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2020プレイヤーズツアーファイナル
プレイヤーズツアーファイナル メタゲームブレイクダウン
ついにこの日がやって来た――プレイヤーズツアーファイナルは、明日の9時(日本時間25日25時)に開幕する。プレイヤーズツアーファイナルに出場するのは、145名の精鋭たちだ(参考記事:英語)。マジック・プロリーグ選手24名に加えて、プレイヤーズツアーの上位入賞者、「MagicFest Online Season Finals」の優勝者および準優勝者、2020年「移行シーズン」におけるグランプリ王者が名を連ねる。彼らはこの週末、賞金総額250,000ドルと「2020年シーズン・グランドファイナル」への参加権利を懸けて戦うことになる。
フォーマットは、予選ラウンド14回戦およびトップ8による決勝ラウンドともにスタンダード構築戦で行われる。それでは早速、この一流イベントにおけるスタンダードの様相を見ていこう。
アーキタイプ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
ティムール再生 | 57 | 39.3% |
4色再生 | 22 | 15.2% |
バント・ランプ | 17 | 11.7% |
緑単アグロ | 9 | 6.2% |
白単アグロ | 8 | 5.5% |
ジャンド・サクリファイス | 7 | 4.8% |
ラクドス・サクリファイス | 6 | 4.1% |
アゾリウス・コントロール | 3 | 2.1% |
エスパー・ミッドレンジ | 3 | 2.1% |
スゥルタイ・ランプ | 2 | 1.4% |
赤単アグロ | 2 | 1.4% |
バント・フラッシュ | 1 | 0.7% |
4色ヨーリオン | 1 | 0.7% |
ラクドス騎士 | 1 | 0.7% |
4色プレインズウォーカーズ | 1 | 0.7% |
スゥルタイ墓地 | 1 | 0.7% |
エスパー・ドゥーム | 1 | 0.7% |
黒単アグロ | 1 | 0.7% |
エスパー・ラッツ | 1 | 0.7% |
マルドゥ・ウィノータ | 1 | 0.7% |
《荒野の再生》と《成長のらせん》を用いる戦略はここ数か月にわたりスタンダードを支配しており、今大会のメタゲーム上で圧倒的な存在感を放っていることに驚きはない。「ティムール再生」と「4色再生」を合わせると、54.5%のプレイヤーが《荒野の再生》を使用しているということになる。さらに「バント・ランプ」と「スゥルタイ・ランプ」、「バント・フラッシュ」を加えると、実に68.3%のプレイヤーが《成長のらせん》を使っていることがわかるのだ。いかにこの戦略が支配的であるかが如実に表れた数字と言えるだろう。
先月行われたプレイヤーズツアー・オンラインと比較してみると、メタゲームの様相は似通っているものの、「再生」デッキがその勢力をさらに増している。『基本セット2021』の登場で選択肢はいくらか増えたが、現在のスタンダードで最も広く使われている勝ち手段は、依然としてターン終了時に放たれる巨大な《発展 // 発破》なのだ。
では、その「ティムール再生」を倒すプランは? 1つは、打ち消し呪文を無力化し、、決め手となる《発展 // 発破》を妨害する《時を解す者、テフェリー》だ。「4色再生」や「バント・ランプ」は、《成長のらせん》戦略に喜んで《時を解す者、テフェリー》4枚を組み込んでいる。
別のアプローチとしては、アグレッシブなクリーチャーで「ティムール再生」の懐へ潜り込んで攻める方法が挙げられる。「緑単アグロ」は《生皮収集家》で素早いスタートを切ることができ、また『基本セット2021』で手に入れた《漁る軟泥》は優れた2マナ域でありながらゲーム中盤は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》への解答にもなる。
