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Mラクールファイル 「エムラクールのデベロップ」編
Mラクールファイル 「エムラクールのデベロップ」編
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年6月24日
何事でしょう? Mファイルに何か恐ろしいことが起こりました!
熱心な読者の皆さんは、マルチバースが、マジックのカードを既に印刷されたものも、デザインの初期のものも、その間のものも全て記録するために使う社内のデータベースであるとご存知でしょう。デザイナーとデベロッパーの使命のひとつは、時折マルチバースのカードを訪れ、そしてコメントを残していくことです。1年前のファイルを振り返れば、デザインとデベロップの過程についての洞察と、そして少しの笑いを提供してくれます。あなたはこの記事でそのどちらも見ることができるでしょう。
コメンテーターの紹介をご覧になりたい場合はこちらをクリックしてください。
『イニストラードを覆う影』ブロックの元になったアイデアは、通常と違い、開発部内のさまざまな人々が考えたフォーマット、製品、デザインの原則、そして世界のアイデアの中の1つにありました。アダム・リー/Adam Leeはエムラクールによって事象を歪められたイニストラードのアイデアを売り込んできました。コズミック・ホラー版イニストラードです。これは開発部内で大受けし、すぐに我々の将来の世界のプランのラインナップに組み込まれました。
『イニストラードを覆う影』ブロックに取り組むとき、我々は最初のセットでイニストラードを狂気に走らせる謎を探し、そして2番めのセットで全ての背後に潜んでいたエムラクールの存在が明らかになることにしました。初代とは異なっていながら素晴らしいバージョンのエムラクールを作り出すことには多くのプレッシャーがありました。『異界月』のリード・デザイナーであるケン・ネーグルによってファイルに載せられた最初のバージョンは、こんな感じでした。
〈約束された終末、エムラクール〉
{13}
伝説のクリーチャー ― エルドラージ
13/13
あなたが[カード名]を唱えたとき、対戦相手のコントロールする全ての土地でないパーマネントを追放する。
飛行、トランプル
あなたは[カード名]によって追放された土地ではないカードを、マナを全ての色のマナであるかのように支払って唱えてもよい。
13マナ13/13にすることは基本的に必要条件でした。我々はこのカードを初代のようにリアニメイトしたり《騙し討ち》するためのものにことなく凄まじいものにする必要がありました。《引き裂かれし永劫、エムラクール》の「やりすぎ感」にしようとすることは絶対にありませんでした。我々ができた最良の目標は、「フェアな」デッキで使えて、初代のエムラクールが見せたような「ゲームが終わった」感じとは違う方法でこれをクールにすることでした。
KEN:ウラモグのカードに似過ぎてるかもしんない(洗脳しようとしてるけど実際食ってる)けど、もっと強さのほとんどを唱えたときの誘発につっこむように試してみよう。
KEN:もっと無茶苦茶で基本でない土地を咎めるようになって、コントロールのミラーで13マナ揃えられたときの切り札になってほしいけど、多分ウラモグとかコジレックがすでにそうなんだよね。
KEN:テキストをちょこちょこ整理。
KEN:13マナのカードはリミテッドのプレイテスト全部で何も書いてないのと一緒だった。何かコスト軽減を試そう。
ケンは間違っていませんでした。このバージョンのエムラクールはウラモグよりもある種のレベルでより印象的な一方で、独自性よりも強化型のような印象を受けました。また、これはエムラクールの挙動として知られているもの――生態系を歪めることでもありませんでした。
そしてまた我々は大きな疑問を抱えていました。『エルドラージ覚醒』と『戦乱のゼンディカー』の両セットは点数で見たマナ・コストが10以上の巨大クリーチャーを唱えるように作られていましたが、『イニストラードを覆う影』は違います。これはつまり我々は彼女を実際に唱える手段を何か見つけなくてはならないということです。デザイン時、ベン・ヘイズ/Ben Hayesはこのブロックの昂揚と絡めて、カードタイプを数えてしかし4種類なくてもかまわない斬新なアイデアを思いつきました。
〈怪奇の母、エムラクール〉
{13}
伝説のクリーチャー ― エルドラージ
13/13
[カード名]を唱えるためのコストは、あなたの墓地にあるカードに含まれるカード・タイプ1種類につき{1}少なくなる。
(カード・タイプとはアーティファクト、エンチャント、クリーチャー、土地、インスタント、ソーサリー、プレインズウォーカー、部族である。)
