By Masami Kaneko
《》。
スタンダードの、それもThe Finals決勝ラウンドの大舞台でこのカードが使われることを誰が想像しただろうか。効果だけであれば強力に見えるが、結局この装備品は相棒を見つけられていなかった。
一方、《》は自身の活躍の場をモダンに見出し、《》を相棒にプロツアー・フィラデルフィアのトップ8にサム・ブラック/Sam Black(アメリカ)を導いた。

そして。スタンダードで、この2枚が出会った。
呪文を唱えれば唱えるほどパワーが上がる《》のパワーアップには制限がない。この2枚を探すドロー強化は全て《》を強化するカードともなる。その光景はさながら《》のようだ。
普段は東京の「早大マジックザギャザリング研究会」でマジックをしているという岡田 尚也(東京)は、この青黒感染デッキでスタンダードラウンドを全勝しており、トップ8進出の大きな原動力としている。自身のデッキを「青黒ルーン」と言う程に《》を重要視しているようだ。
それもそのはず、岡田はこのカードを発売当初から使い続けており、調整を繰り返したうえで今の形に落ち着いたとのこと。岡田と、そして長槍を携えた工作員は、スタンダードラウンドの全勝とThe Finalsのトップ8の栄光に加え、さらに優勝の盾を追加するべく準々決勝に挑む。
対する植田 勝也(愛知)は、何度もプロツアーに参戦しており、2回のグランプリトップ8やFinals/Limitsそれぞれのトップ8経験も有る、安定した成績を残す地元愛知の強豪。
Finalsの権利こそ持っていなかったが、12/23(金)の直前予選を当たり前のように通過。さらに24日(土)のFinals本戦もスタンダードラウンドこそ2-1-1と崖っぷちとなるも、モダンでは全勝しトップ8入りを決めている。
そんな植田、トップ8プロフィールの「普段、どれくらいの頻度でスタンダードをプレイされますか?」という質問には、はっきりと「今年は合計2日(昨日と今日)」と書くほどにマジックから離れていたようだ。
しかし逆に言えば、それで勝つのは、植田のマジックの実力は本物だということだろう。
デッキは青白タッチ黒コントロール。
いわゆる「太陽拳」と呼ばれる構成とは違い、青白パーミッションに《》と《》のために黒をタッチしたような構成となっている。
通常の青白と比較すれば単体除去を追加している分、個別の感染クリーチャーに対処できる構成となっており、捌ききれればアドバンテージ量で圧倒できるだろう。
攻めきるか、捌ききるか。練習量か、センスか。そしてこのFinals準々決勝の大舞台で毒は炸裂するのか。
Game 1
六面ダイスを2個ふった岡田の合計値は5。「うん、悪くない。」と呟くが平均値以下だ。
植田は平均値以上の10を出し、先手を獲得。
植田は初手を見たうえで熟考のうえキープ。岡田はそれを見たうえで悩まずにキープ。
岡田の《》からゲームは始まる。少し悩むが、お気に召さなかったようだ。新たなカードを求めシャッフルを行い、次のターンには《》。岡田の勝利を支えてきたこの工作員は、今日も岡田の勝利を工作してくれるのだろうか。
《》に攻撃されながら《》等で手札を整えていく植田。岡田が《》までも追加した返しで、《》により場を一掃する。
岡田はしかし、土地を置いたうえで《》にて3個目の毒カウンターを。さらに《》をプレイし《》をものともせず盤面を作っていく。
植田は《》からの《》により《》を対処。
岡田は《》で更なる毒を求める。満足のいく3枚だったのか順番を入れ替えたのみで、《》に《》により植田の毒カウンターは6個。次のターンには7個目を重ね、更に追加の《》。植田が《》をフラッシュバックするが、そこには《》。今のうちに押し切ってしまお考えだろう。心なしか植田の顔色も悪い。毒が回ってきているのだろうか。
しかし実はここで植田の手札は《》《》《》。
植田は対処できないのではなく、対処のプランを選んでいたのだ。植田の場には8マナ。岡田は2マナを立てている。
植田は検討したうえで《》をプレイ。岡田は一旦植田に2枚のカードを提供するも、《》にてコントロールを奪う!
岡田 尚也
が、ここまでプランを練っていた植田。これには当然《》が飛ぶ。予定通りだ。
そして植田はメインで《》を打ち新たなカードを求める。《》をセットして終了。あくまで《》はプレイしない。《》と《》の組み合わせによる負けをケアする堅実なプレイだ。
岡田は必殺の《》!
