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Making Magic -マジック開発秘話-
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Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2015年11月23日
今日の記事では、人間にとって最大の恐怖の1つについて語ろうと思う。高所恐怖症や対人恐怖症の話ではない。人々の口に上ることすら少ない、人々をおびえさせる存在――それが、空白のページだ。創作というのは、存在しない何かを存在させることである。無から始めることは多くの人にとって恐ろしいことなのだ。そこで、私は数ヶ月前に「Drive to Work」のポッドキャスト(Creative Process, Part 1 and Part 2(どちらもリンク先は英語))で、創造の手順についての大枠を語った。このMaking Magicの記事を元にしてポッドキャストで語ったことは多いので、今回は逆にポッドキャストを元にして記事を書く良い機会だと感じたのだ。
まず最初に、これは創造の手順に近づく方法を教えてもらいたいと思っている諸君向けの、本当に基礎的な大枠だということを強調しておこう。基本の学習なので、基礎的な要素を理解している諸君にとっては単純すぎることだろう。創造にはいろいろな方法があり、この導入はその中の1つの可能性だが、系統立てたやり方で説明していこうと思う。それでは、始めよう。
第1工程:まず焦点を選ぶ
この手順の全ての工程の中で、この第一歩が最も難しいものだと考えている。というのは、これ以降は少なくとも最初の一歩が既に存在しているからである。無から始めるには、どうしたらいいのか。その答えは非常に単純なもので、そんなことをする必要はない、のだ。クリエイティブな工程の第一歩は、何でも良いから何かを始点として選ぶことである。無作為に選んでもかまわない。
例えば、無地のキャンバスに無作為に色をつけるというのは絵画教室でのよくある練習である。何も計画しないことが肝なのだ。何に描くにせよ、無作為に動かすだけなのである。その後で、その無作為の要素を元に作業を始め、それに触発されたものを描くのだ。そうすると、絵を描き上げるまで、あらゆるものが次を触発する、ということがわかってくることになる。
これは、何か元になる発想があって、そこから始めるということができないという意味ではない。元になる発想がない場合、無作為であっても何かから始めることになるというだけである。多くの人々が自分の作品を無作為に委ねたくはないと思うことだろうが、創造の手順は無作為などではない、と言っておこう。何を始点とするにせよ、作者の思想や発想が組み立てていくものなのだ。作品というものは作者そのものであり、そして重要なことに、始点が何であるかが定義づけるものではない。始点は、始点に過ぎないのだ。諸君にもご理解いただけると思うが、想像の手順というものは常時見直し続けるということであり、焦点が変わっていくことはよくあることである。つまり、自分の作品がどうなるのかを決めたら、そこに向けて変化させていくものなのだ。
この工程において最も重要な部分は手順を動かすことだが、そのために自分のしていることを理解する必要はまだない。創造は長い手順で、その中で自分のしていることを決めていけばいいのだ。最初から全てを理解しておくことは重要ではない。これについていい比喩になるのが大学だ。大学に行く人々のほとんどは、人生のために何をしたいのかを知らないものだ。そして、大学はそれを理解している。多くの学生は専門分野を決定せずに学び始めるものだ。実際、ほとんどの大学では、何を専攻するかは途中まで決めないものである。大学の最初の2年間は、どの学問を学ぶかを見つけ、把握するためのものなのだ。その中で、自分が何をしたくて何をしたくないのかを理解していくことになる。望むなら、何一つ決めずに作品を手がけ始めてもいい。途中で、何を目指しているのかを決めていくことになるものなのだ。
さて、これはマジックのデザイン記事なので、それぞれの工程についてマジックのセットで説明して句ことにしよう。ブロックの第2セット以降は始点として第1セットが使えるので、第1セットに焦点を当てる。ブロックを始めるにあたっては、(『イニストラードを』のゴシックホラーや『テーロス』のギリシャ神話のような)トップダウンの発想だったり、(『ゼンディカー』の土地メカニズムや『ミラディン』のアーティファクト関連のような)メカニズムだったり、(『タルキール覇王譚』ブロックのブースタードラフトのような)大局的構造だったり、何らかの始点を使っている。何かに焦点を当てることから始めることが必要なのだ。これから見て行くとおり、何を始点としたかとどこで結実したかが同じだとは限らないものである。
