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EVENT COVERAGE
グランプリ・クアラルンプール2016
準決勝:市川 ユウキ(神奈川) vs. 松本 郁弥(石川)
By Masashi Koyama
グランプリ・台北2016での優勝インタビューでこう語っていた市川ユウキ。
今、市川は間違いなく日本でもトップクラスに「マジックの勝ち方」を知っているプレイヤーだ。
今年の成績だけを取り上げてみても グランプリ・メルボルン2016トップ4、グランプリ・台北2016とグランプリ・京都2016優勝、そしてこのグランプリ・クアラルンプール2016でもトップ4を確定と、実に4度もプレイオフへと進出しているのだ。
だが、そんな市川とて最初からプレミア・イベントで勝てていたわけではない。幾度も敗北に打ちのめされ、それでも勝利を希求し、もがいて努力を重ねたからこそ今の「強い」彼がある。
そして、松本郁弥もまた、グランプリでの敗北を乗り越え、勝利を掴もうとしているプレイヤーだ。
プロツアーへの参加を夢見た松本は、グランプリ・香港2015以降、ほぼ全てのアジア、日本のグランプリへと参加し、そして挫折を繰り返して来た。
そして、ついに彼の念願叶ったのが、市川ユウキたちが優勝を果たしたグランプリ・京都2016だ。志を同じくする原根健太、平見友徳とともに、初のグランプリプレイオフ、そしてプロツアーへの切符を手に入れることができた。
敗北を乗り越えてきた者同士、もしかすると松本は市川のことを先輩のように感じているかもしれない。
とすると、松本にとってこの戦いは偉大な先輩への挑戦状――
「こんにちは、先輩。『マジックの勝ち方』を教えてくれませんか?」
「オーケー。俺に勝てたらな」
市川ユウキ(左) vs 松本郁弥(右) |
ゲーム1
市川が《スレイベンの検査官》、松本が《模範的な造り手》から《密輸人の回転翼機》という、ともに上々の立ち上がり。
市川は3マナを立ててターンを返し、松本は《停滞の罠》を警戒し慎重に《模範的な造り手》で攻撃、《経験豊富な操縦者》を加えてターンを返す。
市川はここに注文通りの《停滞の罠》を合わせ、《反射魔道士》でこの《経験豊富な操縦者》をバウンス、
土地が3枚で止まった松本は《模範的な造り手》から《密輸人の回転翼機》で攻撃し、土地を探しに行くが、4枚目の土地を引き込むことができない。
市川は5マナオープンでターンを返す。今日幾度も見られてきた光景だ。すなわち、《大天使アヴァシン》の構え。
青白フラッシュは、インスタントタイミングで動ける複数のカードを内包しているため、マナを立てているだけで対戦相手にプレッシャーを与えることができるのが大きな強みだろう。
《停滞の罠》《呪文捕らえ》《大天使アヴァシン》――複数の選択肢をちらつかせ、相手を惑わせる。
もちろん、青白フラッシュ側も複数の選択肢を抱えていることから、プレイの難しさは折り紙付きだが、乗り手が市川ユウキとあっては、プレイのミスなど望むべくもない。
市川は緻密なプレイで松本を追い詰める |
事実、4枚目の土地をセットできた松本だが、《大天使アヴァシン》が匂うこの瞬間に攻撃に向かうことができず《模範操縦士、デパラ》を追加するのみで市川へターンの終了を伝える。
そして、やはり市川は《大天使アヴァシン》を持っていた。この荘厳な天使を戦場に降り立たせると、《無私の霊魂》を追加し、松本の《密輸人の回転翼機》を牽制しながら空から反撃を開始する。
なんとか攻勢に回りたい松本は4/3となった《模範的な造り手》で攻撃するが、市川は冷静に《スレイベンの検査官》でチャンプブロック。
《無私の霊魂》で自らのクリーチャーたちを守りながら、《浄化の天使、アヴァシン》が松本の盤面を壊滅させる。
さらに《無私の霊魂》で盤石の態勢を築いた市川。
松本はドローを確かめると、静かに頷いて土地だけの戦場を片付けたのだった。
市川 1-0 松本
言うまでもないことだが、市川ユウキは「強い」プレイヤーで、それは彼の残してきた成績を見れば一目瞭然だ。
「強いから勝てるんだ」
そう松本に投げかけるようなの精密なプレイで第1ゲームをもぎ取った市川。
彼が求めているのは飽くなき勝利。市川ユウキがそれを違えることは、決してない。
ゲーム2
《密輸人の回転翼機》の鏡打ちからゲームが始まり、《模範操縦士、デパラ》を追加した松本からダメージを与えていく立ち上がり。
市川も《無私の霊魂》をプレイ、《密輸人の回転翼機》起動から攻撃に回り、すれ違いのダメージレースが展開される。
先手の利を得ている松本は、先ほどと同じく《模範操縦士、デパラ》が《密輸人の回転翼機》に乗り込みダメージを通すと、《耕作者の荷馬車》から《断片化》!
