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グランプリ・シンガポール2017

観戦記事

準々決勝:Lim, Zhong Yi(シンガポール) vs. 原根 健太(東京)

By 矢吹 哲也

 原根 健太にとって、今年はまさに飛翔の年だった。

 「3年でレベルプロになる」という目標を掲げてマジック:ザ・ギャザリングの競技シーンへ飛び込んだ原根は、敗北を積み上げ、反省を積み上げ、経験を築き上げ、理論を編み上げ、胆力を練り上げ、マジックのプロ・プレイヤーとして成長してきた。

 すると、文字通り血の滲む思いで競技の世界で戦ってきた原根のもとに、「結果」がもたらされた。

 シルバー・レベル到達。レベルプロになるという目標を達成。

 勢いそのままにゴールド・レベル到達。

 日本選手権優勝。日本代表チームの一員としてワールド・マジック・カップへ。

 ワールド・マジック・カップ2017優勝。

 そして今、今年を締めくくる最後のグランプリで、彼は自身3度目のグランプリ・トップ8入賞を果たした。

 今の原根にここで止まる理由はない。あと3つ勝つだけだ。

 一方のリム・ツォン=イー/Lim, Zhong Yiは、開催地シンガポールのシルバーレベル・プロ。こちらも今年のシンガポール選手権を制し、ワールド・マジック・カップ2017へ参加している。自国開催のグランプリ・タイトルを手にさらなる躍進を迎えるべく、最後の戦いへ挑む。

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ゲーム展開

 ゲームが始まると、原根は早速《セイレーンの嵐鎮め》、《風雲艦隊の空中要員》と展開し、上空からリムを急襲した。リムも《凶兆艦隊の貯め込み屋》、《巧射艦隊の拷問者》と展開するが、続く《深海艦隊の殺し屋》を《見張りによる消散》で打ち消され、テンポ良く攻め込む原根の勢いを止められない。

 と思われた矢先のことだった。リムは《饗宴への召集》で吸血鬼を並べると、続くターンには《軍団の上陸》と《聖域探究者》を繰り出し、全軍攻撃。《軍団の上陸》は「変身」し、遅れていたライフ・レースを一気に取り戻した。

 原根は空からの攻撃を続けたが、リムは次のターンも勢い良く全軍を送り込み、ついにライフ差は完全に逆転。リムはダメ押しの《薄暮の賛美者》を盤面へ送り出し、両手を出してターン終了を宣言する。原根は最後のドローを確認したが、そのままカードを片付ける他になかった。

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吸血鬼の大群に全軍攻撃の命令を下すリム。

 第2ゲーム、今度はリムが1ターン目に《薄暮まといの空渡り》、2ターン目《猛竜の相棒》と展開し、原根は2ターン目に《風雲艦隊の空中要員》を出してリムの《巧射艦隊の拷問者》を《見張りによる消散》で打ち消した。

 続くリムの展開は《這い回る心止虫》と強い動きではないが、原根も土地が3枚で止まり、展開が続かない。それでも続くターンに4枚目の土地を引き込んだ原根は、《海賊の獲物》で手札のアドバンテージを得ていく。

 リムは6枚目の土地を置くと、《不死の古き者》を盤面に加えた。これに対して原根は《座礁》で一度バウンスし、リムがそれを唱え直したところへ《見張りによる消散》を当てた。

 脅威を退けた原根は、《ヴァンスの爆破砲》を設置。リムは《深海艦隊の殺し屋》を繰り出し、14対14で拮抗するライフレースに挑む。

 原根は《風雲艦隊の空中要員》を手札に戻し《嵐を変容する者》を呼び出した。リムは《深海艦隊の殺し屋》と《薄暮まといの空渡り》の少ない手勢で攻撃を続け、《卑怯な行為》を駆使してなんとかダメージを与えていく。原根が《開花のドライアド》と《イクサーリの守り手》で地上を固めると、リムは《溺死者の行進》で《不死の古き者》を呼び戻す。

 しかしここで、原根の《ヴァンスの爆破砲》が《轟く声、ティシャーナ》を引き当てた。拮抗しクリーチャーが横に並んでいた状況での《轟く声、ティシャーナ》は、形勢を一気に原根の側へ引き寄せ、そのまま彼に勝利がもたらされたのだった。

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川守りの力を受けて押し返す原根。

 そして迎えた第3ゲーム、リムが《這い回る心止虫》、原根が《クメーナの語り部》と1ターン目から両者は動き、リムはそのまま《凶兆艦隊の貯め込み屋》、3ターン目にも《流血の空渡り》と展開を続ける。

 3ターン目に《セイレーンの見張り番》を追加した原根は、その後《押し潰す梢》で《流血の空渡り》を除去しつつ、こちらもクリーチャーを展開し手札の《轟く声、ティシャーナ》へ繋ごうとした。その間にリムは《饗宴への召集》で戦線を横に広げ、続く5ターン目には《薄暮の賛美者》も戦線に加えた。

 上空から4点のダメージを受けつつも原根は着々と土地を伸ばし、《轟く声、ティシャーナ》を降り立たせて大きなアドバンテージを得たが、しかし布陣を整えたリムの手には、切り札が待ち構えていた。

 騎士団長率いる吸血鬼の群れが、原根を蹂躙した。

リム 2-1 原根
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