《勇気の道》 アート:Chris Rahn |
第2工程:焦点に基づいて多くのことを発想する
さて、始点(あるいは焦点)が定まったところで、その焦点を元にして可能な限りの発想を見つけ出すことになる。これから説明していくが、創造の手順とは繰り返しそのものだ。焦点に基づいて内容を作り、その内容を評価することで新しい焦点が見つかる、この手順を必要な限り繰り返していくのだ。新しい内容を作る段階では、それが何であれ焦点から始め、そして大量の発想をするのだ。ただただ焦点を閃きの元にしてあらゆるものを作っていく。ここでの目標は、多くの異なったものを作り出すことである。一面にこだわるのもいいが、多くの異なった空間で実験することが必要である。
もう1つ、創造の重要な側面について語ろう。造ったものを観察するには、2つのレンズがある。私はそれを、それぞれ心と頭と呼んでいる。心のレンズとは、どのように感じさせるかに基づく感情のフィルターだ。一方、頭のレンズとは、どのように考えさせるかに基づく知性のフィルターである。作っていく段階では、心のレンズに焦点を置くべきだ。作っているものの論理は気にするべきではない。ただ作るのみ、ひらめいたものを作っていくだけだ。そこには決まり事はない。タブーはない。不可能に見えることでも、素晴らしいものに繋がる一歩になることもあるのだ。
マジックのデザインにおいては、この工程でデザイナーたちに関心事を伝え、そしてその焦点に基づいて何でもいいからデザインさせる、という最初の工程である。『イニストラード』を例に取れば、我々はホラーというジャンルから連想されるものをデザインした。『ラヴニカ』では、ギルドのイメージに合うようにデザインした。どちらにせよ、私は焦点を決めてデザイン・チームに伝え、その焦点に基づいてあらゆることをデザインさせたのだ。
第3工程:それらの発想を評価する
その次にあたるこの工程では、心のレンズから頭のレンズに切り替えることになる。作ったものすべてを見て、評価する必要がある。そのための単純な方法として、こんなものがある。3つの箱を作るのだ。1つは自分の好きな発想、2つ目は好きでない発想、3つ目は好きとも嫌いともつかない発想だ。この3つ目の箱が存在する理由は、何かについてどう感じるかを即座に理解することは難しい場合でも、手順を進めてより深く理解していくと価値があると証明される場合があるからである。好きかどうか理解できていないというだけの理由で、そのものを無くしてしまいたくはないのだ。
ここで、造ったものを焦点に基づいた文脈上で評価するのではないと理解することがもう1つの重要な点である。前提なしで判断するのだ。作ったものは好きか? 作るということが量の問題だとすれば、評価することは質の問題である。この工程は、造ったものの価値を判断する工程なのだ。繰り返しになるが、判断は心のレンズではなく頭のレンズで行わなければならない。
自分の造ったものを3つの箱により分けたら、次にすることはこうだ。まず、2つ目の箱に入った物を全て投げ捨てる。それについてはもう考える必要はない。次に、1つ目の箱を見て、好きなものに共通するものがあるかを探す。それらの多くに共通する、テーマや共通の一面があるだろうか? ここから、焦点を探していくことになる。前の工程での焦点と同じで、少し方向性がついたものかもしれない。似た焦点だが新しい一面が増えているかもしれない。あるいは全く違う焦点であることもありうる。ここで重要なのは、最も楽しんだものを取り上げ、その中に共通するものを見つけ出すことだ。
それが終わったら、3つ目の箱を見て、その中に今決めた新しい焦点に合ったものがないかを探す。合っていないものを破棄する必要はないが、次の工程では新しい焦点から外れたものについては意識しないことになる。
マジックのデザインに関して言えば、この工程はデザイン・チームが見つけ出したものをプレイテストする工程だ。評価するポイントは、そのカードやメカニズム、テーマ、その他のものがうまくプレイできるかどうかである。そのデザイン要素が、扱い続けるべきものか捨てるべきものかを決定するのだ。リード・デザイナーとして、次に何を作りたいかを考える助けともなっている。例えば、『ゼンディカー』では、私はチームにあらゆる土地メカニズムを考えさせた。その後、それらのアイデアをプレイテストして、どのデザインに将来性があるか、どのデザインがそれで行き止まりかを判断していったのだ。
