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Making Magic -マジック開発秘話-
敵の作り方
敵の作り方
Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年8月4日
捕食者特集へようこそ。『マジック2015』の見所と言えるガラクの闇堕ちによって、マジックの暗黒面を見つめる特集をおこなうことになった。かつて、ニコル・ボーラス特集の際に、敵役とよい敵の作り方についての記事を書いた(リンク先は英語)。今回、よい敵のカードを作るために必要なものについての話をしよう。今回は、これまで私がデザインを手がけた数多くの敵のカードを通して、その作られた流れについて語っていく。言い換えると、今回は敵についてのカード・デザインの話である。
《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》(『テンペスト』)
敵の決まり事の1つに、「知能/筋力のコンビ・ルール」と呼んでいるものがある。主たる敵には、部下として仕える弱い敵がいなければならないというものだ。これが必要な理由は、主人公には主たる敵を倒すための準備が必要で、この部下が「最終ボス戦」への序章を務めてくれるからである。敵を設定するときに、知能の高い敵を1体と、筋力に秀でた敵を1体作ることは重要である。主たる敵が知能の高い敵なら、部下は筋力に秀でた敵である必要がある。主たる敵が筋力に秀でた敵なら、部下は知能が高い敵である必要がある。
ウェザーライト・サーガの主たる敵は(ああ、最初の時点では)ヴォルラスだった。ヴォルラスは知能の高い敵なので、その部下には筋力に秀でた者が必要となる。こうして《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》が生まれたのだ。《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》は巨大で残虐で無慈悲な強い戦士として設定された。我々は彼を物語のオープニングで、主人公たちに敗北を味わわせるために使った(障害が大きいと思わせるのは重要なので、物語の序盤で主人公が敵に、しばしば敵の部下に、打ち倒されるのは重要なのだ)。《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》は《旗艦プレデター》でウェザーライト号を攻撃し(「プレデター」は英語で「捕食者」、今週の特集テーマだ)、そしてジェラードと肉弾戦に持ち込み、グレヴェンの副官を務める《ヴァティ・イル=ダル》が馬鹿なこと(船を砲撃し、その結果ジェラードは投げ出されて落ちることになる)をした時点では圧倒していた。
このカードをデザインするにあたって、我々はこれを強力で恐ろしいものにする必要があった。通常、戦闘においては、グレヴェンは相手のクリーチャーを殺す。ただしこのカードは賢すぎてはならない。というのはグレヴェンは筋力型の敵であり、知能型の敵ではないからである。なぜグレヴェンがいい敵でいいカードなのか? それは、彼が他のクリーチャーを殺すからである。
我々は彼にパワーの方が大きい、かなりのパワー/タフネスを与えることにした。7/5は適当に思えた。次に我々は彼に畏怖能力を与えた(当時はまだ名前はなかった。畏怖は最近の能力で言うと、黒に固定された威嚇能力のようなものだ)。そこで、我々はこの1枚のカードによる問題に直面したのだ。
《ヴァティ・イル=ダル》
《ヴァティ・イル=ダル》は上記の《旗艦プレデター》における副官である。物語上、グレヴェンとジェラードが戦っているのを目にしたヴァティは素晴らしいことを思いついた。ウェザーライト号に砲撃して甲板にいる奴ら全てを落とせば、彼が艦長になれない目の上のたんこぶもまとめて殺すことができる。これは理論上はすばらしい考えだったが、ウェザーライト号はヴァティの想像よりも少しばかりダメージに耐えることができ、その結果、実際にできたことはジェラードを消息不明にしただけであり、グレヴェンは激しく怒ったのだった(後で考えれば、不味い判断だったといえる)。
