピオンシップ」や「ガントレット」にはなかったものが取り上げられた。ドラフト、具体的にはMTGアリーナによる『イニストラード:真夜中の狩り』ドラフトだ。リミテッドが最高レベルの競技の場に戻ってきたことは好評で、プレイヤーは世界選手権での勝利がかかったドラフトにのめり込んだ。2つのポッドと3回戦を通して誰がここ一番の勝者となるのかという結果を前に、ファンの間ではこの場で最高のリミテッド・プレイヤーは誰なのかという話題で持ちきりとなった。
『イニストラード:真夜中の狩り』はそれ自体も大きな話題の種となっており、このフォーマットでは青黒が決定的な強さを持つアーキタイプであると見なされている(参考記事:英語)。16人のプレイヤーが2つのポッドで対戦したため、3回戦終了後に3勝0敗の全勝プレイヤーが2人残ることになった。
リミテッドの乱戦が終わり、浮かび上がったのはお馴染みの2名だ。1人目はサム・パーディー/Sam Pardeeで、トーナメント史上でも最も圧倒的な快進撃を続けたプレイヤーの1人だ。彼はこの世界選手権に出場した直前の大型イベント2つで優勝している。1つは「『ストリクスヘイヴン』チャンピオンシップ」で、もう1つの「チャレンジャー・ガントレット」ではトップ12によるプレイオフでトップシード席に座り――マッチを落とすことはなかった。
世界選手権のこの時点では、かの積年の熟練プレイヤーが今年の好調を維持していた――しかし好調を維持していたのは彼だけではなかった。同じくこの世界選手権に参加しているスタニスラフ・ツィフカ/Stanislav Cifkaを含む有名なテストチーム「Czech House」がこのシーズン中優位を保っていたことを考えれば、同チームに所属しているオンドレイ・ストラスキー/Ondřej Stráskýがもう一方のポッドで全勝したことは驚くべきことではない。
そしてこのイベントで有力だと考えられていたのは青黒だったが、パーディーとストラスキーの両名は白黒のデッキで完璧に走り抜けた。
9 《平地》 8 《沼》 -土地(17)- 1 《ガヴォニーの罠師》 3 《聖戦士の奇襲兵》 1 《蝋燭林の魔女》 1 《物騒な群衆》 1 《吸血鬼の侵入者》 1 《復讐に燃えた絞殺者》 1 《思慮深き巾着切り》 1 《堕落した司教、ジェレン》 1 《哀悼の巡回兵》 1 《不審な旅行者》 1 《破滅刃の悪漢》 1 《クラリオン吹きの聖戦士》 1 《ガヴォニーの銀鍛冶師》 1 《税血の徴収者》 1 《戦墓の大群》 -クリーチャー(17)- |
1 《地下室からの這い上がり》 1 《踊り食い》 1 《農家の勇気》 2 《忘却の儀式》 1 《八方塞がり》 -呪文(6)- |
2 《異世界の凝視》 1 《強迫》 1 《炎の供犠》 1 《真髄の針》 2 《新米密教信者》 1 《欲深き逃散者》 1 《グールの行進》 1 《ラムホルトの侵略者》 1 《鳥の称賛者》 1 《血の契約》 2 《岐路の蝋燭案内》 1 《蝋燭明かりの騎兵》 1 《戦墓の再誕》 1 《馬上の戦慄騎士》 1 《不屈の運び屋》 1 《村の見張り番》 -サイドボード(19)- |
9 《平地》 7 《沼》 -土地(16)- 2 《月皇の古参兵》 2 《吸血鬼の侵入者》 1 《野心的な農場労働者》 1 《剛胆な敵対者》 1 《包囲ゾンビ》 1 《物騒な群衆》 3 《セレスタスの奉納者》 1 《先立たれた生存者》 1 《病的な日和見主義者》 2 《ガヴォニーの銀鍛冶師》 1 《決闘策の教練者》 1 《捜索隊の隊長》 1 《魂標グリフ》 -クリーチャー(18)- |
1 《蝋燭罠》 1 《踊り食い》 1 《垣魔女の仮面》 1 《腐敗した再会》 1 《未練残り》 1 《忘却の儀式》 -呪文(6)- |
1 《考慮》 1 《シボウタケの若芽》 1 《食糧庫のゾンビ》 1 《焼印刃》 1 《棘茨の鎧》 1 《継ぎ接ぎ死体》 1 《祭り壊し》 1 《グール呼びの収穫》 1 《偏執的な天文学者》 1 《黄昏の享楽》 1 《鳥の称賛者》 1 《凶兆の血の暴行》 1 《狩りの遠吠え》 1 《酒場のごろつき》 2 《蝋燭明かりの騎兵》 1 《馬上の戦慄騎士》 1 《嵐乗りの精霊》 -サイドボード(18)- |
パーディーはこの3勝0敗のデッキに《堕落した司教、ジェレン》を搭載しており、一方でストラスキーは安定感を目指して自身のボムとともに《セレスタスの奉納者》を3枚採用しているのが特徴だ。