飛行、不治/incurable(これは追放されたりオーナーの手札に戻されたりしない)
あなたが[カード名]を唱えたとき、パーマネントを1つ対象とする。あなたはそのパーマネントのコントロールを得る。
KEN:唱えたときの誘発をどこまで強くできるか試してみよう。2つ盗む。
KEN:2つ盗むんじゃなくて、(もう一覧が注釈文に書いてあるから)各タイプごとに1つ盗めるようにしたよ。
KEN:新しい不治に。
〈怪奇の母、エムラクール〉
{13}
伝説のクリーチャー ― エルドラージ
13/13
[カード名]を唱えるためのコストは、あなたの墓地にあるカードに含まれるカード・タイプ1種類につき{1}少なくなる。(カード・タイプとはアーティファクト、エンチャント、クリーチャー、土地、インスタント、ソーサリー、プレインズウォーカー、部族である。)
あなたが[カード名]を唱えたとき、各パーマネントのカード・タイプ1種類ごとに1つ対象とする。あなたはそれらのパーマネントのコントロールを得る。
飛行、不治(これは追放されたりオーナーの手札やライブラリーに戻されたりしない)
不治は異なる種類の除去耐性を作ろうとした初期のメカニズム案です。破壊不能のようなもので、それと対照的な呪文などに対抗しています。《神の怒り》よりも《激動》と組み合わせるととても強力です。とても興味深いメカニズムでしたが、ブロックの途中で実行するのはとても困難でした。結局、その強さの大部分が『イニストラードを覆う影』の除去の種類に基づいており、完成からは程遠いものでした。最終的に、我々はこのアイデアを断念しましたが、いつの日か似たようなものが出てきても不思議ではありません。
SPS:不治以外は私はこれ大好きですぞ。
KEN:シールドのテストでこれを唱えられて、ソーシャルメディアに書きたくなった。でもギリギリだけど勝ったよ。
KEN:蜘蛛とかスピリット・トークンで生き延びられるのでトランプルにしたよ。エムラクールには守るべき伝統があって、敵に回せば多元宇宙で最高に恐ろしい存在じゃなくちゃいけない。
KEN:不治をやめ。
EVL:基本的に盗ったものを殺した場合そのカードを取り戻すことができます。これは物語的に駄目ですか?
KEN:んで《殺害》で1対1がとれちゃう。良さそうな修正は1つのものを取るようにすることだね。ウラモグやコジレックは3対1とかそれ以上ができるから、エムラクールはもっと「恐ろしい」存在にしないと。
DEL:「1つまでを対象とする」は、パーマネント・タイプの1つが戦場からなくなった場合この能力がスタックに乗るように、なの?
この時点の前後でファイルは引き継がれ、このセットはデザインからデベロップへと移行しました。このカードは実用的で、私はそのコスト軽減メカニズムが大好きでしたが、この誘発型能力には大いに不満でした。
我々はデベロップの間に、そのセットのデベロップ・チームのメンバーと開発部以外の人々から構成されるミニチームを結成し、セットの改善をしようと取り組んでいます。『異界月』の場合、メリッサ・デトラ/Melissa DeToraがより多くのファイルのカード・デザインを構築フォーマットでプレイされるようにすることに焦点を当てたミニチームを結成しました。
SPS:MDTのミニチームからの新デザインですぞ。
SPS:呪禁抜きで試してみましょうかな。
その新バージョンはこんな感じです ― 最終バージョンにかなり近づいています。
〈約束された終末、エムラクール〉
{13}
伝説のクリーチャー ― エルドラージ
13/13
[カード名]を唱えるためのコストは、あなたの墓地にあるカードに含まれるカード・タイプ1種類につき{1}少なくなる。
あなたが[カード名]を唱えたとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーの次のターンの間、あなたはそのプレイヤーのコントロールを得る。そのターンに続いて、その対戦相手は追加の1ターンを得る。
飛行
この《精神隷属器》のアイデアは偉大です。何と言っても、エムラクールは多くのイニストラードの住人たちの精神を支配するのです ― プレインズウォーカーがそれを免れられる理由はありません。 その後の追加ターンは《約束された結末、エムラクール》が『エルドラージ覚醒』の《引き裂かれし永劫、エムラクール》のような確実な死刑宣告ではないことを意味しています。多くの反撃の一手が存在しますが、それはとても楽しいものです。《約束された結末、エムラクール》をプレイすれば大抵は勝ちますが、毎回ではありません。それは重要なことです。
MJJ:全体除去や布告に弱いから、なにか追加したいな。
SM:この《精神隷属器》の後に追加ターンというのは大好きです。