だが個人的にかなり楽しみなのは、「白単アグロ」だ。『基本セット2021』導入前には、この形は見受けられなかった。
17 《平地》 4 《アーデンベイル城》 -土地(21)- 4 《駐屯地の猫》 4 《巨人落とし》 4 《追われる証人》 4 《無私の救助犬》 4 《歴戦の神聖刃》 4 《敬慕されるロクソドン》 -クリーチャー(24)- |
4 《バスリの結束》 4 《急報》 4 《栄光の頌歌》 3 《不敗の陣形》 -呪文(15)- |
4 《報奨密偵》 2 《一心同体》 3 《敬虔な命令》 3 《ガラスの棺》 1 《不敗の陣形》 2 《黒き剣のギデオン》 -サイドボード(15)- |
先週末に行われた「Red Bull Untapped International Qualifier III」にて、Hoshi, Yukiは16枚もの1マナ・クリーチャーを詰め込み、それらを《敬慕されるロクソドン》や《栄光の頌歌》、《バスリの結束》で強化する「白単アグロ」デッキを操り優勝を果たした。その週末を通して彼は、「ティムール再生」を次々と打ち倒して見せた。今大会プレイヤーズツアーファイナルでこのデッキを選択した8名は、Hoshiのその姿に魅せられたに違いない。こうして、このデッキは今大会において5番手の人気を得るに至った。私の個人的な注目デッキもこれで決まりだ。
このデッキは4ターン目か5ターン目に勝負を決められる。「ティムール再生」が準備を整える間もなく倒せるのだ。さらに、メインデッキからの採用がよく見受けられる《霊気の疾風》や《神秘の論争》も回避できる。今は《肉儀場の叫び》もほぼ見受けられず、「白単アグロ」は良い位置にいると言えるだろう。
また、「ティムール再生」側が赤の除去呪文をメインデッキから抜いて、《否認》や《厚かましい借り手》といった柔軟に使えるカードに枠を割いていることも追い風だ。同系戦に強いカードの採用は現在のスタンダードのメタゲームにおいて有効だが、それが裏目になることもある。57の「ティムール再生」を見てみると、《嵐の怒り》や《焦熱の竜火》を少数採用している以外、どのリストも基本的に除去呪文はメインデッキから抜けている。これが先月のプレイヤーズツアー・オンラインとは異なる点であり、今こそアグロ・デッキを選択したプレイヤーが優位に立つチャンスだと捉えられるだろう。
では、「ティムール再生」側はサイドボーディング後にアグロデッキとの相性を覆せるのか? プレイヤーズツアーファイナルでは、「ティムール再生」のサイドボードに平均して8枚のアグロ対策カードが採用されている。内訳は《砕骨の巨人》2.3枚、《焦熱の竜火》1.8枚、《長老ガーガロス》1.2枚、《嵐の怒り》1.0枚、《夜群れの伏兵》1.0枚、そして《炎の一掃》0.7枚だ。この数字はあくまで平均であり実際の採用枚数はデッキリストによって異なるが、ここで指摘しておきたいのは、「白単アグロ」に最も効果的な《炎の一掃》の採用枚数が一番少ない点だ。
《砕骨の巨人》と《焦熱の竜火》は、1マナ・クリーチャーとの交換に使うのは望ましくない。《長老ガーガロス》と《夜群れの伏兵》は(《巨人落とし》の)《切り落とし》に倒され、《嵐の怒り》はやや遅い上に、死亡時に誘発する能力を持つ白のクリーチャーや破壊不能に対してあまり有効でない。私には「白単アグロ」が今大会において良い位置にいるように見える。この大舞台での活躍が楽しみだ。
各アーキタイプの概要
プレイヤーズツアーファイナルに登録されたデッキリストはすべて、第1回戦開始時に特設イベントページにて掲載される(英語。日本語版は後日、日本語版ページに掲載いたします)。ここでは、各アーキタイプの簡単な分析と『基本セット2021』で追加されたカードの紹介をしよう。
ティムール再生(使用者57名)
「ティムール再生」は今大会で圧倒的な人気を誇っている。しかし『基本セット2021』では、サイドボードに《長老ガーガロス》を得た以外は目ぼしいものが手に入らなかったようだ。
