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2020プレイヤーズツアー・オンライン
プレイヤーズツアー・オンライン3 2日目の注目の出来事
2020年6月21日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)
「プレイヤーズツアー・オンライン3」が決着のときを迎え、スタンダードの様相は定まった。新たに登場した「オルゾフ・ヨーリオン」の活躍。さまざまな顔ぶれが並んだトップ8。そして堂々たる王者の誕生。決勝で「ティムール再生」を操る平山 怜を下し凱歌をあげたのは、「ジャンド・サクリファイス」を手にしたウィリアム・クラドック/William Craddockだった。
新たなデッキの活躍
プレイヤーズツアー・オンライン3では、151個のスタンダード・デッキが登録された(全参加者のデッキリストはこちら)。土地以外で最も多く採用されたのは、《成長のらせん》だ。全15回戦の予選ラウンド終了時の各アーキタイプ勝率を以下に掲載しよう。(5人以上の使用者を集めたもののみ。引き分け、同系戦、不戦勝を除く。)
アーキタイプ | 初日使用者数 | 勝率 |
---|---|---|
バント・ランプ | 37 | 45.7% |
ティムール再生 | 36 | 49.2% |
ラクドス騎士 | 13 | 53.4% |
ジャンド・サクリファイス | 10 | 56.2% |
バント・フラッシュ | 10 | 49.0% |
オルゾフ・ヨーリオン | 5 | 61.9% |
スゥルタイ・ランプ | 5 | 52.2% |
《成長のらせん》を用いるデッキの勝率は初日より改善されたものの、依然として芳しくない結果に終わった。そして対照的に、他を大きく引き離して高い勝率を誇るデッキの姿がある。この結果を予想していた者はほとんどいないだろう。
9 《沼》 6 《平地》 4 《神無き祭殿》 4 《静寂の神殿》 2 《サヴァイのトライオーム》 1 《インダサのトライオーム》 3 《ロークスワイン城》 2 《アーデンベイル城》 4 《寓話の小道》 -土地(35)- 4 《泥棒ネズミ》 4 《魅力的な王子》 4 《ヤロクの沼潜み》 3 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 -クリーチャー(15)- |
4 《苦悶の悔恨》 3 《ガラスの棺》 4 《ケイヤの誓い》 4 《裏切る恵み》 3 《屈辱》 4 《予言された壊滅》 3 《エルズペス、死に打ち勝つ》 3 《オルゾフの簒奪者、ケイヤ》 2 《太陽の宿敵、エルズペス》 -呪文(30)- |
1 《空を放浪するもの、ヨーリオン》
-相棒(1)- 4 《朽ちゆくレギサウルス》 4 《強迫》 2 《灯の燼滅》 1 《ガラスの棺》 3 《ケイヤの怒り》 -サイドボード(14)- |
このデッキの源流は、恐らくプロツアー・神戸2006王者のヤン=モーリッツ・メルケル/Jan-Moritz Merkelにある。彼は今月行われたラストチャンス予選で、《泥棒ネズミ》と《空を放浪するもの、ヨーリオン》を採用したデッキを使いトップ8に入賞したのだ。友人である殿堂顕彰者のカイ・ブッディ/Kai Buddeは、メルケルのことを次のように評する。
「世界一の《貪欲なるネズミ》ファンだ。構築で《精神腐敗》まで使うようなやつだから、彼が手札破壊を大量に搭載したデッキを持って現れたときは……すぐに却下するようにしている」
だがそんなメルケルのデッキに可能性を感じた者もいた――ライバルズ・リーグ選手のエリック・フローリッヒ/Eric Froehlichもその1人だ。彼はもともと《空を放浪するもの、ヨーリオン》を4枚採用するデッキに取り組んでいたが、「Magic Online Standard Challenge」で目にしたリストから多くのアイデアを得て、力強く楽しくメタゲームに挑める可能性を見出した。そこへMPL選手のブラッド・ネルソン/Brad Nelsonも調整に加わり、さらにセス・マンフィールド/Seth Manfieldとベン・スターク/Ben Starkの殿堂顕彰者2人も「ぶっ壊れデッキだ」と選択を決めた。
今大会を通して、彼らは《予言された壊滅》の力を見せつけ、《魅力的な王子》と《空を放浪するもの、ヨーリオン》のコンボで観るものを魅了した。《魅力的な王子》と《空を放浪するもの、ヨーリオン》はお互いを交互に明滅させ、《泥棒ネズミ》や《裏切る恵み》、《ケイヤの誓い》といったパーマネントの「戦場に出たとき」の能力を何度も再利用できる。ひとたびこのエンジンが動き出せば、それを打ち破るのは困難だ。
ベン・スタークは準々決勝で敗退し、セス・マンフィールドは惜しくも10位という成績に終わったが、彼らは「オルゾフ・ヨーリオン」がスタンダード環境に新風を吹き込む強力なデッキであり、とりわけバントやラクドスに対して強いということを存分に示したのだった。
予選ラウンドの快進撃
2日目の前半で特筆すべき出来事といえば、アイザック・イーガン/Isaac Eganとローガン・ネトルズ/Logan Nettlesの快進撃だろう。
With massive Explosions, @Jaberwocki (now 9-1) triumphed over @SethManfield (now 8-2) at #PTArena3 pic.twitter.com/6CQT17eYIp
— Magic Esports (@MagicEsports) June 21, 2020
巨大な《発展 // 発破》で @Jaberwocki(現在9勝1敗)が@SethManfield(現在8勝2敗)を下しました! #PTArena3
Isaac Egan remains undefeated!