KEN:これを「対戦相手1人を対象とする。その対戦相手の次のターンの終了時まで、あなたはその対戦相手のコントロールを得る。そのターンに続いて、その対戦相手は追加の1ターンを得る。」にしたい。この方法だと彼女が出て少なくとも1ターンは《龍王ドロモカ》みたいに布告やインスタント除去から生き延びられる。攻撃が素通しになるのもいいところだね。他の《精神隷属器》はこっちの攻撃に関しては効果がないからね。
これはケンの魅力的な提案です。我々は実際こんなことを考えてもみませんでした。これは斬新なテキストだったので、私はこれをセットに入れることにしました。
〈約束された終末、エムラクール〉
{13}
伝説のクリーチャー ― エルドラージ
13/13
[カード名]を唱えるためのコストは、あなたの墓地にあるカードに含まれるカード・タイプ1種類につき{1}少なくなる。
あなたが[カード名]を唱えたとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーの次のターンの終了時まで、あなたはそのプレイヤーのコントロールを得る。そのターンに続いて、その対戦相手は追加の1ターンを得る。
飛行、トランプル
SPS:KENの意見を採用して ― そのプレイヤーの次のターン終了時までにしましたぞ。
BrH:エムラクールが《破滅の刃》で死ぬのは間違ってる。除去耐性をつけたい。
TABAK:私は《破滅の刃》が当たるだろうと信じています......どこか他のところに。
KEN:フューチャー・フューチャー・リーグでこれはウラモグと比べてかなりフェアだったね。相手の最強のやつを13/13に突っ込ませるのはフレーバーフルだったけど、横に並べるアグロにはたいてい効かない。コントロール/コンボではその分を埋め合わせるかもしれないね。
TABAK:これが輝くのが対戦相手のアップキープというのは本当にいいですねえ。それを3週間コントロールしているみたいです。
EVL:「そのプレイヤーの次のターン終了時まで」にするべきですか?
GSV:すごい。エムラクールの名にふさわしいね。
このバージョンは大人気で強力でしたが、いくつか問題がありました。1つめはデジタル面で、これを実行するには多くの手間がかかりました。ターンの途中にコントロールを得ることはターン全体のコントロールを得るよりもはるかに難しいことが判明したのです。しかしながら、もしこれだけが問題なら、我々はこのままにしていたでしょう。
このカードの最大の問題は、FFLで2つのデッキがこれを使い、お互いに出したときに発見されました。この効果自体は脳が溶けそうですが、一方がこのカードを唱えて相手の手札にもこれがあった場合、突然ターンのコントロールが入れ子になってしまいます。これは実際に妥当であったこと以上のものでした。
JDR:すぐにコントロールを取らない形でいくなら、結果がどうなるかはっきりするようにできるだろうか?「あなたがエムラクールを唱えたとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは追加の1ターンを得る。あなたはそのターンそのプレイヤーのコントロールを得る」みたいな。
{13}
伝説のクリーチャー ― エルドラージ
13/13
[カード名]を唱えるためのコストは、あなたの墓地にあるカードに含まれるカード・タイプ1種類につき{1}少なくなる。
あなたが[カード名]を唱えたとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーの次のターンの間、あなたはそのプレイヤーのコントロールを得る。そのターンに続いて、その対戦相手は追加の1ターンを得る。
飛行、トランプル、プロテクション(インスタント)
TJA:通常の《精神隷属器》だけになった。そしてプロテクション(インスタント)を。
KEN:プロテクション(インスタント)があっても《取り消し》はできるね(´・ω・`)
最終的に、我々はこのカードがかなり強力で、また全体的にとても満足のできるプレイ経験を作り出すと感じました。我々はこれが《破滅の刃》で死なないようプロテクション(インスタント)を加えました。我々はエムラクールの名にふさわしく、また同時に初代のように無茶苦茶ではなく、コストを踏み倒して戦場に出すだけではなく、実際にデッキに入れて唱えられるカードを求めました。最終的に、私は彼女の出来栄えに大変満足しており、そしてみなさんもそうであるようにと願っています。
今週はここまでです。私がそうであったように、皆さんが『異界月』を見てワクワクしてくれることを願っています。
それではまた次回お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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