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マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2015
第14回戦: Samuel Black(アメリカ) vs. Owen Turtenwald(アメリカ)
Adam Styborski / Tr. Tetsuya Yabuki
2015年8月28日
サミュエル・ブラック/Samuel Black(世界ランキング8位/白単信心)vs. オーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwald(世界ランキング10位/アブザン・コントロール)(スタンダード)
世界選手権2015も予選ラウンド最終戦を迎え、プレイヤーたちは焦燥の中戦いに身を投じていった。この時点で、今大会最高成績を誇る世界ランキング4位のセス・マンフィールド/Seth Manfieldが、2日間で1敗という圧倒的なパフォーマンスで会場を支配している。それはつまり、5敗で予選ラウンドを終えるプレイヤーの数が多いということであり、彼らは残り3つのトップ4の座をかけて熾烈な争いを行うことになるのだ。
世界ランキング8位のサミュエル・ブラックと同10位のオーウェン・ターテンワルドは、プロツアーやその他のプレミア・イベントにおいて同じような成績を出し続けてきた。そして今、両者とも世界選手権王者のタイトル獲得に意欲を燃やしている。ターテンワルドとしては、ここで何としても勝利を掴みたい。そうすれば、9勝5敗同士のオポネント勝負に巻き込まれずに済むのだ。もしオポネント勝負になっても、恐らく彼はオポネント最上位で抜けられるだろう。それでも、細かい計算に身を任せるよりは、ここで勝って文句なしに確定させる方が良いはずだ。
ブラックとしては、ここで勝てば9勝5敗のラインに滑り込める。他のすべての試合の結果によっては、自身初の世界選手権トップ4入賞の可能性があるのだ。もちろん、その様子を外から見ることになる可能性もあるのだが。
それぞれのデッキ
「アブザン・コントロール」は今大会最大の勝ち組となった。マンフィールドの圧勝はもちろん、ターテンワルドもスタンダード・ラウンドでそれに負けない見事な成績を収めた。《アブザンの魔除け》や《究極の価格》、《対立の終結》、《命運の核心》といった除去をふんだんに用いて対戦相手のクリーチャーを徹底的に破壊し、それから自身の《包囲サイ》や《太陽の勇者、エルズペス》で止めを刺すデッキだ。
一方ブラックのデッキは、他のどのプレイヤーともまったく異なるものだった。《平地》と《ニクスの祭殿、ニクソス》のみで大型の脅威も小型の脅威も繰り出す彼のデッキは、ふたつの方針をひとつにまとめたような形だ。《万神殿の兵士》や《アクロスの英雄、キテオン》が第1ターンから戦線を開きつつも、《オレスコスの王、ブリマーズ》、《徴税の大天使》、そして《風番いのロック》までマナ域は広がっていく。《見えざるものの熟達》は、『運命再編』期のスタンダードに全盛を極めた「緑白信心」で大活躍した妙案だ。今回のブラックのデッキでも、コントロール・デッキを倒すために欠かせない1枚となっている。
除去を上回るクリーチャーの展開。それが古き良き「信心」デッキがコントロールを打ち破るすべとなるだろう。
ゲーム展開
第1ゲームは1対1交換の応酬となった。2ターン目に《族樹の精霊、アナフェンザ》が《究極の価格》を受けると、ブラックとターテンワルドはクリーチャー対除去の一進一退の攻防を繰り広げる。ブラックの戦場に《オレスコスの王、ブリマーズ》が続くが、それはターテンワルドの《アブザンの魔除け》で追放された。ブラックの次なる一手は《アクロスの英雄、キテオン》で、3マナ残して除去から守る構えもできた。さらにそのすぐ後には、《万神殿の兵士》も続く。
ここでブラックがダメージを通し始めた。
ターテンワルドは攻撃を受けてライフを11点まで落としながらも、《思考囲い》でブラックの手札から《勇敢な姿勢》を捨てさせた。さらに《クルフィックスの狩猟者》を盤面に加えると、ターテンワルドが有利を固めたように見えた。
土地をプレイするたびにライフを得るターテンワルドは、さらにライブラリーの一番上に《包囲サイ》を見つけた。ここからターテンワルドの反撃だ。《包囲サイ》が戦場に降り立ち、続けて2枚目の《クルフィックスの狩猟者》が盤面に加わる。その後もターテンワルドの除去は続き、一方のブラックは必要とする脅威を引き込めず土地にまみれた。
「呪文は引けてたんだけどね。さっきのゲームを押し切るには全然足りないか」ブラックがデッキをシャッフルしながら言った。「1枚か2枚クリーチャーを引いたところで、押し潰されるもんね」
2ゲーム目、ブラックはマリガンを喫し、1ターン目にクリーチャーを展開できなかった。《白蘭の騎士》はただの2/2として戦場に出たが、それからより凶悪な《見えざるものの熟達》が続いた。次々とクリーチャーを展開していくことで、ブラックはターテンワルドの除去やその他の解答をものともせず突き進む。
ターテンワルドが最初に繰り出した脅威は《包囲サイ》で、彼は失ったライフを少し取り戻した。だがブラックは《払拭の光》で道を開けて攻撃を続け、さらに《万神殿の兵士》を追加して次のターンにも攻撃を決める意思を見せた。
そのプランは《命運の核心》が止めたが、その際にブラックは「予示」していた《搭載歩行機械》を0マナで表にし、ライフを2点回復した。
「その動きかっこいいな」と、ターテンワルドが声を漏らすと、ブラックは笑顔で返す。「君も知ってるでしょ」