《カビーラの交差路》 アート:James Paick |
第4工程:第2工程と第3工程を繰り返して焦点を定める
デザインにおける繰り返しの重要性については、これまでに何度も語ってきた。作り、判断し、変更し、それを繰り返すのだ。創造の初期においては、この繰り返しは自分が本当に望んでいるものが何なのかを判断するものになる。大学で講義を受けるのと同じように、創造の手順の初期はあり得ることをすべて試すために使われることになる。作るときに何が必要なのかを決めるときには心のレンズを用い、その後判断するときに批判的に見るときには頭のレンズを使うことが重要である。
この工程では、繰り返しの1回ごとに少しずつ自分の望むものに近づいていくはずである。焦点について調整し続けることで、頭のレンズは成功すると証明された場所に固定することができ、そして心のレンズで豊かな想像の鉱脈を探ることができるのだ。調整し続けることが重要なのは、常に新しい視点から自分の作品を見直すことが必要だからである。
その理由は単純な心理学である。脳というものは、可能な限り効率的に動こうとする。つまり、過去にやったことがあることに直面したら、その問題を解決するために以前と全く同じシナプスを使うことになる。結局のところ、前回その方法で解決できたのだから、当然その方法を使えばいいということになる。創造的観点から見たときの問題は、同じ出力では意味がないということだ。歯を磨きたいなら同じ方法でやればいいが、創造的な話になると、目的は新しいものを作ることなのだ。
評価の工程は、なぜそれがうまく行くのか、あるいはうまく行かないのかを理解する上でも重要な役割を果たす。単純に、感情的距離の価値ということである。自分の感情的つながりを理解するのが難しく、他人のを理解するのはずっと簡単だ、というのはその一例である。
繰り返しによって,少しずつ、自分の必要なものが何なのかが見えてくるようになる。この工程が終わるのは、自分の想像の手順が一体何なのかの基礎が固まったときである。
この工程のマジックにおける一例が、『タルキール覇王譚』だ。最初は、大小大のブロック構造で、第2セットは両大型セットと組み合わせてドラフトをするが両大型セットが同時にドラフトで使われることはない、という発想から始まった。そのドラフト構造が何を意味するのかを掘り下げることで、主役が時間を遡って何かを変え、時間の流れを根本から変えてしまう、という時間旅行の物語構造にたどり着いたのだ。このことから、クリエイティブ・チームの協力を得て、サルカンの出身世界を使うことに決めた。人類の大将軍の世界、龍の絶滅した世界として始まり、そして龍が大将軍になった世界で終わるのだ。さらに、大将軍の氏族を表す方法を掘り下げることで、プレイヤーがずっと望んでいた楔のセットを作るという発想に行き着くことになる。
マジックのデザインにおいては、この繰り返しは我々が展望ステージと呼んでいる部分と重なる。そこではデザイン・チームはそのセットが一体何なのかを見つけ出していく。我々はそこで単純な構造を作り、そしてメカニズムの最初の一歩を刻むのだ。
《増え続ける成長》 アート:Clint Cearley |
第5工程:作り上げた構造の中で発想する
前の工程では、繰り返しによってブレインストーミングと現実から離れたデザインをおこなった。そこでは、テーマに合ったあらゆるものを作ろうとしたのだ。次の工程は、より方向性を持ったものになる。構造を作るために必要な部品を作っていくのだ。物語に喩えるなら、ここからが実際のシーンを書く工程に当たる。絵で喩えるなら、最終的な作品に向けて筆を入れていく工程だ。マジックのセットで言えば、デザイン骨格を埋めていくことになる。つまり、コモンの緑の《巨大化》系カードを作る、とか、マナ・カーブに沿ってクリーチャーを作っていく、とかである。
前の工程、何をしているのかを見つけていく工程の中で、有用なかけらを大量に作ってきた。必要なものの枠組みができあがり、1つ目と3つ目の箱にはそこに当てはまる要素もある。この工程では、何が足りないのかを判断し、それを作ることになる。ここでも、作ることは心のレンズを使う。つまり、ひらめくままにするのだ。琴線に触れる要素を作っていくのだ。当てはまるように無茶をしてもいいし、狂った発想を試してもいい。同じ目的のために、様々な方法を試してもいい。実際、ここでの最高の仕事は、1つの問題を複数の方法で解決しようとしたときに生じるものだ。
この作っていく過程で重要なのは、手がけている創造の努力において生じた隙間を埋めるということである。ここでの目的は、創造した作品において生じている全ての隙間に少なくとも1つの選択肢を見つけることなのだ。
