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グランプリ・千葉2018
第9回戦:瀧村 和幸(東京) vs. 新開 泰弘(茨城)
リミテッドの技術には、「センス」としか言いようのない領域が存在する。
カバレージという言語を紡ぐ仕事の場においてこのような表現を用いるしかないというのには己の未熟さをひたすらに恥じるばかりなのだが、しかしそれが最も「伝わる」表現であることには違いない。
かつて私はその内容を、「不確実な情報や状況に概算で評価を与える際のバランス感覚」であると定義した。
そして、そのバランス感覚が群を抜いて優れていると個人的に感じるプロプレイヤーが2人いる。
佐藤 レイ、そして瀧村 和幸だ。
グランプリ・香港2017でこの2人がリミテッドについてともに語り合い、意気投合した結果としてどちらもトップ8に残ったというのはだから、私にとってはむしろ自然だった。何せ2人のリミテッド感覚はそれほどまでに「鋭い」のである。
それを証するかのように、この初日最終戦のフィーチャーマッチにここまで全勝で現れた瀧村のデッキは、『基本セット2019』シールドのデッキとしてあまりにも異質だった。
《溶岩の斧》はまだいい。しかし一体瀧村の他に誰が、《幽体化》をメインに入れたシールドデッキで全勝できるというのだろうか?
そんな瀧村の対面に座るのは、「ここまで運が良かった」と語る新開。全勝をかけた最終戦で瀧村と当たってしまうのは確かに運が悪いかもしれない。だが、トップ8を目指すならいずれにせよどこかで越えなければならない壁である。
瀧村と新開、勝ってトップ8への特急切符を手にするのははたしてどちらか。
ゲーム1
瀧村が《神秘の考古学者》から《予言》《騒乱の悪魔》とマナ・カーブ通り順調に手を進めるのに対し、新開は2ターン目の《金剛牝馬》以降、土地をセットするのみで動きがない。
よもや土地6枚のような手札でキープしているはずもないが、だとすれば何を構えているのか……不気味にマナを構え続ける新開に対し、しかし瀧村は《騒乱の悪魔》を果敢にレッドゾーンに送りつつ、戦闘後に《ゴブリンの損壊名手》を追加する。
だが返すターン、新開の動きの理由が明らかになる。
5マナで放たれたのは《浄化の輝き》! 2対3交換に過ぎないとはいえ、5ターンをかけて瀧村が築き上げた戦線を一瞬にして薙ぎ払うことに成功する。
さらに《どぶ潜み》からの《苦しめる声》で立て直しを図る瀧村に対し、新開は貯めこんだ手札から満を持して《エイヴンの風魔道士》《旅立った甲板員》と立て続けに展開。返す《どぶ潜み》のアタックは《旅立った甲板員》でブロックしたところで《確実な一撃》を受け、なおも《噛みつきドレイク》を追加されるも、それでも新開のライフはまだ残り12点と意気軒高。
加えて今度は新開の側が《神秘の考古学者》を5マナ構えでプレイ。瀧村の手札は残り2枚、このままじわじわとアドバンテージ差が広がっていってしまうのかと思われた。
だが、ここで瀧村は必殺の《幽体化》で《どぶ潜み》と《噛みつきドレイク》をブロック不可にし、このターン一挙7点を叩き込むと、なおも《業火のヘリオン》をプレイして新開に対処を迫る。
そして新開が《業火のヘリオン》に《光明の縛め》を貼りつつ《空の技師》を展開すると、返すターンに瀧村は手札の《感電》を公開。
瀧村「《エイヴンの風魔道士》に打ち込んで《どぶ潜み》で2点、《噛みつきドレイク》アタックで3点です」
新開「あ、そうか《空の技師》飛んでないのか……」
瀧村、鮮やかに一本先取。
瀧村 1-0 新開
ゲーム2
新開がワンマリガン、そこから《前兆語り》の鏡打ちで幕を開けたゲームは、3ターン目にして1ゲーム目とは異なる様相が展開されることとなった。《空中走査器》の返しで置かれた瀧村の3枚目の土地は「沼」。どうやら攻撃的なメインボードからの緩急を狙ってサイドチェンジで青黒にしたようだ。そのまま《エイヴンの風魔道士》を送り出すと、《匪賊の斧》を装備した《空中走査器》の攻撃はスルーして、ダメージレースの構えを見せる。
ここで瀧村は《強迫》で新開の手札の《予期》を落としつつ自らも《予期》をプレイして4枚目の土地にアクセスするが、ナチュラルに5枚目の土地を引いた新開は《秘密の回収者》で《予期》を回収して譲らない。続けて瀧村は《噛みつきドレイク》を送り出すがこれは3/1となった《空中走査器》と相打ちとなり、ライフは瀧村14点 対 新開12点と五分の攻防。
しかし、実は《沼》を1枚しか引けていない瀧村はダブルシンボルの呪文を抱えて動きが鈍い。他方で《匪賊の斧》をまとわせた《秘密の回収者》で攻め立てる新開は《血の美食家》を《取り消し》で打ち消し、《機械職人の守護者》を《分散》でどかし、《鏡像》で《前兆語り》をコピーしつつどうにか押し切ろうとする。
出し直された《機械職人の守護者》は《どんでん返し》で奪い、これは即座に瀧村の《どんでん返し》で返されるも、なおも新開は5マナ浮きの《神秘の考古学者》を送り出し、瀧村に回答を迫り続ける。
