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マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン2025

観戦記事

第6回戦:成田 崇 vs. 高尾 翔太 ~召喚:デッキビルダー~

伊藤 敦

 

 ジャパンオープン2025、決勝大会もいよいよ6回戦という佳境に突入した。

 トップ8進出をかけた一戦がMTGアリーナ上のそこかしこで行われる中、その一つとして配信卓に選ばれたのが成田 崇高尾 翔太との対決。そしてこのマッチアップが偶然にも、放送に相応しいハイレベルな文脈を持っていた。

 成田のデッキは「青単テンポ」。だが一般的なリストに採用されている《「占星術師」の天球儀》が入っておらず、飛行トークンの横並び戦略に特化した独自の形。《フェイ花のいたずら》に加え、紋章旗までもが搭載されているのが特徴的だ。

 一方、デッキビルダーとして知られ、競技シーンでも数多くの実績を持つ高尾は「召喚ユウナ」を駆っている。だがその内実は「召喚ユウナ」というアーキタイプの中でも一際珍しい青緑ベースの形。しかもタップイン土地の枚数が少なく抑えられており、そのために当然フル搭載の《始まりの町》に加えて採用された4枚の《閑静な中庭を、《ラノワールのエルフ》用の1ターン目の緑マナと《スピラの希望、ユウナ》のタッチの白マナ用に(クリーチャータイプが異なるので展開次第で)兼用させるという革新的なマナベースを実現。これにより単色デッキと渡り合うための速度と安定性を両立させた構築は、いかにも競技プレイヤーらしい細部へのこだわりを感じさせる。

 そう、この2セットしかない狭いカードプールの中でどちらも強力なベースがあるアーキタイプを使用しながらも、細部において名刺代わりのチューンをしっかりと施した者同士のデッキビルダー対決がここに実現したのだ。

 成田が4勝1敗でここで勝てば確実にトップ8なのに対し、高尾は3勝2敗の上当たりなので勝ってわずかな可能性にかけるしかないという事情はあるものの、どちらも全力で勝利を掴み取るしかない。スイスラウンドのファイナル(最終戦)、はたして上を行くのはどちらのデッキビルダーのファンタジー(想像力)か。

ゲーム 1

 先攻の成田が2ターン目悪戯な神秘家から3ターン目に《選択》でフェアリー・トークンを生成する好調な立ち上がりなのに対し、後攻ワンマリガンの高尾は初動の上げ潮、キオーラで2枚目の《召喚:リヴァイアサン》を墓地に送り込む。だが返すターンに成田がマナを構えてターンを返すと、高尾もセットランドのみでアクションがなく、成田の魂石の聖域がクリーチャー化するのをフリーで許してしまう。

 とはいえ成田も、手札が土地ばかりでそれ以上のクロックは作れず、高尾の隙になかなか付け込めない。《上げ潮、キオーラ》との相打ちを嫌って地上は攻撃せず、飛行3点アタックで残りライフ12点まで詰めるものの、ついに5マナに到達した高尾がスピラの希望、ユウナを送り出したのに対しては、第2メイン終了時の送還でどうにかお茶を濁す。それでも返すターンにフルアタックし、《魂石の聖域》が《上げ潮、キオーラ》にブロックされたところに魔法無効化「シェル」》を合わせ、高尾を残りライフ9点まで追い詰める。

 しかし高尾が再び《スピラの希望、ユウナ》を送り出すと今度は成田も妨害できず、ついに墓地から召喚:リヴァイアサン》が降臨する!

 

 荒れ狂う大津波が高尾の《スピラの希望、ユウナ》もろとも、成田の《悪戯な神秘家》とフェアリー・トークンとをまとめて手札へと洗い流す。だがなぜかクラーケンでもリバイアサンでもマーフォークでもタコでも海蛇でもある《魂石の聖域》だけは被害を受けないため、成田に一縷の希望が残った形となる。さらに成田はエンド前にも2枚目の《魂石の聖域》を起動し、自分のターンに入っても《悪戯な神秘家》を出し直したりはせずにそのままマナをフルオープンでターンを返して、高尾のライフを詰めきるチャンスをじっと窺う。

 一方、どうにかこのままゲームを決定づけたい高尾は再び《スピラの希望、ユウナ》を送り出して絆魂によるライフ回復を目論むのだが、《召喚:リヴァイアサン》の攻撃前に成田が唱えたフェイ花のいたずらによって防がれてしまう。そのままエンド前に《スピラの希望、ユウナ》が2体目の《召喚:リヴァイアサン》を蘇生すると、出てきたフェアリー・トークン2体は出したばかりの《スピラの希望、ユウナ》とともに再び洗い流せるものの、やはり2体の《魂石の聖域》は依然として盤面に残り続ける。

 

 するとここで返すターン、成田が引き込んだのは証人保護》!唯一のブロッカーである《召喚:リヴァイアサン》を無力化し、満を持して2体の《魂石の聖域》で攻撃すると、1体はチャンプブロックされるものの高尾のライフは残り6点。しかもブロックした《召喚:リヴァイアサン》は最終カウンターの効果によって追放され、もはや高尾の墓地には《スピラの希望、ユウナ》が頼れる召喚獣は残されていない。そして返すターンには1体目の《召喚:リヴァイアサン》も英雄譚の第Ⅲ章と最終カウンターの効果により追放されてしまい、やむなく高尾は《町の歓迎者》を送り出すのだが、「街」を拾えずライフ回復ができない。《召喚:フェンリル》も出してブロッカー2体で耐える構えだが、エンド前のフェイ花のいたずらによって《召喚:フェンリル》をタップされてしまう。

