読み物
準々決勝: 白木 高広(山口) vs. 鬼塚 寛(福岡)
by Kenji Tsumura
白木 高広(写真左) 、鬼塚 寛(同右)
「《》を使わせたら右に出る者はいない。」
「《》は白木ドレイクと呼ばれていた。」
筆者がカバレージを書くために準々決勝の席に向かう最中、藤田 剛史と森田 雅彦からこんな話を聞いた。
白木は1997年のThe Finals参加経験があるほど、プレイヤーとしてのキャリアが長い。当時大阪で腕を磨いていた白木は、最強のコントロールプレイヤーとしてみなに恐れられていたそうだ。
「会場に白木さんがいたらコントロール対策を増やす。」
あの藤田剛史にここまで言わせる男は、いかに世界広しと言えど、そうはいないだろう。
そんな白木は、今回のグランプリに向け、MOの結果が載っている「Decks of the Week」を見ながら調整を重ねてきたそうだ。
コントロールマスターの白木としては、もちろんのことコントロールデッキで参加したかったそうだが、今の環境でコントロールデッキはきついとの判断から、「青白ビートダウン」をチョイスしたようだ。
デッキの選り好みをしないのも、強さの秘訣なのだろうか。
対する鬼塚は、普段は福岡のイエローサブマリンで友人たちと切磋琢磨する期待の新鋭。
「ウルザズ・サーガ」でマジックを始めたものの、一度はマジックから離れたそうだが、「ゼンディカー」でマジック界に復帰を果たす。
自身をデッキビルダータイプだと称する鬼塚は、今回のグランプリ・広島用に、近代の白いデッキの象徴と呼ばれる《》を抜いて、《》と《》を多めに入れる独自チューンの「青白ビートダウン」を組み上げ、この席まで辿り着いた。
デッキは自分で作ることができる一方で、まだまだプレイングミスが多いことが悩みの種だと語る鬼塚だが、そこは友人たちにミスを指摘してもらうことで、日々技術の向上を図っているそうだ。
「青白」を相棒に、不戦勝なしからここまで駆け上がってきた両者。好勝負に期待したい。
Game 1
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鬼塚 寛 |
どちらも初手を見て相当に悩んだ様子を見せるが、結局マリガンすることなくゲームを開始する。
両者ともに《》→《》という絶好のスタートを切ったものの、鬼塚は2枚目の土地が置けない。
2体目の《》を追加し、攻勢を強める鬼塚だが、手札に3マナ圏のカードが多いため、ここで土地が引けなかったのはあまりにも痛い。
一方の白木は《》をキャストし、自軍の《》を強化しつつ、鬼塚側の《》2体を牽制する。
鬼塚は3ターン目にしてようやく2枚目の土地を引き当てたが、これがタップインの《》だったために《》を設置することができない。
仕方なしに、と2/2の《》をレッドゾーンに送るり込み、《》との相打ちを誘発させる。
白木の3ターン目は土地を置くだけだったため、次のターンに《》を構える余裕のできた鬼塚。
手札には必殺の《》+《》コンボに加え、《》までもが控えている。土地を引く時間さえ稼げれば勝利は目前だろう。
問題は白木がその猶予を与えてくれるか、ただその1点に尽きる。
予定調和に白木の《》を《》し、必死に時間を稼ぐ鬼塚だが、いまだに3枚目の土地に巡り会うことができない。
そして白木の手札からこぼれ落ちる2枚目の《》。
土地さえ引ければ《》で難なく対処できるクリーチャーだが、鬼塚の3枚目の土地はあまりにも遠すぎた。
次のターンに《》が《》とともにレッドゾーンを駆け抜けると、鬼塚はカードを片付けた。
鬼塚 0-1 白木
Game 2
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白木 高広 | |
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今度は《》、《》、《》、《》に土地3枚と、比較的バランスの良い初手に恵まれた鬼塚。
2ターン目には《》をトップデックし、ここまで勝ち上がってきた勢いを感じさせる。
白木は《》→《》と、1本目と全く同じ展開を見せ、積極的に鬼塚を攻めたてる。
鬼塚はこれに《》で応える。
《》のバックアップを受けた《》の固さは相当なもので、白木はアタックはできず、こちらも《》をキャストしてターンを返す。
相手の脅威を押さえ込むことに成功し、順調に土地を伸ばしていく鬼塚。5枚目の土地もあるので、次のターンには《》に《》を付けて一撃必殺の構えだ。
しかし白木の4ターン目の行動は、予想を遥かに上回る《》×2!
これにより圧倒的な攻撃力を得た白木は、迷わず全軍をレッドゾーンに送り込み、5/5の《》、4/4の《》、4/4「二段攻撃」の《》が鬼塚を襲う。
鬼塚はたまらず《》でブロッカーを呼びだそうとしたのだが、白木のコントロール下に《》がいたため、これをジャッジに制される。
ライフが18の鬼塚には、合計17点のアタックを通す余裕がなく、《》と《》を相打ちさせることを選択。
そして今度こそは、と白木のターン終了時に《》をキャストし、このうちの1体に自身のターンで《》を装備してアタックし返す。
ライフは7対15と鬼塚の劣勢だが、白木の次のアクション次第ではまだまだ勝機の見えるシーソーゲーム。
・・・しかし、またもやゲームを決めたのは白木の《》だった。
鬼塚 0-2 白木
鬼塚が調整の末に抜いてしまった《》が勝負を決める、ある意味で皮肉な結果となってしまった準々決勝。
しかし、筆者を含む多くのプレイヤーは《》を抜くというアプローチを思い付きもしなかったし、それでグランプリトップ8という結果を残した鬼塚は今後も注目のデッキビルダーと言えるだろう。
長い長いキャリアの末に、念願のグランプリトップ8を手にした白木。一方で、マジックに復帰を果たしてから、比較的すぐに結果を残した鬼塚。
それぞれのプレイヤーにそれぞれの物語がある。残念ながら、準々決勝で散ることになってはしまったが、鬼塚の物語は、まだ始まったばかりだ。
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