続くターン、ブラックは《見えざるものの熟達》の起動型能力を使い、さらに《風番いのロック》を繰り出したが、2羽のロック鳥は《勇敢な姿勢》と《究極の価格》で対処された。だがブラックは迎えたターンに再び《風番いのロック》を送り出す。ターテンワルドはしばし選択肢を吟味し、ライブラリーの一番上を引き込んだ。
「君の勝ちだ」と、ターテンワルドは結論を出した。
3ゲーム目にしてついに、ブラックは1ターン目に《万神殿の兵士》を繰り出し、さっそく攻撃を始めた。そこへ《見えざるものの熟達》も加わり、ブラックの必勝の流れができた。
一方ターテンワルドは、占術を何度も行ったすえに《アブザンの魔除け》でライブラリーを掘り進めても、4枚目の土地を4ターン目に置けなかった。ブラックの盤面には《徴税の大天使》が加わり、ターテンワルドは手に入れた4枚目の土地、《吹きさらしの荒野》で残りライフを11点まで落とした。《勇敢な姿勢》と《ドロモカの命令》で《徴税の大天使》と《見えざるものの熟達》の対処に成功したターテンワルドだが、ブラックの動きは止まらず、X=2で《搭載歩行機械》を繰り出した。
残りライフ9点となったターテンワルドは5枚目の土地も引き込めず、ターンを渡した。彼はブラックの攻撃に対して《英雄の破滅》を差し向け、《搭載歩行機械》を除去しにかかる。ブラックは《勇敢な姿勢》でそれを守ろうとしたが、そこへ《残忍な切断》が重ねられた。続く《衰滅》で盤面を流したターテンワルド。だがブラックの次なる切り札は《太陽の勇者、エルズペス》だった。
ターテンワルドは残りライフ5点にしながらも、《アブザンの魔除け》でもう2枚のカードを引く。その5点もブラックの攻撃で残り2点となり、ブラックはさらに《風番いのロック》を追加した。再びの《衰滅》が一時的に盤面を流したが、《太陽の勇者、エルズペス》は兵士トークンを生み出し続ける。だがターテンワルドは《対立の終結》でもう1ターン稼ぎ、ブラックのターンの終わりに《胆汁病》で兵士トークンを一掃すると、ついに《英雄の破滅》で《太陽の勇者、エルズペス》を退場させた。
流れは、ターテンワルドの側に向き始めたようだった。
ブラックは一度ターンを渡したのちに、《徴税の大天使》を展開。ターテンワルドはそれを《アブザンの魔除け》で追放し、《包囲サイ》で5点までライフを回復した。だがブラックの手札から《勇敢な姿勢》が撃ち込まれ、彼はさらにこのゲーム3枚目の《風番いのロック》を繰り出した。ターテンワルドの2枚目の《包囲サイ》は《異端の輝き》を受け、ブラックの盤面に再びX=2の《搭載歩行機械》が置かれた。
ゲームの流れは大きく揺れ動いていた。
《棲み家の防御者》の「大変異」により、ターテンワルドは墓地の《アブザンの魔除け》を拾い、《風番いのロック》を追放した。それから、ブラックの《搭載歩行機械》をブロックせざるを得なかった。そこから両者は、互いにカードをプレイすることなくターンを渡した。これでブラックの飛行機械・トークンがターテンワルドのライフを3点まで削り取ったが、ターテンワルドは《クルフィックスの狩猟者》と土地で4点へ回復した。
そのターンの終わりに、ブラックは《領事の鋳造所》を起動し、4体の飛行機械・トークンで攻撃。何度も阻まれてきた攻撃はついに、それを阻む除去を失ったターテンワルドに届いたのだった。
「グッド・ゲーム」ターテンワルドは右手を伸ばして言った。こうしてブラックのトップ4入賞への夢は、オポネントの計算と運命に委ねられることになった。
ブラック 2−1 ターテンワルド
21 《平地》 3 《ニクスの祭殿、ニクソス》 1 《領事の鋳造所》 -土地(25)- 4 《万神殿の兵士》 2 《アクロスの英雄、キテオン》 4 《白蘭の騎士》 3 《搭載歩行機械》 1 《族樹の精霊、アナフェンザ》 3 《オレスコスの王、ブリマーズ》 4 《徴税の大天使》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(25)- |
4 《見えざるものの熟達》 3 《勇敢な姿勢》 3 《払拭の光》 -呪文(10)- |
3 《天界のほとばしり》 2 《異端の輝き》 2 《正義のうねり》 1 《存在の破棄》 1 《勇敢な姿勢》 1 《払拭の光》 1 《アラシンの上級歩哨》 2 《悲劇的な傲慢》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
4 《森》 4 《砂草原の城塞》 4 《疾病の神殿》 4 《静寂の神殿》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《コイロスの洞窟》 1 《ラノワールの荒原》 1 《平地》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(26)- 4 《棲み家の防御者》 4 《クルフィックスの狩猟者》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 4 《包囲サイ》 1 《龍王ドロモカ》 -クリーチャー(15)- |
4 《思考囲い》 2 《胆汁病》 1 《究極の価格》 4 《アブザンの魔除け》 3 《英雄の破滅》 2 《衰滅》 1 《残忍な切断》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 -呪文(19)- |
1 《強迫》 2 《アラシンの僧侶》 2 《ドロモカの命令》 2 《勇敢な姿勢》 1 《究極の価格》 2 《骨読み》 1 《悲哀まみれ》 2 《対立の終結》 1 《宮殿の包囲》 1 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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