 さらに続くターンの成田のトップが送還》!ブロッカーをすべて排除すると、召喚獣の猛威の中でも結局最後まで戦場に居座っていた2体の《魂石の聖域》が、高尾の残りライフをきっちり削りきったのだった。

成田 1-0 高尾

ゲーム 2

 今度は先攻2ターン目町の歓迎者というまずまずの初動ながらも土地が落ちず、やはり実質マリガンスタートとなってしまった高尾に対し、成田はドレイクの孵卵者を送り出す。それでも高尾は上げ潮、キオーラを出すと、返す《ドレイクの孵卵者》の攻撃は役目を終えた《町の歓迎者》でチャンプブロックし、早々に墓地を7枚にしてスレッショルドを達成することで、《上げ潮、キオーラ》の能力発動をちらつかせプレッシャーをかける。

 

 さらに3マナ構えたままの成田に対し、高尾はシヴァのドミナント、ジルを送り出して《ドレイクの孵卵者》を手札に戻すと、続く《上げ潮、キオーラ》の攻撃こそフェイ花のいたずらで止められるものの、ゲームの主導権を手放さない。成田も続くターンの《上げ潮、キオーラ》の攻撃を2枚目の《フェイ花のいたずらで止め、計4体の飛行トークンで地上と空とのすれ違いのダメージレースを狙いにいくのだが、高尾は焦らず《シヴァのドミナント、ジル》で攻撃したのち、第2メインにトークン2体への大胆な《睡眠魔法「スリプル」》2枚使いでその目論見を崩す。

 これに対し成田はせめてドレイクの孵卵者》2体を並べて《上げ潮、キオーラ》の攻撃を牽制しようとするのだが、なおも高尾は成田が立たせた《》1枚に対して構わず5マナを払い、《シヴァのドミナント、ジル》を追放して氷の召喚獣、シヴァとして戦場に戻すと、《上げ潮、キオーラ》をブロックされない状態にして攻撃させることで、ついに8/8のタコ・トークンが盤面に降臨する。

 

 成田も飛行2点のみのアタックで高尾のライフを14点まで削るのだが、返す8/8の攻撃はさすがに《ドレイクの孵卵者》でチャンプブロックせざるをえず、ジリ貧の様子。それでもそのまま高尾が幻獣との交わりを唱えてターンを返したところでエンド前に魂石の聖域をクリーチャー化し、どうにか逆転の筋を模索しようとする。

 ……が、成田はここにきて土地ドローが続いてしまい打つ手がない。そうこうしている間に《氷の召喚獣、シヴァ》の「シヴァスナップ」によって土地がフルタップにさせられてしまい、続く8/8の攻撃はやむをえずスルーするものの、《幻獣との交わり》フラッシュバックで召喚:幻獣マディンまでもが降臨すると、いよいよ残り時間は少ない。

 

 引き込んだ狡猾な侵入者、魁渡の「+1」能力で打開を図ろうとするも、ドローはなおも土地。続くターンの《召喚:フェンリル》こそ《論破》で打ち消し、8/8トークンの攻撃はチャンプブロックで受け止めるが、なおも高尾は《幻獣との交わり》2枚目をフラッシュバックして2体目の《召喚:幻獣マディンを着地させる。

 やがて返すターンにも成田が有効な返し札を引けなかったことで、《召喚:幻獣マディン》第Ⅲ章の全体トランプル付与&+2/+2修整を受けた高尾のクリーチャーの総攻撃が、成田の残りライフを一瞬にして消し飛ばしたのだった。

成田 1-1 高尾

ゲーム 3

 先攻の成田は《》《》《魂石の聖域》《魂石の聖域》《航路の作成》《証人保護》《論破》という2マナの脅威がない手札を悩みつつも意を決してキープ。対する高尾はまたも後攻ワンマリガンと少し不運な形でゲームがスタートする。そして初動2ターン目の航路の作成に対し高尾がセットランドのみでターンを返したのを見るや、成田は狡猾な侵入者、魁渡を送り出し、即座に「-2」能力で無人の戦場に2/1忍者トークンを生成してプレッシャーをかける。

 返す高尾も上げ潮、キオーラを出して手札を整えるのだが、なおも成田は悪戯な神秘家を出してから《狡猾な侵入者、魁渡》の「+1」で飛行トークンを出しつつ手札を整え、忍者トークンで攻撃すると、《上げ潮、キオーラ》に証人保護を付けてプレインズウォーカーの忠誠度を守りにいく。それでも高尾は能力のない1/1で果敢に忠誠度を削りにいき、戦闘後に2体目の《上げ潮、キオーラを出すことで、早くも《狡猾な侵入者、魁渡》に制圧されつつあるこの状況をどうにか打開しようとする。

 ……だが、続く成田のアクションがあまりにもクリティカルすぎた。

 

 紋章旗》!「青」指定からの《狡猾な侵入者、魁渡》の「+1」起動でなおも《悪戯な神秘家》から飛行トークンを生成したのち、一気にクロックが膨れ上がった8点アタックをぶち込むと、既に高尾の残りライフは10点。何もなければ次のターンには勝てるという状況。

 そのまま成田は返すターンの高尾の《幻獣との交わり》フラッシュバックにもダメ押しの論破を当てると、続くターンの《魂石の聖域》起動も含めた総攻撃で高尾のライフを削りきり、自らの想像力の豊かさを遺憾なく発揮した成田が見事トップ8進出を決めたのだった。

成田 2-0 高尾

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