マジックのデザインでの例として、旧『ラヴニカ』を挙げよう。ギルドという構造が決まって、各ギルドの表すものについても手掛かりができてきていた。好きと評価できたギルドのメカニズムもできた。この工程では、各ギルドを望む形にするために欠けているメカニズム的要素を見つけることだった。ギルドの類似性を描き、同時にギルド間の相違点を際立たせるために、サイクルを作った。ギルドのエッセンスを描いた、クールなカードを作った。必要なものが何かははっきりしていたが、それを実行する最適な方法が何かを見つけるには多大な努力を要したのだ。マジックのセットにおける「隙間」とはすなわちカードであり、この工程では全てのスロットに少なくとも1枚のカードを作る必要がある、ということなのだ。
《強迫的な研究》 アート:Michael Sutfin |
第6工程:外部からの視点を用いて自分の作品を評価する
この評価の工程は3つに分けられる。1つ目が、欠けていた部品のために造ったものをすべて挙げ、その中からそれぞれの隙間を埋めるものを1つ選ぶこと(時には、複数の選択肢それぞれの感じ方に興味があって複数を残すこともある。これは例えばゲームなどのメディアではうまく働く)。ここでの目標は、作っているものの一応の完成形を作ることである。
2つ目が、ここまでで造ったものを全体として評価することである。これがこれまでの評価の工程と違うところは2つある。1つ目が、部品だけでなく全体を評価するということ。2つ目が、作者(あるいは作者のチーム)が自分で評価するものではないということである。ここで、外部からの情報を用い始めるのだ。創造した作品が、作者のデザイン・チーム以外の人やチームを用いるような協力によるものなら、ここからがフィードバックに協力者を入れる工程となる。また、ユーザーの代表といえる人々を抜き出し、ユーザーがどう感じるかを掴もうとするのもこのタイミングだ。
3つ目が、何がうまく動いて何が動かないのかを見極めることだ。これは3つの箱の課題と似ているが、それよりも作品のどの部分が魅力的なのかを見分けることに重点が置かれることになる。目的は、魅力的な部分を見つけ出し、それらの間の繋がりがあるかどうかを考えることである。個別の評価から離れ、成功している要素のうちどれを広げるかという新しい観察をするのだ。その逆に、どの要素がうまく働いていないのかを見て、それを取り除き、他にも同じような問題を抱えている部分がないかを探してもいい。
マジックのデザインに関して言えば、この工程はデベロップやクリエイティブといった他のグループからのフィードバックを求め始めるタイミングである(マジックのデザインにおいては、両チームの代理人がデザイン・チームに所属しているので、既に内部的なフィードバックは得ている)。また、同じくこの工程で、外部のグループを交えたプレイテストが行われ始める。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストにおいては、マジックをプレイしているが開発部員ではない社員が招かれることが多い。カードやメカニズムを作って展望ステージを終えるが、あらゆることはまだ検証中であり、大きな変更も起こりうる。
第7工程:第5工程と第6工程を繰り返す
今回の繰り返しも前回同様だが、目標は多少異なっている。自分の作品が何なのかを見つけ出すのではなく、今回は実装について繰り返しを行うのだ。自分の作品のそれぞれの要素について、最善のものを作り出そうとする工程である。これまでの一連の評価と同じように、自分の作品が何なのかを明確にするため、繰り返しごとに焦点を選ぶ。大きな違いは、最終結果が巧妙な実装である必要があるということである。
もう1つ大きな違いは、この一連の繰り返しは前回のものよりも短くなるということである。焦点をマクロからミクロに移しているので、繰り返しの期間は短くなる。
マジックのデザインに関しては、これは統合フェイズと呼ばれている。ここで我々は他のあらゆるチームに品質検査を頼み、問題を引き起こすようなデザインを採用していないようにする。通常、我々はこれを路に喩えるが、それぞれの路に、例えば特定のメカニズムを確認するとか特定のドラフト・アーキタイプを確認するなどといった特定の目標があることは非常によくあることである。その後、我々はプレイテストを行い、新しい変更がどう働いたかを見て、新しいフィードバックを作っていく。このフェイズでも大きな変更は起こりうる。例えば、『ミラディンの傷跡』で、ミラディン世界の第1セットをファイレクシアとの戦いの前に設定することにしたのはこの時期だ(最初は、第1セットを『新たなるファイレクシア』にするという計画だった)。