物語上(ネタバレだ)、グレヴェンはヴァティを船から投げ捨てて殺す。問題は、ゲームにおける戦闘では、グレヴェンは《ヴァティ・イル=ダル》の能力に阻まれてヴァティを破壊できないということであった。これは物語とあまりにも矛盾する。その一方で、我々は《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》を戦場に出すに際してかなりのコストを課したいと考えていた。そして、この両問題を解決すると思える手段を見付けたのだ。《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》が戦場に出たとき、クリーチャー1体を生け贄に捧げなければならない。生け贄に捧げるべきクリーチャーがなければ、《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》自身を生け贄に捧げることになるのだ。
これによって、《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》のコストは軽くなり、《ヴァティ・イル=ダル》の問題を解決するちょっとしたフレイバーを追加することができた。グレヴェンは他のクリーチャーを殺し続ける類の敵で、味方でもお構いなしなのだ。彼が姿を見せたなら、クリーチャーが生け贄になる。こうしてヴァティは殺されたのだ。
《墜ちたる者ヴォルラス》(『ネメシス』)
ヴォルラスがカード化された時点で、彼は何年にもわたる物語に登場する敵の1人だった。ヴォルラスを再現するための鍵には、次のようなものがあった。
- 彼は賢い
- 彼はシェイプシフターだ
- 彼は力に飢えている
この頃、我々はセット内の多色カードの枚数を引き下げていたので、ヴォルラスを単色カードにしたいという欲求があった。今考えると、ヴォルラスはシェイプシフター能力を持つというだけでなく、常に学ぼうという欲求を持っていたので、明らかに青黒であるべき敵だった。ヴォルラスは秘密を解き明かすために無慈悲な実験をすることで有名であった。そう、彼は知識を使ってさらなる力を求めていたが、知識そのものにも興味があったのだ。しかし、彼を黒単色という決定がなされた。
これはある種の難関だった。シェイプシフターはクローン技術を使うため、伝統的に青だった。つまり、黒でシェイプシフターらしさを出す必要があったのだ。加えて、我々はこのカードに対戦相手を驚かせる能力を与えたかった。上記の通り、ヴォルラスは知能型の敵であり、プレイヤー諸君が対戦相手の裏をかけるようにしたかったのだ。
解決策は、ヴォルラスに一時的に自身のパワーやタフネスを強化できる能力を与えるというものだった。基本的には黒の持つ影の能力の亜種である。フレイバー面とメカニズム面の両方からクリーチャー・カードを捨てることをコストとしたが、同時に対戦相手が(プレイヤーの手札1枚と2マナがあれば)いつ強化できるかがわからないようにするためでもあった。脅威はたいていそこにあるのだ。
彼を6/4にしたのは、単にその存在を印象づけるためである。
《陰謀団の総帥》(『オデッセイ』)
『オデッセイ』の物語は2年に渡り、『オデッセイ』ブロックと『オンスロート』ブロックを通して語られた。主役はカマールという男だ(最初は《ピット・ファイター、カマール》、後には《クローサの拳カマール》となった)。敵役の1人、『オデッセイ』期の主たる敵は「陰謀団の総帥」としてだけ知られている男だった。彼は、カマールが最初戦っていた闘技場を運営している、陰謀団と呼ばれる集団の指導者である。
陰謀団の総帥は邪悪で悪意に満ちており、そして非常に賢い存在であった。私はその全ての要素を彼のカードでデザインしたかった。彼は他人を利用するので、他のクリーチャーを生け贄に捧げるようにしようと思った。その効果は卑怯なもの、おそらくは他のクリーチャーを殺せるものになる必要があった。
また、生きているクリーチャーだけでなく死んでいるクリーチャーも使うという発想も気に入っていた。彼は黒の組織陰謀団の指導者であり、死が陰謀団の手から逃れる手段になろうはずがない。また、このブロックは墓地をテーマとしており、主たる敵がそのテーマを弄る必要もあったのだ。《陰謀団の総帥》の2つめの能力は、1つめの能力の鏡像である。《陰謀団の総帥》はクリーチャーを生け贄にしてすることと同じことを、墓地にあるクリーチャー・カードを追放することでもできるのだ。「クリーチャー1体を生け贄に捧げるかあなたの墓地にあるクリーチャー・カード1枚を追放する:」という1つの能力にすることも検討したが、当時のテンプレートではそれは不可能だった(なぜかは知らない)。
