By Takeshi Miyasaka
竹林 「最後に当たりたかったなー」
岩崎 「しょーがないよ。もう一敗もあんま残っとらんし」
一敗ラインから関西勢同士の対決がフィーチャーマッチに選ばれたので観戦記事としてお届けしよう。
「ロック」こと岩崎 裕輔は、グランプリで準優勝した経歴を持つ関西の中堅プレイヤーだ。その
グランプリ・京都2007は今回と同じくスタンダードであり、決勝を戦った相手は当時アマチュアの星と呼ばれていた渡辺 雄也であった。
竹林 友は大阪をホームに活動している若手プレイヤーの一人で、来年 2 月にホノルルで開催されるプロツアー「闇の隆盛」の招待権をすでに獲得している。これからの活躍に期待したい一人だ。
あいにくと関西のマジック事情には疎い筆者であるが、関東のマジックで他県のプレイヤー同士がイベントを通じて仲良くなるのと同じように、岩崎と竹林も隣県同士なれど同じイベントでいっしょにプレイすることが多いようで、デッキをシャッフルしながら互いのデッキ内容についてかなり細かい茶々入れをしていた。プレイオフへの細い通過枠をかけて、友人同士のガチバトルがいま開幕する。
Game 1
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岩崎 裕輔 | |
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ダイスロールの結果、竹林が先攻。それまでかしましく雑談をしていた二人が、ハンドを確認しはじめたらぴたりと話すのを止めて、勝負師の顔へと転じる。
初日のマッチではあまり感じることがなかった緊張感が、このテーブルからはひしひしと感じられる。プロツアーサンデーのそれに近い緊張感。これがグランプリ二日目か。現在一敗ラインの二人、ここで勝てば入賞ラインへぐっと近づくことができる。
テイクマリガンした竹林は、《》《》という好ダッシュでマナを伸ばし、3 ターン目に 4 マナ確定、5 マナまでありえるロケットスタートをみせた。
他方の岩崎は、そうはさせじと 2 ターン目に《》をプレイすると細菌で《》を焼く。これで竹林のマナは 3 マナへと差し戻される。
土地をプレイできなかった竹林は、3 マナから X=2 で《》をプレイし、《》を戦場へ。《》も役目を果たせば土地へと変化することができる。
岩崎は《》をプレイすると、3/3 ゴーレム・トークンとともに戦場へ投入。盤面をがっちりと構築していく。竹林は無事 4 マナを確保できたが、とくにアクションせずターンを返す。2、3 ターンに続き 4 ターン目も動く岩崎は、《》をプレイすると、2/2 狼を製造する。
マナカーブに沿った岩崎のプレイに「むっちゃきついわー」とぼやく竹林は、岩崎のターン終了時に熟考したのち、自分の《》を《》で 3/3 ビーストへとサイズアップしつつ、土地をサーチして 5 マナへと到達させる。そして《》は《》で対消滅させて、当面の窮地を脱することに成功した。
岩崎は《》から《》をプレイすると狼に装備し、4/4 狼と 3/3 ゴーレムでアタック。竹林は 7 点のダメージをライフで受ける。
竹林は目前に展開されている脅威に対する回答がない。次のターンには《》とスピリット 2 体まで戦場へと追加されてしまう。
竹林はドローを進めるものの、首をひねりながら黙ってカードを片付けた。
岩崎 「まあ、マリガンしとるしなー」
竹林 「最初のハンドキープしてたほうがマシだったかもしれん」
岩崎 1-0 竹林
岩崎と竹林がサイドボードしている横では、津村 健志と清水 直樹が同じくサイドボードしている様子。奇遇にもこのテーブルでは関西勢対決がお届けされているようだ。
岩崎 「シミチンを関西勢と呼んでいいのかどうか」
竹林 「コガモは迎え入れるんだけどなー」
岩崎 「シミチンは、なんかあるとすぐ鎌倉に引っ込むからな」
さすが関西勢、ツッコミが厳しい。
Game 2
お互い納得のハンドでスタートしたセカンドゲーム。
2 ターン目《》、3 ターン目に《》で 5 マナと順調な立ち上がりを見せる竹林に対して、《》スタートした岩崎も、3 枚目の土地をプレイすると《》でアタック、《》を追加してターンを終える。
互いに一方的にアドバンテージを取りたい展開。すなわちクリーチャーは殴り合う展開となる。竹林は《》でダメージを与え、《》を戦場へ投入する。
竹林のエンドに、岩崎は細菌トークンを自身の《》へ投げて疑似《》して土地を伸ばすと、メインで無事 5 マナに到達、《》をプレイして一気にクリーチャーを 3 体に増やす。これでボード上の不利はなくなった。
竹林はしばし考えると《》と《》でアタック。これを黙ってテイクしてライフを 14 とする岩崎。竹林は《》をプレイしてすべてのクリーチャーを焼き払いつつ、自身は《》《》によって土地とカードにリソースを転換する。竹林の土地は 7 枚へ。
