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The Finals11
準々決勝: 岡田 尚也(東京) vs. 植田 勝也(愛知)
By Masami Kaneko
《ルーン唱えの長槍》。
スタンダードの、それもThe Finals決勝ラウンドの大舞台でこのカードが使われることを誰が想像しただろうか。効果だけであれば強力に見えるが、結局この装備品は相棒を見つけられていなかった。
一方、《荒廃の工作員》は自身の活躍の場をモダンに見出し、《猛火の群れ》を相棒にプロツアー・フィラデルフィアのトップ8にサム・ブラック/Sam Black(アメリカ)を導いた。
そして。スタンダードで、この2枚が出会った。
呪文を唱えれば唱えるほどパワーが上がる《ルーン唱えの長槍》のパワーアップには制限がない。この2枚を探すドロー強化は全て《ルーン唱えの長槍》を強化するカードともなる。その光景はさながら《猛火の群れ》のようだ。
普段は東京の「早大マジックザギャザリング研究会」でマジックをしているという岡田 尚也(東京)は、この青黒感染デッキでスタンダードラウンドを全勝しており、トップ8進出の大きな原動力としている。自身のデッキを「青黒ルーン」と言う程に《ルーン唱えの長槍》を重要視しているようだ。
それもそのはず、岡田はこのカードを発売当初から使い続けており、調整を繰り返したうえで今の形に落ち着いたとのこと。岡田と、そして長槍を携えた工作員は、スタンダードラウンドの全勝とThe Finalsのトップ8の栄光に加え、さらに優勝の盾を追加するべく準々決勝に挑む。
対する植田 勝也(愛知)は、何度もプロツアーに参戦しており、2回のグランプリトップ8やFinals/Limitsそれぞれのトップ8経験も有る、安定した成績を残す地元愛知の強豪。
Finalsの権利こそ持っていなかったが、12/23(金)の直前予選を当たり前のように通過。さらに24日(土)のFinals本戦もスタンダードラウンドこそ2-1-1と崖っぷちとなるも、モダンでは全勝しトップ8入りを決めている。
そんな植田、トップ8プロフィールの「普段、どれくらいの頻度でスタンダードをプレイされますか?」という質問には、はっきりと「今年は合計2日(昨日と今日)」と書くほどにマジックから離れていたようだ。
しかし逆に言えば、それで勝つのは、植田のマジックの実力は本物だということだろう。
デッキは青白タッチ黒コントロール。
いわゆる「太陽拳」と呼ばれる構成とは違い、青白パーミッションに《破滅の刃》と《禁忌の錬金術》のために黒をタッチしたような構成となっている。
通常の青白と比較すれば単体除去を追加している分、個別の感染クリーチャーに対処できる構成となっており、捌ききれればアドバンテージ量で圧倒できるだろう。
攻めきるか、捌ききるか。練習量か、センスか。そしてこのFinals準々決勝の大舞台で毒は炸裂するのか。
岡田 尚也
が、ここまでプランを練っていた植田。これには当然《破滅の刃》が飛ぶ。予定通りだ。
そして植田はメインで《禁忌の錬金術》を打ち新たなカードを求める。《幽霊街》をセットして終了。あくまで《大修道士、エリシュ・ノーン》はプレイしない。《悪性の傷》と《破滅の刃》の組み合わせによる負けをケアする堅実なプレイだ。
岡田は必殺の《ルーン唱えの長槍》!
これは通り、植田としては「数える気もおきない・・・通ったら死ぬし。」と冗談を飛ばす。文字通り「必殺」の攻撃力を持つ装備だ。
さて、しかしこのターンはどう攻撃するべきか。
《ルーン唱えの長槍》の装備を行うと、《墨蛾の生息地》は1体しか攻撃できない。それでは見えている《幽霊街》で対処されてしまう。
2体の土地が攻撃に向かい、植田はここには《幽霊街》を起動せず。9個目の毒カウンターをもらい、リーチ。
植田は《幽霊街》2枚目を。これで盤面は対処された。
岡田も対処されるとはわかっているが、攻撃しないわけにはいかない。《墨蛾の生息地》2枚が《幽霊街》2枚により消え去っていく。植田はなんとか毒カウンターが9個の状態で耐えている。
岡田の次の手は《荒廃の工作員》。植田はしかし《禁忌の錬金術》をフラッシュバックしていく。ここで《忘却の輪》等が落ちるのを見て、岡田も苦笑い。ターンこそ帰ってきたものの当然ここには《破滅の刃》。
既にアドバンテージ差は圧倒的になっている。希望は、9個の毒カウンターだ。残り1個。残り1個を与えるカードを。
いや、手札には《悪性の傷》が2枚と《破滅の刃》が有る。こちらが引くまでもない、植田がクリーチャーさえプレイしてくれれば!
