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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2025

インタビュー

優勝者インタビュー:等身大の主人公 矢田 和樹

伊藤 敦

 

 決勝戦3ゲーム目、残りライフ2点まで追い詰められてからの大逆転。

 素晴らしいドラマを見せてくれたマジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2025王者、矢田 和樹。今大会の優勝者に、早速インタビューをお願いした。


 

――「まずは優勝おめでとうございます」

矢田「ありがとうございます」

――「今回の大会に向けては、どのような準備をされましたか?」

矢田「基本的に情報がないフォーマットなので、配信者とかXの4-0報告の画像を確認しながら、情報を集めていきました」

――「他のデッキと比べて、『ワンショットティファ』という選択にはどういった優位性があったと判断されたんでしょうか?」

 

矢田「《ラノワールのエルフ》というカードが先手後手をまくりやすいカードで、他のデッキが後手をまくり返しにくい中、マナ加速で先手後手をひっくり返せるところが魅力でした」

――「このデッキ、結構リスト細部のバランスをとるのが難しいデッキの印象なのですが、たとえば《冒険者の装具》3枚など、どういった調整をされたんでしょうか?」

矢田「もとにしたリストがトップ4の小原くんが配信で4-0していたもので、話し合った結果です。お互い細部は統一しませんでしたが……あとは今回トップ64の段階でリストが公開されていたのを見て、そこでメタゲーム分布とか他の良いリストないかなと見たりして、決勝大会に臨むにあたっては大きく構成を変えました」

――「どういった部分を変えたんでしょうか?」

 

矢田サイドに《カビのマムシが入ってるんですけど、二次予選では入れてなくて。ただメタゲーム上に青単と、あとは意外と黒単が多かったので採用しました。非常に活躍したので良かったです」

――「では、小原さんとの合作という形になるんでしょうか?」

矢田「正確には、高橋 優太さんや平山 怜さん、斎藤 慎也さんや加茂 里樹さんなども所属する、MSDというコミュニティで相談していて、そこでの合作かなと」

――「見事優勝されましたが、今のお気持ちはいかがでしょうか」

矢田「自分はタイトルがない部分を結構気にしていて、たまにトップ8とか入るんですけどなかなか1没することが多くて。友人たちもタイトルとか持ってる人も多く、羨ましい、悔しい部分もあったので、こういうところで取れて本当に嬉しいです」

――「今回のように少しマニアックな環境でアドリブで勝つコツって何かあるんでしょうか?」

矢田「逆に情報が少ないからこそ、積極的に発信してる方もいらっしゃるので、そういった方を見つけて、少ない情報をかき集めるのが大事だと思います。スタンダードとかは情報がめちゃくちゃ転がってるので取捨選択が大変ですが、今回みたいに少ないと全部集めることもできなくはないので」

――「矢田さんはいつ、どういったきっかけでマジックを始められたのでしょうか?」

矢田「始めたきっかけは、『ラヴニカへの回帰』のときにテーブルゲームのサークルで先輩からドラフトやらないかと誘われて、しばらく混ぜてもらってて、気づけばがっつり入った形です。ドラフトやってるとレアも集まるので、少し買い足してフライデーナイトマジックとかも出てみようと構築にも手を出してみた感じですね」

――「競技を志したきっかけなどはありますか?」

矢田「うろ覚えなんですが、当時ニコ生か何かでプロツアーで日本人選手が活躍していたのを見たんですよね。そのあたりで興味を持って、『テーロス』のときに青単信心とか黒単信心とかで具体的にプロってすげーとなってのめり込んでいきました」

――「今回の『マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY』のカードに関して、思い入れがあるカードなどはあったりしますか?」

矢田「ゲームをやったことがあるのがⅦと、Ⅵがまだ途中というくらいなので知ってるキャラクターが少ないですが、Ⅶのものだけ見てもフレーバーとかデザイン面でかなり出来が良く、能力がかなり再現されていて、やっていて面白いです」

――「今後の目標などはありますか?」

矢田「前回のプロツアー『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』に出場はしたんですけどあまり勝てなくて、現状プロシーンの権利が全くない状態なので、アリーナCSやプロツアー復帰目指して頑張っていきたいですね」

――「最後に、何か伝えたいことなどありますでしょうか」

矢田「BIGMAGICさんからのスポンサーを受けているので、大きな感謝を。あと一緒によくマジックしてくれるMSDのメンバーに感謝したいと思います」

――「ありがとうございました」


 

 矢田に関しては、「英雄」とか「カリスマ」といった王道の物語の主人公にありがちなステータスからは無縁の、ごく普通の親しみやすいプレイヤーというのが浅い印象だった。

 だが、10年競技シーンを追い続けられるというのは、その間に優勝という一番満足のいく結果を得られなかったならばなおさら、心の内に秘めた熱量がなくてはとても成り立たないだろうと思うのだ。

 どこにでもいそうな等身大の人間に見えて、実は誰にも譲れない熱いものを秘めている。そんな主人公の物語だからこそ、むしろ人は応援したくなるというものではないだろうか。

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