一方的に《密輸人の回転翼機》を失った市川は《スレイベンの検査官》でドローを進めるが、松本は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》からトークンを生成し、《密輸人の回転翼機》と《耕作者の荷馬車》で一挙10点!
残りライフが2となった市川は5マナを立てたままターンエンド。
松本は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》でトークンを生み出すと、2枚目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》をプレイ。これがクリーチャー化し、《密輸人の回転翼機》に搭乗してフルアタックすると、市川は「負けました」とすぐに盤面を片付けた。
市川 1-1 松本
ゲームを取り返した松本はすぐさまサイドボードに手を伸ばす |
「強い」市川に対し、松本は「これから強くなっていく」プレイヤーだと、筆者は思う。
このグランプリだけで見ても予選ラウンドで、松本は市川や高橋優太からプレイを指摘され、そしてそれをそのままゲームに活かしている。
「戦う度に成長している――」
準々決勝で対戦した高橋はそんな言葉を松本に投げかけたと言う。そう、もう松本は先駆者たちから「勝ち方」を学んでいて、十分に「強い」プレイヤーなのだ。
あとひとつ必要なのは、「勝利」という結果だけ。
そして、決勝進出をかけた第3ゲームが静かに幕を開ける――
ゲーム3
松本の《経験豊富な操縦者》を市川が《反射魔道士》でバウンスし、最終ゲームが開幕した。
土地が3枚でストップした市川に対し、松本は2体の《経験豊富な操縦者》を召喚し、順調な展開を見せる。
4枚目の土地を引き込んだ市川はこれらを《石の宣告》し、松本の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》には《否認》を合わせ、松本の攻勢を流していく。
が、5枚目の土地が無い市川は《無私の霊魂》2枚をプレイしてフルタップでターンを返す。
そしてその隙に松本は、準々決勝で高橋相手に勝負を決めた《領事の旗艦、スカイソブリン》!
まだ5枚目の土地をドローできない市川は《折れた刃、ギセラ》を召喚するが、松本は3枚目の《経験豊富な操縦者》から《領事の旗艦、スカイソブリン》で攻撃。
能力の対象を《折れた刃、ギセラ》とし、市川が《無私の霊魂》を生け贄に捧げたところで、《無許可の分解》が《折れた刃、ギセラ》を襲う。松本が盤面、ライフの両面から攻め立てる。
市川は《領事の旗艦、スカイソブリン》こそ2度目の攻撃を許すことなく《停滞の罠》で追放するが、先ほど重い一撃を受けた上に、《密輸人の回転翼機》が生き残っており、今やライフはたったの5しか残されていない。
ようやく5枚目の土地を引き込んだ市川だったが、手札に眠る《大天使アヴァシン》ではなく、《停滞の罠》で《密輸人の回転翼機》に対処するが、時すでに遅し。
松本が《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を追加し、続くターンにクリーチャー化しフルアタックしたのを見届けると、手札の《大天使アヴァシン》を見せることなく、松本の勝利を祝福した。
市川 1-2 松本
松本郁弥、自身初のグランプリ決勝進出!戴冠まであと1勝!
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