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チャンピオンズカップファイナル サイクル1

戦略記事

デッキテク:瀬尾 武士の「スゥルタイ無限ダンジョン」

富澤 洋平
 

 本大会を語る上で無視できない要素をあげるとすれば、『兄弟戦争』の加入があげられる。この最新セットは既存のデッキのほとんどに恩恵をもたらし、軒並みアップデートを果たしており、もはや「パイオニアホライゾン」と言えるほどの影響力だ。

 だが、『兄弟戦争』のもたらした影響は既存のデッキのみに留まらず、新しいコンセプトのコンボデッキを生み出すに至った。

瀬尾 武士

 瀬尾 武士が使用するデッキもそのひとつ。『兄弟戦争』の《ガイアの眼、グウェナ》による「無限ダンジョン」を持ち込んでいるのだ。

 新しいコンボデッキの誕生に興奮を抑えきれず、瀬尾にインタビューをお願いすることにした。

Takeshi Senoo - 「スゥルタイ無限ダンジョン」
チャンピオンズカップファイナル サイクル1 / パイオニア (2022年11月26~27日)[MO] [ARENA]
4 《花盛りの湿地
4 《植物の聖域
4 《繁殖池
4 《草むした墓
2 《ヤヴィマヤの沿岸
1 《耐え抜くもの、母聖樹
1 《
1 《ラノワールの荒原
1 《天上都市、大田原
-土地(22)-

4 《エルフの神秘家
4 《ラノワールのエルフ
4 《眷者の神童、キナン
3 《獣相のシャーマン
4 《アーチリッチ、アサーラック
4 《ガイアの眼、グウェナ
3 《恋煩いの野獣
2 《墓所のうろつくもの
1 《バルデュヴィアの非道
1 《カル・シスマの恐怖、殺し爪
-クリーチャー(30)-
3 《伝説の秘宝
1 《バントゥの碑
4 《集合した中隊
-呪文(8)-
2 《致命的な一押し
1 《タミヨウの保管
2 《辺境地の罠外し
2 《無神経な血魔道士
1 《野獣の擁護者、ビビアン
2 《エシカの戦車
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
1 《スカラベの神
1 《星界の大蛇、コーマ
2 《膨らんだ意識曲げ
-サイドボード(15)-

無限ダンジョンとは

――まずはどんなデッキか教えてください。

瀬尾「《ガイアの眼、グウェナ》で《アーチリッチ、アサーラック》を複数回プレイするコンボデッキです。《ガイアの眼、グウェナ》はパワーが5以上であるクリーチャー・呪文を唱えるたび、自身の上に+1/+1カウンター1個を置き、これをアンタップするため、2マナ以下のパワー5以上のクリーチャーならば好きなだけプレイできることになります。横に《眷者の神童、キナン》を並べておけば生成するマナが3マナに増え、パワー5の《アーチリッチ、アサーラック》を繰り返しプレイ可能となります。あとは《ファンデルヴァーの失われた鉱山》を探索し続けてライフを攻めるわけです」

――このデッキはご自身で作られたのでしょうか?

瀬尾「もともとはTwitterで話題になっていた《ガイアの眼、グウェナ》と《アーチリッチ、アサーラック》に目をつけていて、Magic Onlineの大会結果でベースとなるデッキを見つけました。モダンの《献身のドルイド》コンボに似たデッキで強そうと思い、調整することにしました」

――このデッキの強みはどういったところでしょうか?

瀬尾「最短3ターンで決まる速度感と、デッキ誕生から日が浅いこともあり、相手視点ではデッキの全貌がわかりにくい、いわゆる「わからん殺し」が狙えますね。メインはコンボのみですが、サイドボードに《スカラベの神》や《星界の大蛇、コーマ》のようなコンボに寄与しない勝ち手段を採用しています。オンライン大会の結果で見かけたのはジャンドベースでしたが、《眷者の神童、キナン》とサイドボードの大型クリーチャーを取れる青にメリットを感じ、スゥルタイに変更しています」

デッキ詳細

――メインのコンボパーツは《ガイアの眼、グウェナ》+《アーチリッチ、アサーラック》+《眷者の神童、キナン》として、ほかのクリーチャーの役割を教えてください。

瀬尾「実は、このコンボは《アーチリッチ、アサーラック》のマナ・コストを引き下げて2マナ以下にしても成り立ちます。《墓所のうろつくもの》と《バントゥの碑》がそれに当たり、《眷者の神童、キナン》の代役となります。前者は墓地対策を兼ねており、後者はアーティファクトであり対処されにくいカードですが、伝説のアーティファクトということもあって1枚のみとしています」

瀬尾「それとおそらく、みなさん《伝説の秘宝》の強さに気がついていません」

――《伝説の秘宝》ですか?