大きな疑問は、この能力の中身をどうするかだった。クリーチャーを殺せるものにしたかったが、単純な「黒でないクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する」(当時の黒の一般的な除去効果)は強すぎた。私は、効果を組み合わせて何かを殺すようにしたかったのだ。クリーチャーを生け贄に捧げ、その後で2回目の起動としてその同じクリーチャーが墓地にあるのを使えるようにしたかったのだ。
−N/−Nを与えるというのは、組み合わせてクリーチャーを殺せる効果を生み出すいい方法に感じられた。しかし、−1/−1では充分とは言えず、−3/−3は強すぎた。−2/−2を試してみたところプレイテストの結果は上々だった。あとは、彼のサイズを決めるだけだった。なかなか除去できないような大きさにしたかったので、最終的には5/5になり、マナ・コストは{3}{B}{B}{B}、デベロップの判断により起動コストは{2}{B}になった(2つの起動コストが等しいことは私には重要だった)。
こうして《陰謀団の総帥》がデザインされたのだ。
《触れられざる者フェイジ》(『レギオン』)
『オデッセイ』/『オンスロート』の物語において、カマールにはジェスカという妹がいた。ある邪悪な方法により、ジェスカは触れた者を殺すフェイジという邪悪な存在に変わってしまった。このキャラクターをデザインするにあたって、この性質はもっとも重要なものだと思われたのだった。
接死というキーワードはまだ存在していなかったが、メカニズム自体は(リチャードはこの能力を『アルファ版』の緑のクリーチャー2体に持たせていた)存在していたので、フェイジは当時の形での接死を持つことは明らかだった。これは特に面白い話でもない。『レギオン』までに、我々はこの能力を何度も使っていた(どれほど使っていたかというと、後にキーワードにするほどだ)ので魅力的というよりも普通のことに感じられたのだ。そこで私は考えた。フェイジの、触れた者を死なせる性質を表すためのもっとも刺激的な方法はなんだろう?
私が思いついた最高のものは、クリーチャー相手だけでなくプレイヤー相手にも有効な接死を持たせるということだった。彼女がプレイヤーにダメージを与えたら、それだけで負けになるようにしたら? それは刺激的だ。ルール・マネージャーに私の知らないルールを破っていないか確認したところ、ルールで問題なく扱えるという返事を得た。
次はデベロップ的な話だった。一撃で勝利できるクリーチャーというのはどういうことか? 理論上、20/20のクリーチャーを作ることはできる。ほとんどの場合、童謡の働きをすることになるが、コストはずっと重くなる。プレイテストを経て、6マナ({3}{B}{B}{B})4/4なら大丈夫だということになった。4/4というサイズは、すぐに止められるほど小さくもなく、除去できないほど大きくもない数字として定められたのだ。
さらにプレイテストをした結果、《触れられざる者フェイジ》を悪用するために創造力を発揮し始めると非常に危険になるということがわかった。あらゆるダメージで誘発していた彼女の能力を戦闘ダメージだけに絞ったが、それでも通常よりもずっと早く出すことができた場合には問題になった。そこで我々は、彼女が唱えられる以外の形で戦場に出ることがないようにする文を加えたのだ。フレイバー的に言うと、彼女をおかしな方法で出した者は殺されるようにしたのだ。
《触れられざる者フェイジ》は、『レギオン』ではもう1体の敵役である《憤怒の天使アクローマ》に次いで2番目に人気の高いカードとなった(アクローマのデザインを止めようとしたことについて、アクローマ特集の際に書いた(リンク先は英語))。
《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》(『コンフラックス』)
ニコル・ボーラスの初登場は『レジェンズ』というエキスパンションで、エルダー・ドラゴンのクリーチャー・タイプを持つものだった。
このカードのメカニズムは、アートがあまり恐くない(「どうやって殺すかって? 調べるのさ!」)にもかかわらず、恐怖の的になるものだった。このカードはすぐに人気者になり、マジックの古典的な敵役の1人であったボーラスの名も高まっていった。彼が再びカードになるには何年もの時を必要としたが、再登場したときには、かつて彼が存在したときにはまだ存在しなかった、プレインズウォーカー・カードとしてであった。
