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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青白GPG(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:青白GPG(スタンダード)

by 岩SHOW

 勝つために必要なものは何か。......ありすぎるね(笑)。あげていけばキリがない。プロツアーで勝つためには、としてみよう。プレイヤースキルはもちろんのことだが、いかに腕が優れたプレイヤーでも、デッキ選択を間違えれば勝てないものである。デッキ構築で対戦相手と差をつける、出し抜くというのもプレイヤーの......というよりはビルダーの能力の見せ所であり、プロツアー観戦者にとっては、世界中のビルダー・調整チームが一体どのような創意工夫に富んだデッキを作成してくるのかというのを観るのが醍醐味である。

 勝てるデッキを作るために必要なもの、これまたいろいろな要素が組み合わさっているとは思うが、1つ大事だと言い切れるものがある。固定観念からの脱却、それを実行してデッキを作り上げる決断力である。

 一体どんなものか、それはリストを見ながら話した方が早いね。というわけで、プロツアー『イクサラン』より最新のスタンダードデッキを紹介だ!

Pascal Maynard - 「青白GPG」
プロツアー『イクサラン』 準優勝 / スタンダード (2017年11月3~5日)[MO] [ARENA]
7 《
6 《平地
4 《氷河の城砦
3 《灌漑農地
2 《イプヌの細流

-土地(22)-

4 《査問長官
4 《聖なる猫
4 《機知の勇者
4 《発明の天使

-クリーチャー(16)-
2 《選択
4 《航路の作成
4 《巧みな軍略
2 《アズカンタの探索
4 《復元
2 《排斥
4 《王神の贈り物

-呪文(22)-
4 《博覧会場の警備員
3 《賞罰の天使
1 《領事の権限
2 《ジェイスの敗北
2 《否認
1 《燻蒸
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
1 《敵意ある砂漠

-サイドボード(15)-

 現スタンダードにおけるコンボ代表、《王神の贈り物》デッキ。

 キーカードであるこのアーティファクトのイニシャルからとって「○○GPG」と呼ばれる類のデッキは数種存在する。当コラムでも『イクサラン』から新戦力《人質取り》を手に入れた「エスパーGPG」を紹介した。《王神の贈り物》により基本サイズが4/4となり速攻を得ながら墓地から復活するクリーチャーを用いて戦況を圧倒的なものに......主に《発明の天使》によるダメージレースの完全制圧を狙うデッキだ。

 《王神の贈り物》はカードが登場するより前から話題になっていた。これが収録された『破滅の刻』の1つ前のセット『アモンケット』にて、このカード名が書かれた《来世への門》というカードが登場した。

 墓地にクリーチャーカードが6枚以上あれば、この7マナと重くプレイしにくい《王神の贈り物》を、2マナの起動コストであらゆる領域から戦場に出すことができるというのだ。《来世への門》自身のコストを合わせても計5マナと割安になる。こりゃセットで使うでしょ。これがGPGデッキの常識だった。

 プロツアー『イクサラン』準優勝のパスカル・メイナード/Pascal Maynard(と彼のチーム「Massdrop East」)はこの固定観念をひっくり返したこのデッキを持ち込んできた。ご覧の通り、このデッキには《来世への門》が1枚も採用されていない。0だ。そうきたかぁ~。

 確かにこの門、強いカードである。ただ、何とも言えないカードでもあるのだ。以前に「ジェスカイGPG」デッキを検証した際に、何度も何度もこの《来世への門》を起動してゲームに勝ったのだが、思い通りにいかないことも少なからずあった。墓地にクリーチャーカード6枚という条件は、簡単に満たせる時もあれば......そううまくはいかずに、起動ができずもたもたしてしまうことも。

 特に顕著なのはサイドボード後で、《否認》や《燻蒸》といったカードを増やすと、それだけデッキ内のクリーチャーの比率が下がってしまい、結果6枚貯めることが難しくなってしまうということがちらほらあった。

 だったら、この強いが不安定なカードを抜いてしまえ。シンプルな結論である。それを実行し、良いデッキを作り上げて最高クラスの成績を収めることになった。こう書くと簡単だが、なかなかできないアプローチだよなぁ。

 門を排除したことで、《王神の贈り物》を戦場に出す方法は(素出しを除くと)一本に絞られた。《復元》だ。

 この4マナのソーサリーであれば、墓地にクリーチャーカードが何枚だろうが関係ない。贈り物と最低1枚のクリーチャーカードさえあれば、それでよし。贈り物を全力で墓地に落とし、《復元》を引き込んで4ターン目に唱える。この動きを突き詰める方向にGPGデッキを特化させたわけだ。

 《航路の作成》《巧みな軍略》は墓地にカードを落としつつキーカードを引き込むというプランにはピッタリ。これらと《査問長官》で早いターンからライブラリーを墓地に落とし込んでいく。《機知の勇者》も同様の仕事をこなすので、1、2、3ターンと全力で動いていこう。

 4ターン目に贈り物を設置し、あとは適当なクリーチャーを蘇らせ、突撃させていけば......容易く勝ててしまうね。

 この動きをサポートするカードとして、現スタンダードでは引っ張りだこな《アズカンタの探索》も見逃せない。

回転

クリックで変身します

 墓地にカードを落とし込む動きは最高に噛み合っているし、《水没遺跡、アズカンタ》に変身後は《復元》を探しに行くこともできる。そして、土地に変身することでマナを伸ばしての贈り物素出しまでサポートする! これが地味ながら大きい。

 そんな場面あるのかって? 決勝で、ばっちりあったんだなこれが。

ptxln_finals_game4.jpg

 このアクションで一気に戦場がとんでもないことになり、さしものセス・マンフィールド/Seth Manfieldも返しのターンには投了せざるを得なかった(この後5本目を勝利してセスは王者に)。

 デッキの一番強い動きにフォーカスして、それまで必須と思われていたパーツを全排除し一つの方向に特化した新しい「青白GPG」。パスカル・メイナードはトップ8プロフィールにてこのデッキについて「少し気づかれていないものが必要だったんだ」と語っている。まだまだ、少し気づいていない何かはそこにあるはずだ。

 本当に『イクサラン』を、スタンダードを冒険しつくしたと言える人はこの世界にまだいないんじゃないか? さあ、今日もデッキを作ってみようじゃないか。

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