瀬尾「コンボパーツは増えてしまいますが、《伝説の秘宝》は《ガイアの眼、グウェナ》の代役を兼ねたカードなんです。たとえば《眷者の神童、キナン》の効果で生成するマナを増やして、《アーチリッチ、アサーラック》の戦場に出たときの効果にスタックして《伝説の秘宝》をアンタップすれば、実質的に《ガイアの眼、グウェナ》と同じ挙動となります。先ほど紹介した《墓所のうろつくもの》や《バントゥの碑》があれば無限ダンジョン達成です。仮にマナコストを軽減する手段が1枚のみでもマナの続く限りダンジョン探索を繰り返せるため、《狂える魔道士の迷宮》を探索してデッキを掘り進めていくうちにいつかはコンボが完成します」

瀬尾「実はこのデッキは《アーチリッチ、アサーラック》以外は代用可能なため、《伝説の秘宝》+《カル・シスマの恐怖、殺し爪》でも無限ダンジョンが完成します。《伝説の秘宝》は《ガイアの眼、グウェナ》と違って召喚酔いによるラグがない点も見逃せません」

獣相のシャーマン》の真価は?

――《ガイアの眼、グウェナ》だけでなく、『兄弟戦争』からは《獣相のシャーマン》も採用されていますね?《異界の進化》ではなくこちらを採用した理由があれば教えてください。

瀬尾「《獣相のシャーマン》は《集合した中隊》の当たりを減らさずに、コンボパーツを探せる戦略に合致したサーチカードです。極端な話、これ1枚と手札にクリーチャーカードがあるだけで、コンボまで辿り着けるわけです。手札にコンボパーツが揃っていれば囮にもなります」

瀬尾「また、サイドボード後はコンボ意外のミッドレンジプランを手厚くサポートしてくれます。ゲーム中引きたいものの、重ね引きしたくない《スカラベの神》や《星界の大蛇、コーマ》を1枚に抑えられているのは、適宜探し出すことができるこのクリーチャーあってのことです」

デッキの得手不得手

――デッキ相性についても教えていただけますか?

瀬尾「緑単信心のような自分の動きを優先し、あまり干渉してこないデッキを得意としています。《大いなる創造者、カーン》で《伝説の秘宝》こそ止まってしまいますが、《ガイアの眼、グウェナ》がありますし、基本的にはこちらのほうがコンボ到達が早いためです。サイドボード後は《ニクスの祭殿、ニクソス》を《星界の大蛇、コーマ》でタップし続け、動きを縛っていくことになります。苦手としているのはラクドス・ミッドレンジのような軽量除去の多いデッキ全般です」

――苦手なラクドス・ミッドレンジへの対抗策はありますか?

瀬尾「サイドボードには先ほどの大型クリーチャーに加えて、《エシカの戦車》や《領事の旗艦、スカイソブリン》といった機体を用意しています。クリーチャーではありませんが、戦場へ出た瞬間に仕事をしてくれるため裏目のないカードとなります。マナクリーチャーやコンボパーツを少量ずつ入れ替えて、中~長期戦でもカードパワー負けしないかたちに変化します」

瀬尾「個人的にお勧めのサイドボードは《膨らんだ意識曲げ》ですね。プレイした瞬間に手札破壊が誘発するため、アゾリウス・コントロールのような構えるデッキに対して効果的です。現出コスト支払ったとしても手札2枚+本体でカード1枚分得した計算になります」

――ありがとうございました。


 

 パイオニアに誕生した新コンボデッキ、「無限ダンジョン」。複数のルートを持つこのコンボデッキはデッキ情報が少ないことも相まって、対戦していてさながら迷宮へ迷い込んだかと錯覚をおぼえてしまうデッキだ。

 《ガイアの眼、グウェナ》をプレイされたら、君はもう、迷宮の入口に立っている。心して対戦を進めなければならない。

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