— Magic Esports (@MagicEsports) June 21, 2020
After crushing Mono Red—some highlights in the video—@eganij now leads #PTArena3 as the sole 11-0 player. pic.twitter.com/dC5BuJ2QIG
アイザック・イーガン選手、いまだ無敗!
赤単を打ち破った @eganij が11-0で#PTArena3の首位を独走します。(ハイライトを動画でご覧ください)
第13回戦が終了しても、この2人は圧巻の走りを見せていた。アイザック・イーガンは土付かずの13連勝を果たし、ローガン・ネトルズもわずか1敗の12勝だ。彼らのあとに続くのは10勝3敗のプレイヤーで、2敗以上も差がついていたのだ!
結果的には両者の快進撃も準々決勝で終わることになったが、予選ラウンドの圧倒的な活躍は記憶に残るだろう。
さまざまな顔ぶれのトップ8
今大会のトップ8には、さまざまなデッキとさまざまな国のプレイヤーが集まった。
使用デッキの内訳は「ジャンド・サクリファイス」2名に「ティムール再生」2名、そして「ラクドス・サクリファイス」、「バント・ランプ」、「スゥルタイ・ランプ」、「オルゾフ・ヨーリオン」が1名ずつだ。それぞれのデッキリストはこちらからご覧いただける。
プレイヤーは、アメリカやオーストラリア、日本、そしてウクライナから、新旧入り交じる面々が揃った。それぞれのプロフィールはこちら(リンク先は英語)でご紹介している。この8人と第9位の高橋 優太には、「プレイヤーズツアー・ファイナル2020」の参加権利が授与される。7月25日に始まる賞金総額250,000ドルの一大イベントをお楽しみに。
堂々たる王者
「ときどき競技者」を自称し、最近グランプリ準優勝を2度経験しているウィリアム・クラドックは、「できるだけ冷淡に」大会へ臨むことを心がけている。彼が言うには、「私のプレイヤーとしての強みは学習速度にあり、特定のマッチアップにおけるプレイの仕方をあまり複雑にしないことだと思います……大会序盤はひどいプレイでも、コツをつかんだ後はずっと上手くプレイできるようになるんです。経験上、練習を重ねれば重ねるほど結果は悪くなります」
とはいえ、彼はまったく準備をしないわけではない。マジックの販売店で働き、自身のオンラインストアも持つ彼は、ある意味では常にマジックに関わっていると言える。「メタゲーム上の主要デッキは知っていますし、時間があれば配信も観ています。大会に向けた準備は、デッキの動きを理解することに大部分を割いています。スタンダードのデッキはどれも過去のスタンダード・デッキに似通っていて、私も長くスタンダードをプレイしているので、ほとんどのデッキに見覚えがあるんです」
だから33歳のクラドックが住むオクラホマ州エドモンドで行われた最後のプレイヤーズツアー予選で優勝した後も、彼はプレイテストに多くの時間を費やさなかった。メタゲームの流れを観察し、「今大会ではバント・ランプが勢力を伸ばすだろうから、それに有利だと思うデッキ」として「ジャンド・サクリファイス」を選択した。
その選択は功を奏した。クラドックは初日を6勝3敗で切り抜けると、そのデッキの複雑さを素早く理解し、プレイのコツをつかんだ。2日目は5勝1敗でトップ8に滑り込み、その後は負けることなく頂点まで登り詰めた。準々決勝ではアイザック・イーガンの圧倒的な快進撃を止めてみせた。準決勝ではデニス・チャン/Dennis Chanと対峙し、しっかり対策をとった「バント・ランプ」に打ち勝った。
