読み物
Round 5: 仙波 恒太郎(千葉) vs. 石田 龍一郎(愛知)
By Takeshi Miyasaka
曰く「豪腕」と呼ばれるプレイヤーたちは、圧倒的に不利なシチュエーションから場をひっくり返したり、はたまた、大して追加のドローをもたらされないデッキをプレイしながらも、ライブラリのトップから必要なパーツを引き当てることで戦況を打破してしまうことから、その二つ名が与えられるように思う。
もちろん、豪腕だけで勝てるゲームがあるわけもなく、そこに至るまでの丁寧なプレイの結果として「トップデッキが生きる」シチュエーションとなるであろうことは筆者もよく理解している。しかし、そのドラマティックさゆえにトップデッキが語り継がれ、そして伝説へと昇華していくこともまた事実であろう。
2011 年の日本チャンピオン、石田 龍一郎もそうした「豪腕」伝説を持つ一人。白単《》という「右手が光ると強い」アーキタイプで栄光の日曜日を闘い、緻密な計算を重ね、タイトなダメージレースを制して日本王者となった。
ベテランの域に入る仙波 恒太郎は。2010 年末に幕張で開催された世界選手権で、仲間たちと練り上げた白単アーマーという「右手が光ると強い」アーキタイプで The Finals 2010 チャンピオンとなった。
ともに白単ビートダウンデッキでチャンピオンの座に輝き、タイトルを獲得した両者がここでフィーチャーマッチに招待された。チャンピオンたちの華麗なビートダウンの模様をお送りしよう。
Game 1
引き分けが続く熱いダイスロールの結果、仙波が先攻で始まるチャンピオン対決。即キープする仙波に対して、石田は熟慮のすえにテイクマリガン。《》を《》と《》で 3/3 に育ててから攻撃へと繰り出す仙波に対して、石田は《》から一足早い《》と、どちらも一歩も引かない立ち上がり。
 |
仙波 恒太郎 | |
|
ブン回り対決は仙波に分があるようだ。《》をもう一体追加すると、4/4 に育てた最初の勇者をレッドゾーンへ。石田は躊躇することなく《》でブロックして相打ちとする。
戦況が大きく動いたターンのすぐ後で、石田が唱えた《》は《》によって許可されず、石田の戦線はいまだ細いまま、だ。
序盤のイニシアティブを取った仙波は、勢いに乗って全軍アタック。小さい《》こそ《》と相打ちとなるが、《》と《》がスルーされ、石田のライフは 15 となる。
せめて仙波軍のウィニーキャラたちでも止めたい石田は、ドローしたカードをそっとプレイしてじっと仙波を見つめる。仙波はこの《》を許可するものの、代わりに《》によって仙波軍に飛行を持つスピリットが一体追加される。
戦場のイニシアティブを握り続ける仙波は《》とスピリット・トークンを攻撃へ繰り出す。《》が飛行へと変身することを嫌って、これをテイクした石田のライフは 13。《》を戦線へ追加して仙波はターンを終える。
一方の石田は《》と《》を送り込むのみで、仙波にプレッシャーを与えることができない。
仙波は《》でさらにスピリットを増産してからターンを迎えると、スピリット・トークン 2 体と《》で攻撃して石田のライフを 10 とし、《》を追加してターンを終了する。
石田はここでようやく《》を引き当て、ゴーレム・トークンとともに戦場へと繰り出すことに成功する。
のだが。
仙波がしばし小考したのち全軍をレッドゾーンへ送り込むと、《》によって攻撃状態のクリーチャーが増産される。
《》とトークンを残してすべて相打ちとなるようブロックする石田だったが、8 点ものダメージを受け、自軍のクリーチャーたちは壊滅する。
最後のドローを確認すると、さっさと土地を片付けた。
仙波 1-0 石田
Game 2
 |
石田 龍一郎 |
石田 「先攻もらいます。とりあえず一本取り返しますわ!」
若き日本チャンピオンの意気込みとは裏腹に、石田のハンドはいまいちな様子。何度か首をかしげながらテイクマリガン。一方の仙波はしばらく思慮した上でキープを宣言。
ファーストアクションは石田の《》から。仙波は《》から 2 ターン目に《》をプレイするが、細菌トークンによって除去される。そのうえで、石田はあらたな《》を戦場へ追加する。
仙波は、育てる先を失った《》と《》をプレイしてターンを終える。石田は舌打ちしながらドローゴー。どうやら土地が詰まっているか、手札の色が合わないか。石田がコントロールしている土地は《》《》《》だ。
仙波がレッドゾーンに送り込んだ《》と《》を、石田は残った細菌トークンで《》をブロックし、《》を除去してみせる。仙波は気にすることなく《》を戦線へ追加してターンを終える。
4 枚目の土地をプレイできず「くそっ」と思わず悪態をついてしまう若きチャンピオン。それでもできることとして、《》で《》を追放してターンを返す。石田のコントロール下には装備されることを待っている二つの《》が鎮座している。待てば海路の日和あり。急いては事をし損じる。
石田が静であれば仙波は動か。《》を戦場へ追加すると、たたみかけるように《》をプレイする。石田が「待った!」と《》を 2 ライフ支払ってピッチでプレイし《》が育つことだけは防ぐ。あの勇者は生きているとろくなことにならないですし。
ようやく《》を 4 枚目の土地としてプレイした石田は、《》をプレイ、狼・トークンを戦場へ追加してターンを終える。ガラクに生き残られると面倒な仙波は《》で攻撃して《》を屠り、《》をさらに追加する。
しかし、石田も負けていない。ふたたび《》をプレイすると、これも狼・トークンを製造し、なんとか反撃態勢ののろしを上げる。仙波は先ほどと同じく《》をガラクへ向かわせ、もう一体は石田自身へ。さらに戦場へ《》を追加してターンを終える。時間がかかったもののようやく《》を装備する先を得た石田は、両方の狼にそれぞれ装備させて反撃体制を整える。
《》を背負った狼 2 体を前にしばし考えこんだ仙波だが、結局全軍アタック。《》 2 体がスルーされ、《》と《》はそれぞれ狼がブロックし、トークン 2 体と《》が相打ちとなる。仙波は失った人間の代わりとして、《》を追加する。
3 ターンをかけて装備品を背負わせたトークンをもってしても、《》一体と相打ちするばかり。石田と仙波の戦力差をひっくり返すには、石田が《》でもプレイしない限り縮まらないだろう。仙波自身もそう感じていたようだった。石田の土地を見るかぎりは、石田がマナスクリューを起こしているのだろう、とも。
ともあれ、仙波の心配は杞憂に終わる。
石田が《》をプレイできたかどうかはわからないが、石田は手札に眠る《》を恨めしそうに眺めながら、ふっとため息をつくと仙波へ向かって右手を差し出したのだから。
仙波 2-0 石田
- この記事をシェアする