これは通り、植田としては「数える気もおきない・・・通ったら死ぬし。」と冗談を飛ばす。文字通り「必殺」の攻撃力を持つ装備だ。
さて、しかしこのターンはどう攻撃するべきか。
《》の装備を行うと、《》は1体しか攻撃できない。それでは見えている《》で対処されてしまう。
2体の土地が攻撃に向かい、植田はここには《》を起動せず。9個目の毒カウンターをもらい、リーチ。
植田は《》2枚目を。これで盤面は対処された。
岡田も対処されるとはわかっているが、攻撃しないわけにはいかない。《》2枚が《》2枚により消え去っていく。植田はなんとか毒カウンターが9個の状態で耐えている。
岡田の次の手は《》。植田はしかし《》をフラッシュバックしていく。ここで《》等が落ちるのを見て、岡田も苦笑い。ターンこそ帰ってきたものの当然ここには《》。
既にアドバンテージ差は圧倒的になっている。希望は、9個の毒カウンターだ。残り1個。残り1個を与えるカードを。
いや、手札には《》が2枚と《》が有る。こちらが引くまでもない、植田がクリーチャーさえプレイしてくれれば!


しかし植田がプレイしたフィニッシャは《》だった。[+4]能力が岡田の手札を、そして勝ちへの道を消し去っていく。
《》を引くことはできた岡田だが、既に《》が起動されている状態では攻撃は不可能だ。
岡田も一応《》を打って《》をプレイしてみたりもするが、植田はこれには手札で対処。淡々と《》がカウンターを貯めていく。どこか、どこかで植田がクリーチャーを出すような隙を見せれば。しかし植田も《》はプレイせず、負けパターンをケアしていく。
負ける可能性のあるプレイはしない。植田の実力は本物だ。
岡田の願いも通じず、《》の「強くてニューゲーム」が発動した。

お互いに正しいルールの確認をジャッジに取ったうえでゲームが再開される。植田が《》と《》、そして《》をコントロールした状態だ。
再度スタートされたゲームは、岡田の《》が最初のアクションとなった。
岡田の手札も悪くなく、盤面こそ不利だが、植田の動き次第ではあるいは。
岡田は《》を重ねていき、お互いの《》が睨み合う。植田は再開されたゲームでは未だに何もプレイしていない。全く動きが無いのが逆に不気味だ。
岡田の《》からゲームは動き出す。
植田はこれに《》で対処。岡田はそれを確認し、《》でカードを求めていく。
岡田、ふたたび《》。植田もこれには《》からの《》フラッシュバックで応じる。魔道士には《》が打ち込まれ、改めて植田に毒カウンターが1つ。
岡田は必殺の《》! 植田は対処を迫られる。
とりあえずはここで《》をX=2でプレイ。自分が負けるより先に勝つ。軸を変えた。植田の元に現れた2体の猫が、岡田のライフを削っていく。更に植田は《》。お互いの《》の打ち合いの末、《》は追放される。
しかし植田はこれによりフルタップ。岡田は決められるならこのターンに決めたい。気合を入れてカードを引いたあと、検討を重ねる。《》をプレイし手札をチェック。
この4枚を見て岡田は「濃っ!」とぼやくが、それには植田が「いやいや、これどんなカードだと思ってんの!(《》を指して)」と突っ込みを。
このターンは結局《》で猫を1匹自分のもとに。植田は《》で場を一掃。徹底的に場を整理していく。
岡田の《》の返しで植田は《》で1/1を3体加える。《》も含めて、かなり強烈なクロックとなっている。先程は無駄カードと言っていたが、なかなかどうして役に立っている。岡田は《》《》で攻撃。これを通して4つの毒カウンターが。またふたたび毒がまわりはじめてきた。
《》を携え兵士トークン3体は攻撃に向かうが、ここには《》が飛んでくる。しかしこれを植田は《》。完全に本体を狙っている。実際にこの戦闘により岡田のライフは3となった。岡田は《》をブロッカーとして用意したうえで、7個目の毒カウンターを植田に。こちらもリーチだ。
どう転んでも最後のターン。
岡田の土地は《》を含む2マナが立っており、ブロッカーとして《》がいる。
植田の側には1/1の兵士トークンが3人、1人は《》を携えている。
なんとか削り切るプランをと、植田は意を決して《》をプレイ。それに対して岡田は《》をプレイ。しかしそれを更に植田が《》!
