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グランプリ・クアラルンプール2016

戦略記事

デッキテク:金川 俊哉の「ティムール・エネルギービートダウン」

by Masashi Koyama

(※1日目に取材した内容を掲載しております。)

 アジアのグランプリ会場に足を運んでいると気づくことがある。

 ゴールド・レベル以上のプロは別としても、常にグランプリ会場で出会う、日本からの「常連組」と言って差し支えないプレイヤーたちがいることに。

 彼らはプロツアーの権利を手に入れるため、プロ・ポイント獲得のため、はるばるアジアの地まで遠征し、グランプリという過酷な戦いに身を投じている。

 金川俊哉はそんな「常連組」の1人だ。

hama_deck.jpg

 「カードショップはま屋」のオーナーである彼はHareruya Prosの一員でもあり、アジアへの遠征のみならず、新セット発売後のドラフト合宿などの際には東京まで駆けつけ、数日間に渡るドラフト練習など、日々マジックに身を投じている。

 金川が最初にプレミア・イベントで成功を収めたのはグランプリ・上海2012でのトップ8入賞だった。

 さらに行弘賢が初戴冠を果たしたグランプリ・シンガポール2013グランプリ・北京2013でも続けてプレイオフ進出を遂げ、アジアグランプリの強豪として名を挙げたのだ。

 日本で本格的に彼の名が広まるきっかけとなったのはワールド・マジック・カップ2014予選を勝ち抜き、日本代表入りを果たしたことによるだろう。その勝因の1つとして、彼がアジアへ積極的に遠征し、地力を磨いていたことは間違いなくあるだろう。

 そんな金川は構築で行われるグランプリには独自チューンのデッキを持ち込むことが多く、今回も自身で調整したデッキでグランプリへ参戦している。

「肉々しいですよね(笑)」

 そう言いながら、金川はデッキを丁寧に並べデッキを公開してくれた。


金川 俊哉
グランプリ・クアラルンプール2016 / スタンダード (2016年10月22~23日)[MO] [ARENA]
3 《
2 《
4 《獲物道
4 《植物の聖域
4 《尖塔断の運河
4 《霊気拠点

-土地(21)-

4 《牙長獣の仔
4 《導路の召使い
4 《通電の喧嘩屋
4 《つむじ風の巨匠
2 《ピア・ナラー
3 《逆毛ハイドラ
3 《新緑の機械巨人

-クリーチャー(24)-
4 《霊気との調和
1 《顕在的防御
4 《蓄霊稲妻
4 《密輸人の回転翼機
2 《反逆の先導者、チャンドラ

-呪文(15)-
1 《不屈の追跡者
3 《流電砲撃
2 《自然のままに
1 《儀礼的拒否
1 《払拭
2 《否認
2 《ヴァラクートの涙
1 《人工物への興味
1 《反逆の先導者、チャンドラ
1 《生命の力、ニッサ

-サイドボード(15)-

「スタンダードを触りだしたのはプロツアーの後からですね」

 新環境の方針となるのは、やはりプロたちが鎬を削るプロツアーだ。この大舞台での結果をもとに、プレイヤーたちはメタゲームを思考し、より良いデッキ選択、そして細かなカードの調整をわずか1週間弱で行わなければならない。

 それは金川といえど例外ではなく、やはりプロツアー『カラデシュ』を元に、スタンダードの練習を開始したと言う。

「ベースとしては、プロツアーのスタンダード成績優秀者に青白フラッシュが多かったのと、マルドゥ機体とエリック・フローリッヒ/Eric Florichnの黒緑昂揚が多いだろうということがありました。(プロツアーの結果から)《霊気池の驚異》が減ると思いました。そうなると黒緑はすごく強いデッキなので」

 金川はグランプリ参加者がプロツアー成績優秀者のデッキを持ち込むことを予想してデッキの調整を行った。見たところ赤緑エネルギーデッキのアップデート版のようにも見えるが、キラリと光るのは《つむじ風の巨匠》だ。

「《つむじ風の巨匠》は強いですよ! 機体デッキなどのビートダウンに対しては《反逆の先導者、チャンドラ》を守れますし、《新緑の機械巨人》と飛行機械・トークンで勝つこともありますし」

 《密輸人の回転翼機》の大流行もあり、『カラデシュ』発売前の予想に比して活躍の少ない《反逆の先導者、チャンドラ》だが、このデッキであれば、クリーチャーを捌かれた後の二の矢として非常に重要な要素であると言う。

「相手のビッグアクションの返しに《反逆の先導者、チャンドラ》を置くと、大体は有利になりますね。《反逆の先導者、チャンドラ》を上手く使えるビートダウンとして、使っていて楽しいです」

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 潜在的な強さで言えば間違いなく歴代でもトップクラスのプレインズウォーカーである《反逆の先導者、チャンドラ》。コントロール相手には無類の強さを発揮すると言う。

「現在は環境的に単体除去が多いので、このデッキにとってはプラスです。《逆毛ハイドラ》もちろんのことですが、流行りの全体除去である《光輝の炎》に対しても、《牙長獣の仔》であればほぼサイズを上げることで回避できます」

 現在のスタンダードでは《神の怒り》系の全体除去はあまり見られず、ダメージ系の除去をかわす術のあるクリーチャーを多く擁するビートダウンにとって追い風だろう。

「機体系のデッキに対してはサイズで上回りますし、サイドボードに《流電砲撃》も取っているので、《密輸人の回転翼機》を除去できるかというところですね」

 このグランプリで多く見られるマルドゥ機体などのデッキに対しても、十分押し切れるだけの力があるこのデッキ。

「(クリーチャーで)殴るのが好きなんですよね」

 金川は最後に笑顔でそう述べた。

 メインデッキのほぼすべてのカードが『カラデシュ』のカードで構成されている、この「ティムール・エネルギービートダウン」。金川と同じくビートダウンが大好きなプレイヤー、そしてこれからスタンダードを始めるプレイヤーの皆さんには、ぜひ一度このデッキをお試しいただきたい。

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