しかし植田がプレイしたフィニッシャは《解放された者、カーン》だった。[+4]能力が岡田の手札を、そして勝ちへの道を消し去っていく。
《墨蛾の生息地》を引くことはできた岡田だが、既に《解放された者、カーン》が起動されている状態では攻撃は不可能だ。
岡田も一応《禁忌の錬金術》を打って《ファイレクシアの十字軍》をプレイしてみたりもするが、植田はこれには手札で対処。淡々と《解放された者、カーン》がカウンターを貯めていく。どこか、どこかで植田がクリーチャーを出すような隙を見せれば。しかし植田も《大修道士、エリシュ・ノーン》はプレイせず、負けパターンをケアしていく。
負ける可能性のあるプレイはしない。植田の実力は本物だ。
岡田の願いも通じず、《解放された者、カーン》の「強くてニューゲーム」が発動した。
お互いに正しいルールの確認をジャッジに取ったうえでゲームが再開される。植田が《金属海の沿岸》と《墨蛾の生息地》、そして《ルーン唱えの長槍》をコントロールした状態だ。
再度スタートされたゲームは、岡田の《禁忌の錬金術》が最初のアクションとなった。
岡田の手札も悪くなく、盤面こそ不利だが、植田の動き次第ではあるいは。
岡田は《禁忌の錬金術》を重ねていき、お互いの《墨蛾の生息地》が睨み合う。植田は再開されたゲームでは未だに何もプレイしていない。全く動きが無いのが逆に不気味だ。
岡田の《ファイレクシアの十字軍》からゲームは動き出す。
植田はこれに《雲散霧消》で対処。岡田はそれを確認し、《思案》でカードを求めていく。
岡田、ふたたび《ファイレクシアの十字軍》。植田もこれには《瞬唱の魔道士》からの《雲散霧消》フラッシュバックで応じる。魔道士には《悪性の傷》が打ち込まれ、改めて植田に毒カウンターが1つ。
岡田は必殺の《ルーン唱えの長槍》! 植田は対処を迫られる。
とりあえずはここで《白の太陽の頂点》をX=2でプレイ。自分が負けるより先に勝つ。軸を変えた。植田の元に現れた2体の猫が、岡田のライフを削っていく。更に植田は《忘却の輪》。お互いの《マナ漏出》の打ち合いの末、《ルーン唱えの長槍》は追放される。
しかし植田はこれによりフルタップ。岡田は決められるならこのターンに決めたい。気合を入れてカードを引いたあと、検討を重ねる。《ギタクシア派の調査》をプレイし手札をチェック。
岡田の《思案》からゲームはスタート。3枚には満足したのか、次のターンは《荒廃の工作員》。
1回攻撃したところでここに《破滅の刃》が飛ぶが、しかしこれには岡田も《マナ漏出》で攻める姿勢を継続。
お互いに《禁忌の錬金術》で手札を調整していくなか、《荒廃の工作員》が攻撃していたが、これにも《破滅の刃》。《ファイレクシアの十字軍》も、植田はこれを通したうえで《審判の日》。
いずれにせよクロックを用意しなくてはならない岡田。《饗宴と飢餓の剣》が通り、これを《墨蛾の生息地》に装備。ここには《破滅の刃》等も飛んでくることはなく、無事植田に6個目の毒カウンターを与えたうえで、土地がアンタップされる。
植田はそのままでは危ないと《忘却の輪》で《饗宴と飢餓の剣》に対処。その後はお互いが《禁忌の錬金術》や《熟慮》で手札を整理していく。
数ターンして岡田が仕掛けた。《蔑み》での牽制に植田は《瞬唱の魔道士》でこたえ、《雲散霧消》にフラッシュバックを与える。公開されたのは《破滅の刃》と《島》。
「《破滅の刃》有るのかー。」とつぶやきながら岡田はこのターンを終了。わざわざ《雲散霧消》に飛び込んでいくことはない。
そして岡田は《ファイレクシアの十字軍》から《ルーン唱えの長槍》をプレイ! どちらも先ほどの手札では対処されないカードだ。
《破滅の刃》を打たせるために《墨蛾の生息地》を起動して攻撃。これはもちろん除去される。そこで《ルーン唱えの長槍》だが、これに対して《神への捧げ物》が飛ぶ。岡田は苦い顔だ。
しかし《ファイレクシアの十字軍》に対処しなくてはいけないのは植田。一度は《瞬唱の魔道士》が身を挺し守り、更に《審判の日》で対処しようとするが、ここには《否認》。そして《ファイレクシアの十字軍》により8個目の毒カウンターが。リーチだ。盤面の緊張感も高まる。
さらに岡田は《墨蛾の生息地》を置いたうえで、《ファイレクシアの破棄者》をプレイ。実質的な選択肢は《ギデオン・ジュラ》か《解放された者、カーン》か。考えた末に《解放された者、カーン》を指定した。
対処できるカードを、《ファイレクシアの十字軍》を処理できるカードを。
とりあえずは《審判の日》や《瞬唱の魔道士》で良い。そのうえで《墨蛾の生息地》に対処しなくてはならないが、まだ可能性は有る。植田は願いながら、力を込めて、想いを込めてドローする。
そして植田は、トップデッキしたカードを盤面に叩きつけた!