岩崎は6枚目の土地をセットすると《》をもう一度。まっさらになった場はふたたび岩崎優位となる。
しかし、竹林の戦場には十分なマナが残されていた。
まずは X=6 の《》で《》をプレイ。《》《》をサーチする。タップ状態の土地は 10 枚。
《》をプレイした岩崎は、しばらく考えこんでから《》とスピリット・トークンをレッドゾーンへ送り込む。
竹林が《》で《》をブロックすると・・・
岩崎はカードを片付けた。
岩崎 1-1 竹林
緊張するゲーム展開が続くフィーチャーマッチ、スコアはイーブンとなった。
竹林 「いまのはさすがに弱かったなー」
岩崎 「そうだね。そっちの動きが理想的だったし」
竹林 「そうだな」
強敵と書いてともと読む。友人同士の真剣勝負は続く。
Game 3
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竹林 友 |
岩崎は首をひねりながらハンドの内容を吟味し、悩みながらもキープ。
竹林もため息をつきながらハンドの内容を熟考する。おそらくはハイカロリーか、でなければ色が合わないものの引き当てることができれば十分戦いに挑める強い手札。マナをジャンプアップできれば、あるいは。
岩崎が《》を 2 つ重ねて《》をプレイすれば、竹林は《》《》から X=1 で《》で《》をサーチして開幕する最終ゲーム。
《》で竹林に 2 点ダメージを与え、《》で《》を焼いてエンドする。
竹林 「土地 2 枚か」
岩崎 「微妙なハンドだったんよね」
竹林 「1 ターン待って《》持ってくるか悩んだんだけど」
《》プレイしてターンを戻す竹林。《》をプレイして《》でアタックした岩崎は、《》と《》を戦場へ追加する。
竹林は《》から《》、《》をサーチとようやく本領を発揮し始めた様子。ダメージレースで先攻できている岩崎は、《》をプレイするとアドバンテージを気にせず《》を焼くと《》 2 体をレッドゾーンへ送り込み、竹林のライフを 12 とした。
しかし、竹林は無事に 6 マナへ到達。《》をプレイして《》《》をサーチして 8 マナへ。
それまで押せ押せモードだった岩崎にとって状況は一転、《》をどうにかしないと死んでしまう絶望的なボードへとステージが変わってしまった。
ドローを確認してから熟考する。
解決方法は一つだった。
《》の「+1能力」で接死持ち狼を産み出すと、これに《》を装備して狼を《》へ投げて除去する。しかるのちに《》を《》へ装備すると 2 体でアタック。竹林のライフは 8 となる。
岩崎 「厳しいなあ。3 ターン目に土地をおけなかったのが厳しいね」
《》こそ失ったし、ライフもずいぶんと押されているが、竹林は 8 枚の土地をコントロールしている。まずは 6 マナで《》を。《》を 2 枚サーチ。ついで《》で《》を除去して後顧の憂いを経つ。
苦笑しながらターンを迎える岩崎。《》で《》を追放すると《》 2 体で攻撃し、《》を追加してエンド。竹林のライフは4となる。
竹林は 12 枚の土地をコントロールしている。まずは《》をプレイしてライフを脅かすクリーチャーを一掃する。対応して《》で本体を狙われ竹林のライフはわずか 3。 岩崎は《》 2 枚を失う代わりに待望の《》を 2 つ獲得する。きれいになった戦場を駆け抜ける竹林の《》は、《》のバックアップを受けて岩崎に 5 点の毒を与える。一挙に竹林もリーチをかける。
またも土地と《》だけに戻ってしまった岩崎、《》をプレイして 3/3 ゴーレムを呼び、《》を《》へ装備する。《》へ対処しつつ、竹林の残り少ないライフも狙う構えだ。
竹林 「おもしろいカード引いた」
岩崎 「そーいうのやめよ!」
12 マナを持つ竹林は、X=5 で《》をプレイすると、《》をサーチして《》を破壊する!
一瞬驚いた顔をし、しばし逡巡したのち、あきらめ顔で岩崎は《》を竹林へ投げる。竹林のライフは 2 だ。
岩崎 「ほぼ負けやで」
竹林がライブラリをシャッフルする間、ボードを確認しながら岩崎は思わずもらす。
竹林 「ほぼ勝ちやで」
この岩崎のつぶやきにシャッフルしながら竹林が答える。
このターン中に《》を起動して岩崎を毒殺するには 2 マナ足りない竹林は、《》をプレイして土地をサーチ。
岩崎 「《》しか勝ち手段ないなあ。それ以外負けや」
竹林 「《》なら本体で負けやね」
《》を岩崎が引いた場合、これをプレイして投げて 1 点、まだ 3 マナ残っているのでさらにゴーレムへ装備してもう一度投げることができる。とはいえ、岩崎のデッキに《》は最大で 3 枚。そう都合良く引けるものでもなかろう。
ほぼ詰んでいる状況からも細い勝ち筋を探し、その正解へたどり着けるべく正しいプレイングを目指す。残り 4 ラウンドを戦い抜き、栄光の決勝ラウンドへ進出するために。
ふう、と長い息を吐き。
岩崎はライブラリからカードを叩きつけた。

ギャラリーがわっと盛り上がり、岩崎は思わず笑顔がこぼれた。
岩崎 「今日のオレはなんか持ってるね」
岩崎 2-1 竹林