「青が最高の色であることは明らかだったけど、皆がそれを織り込み済みなので青に決めるのは難しいだろうね」とストラスキーは説明した。「満足してるよ。ドラフトは最初に白のスーパーボム(《剛胆な敵対者》)をピックして、それに続いて結構いい白のカードがたくさん取れたのでとても簡単だった。テーブル内のパワーレベルがかなり低かったように思うし、その中で爆弾レア1枚に爆弾アンコモン2枚を取れていた。デッキもとてもよく動いたし、見た目よりももう少し良いデッキだったと思う」
ドラフトではリミテッド好きのパーディーが大きな注目を集め、3勝0敗という走りで今の彼がゲームの全盛期にいることを証明した。
「ドラフトの準備としてはMagic Onlineとアリーナの両方でプレイをして、パウロ(・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ)やいつも助けてくれるマイク・シグリスト/Mike Sigristと意見を交わしている」とパーディーは説明する。「過去のプロツアーを彷彿とさせるようなリミテッド・ミーティングを行い、すべてのカードを比較してランク付けし、さまざまなアーキタイプの良いバージョンとはどのようなものかについて話し合った。自身のプレイ全体とドラフト方法についてはとてもよかったと思う。私がドラフト内容の良し悪しを判断する定番の基準である、取ったカードよりも良いカードを流したと感じることはほぼ無かったからね」
前年度優勝者はどうだったろうか? ダモ・ダ・ロサはタイトル防衛戦を順調に歩み始め、ストラスキーに敗れただけの2勝1敗と手堅い成績だ。
新しいスタンダードのお目見え
『イニストラード:真夜中の狩り』の発売からほんの数週間後、そしてたった16人という参加者で開催される世界選手権では、どのようなデッキが持ち込まれるかを予測することが重要な判断となった。プレイヤーはその数週間をローテーション後のスタンダードのテストに費やしたが、それでもなおデッキリスト提出期限のほんの数日前になってから最新の「白単アグロ」デッキが発見されて参加者たちの注目を集めたりもしたのだ。加えて、『エルドレインの王権』がローテーションすることによってほとんどのトップデッキが消滅したこともあり、混乱も当然の状態になっていた。
その対戦のほとんどは2日目、5回戦すべてがスタンダードでの対戦となる2日目に見られるだろう。初日のスタンダード対戦は2回戦のみだったが、最終的な世界王者を決定する対戦の妙味を垣間見ることができた。
この2回戦は、パーディーとストラスキー、どちらのプレイヤーが無敗のまま生き残るかを争う対決で幕を開けた。彼らはメタゲームの両極端に位置し、パーディーは低マナ域中心の「緑単アグロ」で《エシカの戦車》に頼った構築だ――除去に耐性があり、青いデッキが《アールンドの天啓》を展開する前にゲームを終わらせることも可能なため、このトーナメントに登場する事実上の「最高のデッキ」と言える。
19 《冠雪の森》 4 《不詳の安息地》 -土地(23)- 4 《冬を彫る者》 4 《群れ率いの人狼》 2 《絡みつく花面晶体》 4 《カザンドゥのマンモス》 4 《老樹林のトロール》 1 《原初の敵対者》 -クリーチャー(19)- |
4 《吹雪の乱闘》 1 《蛇皮のヴェール》 4 《レンジャー・クラス》 3 《豊穣の碑文》 4 《エシカの戦車》 2 《レンと七番》 -呪文(18)- |
2 《タジュールの荒廃刃》 2 《辺境地の罠外し》 3 《フロギーモス》 1 《トヴォラーの猟匠》 3 《蛇皮のヴェール》 1 《貪る触手》 1 《豊穣の碑文》 1 《武器を選択せよ》 1 《レンと七番》 -サイドボード(15)- |
しかし結局は《アールンドの天啓》がものを言った。多くの予言者が今週末にブレイクするデッキは「グリクシス天啓」だと目していたが、ストラスキーはよりまっすぐな「イゼット天啓」を良しとしていた。そしてパーディーの「緑単アグロ」との対戦では、《アールンドの天啓》が現時点のスタンダードを定義づけるカードである理由を示したのだ。
「私たちは最高のデッキを握っている」とストラスキーは冷静に語る。「このメタゲームの状態は判断通りだね」
7 《山》 5 《島》 3 《凍沸の交錯》 4 《河川滑りの小道》 2 《廃墟の地》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 -土地(23)- -クリーチャー(0)- |
3 《消えゆく希望》 1 《棘平原の危険》 4 《感電の反復》 3 《表現の反復》 3 《ジュワー島の撹乱》 2 《才能の試験》 4 《ゼロ除算》 2 《悪魔の稲妻》 2 《髑髏砕きの一撃》 4 《予想外の授かり物》 2 《記憶の氾濫》 3 《家の焼き払い》 4 《アールンドの天啓》 -呪文(37)- |
