- HOME
- >
- EVENT COVERAGE
- >
- 2020ミシックインビテーショナル
- >
- 2020ミシックインビテーショナル 2日目の注目の出来事
EVENT COVERAGE
2020ミシックインビテーショナル
2020ミシックインビテーショナル 2日目の注目の出来事
2020年9月11日
(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)
すごすぎる。ヒストリックだけに、まさにマジックの歴史に残る2日目が終了したわけだが、言えることはそれしかない。
フォーマットのデビューは一度きりだが、この「2020ミシックインビテーショナル」で採用されたMTGアリーナのヒストリック・フォーマットから得られたもの以上の新フォーマット体験を求めるのは難しい。《上流階級のゴブリン、マクサス》の爆発的な動きから《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《世界を揺るがす者、ニッサ》のマナ加速力、さらには《死の飢えのタイタン、クロクサ》と《戦慄衆の秘儀術師》のデッキまで、ヒストリックはどんなプレイヤーにも何かをもたらしていた。
2日目の勝負、計14回戦となる戦いを終え、8人の競技者が残った。イベント開始時からさまざまなデッキにチャンスがあると目されていたこのフォーマットだが、トップ8に5種類のデッキを送り込むことでそれは証明された。2日目後半のある時点では、上位10名のうち8名が別種のデッキをプレイしている状況だったのだ。
このヒストリック・イベントはトップ8による決勝戦を残しており、そこでマジック最高のプレイヤーたちが戦うことになるだろう。ひたすら対戦を積み重ねて残った最後の――全員合わせるとプレミアイベント上位入賞39回分という成績(リンク先は英語)の――プレイヤーたちは、マジック最新のフォーマットに熟達していると証明し、この2020ミシックインビテーショナルのチャンピオンとなるため、さらに2日間戦うことになる。3日目となる土曜日にはダブル・エリミネーションによる初戦が行われ、4日目の日曜日にはチャンピオンという頂点が決定するのだ。
トップ8決定
元プレイヤー・オブ・ザ・イヤーのルイス・サルヴァット/Luis Salvattoが2日目のトップを走った。彼は初日から猛烈なスタートを切ったのち、この金曜日に完璧な成績を残して12勝1敗1分とし、シードのトップ席を奪った。
プロツアー『イクサランの相克』の勝者はトップ8という舞台の緊張感にも慣れているだろうが、彼の対戦相手はどうだろうか。トップ8に名を連ねたのは以下のプレイヤーだ。
- ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassif
- デイヴィッド・スタインバーグ/David Steinberg
- グジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalski
- 行弘 賢
- マット・ナス/Matt Nass
- ルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas
- セス・マンフィールド/Seth Manfield
ここには複数人のマジック殿堂顕彰者、今日の最高のデッキビルダー、そしてまさに立身出世を果たしたデイヴィッド・スタインバーグが残っている。
スタインバーグはマジックを14年間プレイしてきたが、2020年1月の予選を抜けてのミシックインビテーショナル参加となり、これが初のプレミアイベント上位入賞となる。彼はマジックの超一流選手たちと対決することになるだろう。しかし彼はトップ8に至るまでにマルシオ・カルヴァリョ/Marcio Carvalho、ウィリアム・「ヒューイ」・ジェンセン/William "Huey" Jensen、そして3日目土曜日にも争うことになるルイス・スコット=ヴァーガスと、上位陣に負けず劣らずの強豪たちを倒してきており、環境的によさそうなサクリファイス・デッキを選択していることからも、高すぎるハードルとは言えなさそうだ。
その一方で、行弘 賢は1年足らずで3度の上位入賞を果たした。この日本人は確かにデッキ構築の達人ではあるが、それでも信じられないような成績だ。今回のデッキは他から大きく道を外れたわけではないが、彼は赤単のゴブリン・デッキに《アイレンクラッグの妙技》を加え、《上流階級のゴブリン、マクサス》を出せる可能性を最大限まで高めて同系との対戦に役立てた。トップ8に残ったゴブリン・プレイヤーは彼だけということで、行弘は(ほんの少しの)独創に対する報酬を再び受け取った形だ。
そしてこれらは、合わせて3ダースを超える上位入賞成績を持つトップ8プレイヤーたちの武勇伝のさわりでしかない。トップ8プレイヤーのプロフィールとそのデッキについてはこちらで詳しく知ることができる。
ヒストリックのメタゲーム
トップ8のデッキ分布は以下の通りだ。
- ジャンド・サクリファイス 3名(ナシフ、スタインバーグ、スコット=ヴァーガス)
- ジャンド城塞 1名(コワルスキ)
