By Takeshi Miyasaka
英語がわからない佐藤と日本語がわからないジュザは、身振り手振りに通訳を交えながら、なんとかコミュニケーションしていた。
ジュザ 「キミの対戦相手はなんだった?」
佐藤 「赤単ですね」
ジュザ 「Gooooooooood!!」
どうやらジュザは赤単とは相性が悪いようで、佐藤が対戦相手になったことを喜んでいるようだ。
トップ 8 プロフィールの職業欄に「Professional Tourist」と書き込むほどに世界中を飛び回っているマーティン・ジュザ。今期は同じく世界を飛び回っている盟友の中村 修平とともに、地元ヨーロッパから北米、先日は南米、マチュピチュへも行ったという。世界のグランプリを転戦しながら、合間にはなかなか行くことができない世界の名所を見て回る旅人生活。
「Play the Game, See the World.」
このフレーズを体現している数少ないプレイヤーの一人である。来日する際は盟友の中村を頼り、日本の食事でも好物がいくつか増えたとか。
現在獲得しているプロポイントは 48 点、ポイントレース争いでデッドヒートを繰り広げていたライバルたちの背中を捕らえ、前方をひた走るオーウェン・ターテンワルドとの差を少しでも詰めておきたい。オーウェンは現在 54 点でポイントレースの首位だ。
この「旅人のプロ」ジュザを迎え撃つのは、佐藤 倫。初日全勝同士として写真に収まった2人は、準決勝で再度まみえた。予選 11 回戦で対峙したときはジュザが 2-0 のストレートで佐藤を下している。
佐藤は地元福岡を拠点に「NEOSKY」というチームを仲間たちと結成し、このイベントのために調整を繰り返してきた。いまやグランプリ・広島で戦っているNEOSKYのメンバーは佐藤ただ一人となってしまったが、仲間のためにも佐藤は予選のリベンジを誓う。
互いにデッキを交換してお互いのメインデッキ、サイドボードを確認していたが、それもヘッドジャッジの合図で終了のときを迎える。お互いにデッキを所有者のもとへ戻し、両者は自身のデッキをシャッフルし始めた。
今期のプロプレイヤーレースで逆転を狙うジュザとしてはここも勝って 48 点に載せておきたいところ。佐藤は NEOSKY のチームメイトたちのためにもここで勝利して、決勝の大舞台へ進んでおきたいところ。

グランプリ・広島の決勝戦に進めるのは、どちらか、ひとり。
Game 1
ダイスロールに勝ったジュザが先攻で始まった準決勝。与えられた 7 枚をよく吟味するとジュザはにこやかにサムズアップし、佐藤は首を振ってテイクマリガン。マリガン後のハンドも厳しいようでしばらく考え込んでいたが、やがて意を決したように「Good luck!」と対戦相手に声をかける。
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Martin Juza | |
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ジュザのファーストアクションは《》。一方の佐藤は《》を。
ジュザは《》をプレイ、続くターンにゴーレム・トークンとともに戦場へ。
佐藤は《》でターン終了、アップキープに《》で《》をタップするが、ゴーレムと《》が佐藤に襲いかかり 4 点ダメージ。
さらに《》を追加し、《》をセットしてターンを終える。
佐藤が悩んだ理由はすぐに氷解する。カロリーは高いものの土地の枚数が少ないハンドだったようだ。
3 枚目の土地をプレイできない佐藤は、しばらく悩んだのち《》をプレイしてターンを返す。アップキープに《》の能力を使用することもなく、対戦相手のメインフェイズへ。
ジュザがコントロールしている土地は 3 枚、《》 2 枚と合わせて 5 マナへアクセスできる。一方の佐藤は《》と《》がアンタップしており、おそらくゴーレムのアタックを封じるつもりだろう。
ジュザが攻撃を宣言すると、ゴーレムは予定通りタップされ、《》と《》がレッドゾーンへ送り込まれる。《》と《》が相討ちとなり、佐藤のライフは 15 点へ。
さらに《》を戦場に追加したジュザは、これで《》を撃ち落とし、《》をプレイしてビッグターンを終える。
佐藤は引いてきた《》をプレイし《》を戦場へ。
前方がクリアになったジュザは《》をプレイして、詰めマジックに入ろうと思考タイムへ・・・。
ジュザが考え始めたところで、佐藤は対戦相手に「OK」と声をかけ、カードを片付けた。
Juza 1-0 佐藤
Game 2
佐藤は「I play!」と高らかに宣言するが、与えられた 7 枚をすぐさまテーブルの上に並べ直す。一方のジュザは「Keep」。
ジュザ 「