我々がこのプレインズウォーカー・カードをデザインするとき、ボーラスがマジックの巨悪の1体、おそらくは最大の1体であることを知っていた。つまり、このカードはいくつかの要点を満たさなければならないということになる。
- 彼は強力でとても危険である
- 彼は他人を操る能力を持つ
- 彼は巨大なドラゴンである
マジックにおいてカードパワーを評価する上で難しいのは、2種類の強さがあることである。能力に比べてコストが安いカードは強力だし、戦場に出てしまえば対処できないカードも強力である。1つめの強さを持つためには優秀なコストが必要で、つまり巨大な存在を表すのは難しい。つまり、2つめの選択肢を選ぶことになる。ボーラスを戦場に出すのは難しい(そう簡単には手を貸してくれないのだ)、戦場に現れれば無視できない脅威になるのだ。
《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》の最初のバージョンは次のようなものだった。
[+3]: クリーチャーでないパーマネント1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す。その後、そのプレイヤーはカードを1枚捨てる。
[-1]: クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。
[-7]: プレイヤー1人と、プレイヤー1人と、プレイヤー1人を対象とする。その第1者はカードを7枚捨てる。その第2者はパーマネントを7個生け贄に捧げる。プレインズウォーカー、ニコル・ボーラスはその第3者に7点のダメージを与える。
この1つめの能力は《はね返り》の呪文と同じである。2つめの能力は制限なしの除去呪文である。3つめの能力は、彼の『レジェンズ』時代のカードの応用だ。伝説のクリーチャーだったときと同じように、7点のダメージを与え、手札を捨てさせる。パーマネント7個を生け贄にさせるのは、単にさらに邪悪に感じさせるためだ。
《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》 アート:D. Alexander Gregory |
このバージョンの問題点は、確かに強くて危険な存在に見え、ドラゴンらしい大きさも表しているが、他人を操る能力については再現できていない。私の考えるボーラスの本質は、まさにそれなのだ。そこで私はこの能力を調整することにした。1つめの能力はクリーチャーでないものに対処するものだ。カードを流麗に保つため、能力を可能な限り短く綺麗なものにしようとした。ボーラスを流麗なものにしたかったのだ。そこで、私は《はね返り》から単純な破壊呪文に切り替えた。
しかし、この2つめも破壊呪文ではないか? たしかにそうだが、ボーラスは他人を操る能力に長けている。クリーチャーを破壊することは無駄だ。クリーチャーを操るのだ、ということで、破壊効果からコントロールを奪う効果に切り替えた。そして、彼が最強の操り手であるということを示すため、奥義を《精神隷属器》能力にした。対戦相手でさえ操れる、これ以上の操り手はいないだろう。
私がこのバージョンを提案すると、デベロップ・チームは――そのほとんどを――気に入ってくれた。デベロップはこの変更のうちで最初の2つの能力に関する部分は向上だと捉えたが、その一方で3つめについては元のものを本当に気に入っていた。私は、確かにこの能力は昔のカードと関連していて魅力的だが、それではあまりにも『時のらせん』っぽすぎると反論した。相手の言い分は、この3つめの能力はボーラスの破壊性を表すものであり、昔のカードとの関連は魅力的な隠し要素だと言うのだ。議論を重ねたが、私の主張は通らなかった。私がデザインしたこの奥義は、後に《ソリン・マルコフ》で活用されることになる。
《大修道士、エリシュ・ノーン》(『新たなるファイレクシア』)
我々が初めて開発部担当副社長であるビル・ローズ/Bill Roseに、新たなるファイレクシアを舞台にしたいと伝えたとき(元々、ブロックの第1セットは『ミラディンの傷跡』ではなく『新たなるファイレクシア』で、ブロックの最後にこの恐ろしい新世界が、かつての――ミラディンだったのだ、ジャジャーン!とやる予定だったということを思い出してもらいたい)、彼は、黒以外の色でファイレクシア人らしさを出すのは難しいだろうと心配していた。
