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グランプリ・神戸2015
第7回戦:市川ユウキ(神奈川) vs. 大森 健一郎(兵庫)
By 矢吹 哲也
今大会も初日終盤を迎え、2日目進出、さらにはその先を見据えた戦いが繰り広げられるようになる。
フィーチャー・マッチ・エリアに呼ばれた市川 ユウキは、間違いなく「その先」を見ているプレイヤーだろう。今大会ここまででひとつだけ喫した敗北を、彼は大いに惜しんでいた。求めるのは勝利のみ。試合に臨む市川の眼光は、鋭利な刃物を思わせる。
だがもちろん、勝利を望むのは彼だけではない。地元兵庫県から参戦の大森 健一郎もまた、勝負への熱意をまとってやって来た。関西のマジック・シーンでその名を知られる彼は、過去にこの地で行われたグランプリ・神戸2011ではベスト4へ進出している。今大会でも好調な彼としても、1敗を守って2日目へ進みたいところだ。
市川 vs. 大森。戦いはまだまだ続く。頂点へと伸びる道を進み続けるためには、さらなる勝利が必要だ。 |
それぞれのデッキ
デッキ選択の理由を両者に尋ねると、「昨日まではアブザン使う可能性1%でした」と、「アブザン・アグロ」を操った大森から衝撃のひと言。
いわく「大勢が使うデッキは嫌」とのことで、彼は実際に「ジェスカイ・ブラック」や「エルドラージ・ランプ」系、それから「先祖の結集」系と、アブザン以外のデッキを次々と試した。
しかし、どれも明確な手応えを感じられない。悩んだ大森は、彼の「師匠」であり今大会も公式生放送で解説を務める殿堂顕彰者、藤田 剛史に相談を持ちかけた。
「そこで、僕が使う可能性1%のデッキと0%のデッキを勧められたんです」と、大森は笑う。そして「良い思い出がひとつもない」というほどのジンクスを抱えたデッキを避けて選んだのが、可能性1%の「アブザン」だったわけだ。
やや消極的なデッキ選択と言えるが、それでも大森はここまで1敗。いざ決断した彼は「アブザン」の力を存分に振るい、勝利を重ねている。
一方の市川のデッキ選択は明確だ。「アブザンに勝てる」と、端的に自信を見せた。
「Magic Onlineで15戦勝ち続けて、これに決めました」と語る市川のデッキは、「エスパー・メンター」。強力なプレインズウォーカーや除去を豊富に持ち、その上カード・アドバンテージを得る手段も多いこのデッキは、確かに「アブザン」との消耗戦を優位に進めることができるだろう。
ここまでで1敗を喫していることを惜しむ市川だが、その自信は揺るがない。両者は勝負に臨む真剣な眼差しを自身のデッキに向け、入念にシャッフルを行った。
ゲーム展開
「やります」と力強くキープを宣言する市川。大森もそれを受けてキープを宣言。
初動は大森の《始まりの木の管理人》。2ターン目に能力を起動して3/3で攻撃する、「アブザン・アグロ」の黄金パターンだ。
一方の市川も2ターン目《ヴリンの神童、ジェイス》から《道の探求者》と軽快に展開を進める。さらに《強迫》を差し向けて大森の手札から《アブザンの魔除け》を取り去ると、《絹包み》でブロッカーも排除して《道の探求者》の攻撃を通した。
大森の盤面に《包囲サイ》が現れるものの、市川は《勇敢な姿勢》でそれを除去してクロックを刻み続ける。大森は《棲み家の防御者》の「大変異」で《包囲サイ》を回収し再び盤面へ送り出すが、市川の《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》による[-3]能力が防御を許さなかった。
大森は再び裏向きのクリーチャーを盤面へ。市川は《束縛なきテレパス、ジェイス》の[-3]能力で《残忍な切断》を「フラッシュバック」し、なおも大森の盤面にクリーチャーを残させない。市川は続けて《黄金牙、タシグル》も戦線に加えるが、そこには大森が《棲み家の防御者》を裏向きに繰り出して即「大変異」させて回収した、《アブザンの魔除け》が差し向けられる。
盤面の脅威と除去のぶつかり合い。壮絶な消耗戦に挑む大森。 |
それでも市川の攻勢は止まらない。彼は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を繰り出し、これで盤面に3枚のプレインズウォーカーが並び立った。圧倒的アドバンテージ、圧倒的戦力。頭を抱えて考える大森は《ドロモカの命令》で《乱脈な気孔》に+1/+1カウンターを置きながら同盟者・トークンを排除し、市川の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を総攻撃で退場させた。
だがしかし、その返しに現れたのは《僧院の導師》だった。デッキにもその名を冠する「エスパー・メンター」の主力が、手札を消耗した大森に対して盤面を制圧するのに、そう時間はかからなかった。
大量の除去で盤面を支配し、緩まぬ攻勢を仕掛ける市川。 |
試合の幕間に「今日アブザン・アグロ(と当たるのが)4戦中4回」と、市川は笑った。環境の最大勢力とひたすらに戦い続ける彼はしかし、「アブザンに勝てる」デッキを操っているのだ。
2ゲーム目、大森は1ターン目《強迫》で市川の手札を暴き出す。見えたのは、
- 《黄金牙、タシグル》
- 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
- 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》
- 《勇敢な姿勢》
- 《残忍な切断》
- 土地2枚
と長期戦を見据えた手札。大森は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を抜き去り、続くターンにさらに《強迫》を撃ち込むと、《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》も墓地へ送った。
初動が3ターン目《黄金牙、タシグル》となった市川は、大森の繰り出した《包囲サイ》を《勇敢な姿勢》で除去して攻撃。続けて展開された裏向きのクリーチャーも《残忍な切断》し、4点のクロックを刻んでいく。
大森は除去に対応して《棲み家の防御者》を「大変異」し、《強迫》を回収。それを市川に差し向けると、《破滅の道》を墓地へ落として、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を盤面に送り出す。だが市川の手札にはもう1枚除去があったため、大森は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の[+1]能力を起動し、市川の攻撃を残り忠誠度1で耐えた。
大森は再び《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の[+1]能力を起動し、《乱脈な気孔》とともに反撃に出た。続けて大森の盤面にも《黄金牙、タシグル》が加えられたのだが、しかし市川の除去が尽きない。《苦い真理》のドローや《束縛なきテレパス、ジェイス》による「フラッシュバック」を絡めて消耗戦を優位に進めた市川が、この試合を勝ち取ったのだった。
市川 2-0 大森
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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