- ラクドス秘儀術師 1名(サルヴァット)
- 赤単ゴブリン 1名(行弘)
- 黒単ギフト 1名(ナス)
- スゥルタイ・ミッドレンジ 1名(マンフィールド)
ゴブリンは紛れもなくこのトーナメントの首位デッキであり、参加者のほぼ3分の1が《スカークの探鉱者》を唱えていた。しかしトーナメントが進むにつれ、はっきりわかってきたことがある。《上流階級のゴブリン、マクサス》はそれだけでゲームに勝つことが可能で、また実際に勝利をものにしてはきたものの、ゴブリンで埋め尽くされた戦場に対処するにあたっておあつらえ向きなカードが存在していたのだ。
《波乱の悪魔》の登場だ。あるいは、スタンダードをプレイしているなら、《波乱の悪魔》の帰還と言うべきか。
それは懐かしの《魔女のかまど》と《大釜の使い魔》の復活コンビ、そして脇を固める《忘れられた神々の僧侶》と《波乱の悪魔》、さらにヒストリックで新たに加わった最高の友人こと《集合した中隊》という顔ぶれのデッキだ。サクリファイス・デッキはヒストリックにあるすべてのデッキに対して優位を取れるわけではないものの、今回は――ほとんどのクリーチャーのタフネスが1か2の――ゴブリンを選択しているプレイヤーが非常に多かったので、こと今週末に関しては完璧な選択だった。《波乱の悪魔》は新たに加わった《血の芸術家》と協力して、あらゆる防御手段をかいくぐって突如大ダメージを与えることができるのだ。
2 《沼》 4 《草むした墓》 2 《森林の墓地》 4 《血の墓所》 4 《竜髑髏の山頂》 4 《踏み鳴らされる地》 2 《隠れた茂み》 1 《ファイレクシアの塔》 -土地(23)- 4 《大釜の使い魔》 4 《戦慄衆の解体者》 4 《忘れられた神々の僧侶》 4 《波乱の悪魔》 4 《悲哀の徘徊者》 3 《真夜中の死神》 1 《砕骨の巨人》 1 《恋煩いの野獣》 -クリーチャー(25)- |
4 《初子さらい》 4 《魔女のかまど》 4 《集合した中隊》 -呪文(12)- |
1 《湧き出る源、ジェガンサ》
-相棒(1)- 1 《漁る軟泥》 2 《再利用の賢者》 2 《フェイに呪われた王、コルヴォルド》 4 《魔女の復讐》 2 《反逆の行動》 2 《虚空の力線》 1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》 -サイドボード(14)- |
サルヴァットが早々にトップ8入りを確定させた一方で、スコット=ヴァーガスとマンフィールドはどちらも予選最終戦でタイブレークを突破した。その第14回戦では双方ともに一筋縄ではいかない対戦となり、それを勝ち抜く必要があったのだ。マンフィールドとマジック・プロリーグのプレイヤーであるクリス・カヴァルテク/Chris Kvartekとの対戦は、《上流階級のゴブリン、マクサス》が実際に外れることがあると学べたという点で、間違いなく注目の一戦だった。
カヴァルテクは結局このゲームを2枚目の《上流階級のゴブリン、マクサス》のおかげで勝利し、マンフィールドとのスリリングな最終戦へと突入した。その勝者決定戦ではかの殿堂顕彰者が優勢となり、《世界を揺るがす者、ニッサ》を通して劣勢を覆したのち、《魔女の復讐》でゲームを決めたのだった。
2 《森》 2 《島》 2 《沼》 4 《繁殖池》 1 《内陸の湾港》 4 《草むした墓》 2 《異臭の池》 2 《水没した地下墓地》 4 《ゼイゴスのトライオーム》 1 《ロークスワイン城》 4 《寓話の小道》 -土地(28)- 4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 3 《ハイドロイド混成体》 -クリーチャー(7)- |
4 《思考囲い》 4 《霊気の疾風》 4 《成長のらせん》 3 《取り除き》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《本質の散乱》 1 《大渦の脈動》 2 《衰滅》 1 《絶滅の契機》 4 《世界を揺るがす者、ニッサ》 -呪文(25)- |
1 《長老ガーガロス》 1 《墓掘りの檻》 2 《否認》 1 《無情な行動》 2 《肉儀場の叫び》 2 《魔女の復讐》 4 《サメ台風》 2 《覆いを割く者、ナーセット》 -サイドボード(15)- |
ゴブリンを持ち込みたくないプレイヤーであっても、この対戦卓上にはすべてがあった。それには林 眞右を2日目へと送り込み、マジック・ブロードキャスターのマリア・バーソルディ/Maria Bartholdi(やそのほかのプレイヤー)のお気に入りである「アゾリウス・オーラ」も含まれている。
It’s a rollercoaster of emotions for everyone at the #MythicInvitational #aurawatch2020 pic.twitter.com/DEbAa9XJpJ
— Magic Esports (@MagicEsports) September 11, 2020
これは #MythicInvitational に関わるあらゆる人に向けた感情のジェットコースターです。
#aurawatch2020
オーラ、2日目へ!