いや、君じゃない。
岡田 尚也 1-1 植田 勝也
Game 1
六面ダイスを2個ふった岡田の合計値は5。「うん、悪くない。」と呟くが平均値以下だ。 植田は平均値以上の10を出し、先手を獲得。 植田は初手を見たうえで熟考のうえキープ。岡田はそれを見たうえで悩まずにキープ。 岡田の《思案》からゲームは始まる。少し悩むが、お気に召さなかったようだ。新たなカードを求めシャッフルを行い、次のターンには《荒廃の工作員》。岡田の勝利を支えてきたこの工作員は、今日も岡田の勝利を工作してくれるのだろうか。 《荒廃の工作員》に攻撃されながら《禁忌の錬金術》等で手札を整えていく植田。岡田が《ファイレクシアの十字軍》までも追加した返しで、《審判の日》により場を一掃する。 岡田はしかし、土地を置いたうえで《墨蛾の生息地》にて3個目の毒カウンターを。さらに《ファイレクシアの十字軍》をプレイし《審判の日》をものともせず盤面を作っていく。 植田は《瞬唱の魔道士》からの《審判の日》により《ファイレクシアの十字軍》を対処。 岡田は《思案》で更なる毒を求める。満足のいく3枚だったのか順番を入れ替えたのみで、《墨蛾の生息地》に《変異原性の成長》により植田の毒カウンターは6個。次のターンには7個目を重ね、更に追加の《墨蛾の生息地》。植田が《禁忌の錬金術》をフラッシュバックするが、そこには《マナ漏出》。今のうちに押し切ってしまお考えだろう。心なしか植田の顔色も悪い。毒が回ってきているのだろうか。 しかし実はここで植田の手札は《大修道士、エリシュ・ノーン》《聖別されたスフィンクス》《破滅の刃》。 植田は対処できないのではなく、対処のプランを選んでいたのだ。植田の場には8マナ。岡田は2マナを立てている。 植田は検討したうえで《聖別されたスフィンクス》をプレイ。岡田は一旦植田に2枚のカードを提供するも、《堕落した良心》にてコントロールを奪う!- 《聖別されたスフィンクス》
- 《熟慮》
- 《審判の日》
- 《機を見た援軍》
Game 2
植田 勝也 | |
Game 3
泣いても笑っても最終ゲーム・・・ではないかもしれないのがこのゲーム。 既に2ゲームが、いや、ほぼ3ゲームが行われ、時間も既に1時間を超えている。どちらに傾いてもおかしくないゲームだけに、お互いの疲労も相当なものだろう。 植田は手札を見て即座にマリガン。岡田は力強くキープ。 6枚の手札も植田は苦い顔。結局ダブルマリガンとなってしまう。 そして5枚を引いた・・・つもりがなんと植田、ここで6枚引いてしまう。 ジャッジの裁定により、この6枚からジャッジがランダムで2枚をライブラリーに戻すことに。(参照:イベント違反処置指針の3.5節) この時点で植田の手札は土地が3枚と《破滅の刃》、《審判の日》が2枚。クリーチャーへの対処もマナも十分の好手札だった。 しかし4枚になったあとの手札を見てみれば、そこには土地が1枚の手札が。 最強の《Hymn to Tourach》が打たれた植田は「ジャッジさん上手いなー」とぼやきつつ、仕方なくこの手札をキープ。 植田が土地を置いたところで、岡田は《ギタクシア派の調査》により植田の手札を確認しにいく。《審判の日》2枚と《破滅の刃》を公開しつつ「ジャッジに戻されたのが土地2枚だったんだよ。」と岡田にも愚痴る植田。しかしトップからは《孤立した礼拝堂》を引き込み、とりあえず《破滅の刃》はプレイできる状態に。 岡田は順調に3T目に《ファイレクシアの十字軍》を。これは《破滅の刃》では対処できない。植田の土地は2枚のままだ。そして岡田の4ターン目は《ルーン唱えの長槍》。まだ必殺の力とはいかないが、《ファイレクシアの十字軍》に1の追加の力を与え、植田に毒を与えていく。植田には毒が追加され、しかし土地は追加されない。 5ターン目には《蔑み》を唱え安全の確認をしたうえで更に強化。毒を追加していく。植田は最後まで4枚目どころか3枚目の土地も引けず、無念の投了となった。 岡田 尚也 2-1 植田 勝也 岡田 尚也、オリジナルの相棒を携えトップ4に進出!RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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