4色再生(使用者22名)
これも「ティムール再生」と同様だが、こちらには《時を解す者、テフェリー》や《ドビンの拒否権》が採用されている。白をタッチしたことでマナ基盤の安定性が減り、タップイン土地も多くなった。アグレッシブなデッキとの戦いは苦しくなったものの、強力な白のカードは「ティムール再生」に対して有利を取れるだろう。
バント・ランプ(使用者17名)
《荒野の再生》を用いない《成長のらせん》デッキでは、これが1番人気となった。《成長のらせん》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》によってスタンダードで屈指の脅威を素早く繰り出すことができ、さらにそれらはカードを引く効果も持つためマナ加速呪文がゲーム後半でも腐らない。『基本セット2021』からは、能力が誘発しやすく序盤の盤面を支えてくれる《ムウォンヴーリーの世捨て人、ジョルレイル》が採用されている。
緑単アグロ(使用者9名)
アグロ・デッキで最も人気を集めたのはこのアーキタイプだ。《生皮収集家》や《探索する獣》は早いクロックを刻み、『基本セット2021』からはすでにモダンでも実力を証明している《漁る軟泥》も追加された。また、《原初の力》を採用した形も見受けられる。盤面への干渉手段としてだけでなく、クリーチャーを採用していない相手に対しては《火の玉》のように使えるのだ。
白単アグロ(使用者8名)
先述した通り、1マナ域と全体強化のシンプルな組み合わせに私は心を躍らせている。このデッキは素早く力強い攻撃をしかけることができ、早ければ4~5ターン目に「ティムール再生」を打ち倒せる可能性を秘めている。
ジャンド・サクリファイス(使用者7名)
《大釜の使い魔》に《魔女のかまど》が加わることで、強力な生け贄エンジンが完成する。ここに《パンくずの道標》や《波乱の悪魔》が加われば真の力を発揮し、他のクリーチャー・デッキをたやすく粉砕するだろう。『基本セット2021』からは、《真面目な身代わり》を採用した形もある。
ラクドス・サクリファイス(使用者6名)
《金のガチョウ》と《パンくずの道標》の代わりに《どぶ骨》と《戦慄衆の解体者》が入り、同時にマナ基盤の安定を実現したこのデッキは、「ジャンド・サクリファイス」より素早い攻撃を可能とし、「ティムール再生」との相性も良くなっている。
アゾリウス・コントロール(使用者3名)
コントロール使いは今大会でも打ち消し呪文で対戦相手の呪文に「No」を突きつけ、クリーチャーにも除去呪文で「No」を突きつける。特に人気を集めるのが《空を放浪するもの、ヨーリオン》を中心に据えた形で、その能力で利益を得るためにエンチャントやプレインズウォーカーで脇を固めている。
エスパー・ミッドレンジ(使用者3名)
日本人プレイヤー3人が、これまでとは一風変わったデッキを組み上げてきた。《歴戦の神聖刃》から《朽ちゆくレギサウルス》、《予見のスフィンクス》という動きは、大抵の「ティムール再生」デッキが適切な解答を用意できないだろう。どれも《霊気の疾風》に当たらず、《焦熱の竜火》や《砕骨の巨人》も通じないのだ。この「エスパー・ミッドレンジ」は《時を解す者、テフェリー》や《神秘の論争》のような干渉手段も備えており、真の「ティムール再生キラー」になるのではないかと期待せずにはいられない。
スゥルタイ・ランプ(使用者2名)
《成長のらせん》デッキに白をタッチするのを好まないなら、黒をタッチすれば《絶滅の契機》や《戦争の犠牲》、《思考のひずみ》といったカードが使えるようになる。
赤単アグロ(使用者2名)
アグレッシブな赤のクリーチャーを展開し、《エンバレスの宝剣》や《朱地洞の族長、トーブラン》でダメージを増幅する戦略も健在だ。
バント・フラッシュ(使用者1名)