ご存じの通り、マジックの物語に初めてファイレクシア人が現れたとき、彼らを率いていたのはヨーグモスという男で、彼の指揮の下、ファイレクシア人は黒とアーティファクトのカードとしてしか存在しなかった。このファイレクシアの血脈はウェザーライト・サーガの間に断たれたが、我々は彼らを再び導入することを計画していた。マジック史上最高の敵役を使い捨てにするのは勿体ない。ビルの心配は、ファイレクシア人らしさを他の色で再現するのは難しいだろうということだった。可能だとビルに示すという任務が私に与えられた。ビルは、白がもっとも反ファイレクシア的だと感じていたので、私に与えられた任務は白のファイレクシア人をいくつか示すことだった。
これを仕上げるための鍵は、白の哲学とファイレクシア人の哲学の共通点を見付けることだった。しばらく考えて、私は、共通点が非常に多いということに気がついた。白もファイレクシア人も、彼らの考える「よりよい世界」を作ろうとしている。より良い社会を作るための青写真を元に、信念に基づいて動いているのだ。白とファイレクシア人はどちらも秩序を評価し、万人にとっての平等を作ろうとしている。確かに、ファイレクシア人の考える平等とは全ての存在がファイレクシア人である世界のことだが、今はそういう細かいことを置いて考えているのだ。
私が作ったカードは、相手のクリーチャーから何かを得て自分のクリーチャーを強化するというものだった。これは自己研鑽するクリーチャーという意味でかなり白らしく、その実際の処理は非常にファイレクシア人らしいものになった。ビルはこのサンプルのカードを気に入り、我々は計画を進めることができたのだ。
《総くずれ》 アート:Igor Kieryluk |
そして数ヶ月が過ぎた。1つめのセットは『新たなるファイレクシア』ではなく『ミラディンの傷跡』となり、ミラディンの変化をブロック中に描いて最終的に新たなるファイレクシアができるということにした。『新たなるファイレクシア』でリーダーを務めたケン・ネーグル/Ken Nagleは、このセットをよりファイレクシアらしくする方法を探し続けた。私は、ビルのために作ったカードを思い出し、《大修道士、エリシュ・ノーン》の初期バージョンを彼に提示したのだ。
私が作った元のバージョンは、アンコモンで、+1/+1を自分のクリーチャーに、−1/−1を相手のクリーチャーに与えるというものだった。このカードはその年の前半に黒のためにデザインしたカード(『ネメシス』の《隆盛なるエヴィンカー》、つまりは邪悪なクロウヴァクス)を元にしている。このカードは全体として白の雰囲気だが、その中には(−1/−1を与えるという)通常白では行なわない要素が含まれていた。『新たなるファイレクシア』は通常より多少暗いものになる必要があると感じていたので、我々は黒を、他の色とファイレクシアらしさとの共通点の形で混ぜ入れる方法を探していたのだ。
この考えを具体化するため、私はこのカードを白のアンコモンのサイクルに入れた。ケンはこのサイクルを気に入って、最終的にレアにして効果をより大きなものにした。+1/+1と−1/−1だったのが、+2/+2と−2/−2になったのだ。また、比較的小さかったクリーチャーが、少しばかり大きくなった。そして、ケンはこのサイクルが5つの色それぞれの軍勢を率いる伝説の捕食者に相応しいと気付いたのだ。その後わずかな調整を経て、《大修道士、エリシュ・ノーン》ができたのだった。
「いや、ボンドさん、死んでもらうだけだ。」
今日はここまで。諸君がマジックの悪名高い悪役どものデザインを楽しんでくれたなら幸いである。物語は悪役の質によることがあるので、我々は悪役のデザインに時間をかけるのだ。
いつもの通り、今日の内容に関する諸君の意見を楽しみにしている。メール、各ソーシャルメディア(Twitter、Tumblr、Google+、Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。
それではまた次回、私が爆発する日にお会いしよう。
その日まで、強大な敵に挑む困難な闘いがあなたの主人公を待っていますように。
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