それでも、ここでようやく2枚目の《沼》を引き込んだ瀧村は《リッチの愛撫》で《神秘の考古学者》を除去。続く《エイヴンの風魔道士》も《殺害》で対処、《星冠の雄鹿》は《雇われ刺客》で対処と、完璧な受けでしのぎ続ける。新開も《ふるい分け》を引き込むのだが、ここにきてドローが土地ばかりで苦笑を隠さない。
新開 泰弘 |
しばらくドローゴーが続いた後、新開が引き込んだ《空の技師》に対しては《機械職人の守護者》を《鏡像》でコピーして構えつつ、殴ってきたところで《匪賊の斧》を《分散》して飛行を失わせてからダブルブロックで打ち取る好プレイ。瀧村の凌ぎのテクが光るも、実は別角度でゲームの決着が迫りつつあった。
おもむろにライブラリーにあるカードを数える瀧村。そう、この時点で2人のライブラリーはどちらも10枚前後。ただわずかに瀧村の方が枚数が多く、3枚差であることを確認した瀧村は10マナ構えで《神秘の考古学者》を送り出すと、1回だけ2枚ドロー能力を起動してから《機械職人の守護者》2体で10点アタックを敢行する。
これには新開も返すターンでたまらず虎の子の《浄化の輝き》を切るしかない。そして、ここで瀧村が考え込む番となった。
俎上に乗っているのは、残る5マナで《神秘の考古学者》の2枚ドロー能力を起動するか否か。ライブラリーの枚数は新開が9枚、瀧村が10枚。起動してしまうと、もしこの後ライブラリー勝負になった場合の敗北が確定する。新開の残り呪文の中には1ゲーム目で見た《光明の縛め》もあり、加えて瀧村は《前兆語り》と《予期》で呪文3枚を自身のライブラリーの下に送ってしまっていた。2枚ドローしたところで、残り少ない有効カードをきっちり引き込めるのか。あるいは起動しないとしても今度はライブラリー切れまでの間、新開が手札に温存した (かもしれない) 戦力に対抗できるのか。
どちらにせよ裏目のリスクはある。その状況で、瀧村は選択した。
瀧村 和幸 |
「不確実な情報や状況に概算で評価を与える際のバランス感覚」。瀧村のセンスは、ライブラリーアウトのリスクを踏まえてもなお「2枚引くべき」という答えをはじき出した。
はたして、新開は《噛みつきドレイク》という後続を持っていた。これに対し、2枚ドローできっちり呪文を引き込んだ瀧村は、《流血の空渡り》《骸骨射手》という満点のリカバリーを見せる。
そして瀧村の《睡眠》が、長かったゲームに終止符を打ったのだった。
瀧村 2-0 新開
瀧村、《幽体化》を駆使して見事初日全勝!
8 《山》 7 《島》 1 《高地の湖》 -土地(16)- 1 《神秘の考古学者》 1 《前兆語り》 1 《エイヴンの風魔道士》 1 《ボガートの粗暴者》 1 《ドラゴンの卵》 1 《どぶ潜み》 1 《鏡像》 1 《オナッケのオーガ》 1 《ゴブリンの損壊名手》 1 《騒乱の悪魔》 1 《業火のヘリオン》 1 《噛みつきドレイク》 1 《斉射の古参兵》 1 《機械職人の守護者》 1 《秘密の回収者》 -クリーチャー(15)- |
1 《分散》 1 《本質の散乱》 1 《幽体化》 1 《確実な一撃》 1 《苦しめる声》 1 《予言》 1 《感電》 1 《睡眠》 1 《溶岩の斧》 -呪文(9)- |
1 《放棄された聖域》 1 《アジャニの歓迎》 1 《強迫》 1 《更生の泉》 1 《錆色翼の隼》 1 《溶解》 1 《蔦の壁》 1 《安全の護符》 1 《予期》 1 《夜の子》 1 《夜明けの司祭》 1 《悪運尽きた造反者》 1 《耕地這い》 1 《緑林の歩哨》 1 《冥府の傷跡》 1 《騎士の誓約》 1 《帰化》 1 《垂直落下》 1 《悔恨する僧侶》 1 《活力回復》 1 《返報》 1 《野生林の鉤爪》 1 《歩く死骸》 1 《ケンタウルスの狩猟者》 1 《雇われ刺客》 1 《光明の縛め》 1 《マナリス》 1 《精神腐敗》 1 《殺害》 1 《樫変化》 1 《ペガサスの駿馬》 1 《心理腐食》 1 《喚起》 1 《サテュロスの結界師》 1 《流血の空渡り》 1 《空中走査器》 1 《トレイリアの学者》 1 《ラッパの一吹き》 1 《信頼できる荷役獣》 1 《霊気盾の工匠》 1 《血占い》 1 《骨を灰に》 1 《逆毛の猪》 1 《ドワーフの僧侶》 1 《凛々しい騎兵隊》 1 《英雄的援軍》 1 《感染性の恐怖》 1 《毒矢尻の射手》 1 《骸骨射手》 1 《双頭ゾンビ》 1 《血の美食家》 1 《炎の精霊》 1 《ギガントサウルス》 1 《信仰の伝令》 1 《リッチの愛撫》 1 《ロウクスの神託者》 1 《どんでん返し》 1 《茨隠れの狼》 1 《巨大な戦慄大口》 1 《牙の騎士》 1 《驚異的成長》 -サイドボード(61)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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