このデッキに4ターン目に4マナを構えられると、《夜群れの伏兵》と《エリマキ神秘家》のどちらが飛び出してくるのかわからない。白をタッチしたことで《時を解す者、テフェリー》も使えるようになり、《エリマキ神秘家》を手札に戻すという動きもできるようになっている。
4色ヨーリオン(使用者1名)
《空を放浪するもの、ヨーリオン》をメインデッキから採用し、《ケイヤの誓い》などのパーマネントを明滅させてアドバンテージを得ていく。緑は《ネスロイの神話》のためにタッチされている。
ラクドス騎士(使用者1枚)
《試合場》による強固なマナ基盤が、1ターン目《漆黒軍の騎士》と4ターン目《エンバレスの宝剣》を両立させている。《エンバレスの宝剣》を《朽ちゆくレギサウルス》に装備できれば、勝利はこちらのものだ。
4色プレインズウォーカーズ(使用者1名)
《龍神、ニコル・ボーラス》の御姿を拝見できるのはいつだって大歓迎だが、今回は《時を解す者、テフェリー》もタッチしたコントロールの形のようだ。《次元間の標》によって、4色のマナ基盤の安定を実現している。
スゥルタイ墓地(使用者1名)
『基本セット2021』の《銀打ちのグール》によって成立した、一味違うデッキだ。《光胞子のシャーマン》や《マーフォークの秘守り》で自身のライブラリーを切削していき、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を唱えて3点のライフを回復すると、《銀打ちのグール》が墓地から戻ってくるのだ。
エスパー・ドゥーム(使用者1名)
基本的には「エスパー・コントロール」のように立ち回りながら、《ケイヤの誓い》のようなエンチャントを《予言された壊滅》で生け贄に捧げ、それらを《屋敷の踊り》で戦場に戻して一気にアドバンテージを獲得できる戦略だ。
黒単アグロ(使用者1名)
《朽ちゆくレギサウルス》に《悪魔の抱擁》を付けるのがどれだけ気持ち良いか教えてくれるデッキかと思いきや、今回登録されたリストにはそれらは採用されていない。アグレッシブな黒のクリーチャーに、《帆凧の掠め盗り》や《狩り立てられた悪夢》、《強迫》といったカードが織り込まれている。
エスパー・ラッツ(使用者1名)
根幹部分は先月のプレイヤーズツアー・オンラインで活躍を見せた「オルゾフ・ヨーリオン」だが、そこに青をタッチして、(皆さんの予想通り)《時を解す者、テフェリー》を採用した形だ。他にも青のカードがいくつか見受けられる。
マルドゥ・ウィノータ(使用者1名)
《急報》や《ラゾテプの肉裂き》といったカードで戦線を横に広げ、《軍団のまとめ役、ウィノータ》の能力を大量に誘発させることを狙う戦略だ。このデッキが『基本セット2021』で得たものは多い。《軍団のまとめ役、ウィノータ》の能力を誘発させられるだけでなく破壊不能で守れる《無私の救助犬》。それから、《バスリの副官》や《帆凧の掠め盗り》は《軍団のまとめ役、ウィノータ》の能力で戦場に出せる。このデッキもまた、試合を見るのが楽しみだ。
プレイヤーズツアーファイナルの模様は、7月25日と26日の両日ともtwitch.tv/magicにて生放送でお届けする(英語。日本語版放送の情報は巻末に掲載いたします)。「白単アグロ」が《成長のらせん》デッキを乗り越えて勝利を掴むのか、斬新な「エスパー・ミッドレンジ」が「ティムール再生」を打ち倒すのか……世界最高の145名による賞金総額250,000ドルを懸けた戦いをお見逃しなく!
2020プレイヤーズツアーファイナル 日本語版放送ページ・放送日程
日本語版放送出演者:1日目&2日目
- 司会・実況:大和周平(@YamatoColors)
- 解説:井川良彦(@WanderingOnes)
- 解説:市川ユウキ(@serra2020)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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