オーラ、トップ8争いに敗れる!
マット・ナスのトップ8入りに貢献したのは、年代物の再録カードだった。「黒単ギフト」を駆るナスは、《ファイレクシアの塔》が自分のデッキの中で最高のカードというだけでなく、このフォーマット全体で最高のカードだと評価している。
Combo fan @MatthewLNass brought Mono-Black Gift to the #MythicInvitational
— Magic Esports (@MagicEsports) September 10, 2020
"I think the best thing about it is that Phyrexian Tower is the best card in the format and this is the best Phyrexian Tower deck. It's also really nice playing a graveyard deck that doesn't lose to Cage" pic.twitter.com/1cPVFaS0GX
コンボ・ファンの @MatthewLNass は #MythicInvitational に「黒単ギフト」をもたらしました。
「《ファイレクシアの塔》はこのフォーマットで最高のカードだし、これは最高の《ファイレクシアの塔》デッキだっていうのが最高だと思う。《墓掘りの檻》に負けない墓地利用デッキというのも本当にいいね」
彼の言にも一理あるかもしれない。《ファイレクシアの塔》は1998年に『ウルザズ・サーガ』で初めて登場し、それ以来象徴的なカードの1枚として残り続けている。ヒストリックで使用できるようになり、クリーチャーを生け贄に捧げて2マナを得られるという特有の強力な能力によって、能力活用系の土地の中ではこのミシックインビテーショナルで最も使用されているものとなった。さまざまなデッキがこのカードを採用していたが、《来世への門》を起動して4ターン目という早い段階で《王神の贈り物》を戦場に出す、という「いんちき」を狙ったナスのコンボ・リストほどに活用しているものは他になかったのだ。
16 《沼》 4 《ロークスワイン城》 4 《ファイレクシアの塔》 -土地(24)- 4 《墓所破り》 4 《縫い師への供給者》 4 《悪魔の職工》 4 《ラゾテプの肉裂き》 4 《忘れられた神々の僧侶》 4 《悲哀の徘徊者》 4 《貪欲なチュパカブラ》 2 《虐殺のワーム》 -クリーチャー(30)- |
4 《来世への門》 2 《王神の贈り物》 -呪文(6)- |
1 《疫病牝馬》 1 《悪ふざけの名人、ランクル》 2 《虐殺のワーム》 4 《思考囲い》 2 《闇の掌握》 2 《ファリカの献杯》 3 《虚空の力線》 -サイドボード(15)- |
しかしこの日はまさにルイス・サルヴァットと、彼が用いてこの環境を制圧した「ラクドス秘儀術師」のためにある日だった。初日にいくつかの印象的な瞬間を見せてくれた彼は、その革新的な「ラクドス秘儀術師」のリストの力で2日目も再びフィールドを駆け抜けたのだ。1マナ域の強力な呪文と《戦慄衆の秘儀術師》や《若き紅蓮術士》といった軽量クリーチャーを組み合わせ、(《ファイレクシアの塔》や《死の飢えのタイタン、クロクサ》で支援しつつ)《立身 // 出世》、《思考囲い》、そして《村の儀式》といったカードを活用することで、遅いデッキが支配的になる前にゲームを終わらせるに十分な速度と、ゴブリンが必要としている呪文を遠ざけるに十分な妨害手段を実現している。
そのすべてが、サルヴァットの元にあって優位をもたらす弾丸と化していた。
8 《沼》 3 《山》 4 《血の墓所》 4 《竜髑髏の山頂》 1 《ロークスワイン城》 3 《寓話の小道》 -土地(23)- 4 《縫い師への供給者》 1 《魔王の器》 4 《戦慄衆の秘儀術師》 4 《死の飢えのタイタン、クロクサ》 4 《若き紅蓮術士》 1 《忘れられた神々の僧侶》 -クリーチャー(18)- |
4 《思考囲い》 4 《村の儀式》 3 《初子さらい》 2 《灯の収穫》 2 《魔性》 4 《立身 // 出世》 -呪文(19)- |
1 《夢の巣のルールス》
-相棒(1)- 3 《熱烈の神ハゾレト》 3 《強迫》 1 《マグマのしぶき》 1 《レッドキャップの乱闘》 2 《削剥》 1 《アングラスの暴力》 3 《魔女の復讐》 -サイドボード(14)- |
「これは1ゲーム目なら最高のデッキだと思うし、前回のメタゲームの変化でゴブリンが非常に高く評価されて以来、墓地への警戒心はかなり下がっていた」とサルヴァットは説明した。「おそらく2週間前であればこれは悪いデッキだったかもしれないが、今日はこのデッキが持つ、カードから不合理なまでに価値を生み出す力をうまく利用できる形で多くの対戦相手と勝負することができたし、《虚空の力線》に一度も出会わなかったからね。過去に何度かデッキ選択が良くなかったせいで負けたことがあるけれど、今回はかなり自信があるよ」
とは言うものの、サルヴァットには対戦時に警戒すべき、よく見知った好敵手がいる。