3 《くすぶる卵》 2 《心悪しき隠遁者》 2 《黄金架のドラゴン》 1 《棘平原の危険》 3 《バーニング・ハンズ》 1 《環境科学》 1 《才能の試験》 1 《アルカイックの教え》 1 《マスコット展示会》 -サイドボード(15)- |
ストラスキーにとっての最大の難問は、メタゲームを予測することではなく、それを実践することのほうだった。
「私たちのデッキはプレイが難しく、今週の始めは食中毒で練習時間を失ったこともあり、そのあたりが少し心配ではある」と彼は残念がっていた。「だけどツキもあるみたいだ――5勝できるとは思ってなかったよ」
しかしこの日の最後にマット・スパーリング/Matt Sperlingの「グリクシス天啓」に決定的となる勝利を収めたことで、ストラスキーはそれをまさにやり遂げたのだ。彼は5勝0敗で単独トップに立ち、土曜日のトップ4進出に最も近い位置に付けた。
彼のすぐ後ろには、すでに見た2名の名前がある。パーディーとダモ・ダ・ロサだ。セス・マンフィールド/Seth Manfieldやガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifといった殿堂顕彰者が初日の大荒れの結果に苦しむ中、前年度優勝者は序盤でストラスキーに敗れてからすぐに立て直し、パーディーと同様「緑単アグロ」で4勝1敗とした。
「スタンダードについては悪くないんじゃないかな」とパーディーは話す。「パウロと私は『イゼット』と『緑単』が打倒すべき重要なデッキになると判断し、それらを倒すためにさまざまなものをぶつけてみた。結局のところその手段を見つけることができなかったので、代わりにイゼットに対して多少よさそうに思えた『緑単』をプレイすることにしたんだ。それ自体はよかったと思うが、あいにく4人が持ち込んでいる『グリクシス天啓』は私たちにとって厳しい対戦になりそうだ」
そのグリクシス・デッキは、リストが公開されたのちにこのトーナメント界隈で話題となった。ストラスキーはこのデッキとの対戦は問題ないと感じているようだが、土曜日を「緑単」で戦うプレイヤーにとっては最大のハードルになると予想される。このデッキが成功した理由の1つは、スパーリングとイーライ・カシス/Eli Kassisによって《セレスタス》がデッキに加えられたことだ。その彼らは3勝2敗で上位陣のすぐ後ろに身を潜めている。
3勝2敗という成績は上位陣に追いつく余地を十分に残しているが、スパーリングはそれが困難な道のりであることを知っている。
「スタンダードは大丈夫だと思っているが、ペアリング次第なところもある」と彼は言う。「ほかのイゼット・デッキにはやや弱いかもしれないが、アグロに対してはやや強い。したがってイゼット・デッキを倒すにはアグロを頼りたいし、思い通りに勝ち進むにもアグロと当たる必要がある。しかしアグロ・デッキも危険な存在であることに変わりはないので、このスタンダード・フォーマットではすべての対戦で良いドローと良いプレイを求められる」
2日目を待つ
「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」のトップ4が決定するまで、スタンダード5回戦を残すのみとなった。金曜日の終了時点で半数のプレイヤーが4位タイとなっているため、 twitch.tv/magic で9時(PST、日本時間25時)から始まるライブ中継で対戦が再開されれば、どんなことも起こりうるだろう!
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa)
「第27回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」日本語版放送ページ・放送日程
日本語版放送出演者
- 実況:石川朋彦(@katuobusi717) 担当:DAY1、DAY3
- 実況:ブルナー実久(@mksnake007) 担当:DAY2、DAY3
- 実況:海老江邦敬(@kuroebi_games) 担当:DAY1、DAY2
- 解説:八十岡翔太(@yaya3_) 担当:DAY1、DAY2、DAY3
- 解説:行弘賢(@death_snow) 担当:DAY2、DAY3
- 解説:原根健太(@jspd_) 担当:DAY1
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