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マジック・スポットライト:FINAL FANTASY

観戦記事

第15回戦:平林 和哉(東京) vs. 岩崎 悠大(静岡) ~古豪の激突~

Hiroshi Okubo


 平林 和哉(東京)の名を知らないプレイヤーも多いかもしれない。それも無理からぬことで、古参の中の古参とも言える平林が最も精力的に活動していたのは今から20年近く前のこと。今でもリミテッドで行われる大型イベントの会場などで見かけることはあるが、すでに競技シーンからは実質的に引退しているかと思われていた。

 そんな平林が、この『マジック・スポットライト:FINAL FANTASY』の第15回戦の舞台に臨む。これまでの戦績は12勝2敗──ここを勝てばトップ8進出が確定するという場面だ。かつてその卓越したデッキ調整能力と冷静なプレイングで日本のプロシーンを牽引してきたその実力は健在といったところか。

 そんな平林に相対する岩崎 悠大(静岡)もまた、普段は晴れる屋静岡店でその爪を研いでいる猛者だ。彼もマジック歴は長く、『時のらせん』ブロックのころから本格的にマジックを始めたほぼ20年選手。

 静岡の強豪プレイヤーとして知られる石田 龍太郎とも親交が深く、岩崎自身も過去に日本選手権2020でベスト4に入っているなど、その実力は証明済みだ。今大会でトップ8に進出することで、その経歴に新たな金星を刻むことができるか。

 平林「落ちたら振り直しで……あ、片方だけ落ちた」

 先手後手を決めるダイスロールは、この試合の行く末を顕すかのように、2つのダイスのうち片方だけがテーブルからこぼれ落ちた。

 運命に選ばれるのは、ただ一方だけ。トップ8進出とそれに伴うプロツアー権利の獲得、それを果たすことができるのは果たしてどちらになるのか?

平林 和哉(東京) vs. 岩崎 悠大(静岡)

 

ゲーム1

 先攻の平林が《嵐追いの才能》と、2枚の《選択》で滑り出す。対する岩崎は《大洞窟のコウモリ》を戦場に送り出し、平林の手札——《洪水の大口へ》、《食糧補充》、《選択》、《巨怪の怒り》、《》——の中から、《食糧補充》を抜き去る。

 

 互いに前哨戦を終え、平林は3枚目となる《選択》で手札をさらに整えつつ果敢によってパワーが上がったカワウソトークンで攻撃する。対する岩崎もまた、《大洞窟のコウモリ》で反撃しつつ絆魂でライフを回復し、《分派の説教者》をプレイする。

 

 一進一退かと思われた序盤戦は、平林が岩崎のエンドステップに唱えた《この町は狭すぎる》によって大きく動き出す。平林は岩崎の《大洞窟のコウモリ》と自身の《嵐追いの才能》をバウンスし、返すターンには《コーリ鋼の短刀》をプレイすると続いて《洪水の大口へ》で《分派の説教者》をバウンスしながらモンクトークンを生成。展開を進めつつ、クロックを刻んでいく。

 

 ならばと岩崎は先ほど手札に戻されてしまった《大洞窟のコウモリ》を再度キャスト。平林の手札が《巨怪の怒り》、《嵐追いの才能》、《食糧補充》の3枚であることを把握すると、その中から再び《食糧補充》を追放する。

 ならばと平林はトップデッキした《迷える黒魔道士、ビビ》をプレイ。さらにそのまま《嵐追いの才能》を唱え、《迷える黒魔道士、ビビ》と《コーリ鋼の短刀》の能力の誘発を宣言。

 

 即座にゲームを終わらせるだけの破壊力を備えた《迷える黒魔道士、ビビ》に対し、岩崎はその誘発型能力にスタックして《喉首狙い》を放つが、《コーリ鋼の短刀》の能力はそのまま解決され、2体のモンクトークンとカワウソトークンによる連続攻撃で、岩崎のライフは4点まで削り取られる。

 岩崎は防戦一方を強いられつつ、防ぎ切るにはブロッカーや除去が足りない。手数の差がそのままライフ差として現れているが、できることをやろうとばかりに《分派の説教者》をプレイする。

 

 そんな岩崎に対し、平林はトップデッキを見て苦笑を浮かべる。プレイしたのは2枚目の《コーリ鋼の短刀》──これまでに《大洞窟のコウモリ》によって、平林の残された手札1枚が《巨怪の怒り》であることは既知。つまり、このターンで決着だ。

 岩崎「イゼットにはこうやって負けるんですよっていう、お手本みたいなマッチだった」

 《コーリ鋼の短刀》から供給されるトークンによる雨のような攻撃、そして《洪水の大口へ》や《この町は狭すぎる》によるテンポの掌握。岩崎はそれらを振り返りながら、第1ゲームの敗北を認めた。

平林 1-0 岩崎

ゲーム2

 先攻を取った岩崎は7枚の初期手札を即決でキープすると、《遠眼鏡のセイレーン》から動き出す。

 続いて放たれた《強迫》によって、平林の手札──《塔の点火》《食糧補充》《洪水の大口へ》《迷える黒魔道士、ビビ》《ドレイクの孵卵者》2枚、《》──が暴かれ、《塔の点火》が墓地へと送られる。地図トークンの探検によって土地を手札に加え、岩崎が着実に平林の攻め手を削ぎつつアドバンテージを稼ぐ。