Well @LuisSalvatto may have beat me out for Player of the Year, but I'm about to get some revenge! See you all tomorrow.
— Seth Manfield(Envy) (@SethManfield) September 12, 2020
まあ @LuisSalvatto はプレイヤー・オブ・ザ・イヤーをめぐる戦いでは私を倒したかもしれないけど、リベンジするつもりだ! また明日会おう。
2020年シーズン・グランドファイナル参加者確定
最後に、この週末でのプレイに関連したものがもう1つある。2020年シーズン・グランドファイナル(リンク先は英語)についてだ。
2020ミシックインビテーショナルのトップ16プレイヤーが、2020年シーズン・グランドファイナルへの招待状を獲得した。ただし、セス・マンフィールドがこの2020ミシックインビテーショナルとプレイヤーズツアーファイナルの両方で結果を残したため、招待は1つ繰り下げられる。ここで、すでに2020年シーズン・グランドファイナルの出場権を獲得済みであるプレイヤーズツアーファイナルのトップ16プレイヤーと、2020ミシックインビテーショナルで権利を獲得した16名のうち紹介済みのトップ8プレイヤーを除いた、残りの権利獲得者9名をご紹介しよう。
- エマ・ハンディ/Emma Handy
- トニ・ラミス・パスカル/Toni Ramis Pascual
- クリストファー・レオナルド/Christopher Leonard
- ルカ・マーニ/Luca Magni
- クリス・パルミオッティ/Chris Palmiotti
- ブラッド・ネルソン/Brad Nelson
- モンセラート・アイェンサ/Montserrat Ayensa
- アーロン・ジェルトレル/Aaron Gertler
- 彌永 淳也
The Top 8 wasn't the only thing on the line today.
— Magic Esports (@MagicEsports) September 12, 2020
Congratulations to the Top 16 from the #MythicInvitational who qualified for the #2020GrandFinals! They'll play alongside the Top 16 finishers from the Players Tours Finals in just a matter of weeks. pic.twitter.com/3ZIythCNKS
トップ8だけが今日の話題ではありません。
#2020GrandFinals への出場権を獲得した、 #MythicInvitational トップ16の皆さんおめでとうございます! ほんの数週間後、プレイヤーズツアーファイナルのトップ16プレイヤーとともにプレイすることになります。
今日はこれで終わりだ。トップ8の放送は太平洋夏時間の土曜朝9時からtwitch.tv/magicで始まる!
(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa)
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
RANKING ランキング
NEWEST 最新の記事
-
2024.11.12観戦記事
The Week That Was: 熱烈な勇者の帰還|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.27観戦記事
第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権 決勝戦|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26トピック
第30回マジック世界選手権 トップ8プロフィールとデッキリスト|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.26観戦記事
Magic World Championship 30 Day Two Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25観戦記事
Magic World Championship 30 Day One Highlights|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権
-
2024.10.25戦略記事
The Spiciest Decklists of Magic World Championship 30|第30回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権