場に出てきた《》の能力によりブロッカーの《》が追放され、同時に岡田のライフも0を割った。
長い長いゲームは、本当に、本当にギリギリながら植田がもぎ取った。
岡田 尚也 0-1 植田 勝也
長い長いゲームが終わった。事実上、ほぼ2ゲームを行なっている。既に1時間近く経っているのだ。しかしまだ、追加されたゲームカウントは"1"のみ。次のゲームの準備を、二人は始めている。
岡田は《》《》《》を追加し、《》や《》を抜いていく。
植田はデッキの構成を若干軽く調整。また、装備品に対処する《》を入れた。
Game 2
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| 植田 勝也 | |
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岡田の《》からゲームはスタート。3枚には満足したのか、次のターンは《》。
1回攻撃したところでここに《》が飛ぶが、しかしこれには岡田も《》で攻める姿勢を継続。
お互いに《》で手札を調整していくなか、《》が攻撃していたが、これにも《》。《》も、植田はこれを通したうえで《》。
いずれにせよクロックを用意しなくてはならない岡田。《》が通り、これを《》に装備。ここには《》等も飛んでくることはなく、無事植田に6個目の毒カウンターを与えたうえで、土地がアンタップされる。
植田はそのままでは危ないと《》で《》に対処。その後はお互いが《》や《》で手札を整理していく。
数ターンして岡田が仕掛けた。《》での牽制に植田は《》でこたえ、《》にフラッシュバックを与える。公開されたのは《》と《》。
「《》有るのかー。」とつぶやきながら岡田はこのターンを終了。わざわざ《》に飛び込んでいくことはない。
そして岡田は《》から《》をプレイ! どちらも先ほどの手札では対処されないカードだ。
《》を打たせるために《》を起動して攻撃。これはもちろん除去される。そこで《》だが、これに対して《》が飛ぶ。岡田は苦い顔だ。
しかし《》に対処しなくてはいけないのは植田。一度は《》が身を挺し守り、更に《》で対処しようとするが、ここには《》。そして《》により8個目の毒カウンターが。リーチだ。盤面の緊張感も高まる。
さらに岡田は《》を置いたうえで、《》をプレイ。実質的な選択肢は《》か《》か。考えた末に《》を指定した。
対処できるカードを、《》を処理できるカードを。
とりあえずは《》や《》で良い。そのうえで《》に対処しなくてはならないが、まだ可能性は有る。植田は願いながら、力を込めて、想いを込めてドローする。
そして植田は、トップデッキしたカードを盤面に叩きつけた!
いや、君じゃない。
岡田 尚也 1-1 植田 勝也
Game 3
泣いても笑っても最終ゲーム・・・ではないかもしれないのがこのゲーム。
既に2ゲームが、いや、ほぼ3ゲームが行われ、時間も既に1時間を超えている。どちらに傾いてもおかしくないゲームだけに、お互いの疲労も相当なものだろう。
植田は手札を見て即座にマリガン。岡田は力強くキープ。
6枚の手札も植田は苦い顔。結局ダブルマリガンとなってしまう。
そして5枚を引いた・・・つもりがなんと植田、ここで6枚引いてしまう。
ジャッジの裁定により、この6枚からジャッジがランダムで2枚をライブラリーに戻すことに。(参照:
イベント違反処置指針の3.5節)
この時点で植田の手札は土地が3枚と《》、《》が2枚。クリーチャーへの対処もマナも十分の好手札だった。
しかし4枚になったあとの手札を見てみれば、そこには土地が1枚の手札が。
最強の《》が打たれた植田は「ジャッジさん上手いなー」とぼやきつつ、仕方なくこの手札をキープ。
植田が土地を置いたところで、岡田は《》により植田の手札を確認しにいく。《》2枚と《》を公開しつつ「ジャッジに戻されたのが土地2枚だったんだよ。」と岡田にも愚痴る植田。しかしトップからは《》を引き込み、とりあえず《》はプレイできる状態に。
岡田は順調に3T目に《》を。これは《》では対処できない。植田の土地は2枚のままだ。そして岡田の4ターン目は《》。まだ必殺の力とはいかないが、《》に1の追加の力を与え、植田に毒を与えていく。植田には毒が追加され、しかし土地は追加されない。
5ターン目には《》を唱え安全の確認をしたうえで更に強化。毒を追加していく。植田は最後まで4枚目どころか3枚目の土地も引けず、無念の投了となった。
岡田 尚也 2-1 植田 勝也
岡田 尚也、オリジナルの相棒を携えトップ4に進出!