残るは決勝。「ティムール再生」を操る平山 怜との決戦だ。今大会に出場した日本人プレイヤーで唯一トップ8入賞を果たした平山は、「人生最大の実績の1つ」だと入賞を喜んだ。決勝に臨む姿勢もまた素晴らしく、戦いの前に「これまでの幸運を噛み締めています……勝っても負けても、練習に付き合ってくれた友人たちと食事に行きます」と述べている。
第1ゲームでは、クラドックがあまりプレッシャーを感じないせいか長い大会での疲れのせいか、重要な場面でマナを手動で引き出し損ねる一幕があった――これには、平山が東京で優勝の祝賀会を開くことになるかと思われた。
いずれにせよ平山の手札には《否認》があったため、結果は変わらなかったかもしれないが、それにしても目を覆いたくなる展開だ。「いつもより多くのミスをしましたね」と、大会終了後にクラドック自身も語っている。「もう少しゆっくりプレイするテーブルトップの大会では起こらないようなことが、MTGアリーナではたくさん起こる気がします」
しかしクラドックがそれを引きずることはなかった。ミスを笑って流し、絶対の自信を持つサイドボーディング・プランに勝負をゆだねる。「他のリストとの最大の違いは、変形サイドボーディングにあります。対『ティムール再生』では14枚のカードを入れ替え、攻撃的なビートダウン・デッキに変わるんです。消耗戦用のカードはすべて抜きます」
3 《森》 3 《沼》 1 《山》 4 《草むした墓》 4 《踏み鳴らされる地》 4 《血の墓所》 1 《ロークスワイン城》 4 《寓話の小道》 -土地(24)- 4 《大釜の使い魔》 4 《金のガチョウ》 4 《忘れられた神々の僧侶》 4 《波乱の悪魔》 4 《悲哀の徘徊者》 2 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》 -クリーチャー(22)- |
4 《魔女のかまど》 3 《初子さらい》 4 《パンくずの道標》 3 《ボーラスの城塞》 -呪文(14)- |
4 《朽ちゆくレギサウルス》 1 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》 4 《強迫》 2 《魂標ランタン》 4 《燃えがら蔦》 -サイドボード(15)- |
その戦略は見事に効いた。第2ゲームは2体の《朽ちゆくレギサウルス》が素早く繰り出され、平山の《霊気の疾風》や《焦熱の竜火》は回答になり得なかった。
第3ゲームも3ターン目、4ターン目と連続で《朽ちゆくレギサウルス》が現れる同様の展開を見せた。だが今度は平山が、《砕骨の巨人》と《焦熱の竜火》を駆使してそれらの対処に成功した。しかしこれでリソースを消費した平山は続く《悲哀の徘徊者》2体に回答を用意できず、クラドックは勝利に向かって一気に突き進んだのだった。
「少人数の大会ですが、(グランプリで準優勝を繰り返してきただけに)最後まで勝てたのは本当に嬉しいです」と、クラドックは勝利の喜びを口にする。「ハイレベルな舞台でも勝てるという自信につながりました。叫びたいくらい嬉しいですが、朝の4時なので控えておきます。こんな時間まで起きて応援してくれた、婚約者のディアナ/Deannaには心から感謝しています!!」
こうして自身初のプレイヤーズツアー・トップ8入賞とプレミア・イベント優勝を果たしたクラドックに、例えばMPL入りなどのさらなる目標があるか尋ねてみると、「もちろん、次のレベルを目指していますよ」と心強い答えが返ってきた。
「MPL選手になれるとまでは思っていませんが、きっとここは出発点です。どこまで行けるかやってみます」
ウィリアム・クラドック、プレイヤーズツアー・オンライン3優勝おめでとう!
(Tr. Tetsuya Yabuki)
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