 

 対する平林は構わず《ドレイクの孵卵者》を展開。しかし岩崎はさらに2枚目の《強迫》で《食糧補充》を捨てさせると、《切り崩し》で《ドレイクの孵卵者》を処理。まさに平林の出鼻をくじくような立ち上がりを見せる。

 それでも平林もまた2枚目の《ドレイクの孵卵者》をプレイして応戦。だが、ここまでの妨害の連打によって、岩崎は十分に時間を稼ぐことができていた。プレイしたのは《ゴミあさりの執政》。

 

 テキスト確認を求めた平林にカードを差し出しながら「タダでバウンスされたくなくてプレイって感じです」と言葉を添える。岩崎は、今大会でイゼット果敢を意識してこのカードをメインデッキから1枚投入していたと語る。対策カードというだけあって、その護法能力と4/4飛行というサイズはどちらもイゼット果敢によく刺さる。この後、岩崎はこの《ゴミあさりの執政》を盾にしつつ《遠眼鏡のセイレーン》でチクチクとライフを削っていく算段だ。

 

 ならばと平林もギアを上げ、《迷える黒魔道士、ビビ》をプレイ。対処をしなければ即座にゲームに負けてしまってもおかしくないフィニッシャーの登場だが、岩崎は《迷える黒魔道士、ビビ》に対する除去を引くことができず、やむなしに《分派の説教者》と《遠眼鏡のセイレーン》をブロッカーとして並べた。

 その返し、平林は《コーリ鋼の短刀》を設置すると、《迷える黒魔道士、ビビ》の能力で得たマナを用いて、《双つ口の嵐孵り》の「前兆」能力で《分派の説教者》を除去して戦況をコントロールする。

 

 とはいえ、《ゴミあさりの執政》が睨みを利かせる盤面では、動きが制限される。平林は3/5に成長した《ドレイクの孵卵者》で攻撃を仕掛けるが、これは《遠眼鏡のセイレーン》によるチャンプブロックで受け止められてしまう。

 

 なかなかライフを攻めることができない平林に対し、岩崎はリードを広げんとばかりに続くターンに《遠眼鏡のセイレーン》を《悪夢滅ぼし、魁渡》に「忍術」。0能力を起動して手札を整えたあと、さらに先ほど手札に戻した《遠眼鏡のセイレーン》をプレイし、地図トークンによる探検で《ゴミあさりの執政》をより安全なサイズ──5/5にまで強化される。

 プレインズウォーカーの着地によりプレッシャーが高まっていく中、平林はモンクトークンと《迷える黒魔道士、ビビ》、《ドレイクの孵卵者》を動員して《悪夢滅ぼし、魁渡》を攻撃。これに対し岩崎は、《遠眼鏡のセイレーン》で《迷える黒魔道士、ビビ》を、《ゴミあさりの執政》で《ドレイクの孵卵者》をブロックする。

 

 ならばと平林は、護法コストとして手札を捨て、《削剥》と《ドレイクの孵卵者》のダメージの合わせ技で《ゴミあさりの執政》を討ち取る。1対3交換というあまりにも手痛い交換となったが、それでも《迷える黒魔道士、ビビ》さえ盤面に残されていればこの先のドローで挽回は可能だ。

 もちろん岩崎も《迷える黒魔道士、ビビ》次第でいくらでも敗北の目が残されていることは承知している。《悪夢滅ぼし、魁渡》の能力でカードを引き、《遠眼鏡のセイレーン》を追加して探検も合わせて《迷える黒魔道士、ビビ》を処理するカードを探す。

 

 そして平林の戦闘開始ステップ、《フラッドピットの溺れさせ》を瞬速でプレイして《迷える黒魔道士、ビビ》の動きを止める。だが、平林は構わず《コーリ鋼の短刀》を装備したモンクトークンで《悪夢滅ぼし、魁渡》を攻撃し、これを戦場から退けたうえで、《塔の点火》で《フラッドピットの溺れさせ》も除去する。

 

 《迷える黒魔道士、ビビ》を除去できたかもしれなかった《フラッドピットの溺れさせ》が除去されてしまったのは岩崎にとって大きな痛手だ。
返しのターンに《大洞窟のコウモリ》と《分派の説教者》を並べて応戦を図るが、根本的な解決にはならない。

 平林は《迷える黒魔道士、ビビ》の能力で5マナを得ると、1マナを浮かせながら《轟く機知、ラル》をプレイ。その-3能力で手札を補充し、《この町は狭すぎる》を唱えて、《轟く機知、ラル》と《分派の説教者》の両方を手札に戻しながら、《コーリ鋼の短刀》の能力を解決する。

 

 これには岩崎も深いため息を吐き、平林は2体のモンクトークンで攻撃。互いのライフはすでに7点を下回り、次ターンにも勝敗が決してもおかしくない状況だ。

 岩崎は《大洞窟のコウモリ》で攻撃を行ってライフを得ると、再び《分派の説教者》を展開。しかし、これが岩崎の最後の一手となった。

 ターンが返ると、平林はアンタップ状態となった《迷える黒魔道士、ビビ》に《コーリ鋼の短刀》を装備。そのまま攻撃を仕掛けると、岩崎にはそれを止める手段は残されていなかった。

平林 2-0 岩崎

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