準々決勝はダブルマリガン 2 回したけど勝ったぜ! 大丈夫だよ」
佐藤 「本当すか!?」
マリガン後、《》《》というスロースタートの佐藤に対して、ジュザは《》をインプレイ。2 ターン目を終えて土地しか並ばない佐藤へまずは一太刀浴びせる。
3 ターン目に《》をプレイすると佐藤は《》をプレイして終了。ジュザがジャンプアップしてプレイした《》を《》でキャッチする。
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佐藤 倫 |
土地が伸びずに苦しんだ 1 ゲーム目とは対照的に、順調に《》をセットして 4 マナへ到達した佐藤は、ドローセットゴー。《》で《》をタップしてジュザのマナを拘束しようと試みる。
ジュザは 4 枚目の土地をプレイすると《》を再度プレイするが、これも佐藤の《》の餌食となる。
佐藤は《》を戦場へ送り出し攻撃へ転じる隙をうかがう。アップキープに《》をタップするが、ジュザは 5 枚目の土地をセットして《》をプレイ。「土地伸びるねー」と佐藤は苦笑せざるをえない。
「よろしくお願いします!」とかけ声をかけながら気合いを入れて佐藤はドローする。そのドローしたカードを確認してから、佐藤はしばらく考えにふける。
戦場を確認しよう。佐藤がコントロールしているのは、《》を含む土地が 4 枚と《》《》という 2 体のクリーチャー。一方のジュザは、土地が 5 枚に《》《》とスピリット 2 体だ。
佐藤はこのターンの行動を検討したすえ、《》で《》をタップすると《》をレッドゾーンへ。さらに《》をプレイするとターンを終える。
あの剣が装備されるとどうしようもなくなる。ジュザが今度は考える番だ。ジュザが考え込んでいるのを見て佐藤は思わず声をかける。
佐藤 「《》も《》もないの?」
ジュザは小考ののち、《》《》を戦場へ追加して《》のサイズを上げると、《》(6/6)とスピリット 2 体、《》をレッドゾーンへ。9 点のダメージを与え、佐藤のライフは 10 となる。さらに《》で《》を追放する。
ビッグターンを終えたジュザはあごに手を当てて佐藤のプレイをうかがう。フルタップの彼にできることは、いまはまだない。
今度は佐藤が与えられたリソースで考える番だ。
《》をプレイすると、《》を追放する。残された土地は《》ひとつ。モンスターと化している 5/5 の《》は《》でタップはできる、が。
《》をプレイしたジュザは、佐藤の《》を追放し、《》を取り戻す。
ふたたび 6/6 となった《》は《》にタップされるが、それ以外で 3 点のダメージを与えて、佐藤のライフは残り 7。
ダメ押しに《》を戦場へ追加する。
佐藤は自分のドローを確認すると、右手を差し出した。
Juza 2-0 佐藤
ジュザが今期獲得したプロポイントはこれで 50 点、トップを走るオーウェンとの差は 4 点となった。
ジュザ 「今日優勝しても 52 点だけどね。まあがんばるよ」
Martin Juza advance to Final!
ゲーム終了後に 1 ゲーム目のマリガンした手札について佐藤が語ってくれた。
佐藤 「土地 1 枚だったんですけど、勝ち筋が薄いデッキなので・・・《》や《》というはっきりとした勝ち筋が見えてるハンドだから思い切ってキープしました」
―― なるほど、土地が一枚でも引ければ戦える、と?
佐藤 「先攻だったらほかの勝ち方もあったんですけど、後手だと厳しいんですよね」
ジュザとの熱戦を終えた瞬間、惜しくも敗れた佐藤に向かって、多くの友人たちが駆け寄ってくる。世界を舞台に闘うトッププロを前にして最後まで戦い抜いた友人の健闘を称え、祝福していた。
佐藤 「これはどうしてもカバレージに書いておいて欲しいのですけど、チームの仲間がいっしょにデッキを作ってくれて、いっしょに調整してくれたからこそ、ぼくがここまで来れたんですね。仲間のおかげです!」
冒頭にも記したが、佐藤は NEOSKYの仲間たちといっしょにデッキを調整し、練り上げてきた。ゲームを観戦していた仲間たちは、口々に佐藤の勇気あるマリガンを称え、ゲームの展開がしかたなかったことを佐藤に伝えた。
その仲間たちから佐藤へ、ベスト 4 を称える品として《》が送られた。3 万円もしたんだけどさ、と口添えて。
佐藤 「すっげー嬉しい! これコマンダーのデッキに入れたかったんですよ!」
たったいままでスタンダードで熱戦を繰り広げていた佐藤は、笑顔いっぱいになって仲間からの粋なプレゼントに破顔した。
佐藤にとってのグランプリ・広島という物語はここでエンドロールを迎える。しかし、佐藤と NEOSKY の仲間たちにとって、このグランプリは序章に過ぎない。これからの彼らの活躍を期待したい。