《先駆のゴーレム》 アート:Chippy |
第8工程:構成要素内で変化を加える
最初のフェイズが、その創造した作品が何なのかを決めるものだった。2つ目のフェイズが、その創造した作品をうまく動かすため、適切な要素を探すものだった。この最後のフェイズは、それぞれの要素を最適化していくものである。全ての工程の中でもっとも微視的なもので、それぞれの選択について詳細に研究していくことになる。
創造の手順におけるこの部分を、研磨だと考える人が多い。創造した作品を広く世間に発表する前に必要な最後の手順だ。
マジックのデザインにおいては、これは各カードを確認するファイル閲覧を行う時期だ。プレイテストからのメモは大きな問題に関するものではなく、特定のカードに関するものになっていく。
第9工程:微調整を評価する
工程が進むごとに、評価の工程の焦点は小さいものになっていく。最初は構造、それから要素、そして最後は細部である。この評価の重要な部分は、細部がお互いに一貫するようにするというものだ。創造する作品の中で、何かちょっとしたものを変更することは、他のいろいろなところも変更することになるものである。
変更を作ることと変更を評価することの大きな違いは、やはり心のレンズと頭のレンズの話に戻る。新しい要素を作るときは、要素全体であれ細部のことであれ、感情的に興奮するようなものであるべきだ。感情的に満たされたところから進めていくべきなのだ。一方、評価するときには、それぞれの要素が機能を最大化するかどうか判断するという難しい自問自答を伴うので、頭のレンズを使うべきである。その要素が気に入っているかどうかは関係ない。関係するのは、それが必要な仕事を果たしてくれるかどうかなのだ。
マジックのデザインにおいては、ほとんどの指摘がカード個別のものになる、後期のプレイテストにあたる。通常、リード・デザイナーはメモ用紙を手に持ち、カードに関して何らかの問題が起これば書き記していく。また、プレイテスターからの指摘に目を通し、複数のプレイヤーが大きな問題を指摘していないか確認する。
《テレパスの才能》 アート:Peter Mohrbacher |
第10工程:第8工程と第9工程を繰り返す
今回の最後の繰り返しは、もっとも短いものになる。変更を作り、それを評価し、さらなる変更へ繋がる指摘をする。今回の繰り返しにおいては、一度に大量の変更をすることはない。少しだけ変更して、そして再度評価をするのだ。
マジックのデザインにおいては、この最後のフェイズは精錬フェイズと呼ばれる。(アルファベットで言えば)tを交差させ、iに点を打つ工程だ。カードそれぞれを見て、細部全てが望むようになっていることを確認する工程である。ここで、ルール・マネージャーやエディターの確認を求め、テンプレート問題をチェックしてもらう。まもなくファイルをデベロップに提出するので、既に手がけ始めているデベロップ・チームとの連絡も密に取ることになる(デザインとデベロップの重複期間である)。
第11工程:完成
第11工程が難しいのは、最後の繰り返しの工程を永遠に続けることができてしまうからである。いつでも、改善できるところはあるもので、それをそのままにするのは難しいものだ。しかし、あらゆる創造する作品において、その時はやってくる。マジックのデザインには締切があり、そのおかげでこの最後の工程は少し簡単になっている。時間は思うままにならないのだ。
振り返って、この全体の手順は3つのフェイズに分かれ、それぞれが3つの工程に分かれる。各フェイズで何かを作り、それを評価して、それから必要なものが完成するまでその手順を繰り返すのだ。ひとことで言えば、その各工程を、作成、評価、繰り返し、と言えるだろう。
3つのフェイズ(開発部のデザイン名で呼ぶ)は、展望、統合、精錬だ。展望では自分の想像する作品が何なのかを決める。ここでは構造を作ることやその大半を埋めることが含まれることが多い。統合フェイズでは欠けている部分を埋め、そして外部からのフィードバックを求める。精錬フェイズは細部に注意を向け、各要素の全ての部分が動くようにするものだ。
書き込まれたページ
創造の手順について、空白のページから完成した製品に到るまで見てきた。いつものとおり、諸君からの反響を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、チーム・プレイヤーであることについて語る日にお会いしよう。
その日まで、空白のページへの恐れがあなたとともにありませんように。
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